BanG Dream!~あの時の約束~完結 作:レイハントン
日間ランキング23位にランクインしていました! これも投票してくれた方々のおかげです! これからもあの時の約束を読んでくれると助かります。
今回の話は重いかもしれません。
目の前に見覚え…いや。突然離れて行ってしまった少女。市ヶ谷有咲。俺がいったいなにしたっていうんだ? 勝手に八つ当たりされて、なんなんだよって思うこともあった。だけどあの日、優衣に真実を突きつけられてわかった。
どっちも悪くないんだって。
だけど真実を話したからって有咲が許してくれるかと言うとそうじゃない気がする。
“裏切った”
この言葉だけがずっと頭に残っていた。どこで何を裏切ったのか皆目検討つかない。有咲の勘違いってことも考えられるけど、その線は……あるかも。
なんだろう……懐かしいことを思い出したような気がする。昔……手を繋いだ……帰り道。何かを約束したような……気が────
「期待外れだよ」
急に聞こえた声。よく見ると辺りは真っ暗。太陽も──光も──なにもない空間。 後ろに振り返るとなぜかお父さんが立っていた。
「な、なにが? 期待外れってなんだよ!」
「自分の体調管理も出来ない。お前はダメな奴だ」
「なっ……!」
言い返そうと口を開こうとすると、スーッとお父さんの姿は消えた。また後ろから声が聞こえた。今度はお母さんの声。
「また心配かけて……本当にあんたは雅史より出来損ないね」
「はぁ? それって───」
またスーッと消えた。
なんなんだよ………。人が必死に頑張ってるのに否定ばっかりしてさ……。バカみたいじゃん……でも、勝手に頑張って、勝手に倒れたんだから俺が悪いのか……そうか、全部俺が悪いのか………。
「やっとわかったの? 気付くの遅すぎ」
次は誰だ?
今度は後ろじゃなくて前に現れた。
「そうだな……」
俺を蔑むように優衣が現れた。
「でも、もう遅いよ? 恵がやったことは許されない。みんな呆れちゃってるし」
小さな声で「黙れ……」と呟く。みんな揃って俺を………。
「無駄な努力ってこのことを言うんだね~。せっかくドラムの練習と勉強頑張ったのにどっちも無駄になって……可笑しいね」
「黙れ……黙れ……黙れ黙れ黙れ!!」
「黙れ!!」
勢いよく起き上がった。呼吸器を外して荒く深呼吸。辺りをゆっくりと見渡すが、真っ暗でなにも見えない。
ここは……どこだ?
家? じゃないか……この独特な匂い。病…院?
ズキッと頭に一瞬痛みが走り右手で頭を抑えた。しばらくぼっーとして、なぜ病院に居るのか考えた。だけどどれだけ考えても思い出せない。思い出せるのは花園……あれ? 花園さん? 花園? どっちで呼んでたっけ?
「俺は……なにをしてたんだ?」
その日の夜。俺がここ最近の記憶を思い出すことは全くと言って良いほどなかった。
「「「……………え?」」」
病室で戸山、花園さん、牛込さんの声が重なった。もう少し静かにしてもらえんかね。ここは病室で、俺以外にも人が居るんだぞ。
「記憶喪失?」
「みたいだ。それともう少し静かにしてくれ」
「ごめんね。………けー…ちゃん? 本当に覚えてないの?」
花園さんが嘘でしょ? みたいな表情で聞いてくる。悪いけど嘘じゃない。記憶喪失をわざわざ嘘にはしないし、そんな悪いことはしない。
「ああ……。花園さんと出会った頃なら覚えてる。それ以降はさっぱりだ」
覚えてるのは花園さんと出会って戸山にギターを教えてるのは覚えてる。風間さん? に出会ったところまでが最後。
「ギターやってるのは覚えてる?」
「もちろん」
「じゃあ、わたしと付き合ってるのは?」
「・・・・・え? 俺と花園さんってそんな関係になったの?」
「嘘だけど」
無駄に変な期待させるのやめてくれませんかね………。全く……記憶失ったのに脳天気だなコイツら。でも心配してくれてるのはわかる。ありがたい友達が出来たもんだよ。
「心配してくれてありがとな」
「別に心配なんてしてない。そのまま死ねば良かったんじゃね?」
「ぐっ……今の俺には耐えられない……。でも、一番心配してくれてたりは」
「してない」
きっぱり言うんだな有咲は……。1人落ち込んでいると、「とりあえず私は帰る」と立ち上がった。
「早くね?」
「無事が確認出来たんだから居る必要ないし」
こんな状態でも容赦なく冷たくしてくる有咲。少し寂しい気持ちもあるけど、来てくれただけでもありがたい。
「そっか。来てくれてありがとな。すぐに練習には戻るから」
「うん。ゆっくり休んでね?」
「わかってる」
返事を返すと戸山達は病室をあとにした。これでしばらくやることはなくなったわけだ。学校に行けるのはいつからかな。少しでも遅れた分を取り戻さないと……勉強置いてかれちゃうし。
さっさと帰っていった有咲達。妙に態度が冷たかったのは気のせいではなさそうだ。記憶無くす前に余計なことをしたのかな。めっちゃ不安なんだけど。
「これからどうなるんだろ………?」
記憶喪失だから全般忘れてるらしいけど、どうにも気になってしまう。目が覚める前に見た夢。夢なのはわかっているんだけど、妙にリアルって言うか、なんというか………。
「あら……みんなは帰ったの?」
お母さんが病室に入ってきた。
「うん。様子見に来ただけだと」
「そう…。なにか欲しいものとかある?」
「特には。……あっ、なら勉強したノート持ってきてくれない? 勉強したいし」
「え? い、良いけど。どうかしたの?」
外の景色を見ながら「別に」とそれだけ素っ気なく返した。お母さんはどう思ってるのかな……やっぱりお母さん的には雅史の方が出来ると思ってるのかな?
「………お母さん」
「なに?」
「………なんでもない」
「そう」
夢の通りの答えが帰って来るのが怖くてはやっぱり聞けなかった。もしそうなら俺は要らない子になっちゃうのか? 誰からも必要とされない……誰も見てくれない……そんなので努力する意味あんのかな………。
俺の心には暗雲が立ち込めていた。
数日後
いつものように病室で勉強していると、仕事終わりのお父さんが俺しか居ない病室に入ってきた。息子が倒れたって言うのにいそいで帰って来ないのかよ。ファン優先させるのはわかるけどさ……電話の一本もないのはちょっとな。
「元気みたいだな」
「まあ……一応は」
「そうか」
いつもはなんとなく話が続くのに今日に限っては全然話が弾まなかった。数分間の沈黙。会話。沈黙の連続。ここはお葬式場かとツッコミたくなる。
「記憶喪失なんだってな」
「うん。最近の記憶はすっぽりなくなってる」
「そうか」
もしかして罪悪感でも感じてるのか? あのお父さんが? いっつも脳天気にひょうひょうとしてるのに。珍しいこともあるんだな。やっぱり父親なんだ────
「これでわかっただろ?」
「ん? なにが?」
「自分の未熟さが。友達に迷惑かけて、その上家族にも迷惑をかけた。少しは反省してるのか?」
なっ……なんで説教? 確かに家族や戸山達に迷惑はかけたけど……どうして俺が怒られなきゃいけないんだ?
真っ白の掛け布団を掴む手に力を入れた。
「息子が倒れたのに…心配の1つもしてくれないのかよ……」
「自分で体調管理してればこんなことにはならなかっただろう? なぜ兄弟でこうも違う?」
「……………っ!」
一番言われたくなかった。弟の方が出来がよかったのは確かだ。運動出来て、俺よりはまだまだだけど、勉強も出来て………そっか、俺なんて要らないのか。
「そうかよ……。どうせ俺なんて要らないんだよな。雅史だけ居ればいんだろ!!」
「そういうことを言ってるんじゃない!!」
「そういうことだろ!! いつもいつも雅史だけひいきして……全部知ってんだよ……部活の大会とかで優勝した時とか褒めて、いろいろ買ってやってるクセに俺にはなんもないだろ」
もう止められなかった。溢れ出る思いが次々と噴水のように吹き出してくる。
「テストで頑張ろうが、ギターで曲弾けるようになろうが………何をしても褒めてくれなかった。あんたは相手すらして───」
言い切る前に自分の頬に痛みが走った。同時に静かな病室にバチンと音が響く。
ヒリヒリと痛む頬を抑えながらお父さん──クソ親父の方を睨んだ。
「んだよ……。言葉が出て来なかったから手を出すってことか………もういいよ。早く帰れよクソ親父」
「それが親に対する口の聞き方か?!」
「そうだよ! 今のあんたに……俺は見えてないだろ? いいから帰れよ」
俺は無視するように窓の外の景色を眺め始めた。数分も経たないうちにクソ親父は帰っていったのが足音でわかった。これでもう………後には引けない。いや、引く必要なんてないんだ。息子がこんなことになってるのに心配の1つもしないクソ親父が。
地下室だって、元々自分で使おうと思ってたものだってお母さんから聞いたし。結局俺用じゃない。今思えば、買ってもらったのは赤いギターだけだな。物欲があんまりなかったとはいえ、欲しい
物すら聞いてこなかった。
こういう時……兄弟なんて要らないって思うんだな。初めてだよ……こんな気持ち。
俺は初めて……弟の雅史が───憎く感じた。
──────☆
お見舞いに行ってから数日。
「これからどうしよう………」
お昼休み。いつもの場所に集まってお昼ご飯を食べていると不意に香澄がボソッと言った。最近、香澄の元気がない。いっつも朝からテンション高いのに、今日も元気がない「おはよう」で朝の挨拶は終わった。
「どうしようってなにが?」
「バンドのこと…だよね? 神山君大丈夫なのかな?」
香澄の代わりにりみが答えた。またテストかなにかあってオーバーワークして倒れられても困るのは私達。ホント迷惑。
「おたえも居るし。必要?」
「それって……」悟ったようにりみが小さな声で言った。
「クビにするってこと?」
私の言おうとしたことを代弁するかのようにおたえがあっさりと言った。この状況で一番驚いているのは香澄。誘った張本人だもんね。驚くのは当然。りみは気付いてたのか、俯いてる。
「でも! ……私から誘ったのにクビにするのは……」
「それでまた無理でもされて、倒れられたらどうするの?」
沈黙。誰一人なにも言わなくなった。勝手に無理されて倒れられても困るだけ。あいつも清々すると思う。テストとライブがほぼほぼ重なって大変そうだったし。
「1回……聞いてみたら?」
シーンとした空間で口を開けたのは山吹さん。一回聞く。聞いたところで答えは見えてる。今のあいつの性格は中学の時と似てるってことは、めんどくさそうなことには絶対に首は突っ込まない。中学の時はそうだった。
「聞いてみてどうするの?」
「本人に今の気持ちを聞いてみないことにはわからないでしょ?」
「わかるよ。少なくとも山吹さん達よりは知ってる。だから聞いても無駄だと思う」
「どうしてそんなことが言えるの?!」声を荒げて訴えてくる山吹さん。
どうしてそこまであいつのために言うんだろう。聞きたいことが増えたけど、今は………。
「………今は嫌いだけど」
それだけ言い残してその場をあとにした。みんながどう思ってるのかは知らないけど……私はどうしても許せない。
──────☆
「記憶喪失………。なんか面白いことになってるじゃん」
中庭で呑気に話す有咲達にバレないように盗み聞きして正解だね~。手っ取り早く思い出してもらおうと思ったけど………。これは利用する価値あるよね。
じっと見ていると近くでバサッとなにかが落ちる音が聞こえた。視線を向けるとピンク色の髪の女が重ねられた大量のノートを両手で持って立っていた。
「あのっ! そのノート取ってもえませんか?」
「良いですよ」
すぐに作り笑顔を浮かべて拾いあげ、ノートを一番上に重ねてあげた。
「ありがとうございます!」
「いえいえ~」
笑顔で見送り見えなくなった所ですぐに笑顔を崩した。何がありがとうございます! よ。芸能活動してるからって調子乗んじゃないわよ………丸山彩。
視線を中庭に移すといつの間にか有咲の姿はなかった。あっちはあっちで問題がありそうね。………少し遊んであげようかしら。
思わずドス黒い笑みがこぼれた。
さて、とうとう動くのかあの人が。
今後主人公がどう乗り切るのか楽しみにしててください。ちょこちょこ気にしてくれるあの子かな……
感想、評価等どんどん送ってください! 最近感想減ってきてるので(^_^;
次回も頑張ります!