BanG Dream!~あの時の約束~完結   作:レイハントン

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こんにちは。

日間ランキング22位に載りました!! ありがとうございます!! 21位にはあの作品も……

最近投稿する度感想くれる方が居て凄く助かってます! モチベーション上がりまくりですよ(^_^) 評価がくればもっと上がるかもです。

今回は完全にオリジナル回です。


19.今だけは───

 あれから数日後にひょっこり姿を表した私の天敵───神山恵。でも人が変わったようにあまり喋らなくなってた。あまりの変わりように香澄やおたえが「どうしたの?」と理由を尋ねるも、「なんでもない」の一言。正直なにがあったのかは興味ないけど…………。

 

 今日はバカが復帰してから最初の放課後の練習。

 

「そこ違う。お前はこの数日間なにやってたんだ?」

 

 たまに香澄に向かって放たれる言葉。いつもは呆れたように言ってるけど、今日は違った。なんの感情も感じられない。呆れも、イラつきも……なにも。

 

「えへへ。けーちゃんが心配であんまり手が付かなくて」

 

「誰が心配してくれなんて頼んだ? 俺のことはいいから練習しろよ」

 

「う、うん。わかった……」

 

 変わり過ぎ………。そんな攻撃的な性格だったっけ? 香澄を見つめる目もどこか遠くを眺めてるような目してるし、常に貧乏ゆすり。……うちが貧乏になるからやめてほしいんだけど。

 

「また間違えた。なんで同じところで間違えるかな。花園もなに教えてたんだ?」

 

「だから、恵ちゃんが心配で練習あんまりしてなかったの」

 

「はぁー。そんなので良いのか? いつまで経っても上達しなくなるぞ?」

 

 あまりの言葉の悪さにりみは怯えていた。やっと様子がおかしいことに気付いたのか、香澄とおたえの表情も曇る。

 

 こんな状況で練習出来る程強くはない。なにより……その態度が気に入らない。

 

「ねぇ」

 

「あ? なんだよ」と後頭部をかきながら私のことを見てきた。表情は明らかにイラついているのがわかる。

 

 でもイラついてるのはお前だけじゃない。

 

「ちょっと外出てよ」

 

「なんで───」

 

「いいから早く」

 

 こうしてバカを連れ出した私は蔵の外で話をする事にした。本当はこんな奴と話したくはないけど、友達が困ってる以上やるしかない。

 

「なに? あの態度」

 

「は? 態度ってなにが?」

 

 あくまでとぼけるつもり? マジありえない。

 

「もっと丁寧に教えるとかないの?」

 

「丁寧?」

 

 まるで教え方を忘れてしまったのか? と言いたくなるほどにバカはとぼけていた。ホントにコイツは………。

 

「あんなキツく言うことないじゃん。お前に何があったかは知らないけど、あんまり私情持ち込まないでもらえます?」

 

「………お前には言われたくない。お前だって俺が嫌いだかなんだかは知らないけど、私情持ち込んでるだろ」

 

「はぁ? 一緒にしないでくれます? 私はちゃんと指示に従って練習してるし、自主練だってしてる」

 

「…………っ!」

 

 明らかに表情が歪んだ。コイツは嫌いだけど、教え方とか苦手なところはすぐに改善しようと、改善策を用意してくる。そこは認めるしかない。だけど………コイツに教えてもらっても上手くなる気がしない。

 

「自分で引き受けたんだから、最後までちゃんとやってよ」

 

「………うるせぇ。わかってるよそんなの………けどなっ!」

 

 そう言って私のことを見つめてくるバカはどこかやるせない表情だった。この数日でなにかがあったのかはわからない。何事も前向きに取り組んできたあいつがここまで壊れる程の理由。

 

「けど………。悪い……今日は帰る」

 

 ヨタヨタと力強さが感じられない足取りで私の隣を通り過ぎてく。

 

「ごめんな……有咲」

 

 私の後ろでいきなり謝ってきた。だけど何に対しての謝罪なのかわからない。

 

「なにが?」

 

「裏切られるのが……こんなに辛いなんて……思わなかった。信じてたものが一気にぶっ壊された気分だよ……」

 

 今更? 今更そんなことに気付いたの? こっちはずっと前から気付いてたのに……。その間お前は脳天気に生きてたんだろうけど、私は違う。悔しくて、悲しくて、辛くて。なにもかもがどうでも良くなって。

 

 怒りが隠せなかった私は後ろに振り返って肩を掴んでこっちに向かせた。

 

「今更気付いたの? 私は……お前にそういう気持ちに──」

 

 これ以上言うのもバカらしくなった私はそれ以上言うのをやめた。多分今のコイツに何言っても聞いてくれないと思う。私がそうだったから……。

 

 でも────

 

「今のお前に教えてほしくない」

 

 これだけは伝えたかった。

 

 

 

 

 

 

──────☆

 

 戻って鞄を取ってさっさと蔵をあとにした。未だに有咲に言われた言葉が頭の中で絶える事なくこだまする。

 

 

 

『今のお前に教えてほしくない』

 

 

 

 クソッ! 俺の何がわかるんだよ……。親に期待すらされてない気持ちがわかるのか? わかるわけないよな。親の居ないあいつには………。俺の気持ちなんか……。

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま家には帰らず俺は公園に来ている。何をすることもなくベンチに座ってただぼーっとするだけ。今日はクソ親父が帰ってくるから帰りたくない。遅く帰ればグチグチ文句言われるし、一緒にご飯食いたくねぇし。明日は学校休みだから問題ない……か。1日くらい帰らなくても。

 

 あれから家族とは必要以上の話はしてない。おはようの挨拶すらなくなった。もう寂しさなんて感じない。こうやって家族って崩れていくのかな………。

 

 戸山達にも悪いことしちまった。あいつらは何にも悪くないし、むしろ感謝しないといけないはずなのに………今考えると最低だよな。

 

「もう……遅いか……」

 

 眠気に襲われた俺は勝てずにそのままベンチで横になり、鞄を枕に目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間が経っただろうか。少し冷たい風に吹かれて目が覚めた。左側を下にしながら寝たからか、ジーンとした痛みに襲われる。仰向けに体制を変えて空を見ると赤い空の一部が黒くなっていた。

 

「夕方……か。今夜どうすっかな……」

 

 家に帰らないとだけど……

 

「帰りたくない……」

 

 そう思うと体が動かない。もう少し寝ようかな……。どうせ心配されないし。

 

 もう一度目を閉じて、数分。意識が落ち掛けた瞬間───

 

「なにしてるの?」

 

 聞き慣れた声。ゆっくり目を開とそこには。

 

「………山吹」

 

「名前で呼んでくれないってことは、記憶…ないんだね」

 

 微笑みながら言う彼女にどこか寂しさを感じた。なんでだろう……山吹とはもっと仲良くなったような気がする。こんなよそよそしい山吹なんて言い方じゃなくて………

 

「沙…綾。これでいいか?」

 

「え? う、うん。こんな所で寝てると風邪引いちゃうよ?」

 

「引かねえよ。………バカだから」

 

 バカなんかじゃない。大バカ野郎だ……。友達との思い出もどこかに落としてきちまった。拾えるかわからない所に……。

 

「けいちゃんはバカじゃないよ。頭良いし、香澄の面倒見れて、おたえにもついていける。しっかりしてるとあたしは思う」

 

 なんだろう……その優しさが今の俺には苦しい。目の前で本当に困ってる人を無視した時と同じくらいの罪悪感を感じる。今の俺に優しさなんてもったえない。1万円札を道端に捨ててると同じことだ。

 

「そんなことねえよ。俺はクソ野郎だ。心配してくれる友達にすら気付かない……クソ野郎」

 

「…………もしかして、家出でもした?」

 

「別に。帰りたくないだけだ」

 

 もはや家出に近い行動だけど、ここで沙綾に迷惑をかける訳にはいかない。なんとか誤魔化そうとあれこれ言い訳した。

 

「そっか………。じゃあ、家来る?」

 

「はっ? いや、いいよ……。家帰っから」

 

「本当? 無理しなくて良いんだよ?」

 

 無理をしているつもりは………無理してるのか。でも、だからって───

 

「……ありがとな。心配してくれて」

 

 それでも俺は沙綾に従うことなくその場をあとにしようと、ベンチから立ち上がった。

 

 今の俺には沙綾は眩しすぎる。その優しさも…心が痛い。

 

 なぜこの時振り切らなかったんだろう。さっさとその場から走れば逃げられたはずなのに。もう……どれが本当の自分なのかわからない。記憶を失う前の俺はどうだったんだ? 今までの俺ならどう乗り切った?

 

 

 

 今の俺は自分を見失っていた。

 

 

 

 沙綾に背を向けて歩いていると、左手を掴まれた。

 

「今のけいちゃん普通じゃない。そんな状態でほっとけないよ」

 

 結局俺は沙綾に無理やりという形で連れていかれた。いきなり押し掛けても泊まれるはずがない。心のどこかで泊まらずに終わるのを期待していた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、お母さんとご飯作るから弟達の面倒見ててもらえる?」

 

「お兄ちゃん、遊ぼう!」

 

「しょうがねぇから、おれが遊んでやるよ!」

 

 なぜこうなった………。妹さんはともかく弟君は、だいぶ生意気だなおい。しょうがねぇからってどういう意味だこら。それが遊んでもらう身分かね。

 

 結局なんか、凄い歓迎された。自分の娘がいきなり男を連れてきたら、彼氏? と聞かれるだろう。しかし、俺は何度もやまぶきベーカリーに通っている。彼氏という目ではみられなかった。

 

 今は沙綾の妹、沙綾ちゃんと弟の純君の面倒を見ないといけない。小さい子供と遊んだ経験などない俺には、どうすればいいか到底わからない。

 

「えっと……な、なにして遊ぶ?」

 

「一緒にテレビ見ててくれればいいよー」

 

「そ、そうか」

 

 テレビねー。高校生になってからあんまりテレビ見なくなったから、なにやってるんだかわかんねぇんだよな。子供の頃はお笑いとか、特撮とか見てた記憶がある。あとは音楽番組。

 

 そんなことを考えながらぼーっとテレビを眺めていると、ふと隣に視線を移した。俺の隣では大人しく沙南ちゃんがテレビを見て時折笑っている。

 

 親父と喧嘩して以来……笑った記憶がないな。ある意味笑える状況だけど……。そっちの笑うとは違うのか。

 

 よく見ると純君が居ない。後ろに振り返ると、チラッとこっちを見てどこかに行ってしまった。

 

 もしかして……恥ずかしがってるのか? それとも怖がってるのか? いつも会う度、俺を排泄物扱いしてくるくせに。

 

「こっち来たら?」

 

「い、いいよ。別にそっち行きたいわけじゃねぇし」

 

「素直じゃねぇのな」

 

 雅史とはまた違うタイプの弟。将来はやんちゃとかしてそうだな。なにかする度沙綾に怒られてそう……。ほどほどにしておけよ純君。

 

 

 

 

 

 数十分経っただろうか。美味しそうな匂いが鼻を刺激する。今日は昼食ってないから、余計に腹減ってるんだよな………。

 

 ぐ、ぐ、ぐう~。

 

 盛大に腹を鳴らした。腹を鳴らすのがこんなに恥ずかしいとは………。

 

「ふふっ。そんなにお腹空いてるの?」

 

「昼食ってなくてな…」

 

 こんな盛大に腹を鳴らせばそれをいじってこない奴は居ない。

 

「だっせぇのー!」

 

「うっせ。さっき恥ずかしくてこっちに来なかったのはどこの誰かな~」

 

「なっ! おれじゃねぇし!」

 

 いやいや、どう考えてもおれだよ君。恥ずかしがって来なかったのは、1人しか居ないもの。

 

 

 

 山吹一家と食卓を囲んだ。本当に高校1年生の作った料理なのだろうか。どのおかずも美味しい。特にしょうが焼き。腹が減ってるのもあるけど、普通に美味しい。

 

「ご飯たくさんあるから、遠慮しないでね~」

 

「は、はい」

 

 しょうが焼きを摘まんでいると、正面で食べている沙綾のお母さんがニコニコしながら話かけてきた。

 

 なんだろう……沙綾と雰囲気似てるような気がする。この親にしてこの子ありとはまさにこのこと。

 

「純と沙南の面倒も見てくれるし、恵君うちにお婿さんに来る~?」

 

「い、いえそんな……」

 

「えーあたしと結婚するの嫌なの?」

 

「別にそういうわけじゃ……」

 

「あらあら」

 

 へへへ……。調子狂うな~。沙綾が2人居る気分だよ……。でも普通に考えると沙綾がお嫁さんって最高だよな。家庭的で料理出来るし、面倒見いいし、容姿もいいし。

 

 俺なんかにはもったいないくらいだ………。

 

 晩御飯食べてる時にこうやって楽しそうに話したのはいつぶりだろう。そう感じる程、山吹家で囲む食卓が楽しかった。

 

 

 

 

 

 

 夜ご飯の片付けを手伝ったあと、お風呂の時間になった。さすがに最初に入るわけにもいかないと思った俺は無理を言って最後にしてもらった。

 

 

 

 みんなが順番にお風呂に入っている間、俺はリビングで泊めてもらったお礼をどうするか考えていた。一宿一飯の恩義ってやつだ。なにもしない訳にはいかないからな。

 

 まずギターでなにか演奏しようかと思ったけど、今の俺に弾ける気がしない。次に思いついたのは、朝ご飯などの手伝いだったが……料理は出来ない。他になに出来るんだ?

 

 その日思いつくことはなかった。ふとテレビを見ると純君が録画された特撮番組を見ていた。

 

「それ、好きなのか?」

 

「うん。お兄ちゃんも?」

 

「今のやつはよくわからないけど、前のやつは見てたぞ」

 

 今、純君と話てるのは長年続いている特撮番組の話。小学生くらいの時はなにやってたっけな~。あんまり覚えてないな。

 

「前と比べるとやっぱり違うんだよな~」

 

「お兄ちゃんの頃はどんなのだった?!」

 

 おーおー。食いついてきたぞ。やっぱり男の子だな~。小学生は元気なくらいがちょうどいい。

 

 スマホで調べて動画を見せてあげると興奮した様子で、「すげぇ!」と言ってくれた。俺が作ったわけじゃないけど、なんか嬉しい気持ちなる。

 

 

 

 数分くらい動画を見ていると沙綾が来た。

 

「楽しい話してるところ悪いんだけど、お風呂の時間なんだけど」

 

「だってよ」

 

「えー! 今日は入んない!」

 

「またそういうこと言って!」

 

 するとなぜか追いかけっこが始まった。賑やかな家族だな。いつもこうなのか? その様子をしばらく眺めていると、沙南ちゃんが俺のところきた。

 

「お兄ちゃん、ギター弾けるの?」

 

「ん? どうして?」

 

「お姉ちゃんがいつも来るお兄ちゃん、ギター弾くの上手って言ってたから」

 

「そっか。お姉ちゃんそんなこと言ってたのか」

 

 そこまでは普通の話だった。しかし、俺はここで聞いてはいけないことを聞いてしまったのかもしれない。本人が触れられたくない話を。

 

「お兄ちゃんもバン…ド? やってるの?」

 

「俺はやってないよ。………も?」

 

 “も”ってどういうことだ?

 

「お姉ちゃんもなにか───」

 

「沙南、お風呂行くよー」

 

 いつの間にか純君が沙綾に拘束されていた。ようやく観念したのか純君よ。長いこと逃げてたな。

 

 結局バンドのことは聞けず仕舞いで終わった。

 

 

 

 

 

 

 最後にお風呂を済ませた。パジャマは沙綾のお父さんから貸してもらった。

 

 リビングに戻ると沙綾と沙綾のお母さん、お父さんがなにやら話ていた。

 

「沙綾の部屋で大丈夫か?」

 

「大丈夫だって。けいちゃんはそんなことしないから」

 

「それもそうか」

 

 この短時間でどれだけ信頼されてるの? 俺は。逆に居づらいじゃんそんな言い方されたら。…………つまりどういうことだ?

 

「じゃあ、決まりだね。けいちゃんはあたしの部屋で」

 

「・・・・・はい? 一緒に寝ろと?」

 

「ダメ?」

 

 そんなんダメに決まってるじゃん。ネタでもふー◯こちゃーん♪ なんて飛びかかれないぞ。つうか今の俺にそんなことやる元気ないわ…………。

 

「うちの娘とは一緒に寝れないと?」

 

「いやいや! そう言うわけじゃ! 寝ます! 是非是非!!」

 

 なんでこんな言い方してるんだろうか俺は。どんな流れでここに来たんだっけか………。

 

 

 

 

 

 

 あれからなんとか説得しようとしたもののよくわからない信頼を寄せられてて、断れなかった。1つ屋根の下、同じ布団で一緒に寝るわけにもいかず、俺は床で寝ることにした。泊めてもらえるだけありがたい。

 

 今日はいろんな意味で疲れた。

 

 時計の秒針のカチカチという音だけが響く部屋でどうしても聞きたいことを聞いてみることにした。

 

「なんで……こんなことしてくれるんだ?」

 

「なんでって、なんとなくかな~」

 

「そうか………」

 

 そこから話はなく、無言の時間が続いた。

 

 自分の左手を枕に左側を向いて寝ていると───

 

「よいしょっと」

 

 床で眠る俺の真横にいきなり来ると沙綾は俺の頭を持ち上げて自分の太ももの上に置いた。世に言う膝枕。…………初めての感覚だ。

 

「お前なにしてるんだよ……」

 

「嫌ならやめるけど?」

 

「いや…別に嫌ってわけじゃ……」

 

 その言い方ズルいな。強く断れないじゃん。

 

 沙綾は俺の頭をゆっくり撫でながら話始めた。

 

「最近なにかあったでしょ」

 

「だから、なにも無いって」

 

「良いんだよ……。今だけは…あたしに甘えても。けいちゃんは疲れちゃったんだよ。毎日毎日努力して」

 

 沙綾の言葉を聞いていたら、無償に泣きたくなってきた。でもここで泣くわけにはいかないと、唇を噛み締めてグッとこらえる。

 

「たまには休むことも大事。今がその時なんだと思う。だから……もう、無理しないで」

 

 もう止まらなかった。急にたくさんの感情があふれてきた。罪悪感、怒り、寂しさ、言葉では表現が難しい感情も込み上げてくる。左側を向いていたが、思わず右側に体制を変えて沙綾に泣きついてしまった。

 

 

 

 今日だけは……今だけは……許してくれ………。こんな弱い俺を。

 

 

 

「……ずっと……我慢してた。心配してくれた友達にさえクソみたいな態度とって、勝手に八つ当たりしてっ! 最低だよ! 俺は! こんなんだから有咲にも───」

 

 そこまで言いかけた時、沙綾はギュッと抱き締めてくれた。俺も両手を背中に回して、ひたすら泣いた。それを沙綾はなにも言わずに───ただ受け止めてくれた。どうしようもない俺を………優しく。

 

「1つ1つ、解決していけばいいんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 数分くらい泣いただろうか。少しずつ落ち着きを取り戻した俺は、一旦沙綾の顔を見る。彼女は優しく微笑んで、「落ち着いた?」と声をかけてくれた。

 

 無言で頷き、ジッと動かないで彼女を見続けた。よく考えたら俺は女の子の家に泊まった上に慰めてもらってる。恥ずかしい話だけど、今の俺には到底理解出来なかった。

 

 左手をそっと沙綾の頬に触れる。彼女もなにも言わずに左手を握り替えしてくれた。今の俺には彼女が──沙綾が愛おしく見えていたのだ。左手を下ろして、ゆっくりと体を起こし、同じ目線に座った。

 

「どうかした?」

 

「………ちょっと」

 

 泣いて疲れたのか、半分意識を失いかけながらも俺はゆっくりと沙綾に顔を近づけていった。

 

「えっ?! ちょ、待っ───」

 

 俺が覚えてるのはここら辺が最後。それ以降は覚えていない。このあと何をしたのかも、どうなったのかも───わからない。

 

 

 

 

       

 

 

 スズメの鳴き声で目覚めた俺はゆっくりと目を開けた。そこは見知らぬ天井。いつも朝起きて見ている光景とは違う。右手をおでこに置いて右目を瞑った。

 

 正直まだ眠い。………昨日の夜、なにしたっけ? 気が済むまで泣いて……そこからどうしたんだ?

 

 なかなか思い出せずに居ると部屋のドアが開いた。昨日の公園で寝ていた時みたいに沙綾が覗き込んできた。

 

「おはよう。朝ご飯、出来てるよ」

 

「朝ご飯まで悪いな…………なぁ、沙綾。昨日の夜って」

 

「泣いたあと、すぐにけいちゃん寝ちゃったけど」

 

「そっか」

 

 余計なことはしなかったみたいだ。これであの後、実はとか言われても困るのはお互い。この歳で責任取れと言われても厳しいところだ。

 

 ふとある言葉を思い出した。

 

 

 

『1つ1つ、解決していけばいいんだよ……』

 

 

 

 ………答え、出たかも。

 

「(けいちゃん、覚えてないんだ……昨日の夜のこと)」

 

 上半身だけ起こした。真っ直ぐ沙綾のことを見る。

 

「ありがとう。答え…出た気がする」

 

「なら、良かった」と笑顔で言ってくれた。

 

 

 

 この時、全く気付いていなかった。沙綾も悩みがあって苦しんでいたのにも関わらず、俺を助けてくれたことに。

 




自分としてはかなり頑張って書きました。なんだかんだで、沙綾も可愛い! 年上のお姉さん感があって好きですはい。

次回もオリジナル回を予定しております。そしていよいよ文化祭編! 主人公をどう絡ませるのか凄い悩んでます。

作者は有咲が欲しくてイベントを周回しております。

あと少し………あと少しで、有咲が

それではまた次回!

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