BanG Dream!~あの時の約束~完結   作:レイハントン

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こんにちは。

またまた高評価いただきました! しかも有名作者さんから貰えるとは思ってませんでした(^_^)

今回は前回言ったかもですが、オリジナル回です。


20.一歩踏み出す為に

 朝──目覚ましの音で目が覚めるのではなく、自然と目が覚めた。前の見慣れない天井ではなく、見慣れた天井。クソ居づらい家なのに、今日はさほど感じなかった。しばらくなにも考えずにぼーっと天井を見つめていると目覚ましの音が部屋に響く。

 

 体を起こしてソフトタッチで目覚ましを止めると窓の外に視線を移した。ここ最近雨が降った記憶がない。今日も快晴で、ひなたぼっこ日和とはまさにこのこと。

 

 まぁ……ひなたぼっこはしないんだけど。

 

「行くか……」

 

 

 

 一歩踏み出す為に。

 

 

 

 ベッドから降りて、上のスウェットを脱ぎベッドの上に置く。Yシャツをハンガーから取って袖を通し下からボタンを1つずつ閉める。下のスウェットを脱いで、ズボンに履き替えチャックとベルトを閉めた。

 

 スマホから充電用のケーブルを抜き取りネクタイ、ブレザー、鞄を持って部屋をあとにした。部屋を出るとバッタリと弟に出くわす。あれから雅史とは話してない。向こうも気にしてるみたいだけど話かけてこない。

 

 いつも通りに素通りして下に降りようと階段に一歩踏み出した。

 

「あんちゃん……最近、お父さんとなにかあった?」

 

「……………なにも無いって言ったら嘘になる」

 

 ひいきされてる事を雅史に当たって無意味なのはわかってる。別に嫌いってわけじゃないけど結果的に俺のことをそんなに心配してないのはわかった。連絡もしないで沙綾の家に泊まった時に心配して連絡くれたのはお母さんだけ。

 

 連絡をくれたのはお母さんだけなのは確かだ。でも、呆れられたのかあんまり叱られなかった。その日からお母さんもあんまり話しかけてこない。結局のところ、雅史だけ居れば良いって話になる。

 

「いったいなにがあっ───」

 

 雅史の言葉を遮るように俺は言った。

 

「お前には関係ない。二度と俺に構うな」

 

 それだけ言い残して俺は家を出た。この先、いってらっしゃい、ただいまとこの家で言うことはないと思う。今、大事なのは友達だから。

 

 

 

 

 

 

 ネクタイを絞め、ブレザーを羽織って、真っ先に向かったのは花園と話した公園。多分この時間帯なら居ると思う。前に話した時に、たまに走っていると聞いたからだ。たまにだから、確証はないけど……今は少しの可能性を信じて進むだけだ。

 

 

 

 

 

 ほぼ全力疾走に近い形で走った俺はようやく目的地に到着。息を切らして両肩を上下させて辺りを見回すと、ほんの少しの希望にかけて正解だった。

 

「はぁ……はぁ……。花園」

 

 声をかけると彼女は静かにこっちに振り返った。俺の姿を確認するなり、首を傾げて不思議そうに見つめる。

 

 まぁ、普通の反応だろう。いきなり現れたらそうなる。

 

「恵…ちゃん。どうしてここに?」

 

「謝りにきたんだ。前の練習では悪いことをした……本当にすまなかった」

 

 深々と頭を下げる。なんなら土下座の勢でも良いくらいだけど、それは最終手段。無言の空間の中、こっちに足音が徐々に近づいてきた。いったいなにを………。

 

 少し油断していた俺の前に花園がしゃがみこんできた。ゆっくりと顔を前に向けると、両手で頬を触ってきたと同時に花園らしい言葉が飛んできた。

 

「熱でもある?」

 

「別にないけど……」

 

「ほっぺたじゃわからないかな?」

 

 熱があるか確かめる時って、普通おでこを触るんじゃないのか? そこをなんで花園は頬を触った? 

 

 いくら考えても答えが出るはずはない。だって……花園の考えだから。

 

「わたしは気にしてないよ。悩みでもあったんでしょ? あんな恵ちゃん見たことなかったから」

 

「ある意味悩みはあったよ………でも」

 

 ゆっくりと体を起こす。花園も両手を頬から離すと立ち上がった。

 

 相変わらずキレイで透き通った目してんな………。迷いなんて微塵も感じない程の目。そもそも花園に悩みなんてあるのだろうか。性格を考えるとあんまりないような気がする。

 

「でも?」

 

「解決した。だからこうして頭下げに来たんだ」

 

「そっか。意外と律儀なんだね、恵ちゃんって」

 

 花園の言葉に対して、「どういう意味だこら」と反論すると、クスッと笑った。やっぱり、一緒に居ると少し調子狂うな。沙綾程ではないけど。

 

「じゃあ、そろそろ行くな。戸山達にも謝らないといけないし」

 

「わかった。また放課後ね」

 

 軽く「おう」と返事を返し、背を向けて走り出そうとしたが、花園の話はまだ終わってなかったらしい。

 

「やっぱり、名前で呼んでくれたら許す」

 

「はぁ? それとこれとは──」

 

 そこまで言いかけたが、言葉を止めた。いつまでも恥ずかしいからって逃げるわけにもいかない。コミュ障とかそういう場合じゃないしな。向こうが呼んでほしいって言ってくれるんだし。

 

「わかった。じゃあ……たえ? いや、なんかしっくり来ない。おたえでどうだ?」

 

「名前で呼んでくれるなら、なんでも」

 

「そっか。なら、おたえで」 

 

「うん」

 

 今度こそおたえと別れて、戸山達とバッタリ会う場所に向かった。全力疾走すれば間に合う………はずだ。

 

 

 

 

 今日は走ってばっかだな……。

 

 

 

 

 

 

 途中何度か歩いたりしたけどなんとかたどり着いた……はいいけど、誰も居ない。少し早く来すぎたのだろう。走ってきたから当然だろうけど、額から汗が流れて頬を伝った。ブレザーを脱いで両腕の袖を捲って汗を拭う。

 

 あ、暑い……。まだ梅雨にすら入ってないのにこのじめじめ感。今年の梅雨は厄介そうだな。

 

 まだ誰も来る気配がないと思い右ポケットからスマホを取り出した。脇のボタンを押して、画面を点ける。ロック画面にパスワードを打ち込んで解除した。

 

 twisterを起動すると通知覧にたくさんの通知が来てるのを確認し、タイムラインを眺めながら下にフリックしていく。音楽やバンドの情報が多く入ってくる。手早くアカウントを普段使っている方に切り替えた。

 

 普段使ってる方は同級生とかの呟きが主だ。今日も学校めんどくさいなのどの呟きが多い。多すぎてこっちがめんどくさい気分になってくる程。

 

 一通り確認し終え画面を消して右ポケットにしまった。ふと右側を見ると、牛込さんが俺のことを見ていた。

 

 とりあえず「おはよう」と挨拶をすると、ワタワタしながら牛込さんは挨拶を返してくれた。

 

「お、おはよう…。どうして…ここに?」

 

 いつも途中で会うからそうなるのも当然だよな。

 

「謝りに来たんだ。この間のことを」

 

 率直に要件だけを伝えた。牛込さんは納得してくれた様子で、「そ、そうなんだ」と言ってくれたが、なにやら何かを言いたげな表情に変わった。

 

「どうかした?」

 

「ううん。神山君って、律儀なんだな~って思っただけだよ?」

 

「それ、おたえにも言われたよ……。俺ってそんなに謝らない人に見える?」

 

 2人に言われるとこう……なんか不安になるよ全く。・・・・・今度から何かある度に謝ろうかな。いや、それだとすぐに謝れば許してもらえると思ってるクソ野郎になってしまう。それは避けないと。

 

「今、おたえちゃんのこと名前で……」

 

「ん? まぁ…いろいろあってね。ここに来る前に先におたえに謝りに行ったら、許して欲しかったら名前で呼ぶことって言われたから」

 

 内容をかなり省いて説明するとクスクスと笑いながら「おたえちゃんらしいね」と言った。どっちかと言えば沙綾みたいなんだけどな。何かにつけて名前で呼ばせようとしてくる所は。

 

 おっと、こんなことしてる場合じゃない。

 

「この間はすまなかった。ちょっと……いや。かなりどうかしてたから」

 

 おたえに謝った時と同様に頭を下げる。すると、慌てた様子で牛込さんは止めてきた。

 

「えっ? えっ? 大丈夫だよ! 私も気にしてないから!」

 

 なんで…みんなこうも優しいのだろうか。その優しさに触れる度に心が締め付けられる気分になる。

 

 ゆっくりと頭をあげると落ち着きを取り戻して牛込さんは微笑んで言ってくれた。

 

「私の方こそ、いつもイライラさせるようなことしてごめんね?」

 

 違う。なんで牛込さんが……謝ってるんだ? 悪いのは──

 

「そんなことない。人には人のペースってものがある。牛込さんにイライラしたことなんて1回もない。むしろ関心するよ。俺の出した練習メニューを予定通りにこなしてくれるから、むしろ助かってる」

 

 文句1つ言わないで練習メニューをこなしてくるところか、次にやろうと思ってた所まで出来るようにしてくる時があったから驚いた。たまにバンドのことを話したりするけど、凄い楽しそうに話してくれるし、イライラしたことなんて一度もない。

 

「そう…なの?」

 

「もちろん。だから、謝るのはこっちだ」

 

「うん。もちろん許してあげるよ。じゃあ……私達も名前で呼ばない? でも! 嫌なら大丈夫だから」

 

 またか。でも、すぐに思考を切り替える。普段からあんまり俺に対して話かけてこない牛込さんと仲良くなるチャンスだ。彼女だって勇気を出して言ってくれたみたいだし。

 

「こちらこそ、よろしく。……りみ」

 

「うん! 恵くん」

 

 若干、いや。結構恥ずかしいけどなんとか名前で呼んでみた。少しは仲良いいとは言え1人の女の子を名前で呼ぶのはどこか恥ずかしい。

 

 恥ずかしさを隠すために後頭部をポリポリとかいていると、一番謝らなくてはいけないであろう戸山の声が聞こえてきた。

 

「あれ? けーちゃんがなんでここに?」

 

「戸山……。あからさまに嫌な顔しないでくれるか? 有咲」

 

 戸山の隣で言葉の通り嫌そうな顔で立っている有咲。視線だけで殺されそうな勢いだ。

 

「なにしに来たわけ? おさぼり最低野郎さん」

 

 なんか凄いランク下がってるな………。それはどこのランクに属するものなのかは不明。多分下からいくつとか言うレベルかな。

 

「謝りにきた。もちろん有咲にも。戸山にも」

 

 2人に謝った時と同様に頭を下げて謝っ────

 

「ごめんね!」

 

「は? えっ、えっと………」

 

 あまりの出来事に一瞬思考が停止した。俺が謝るはずなのに、俺が謝られてるという状況。

 

 何だろう……やっぱり戸山は予想の斜め上をいく。

 

「なんで戸山が謝るんだよ。悪いのは俺なのに」

 

「ううん……私がクライブに誘ったのがいけないの……。勉強と練習メニュー考えるので忙しいのに、一緒にライブしようって誘ったから……辛い思いさせちゃって」

 

 そんなこと…考えてたのか戸山は。本当は気にするはずなんてないのに。誘いを受けた俺が悪いのに。それでも戸山は自分が悪いと謝ってくれた。

 

「違う。勝手に引き受けたのは俺で」

 

「違わないよ。中学の時からそうだったよね? けーちゃんは。……テスト近い時にいつも勉強教えてくれたし、文句は言うけど最後は引き受けてくれるから……クライブも、もしかしたらって」

 

 確かに文句はいいつも必ずと言って良いほど最終的には引き受けていた。でも……今回は違う。勝手な意気込みだけで引き受けた。だから悪いのは──

 

「バカ。なんでお前が謝るんだよ……。悪いのは全部俺なんだから、謝るのは──」

 

「違う! 悪いのは私だよ!」

 

「違うって! この状況で謝るか普通! 謝りに来てるんだよこっちは!」

 

 お互い引かないわけのわからない言い合いの中、有咲が呆れた声を上げた。

 

「なんで喧嘩してんだよ。つうかなんの喧嘩?」

 

「そうなんだよ。あーー俺が言うのもなんだけど、アホらしくなってきたわ」

 

 本当はアホらしくなってはいけないんだろうけど、こんなやりとりしていればそうなってもおかしくはない。現にそうなってるし。

 

「2人共、話脱線しちゃってるよー」

 

「そうだね~。なんの話だっけ?」と笑いながら言う戸山。

 

 謝りに来たんだよ。・・・・・なにをだっけ? 違う違う。この前の冷たい態度をとったことを謝りにきたんだよ。

 

 謝る内容を忘れかけてしまうほど、熱くなってしまったらしい。

 

「アホらし。早く学校行こ」

 

 有咲は呆れて1人歩き始めてしまった。そのあとを追うように戸山とりみが歩き始める。すると、3人の後ろ姿を眺めるように見ていると戸山が振り返った。

 

「早く! 早くー! 学校遅れちゃうよ?!」

 

 こんなどうしようもない俺に戸山は、なんのわだかまりもなく声をかけてくれる。本当にお前ってやつは。

 

「今、行く」

 

 軽く走って有咲の隣に並んで歩き始めた。いつもの嫌そうな表情の有咲。たまに話を振られると変わらず少しツンが強い言い方で返事を返す。

 

 りみは戸山といつも楽しそうに話してる。有咲と話しているときは俺とも話したりするのがいつもの感じだ。

 

 本当にここに戻ってきて正解なかは正直わからない。だけど……りみは……有咲は…どうだろう。でも、“香澄”は受け入れてくれた。今はそれだけで十分だ。

 

「これからもよろしくな。その……香澄」

 

 なんとか顔を見ながら言った。すると香澄はいつもの変わらない笑顔を浮かべて───

 

「うん! よろしくね! けーちゃん!」

 

 って、言ってくれた。

 

 香澄、りみ、おたえに出会わせてくれた神様には……感謝だな。あと徹か。あいつは腐れ縁だからいっか。

 

 俺、りみ、香澄、有咲の順番で横一列並んで歩いていると香澄が俺に向かって話かけてきた。

 

「やっぱけーちゃんって律儀な人なんだね」

 

「それなんなんだ? りみにもおたえにも言われたんだけど………」

 

 すると1人だけあからさまにヤバいみたいな表情をする人が居た。香澄の隣に居るツンデレ少女。

 

 こいつが犯人か。一体何を吹き込みやがった。

 

「有咲さーん。顔がヤバいみたいな表情に──」

 

「なってねぇし、知らねぇ」

 

 いや、まだなんも言ってないんすけど………。

 

「有咲が、けーちゃんはこういう時は絶対に謝らないって言ってたんだっけ?」

 

「う、うん」

 

 香澄がりみに訪ねると申し訳なさそうに頷いた。そうだ。それでいいんだりみよ。正直が一番だ。

 

「犯人はお前か」

 

「はいー? 一体なんのことやらさっぱりですー」

 

 この野郎……。そっちがその気ならこっちだって……。

 

「おい、とぼけるな。金髪ツンデレ少女」

 

「はぁー?! キモイからその言い方やめてよね!」

 

「じゃあ、正直に白状しろ! お前か? お前が言ったのか? 神山恵は謝らない適当な奴だって!」

 

「適当とは言ってないですー! クソ野郎って言いましたー!」

 

「どっちにしろダメなんだよ! これだから蔵弁慶は!!」

 

「なっ! お前も同じようなものだろ!!」

 

 こうして俺と有咲の絶えない口喧嘩が始まった。

 

「仲良いよね~。2人共」

 

 不意にりみが言うが、いつものお決まりの───

 

「「仲良くねぇ!!」」

 

 ハモリ。

 

 なんなんだろう。有咲とは仲を戻したいけど……あそこまで言われると───

 

「(なんなんだよ。ホントムカつく。あそこまで言われると───)」

 

 

 

 負けたくない

「(負けたくない)」

 

 

 

───────☆

 

「はっくしゅん!!」

 

 なんだなんだ? このくしゃみは。まさか!! どこで可愛い子が俺の噂を?! やっぱ…オレも捨てたもんじゃないってことか。

 

 ネクタイを締め直していつもの通学路を1人寂しく歩いた。

 

 恵~最近朝居なくて寂しいんだけど~。

 

 




仲直りしたいのに、喧嘩をしてしまうという関係は相変わらずですはい。有咲にはまだ謝ってない主人公ですが、それは個人回でやろうと思います。そろそろお気に入り400突破しそうなので(^_^)

感想、評価お待ちしております!

それではまた次回!
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