BanG Dream!~あの時の約束~完結   作:レイハントン

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こんにちは。

おかげさまで、日間ランキング25位にランクインしました!! 高評価くれた方本当にありがとうございます!

今回はお気に入り減るかも………というより、前回すごいお気に入り増えて嬉しかったです(^_^) 話を戻すと、とうとうあの人と決着がつきます。

それではどうぞ。

※恵「唐突ですがTwitter始めました。探してみてね~」
 8月27日(日)



25.分かり合うために

 蔵に着くなり香澄は机にノートを広げて消しゴムで文字を消し始めた。よっぽど悔しかったのか目尻には涙が浮かんでいる。

 

「香澄ちゃん………」

 

 心配そうに声をかけるりみだったが、香澄はなにも言わずにひたすらノートに文字を書き続けている。みんなどんな言葉をかければいいのかわからず、見守るしか出来なかった。こういう時なんか言ってやる方がいいのかもだけど今の香澄にはどのみち聞いてくれないだろうな。

 

「今日はどうする? 香澄こんな調子だけど」

 

「やるしかなくね? 明日本番だし」

 

 有咲の言うとおり明日は文化祭当日。………当日前にこんなことが起きて大丈夫か? 最近こんなんばっかだな。俺も問題起こした人だからなんとも言えんが。

 

 机に向かう香澄をチラッと見て「それもそうか」と返した。

 

「香澄。練習やれるか?」

 

「……うん。やるよ。明日ライブだし」

 

 そう言う香澄の表情は目尻に涙が浮かんでるもののやる気に満ちていた。俺はそんな表情を見てある考えが浮かんだ。それは無謀とも言えるし、出来るかもわからない。だけど………それでもやるしかない。

 

「わかった。ドラムは俺が叩く。練習の時だけな」

 

「なんでそうなるわけ?」

 

 不思議に思った有咲が不機嫌そうに聞いてくる。そんなに嫌ですか……俺のドラムは。せっかく練習してるのにさ。

 

「そうなるからそうなるの。とっとと始めるぞ」

 

 香澄の事だ。まだ沙綾のことは諦めてないはず。沙綾が一緒にライブする時のイメージをつけてもらわないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 明日の文化祭のライブのこともあって香澄を練習に参加させた。どこか上の空になるかもって思ってたけど、いつもよりやる気に満ちてたのような気がする。あいつはまだ諦めてないんだろう……沙綾とライブするのを。改めてそれがわかった瞬間でもあった。

 

「じゃあ、わたし達は1回帰るね」

 

「おう。俺はもう少し残る」

 

 明日のライブの練習時間が足りないので、おたえとりみと香澄は泊まることにしたらしい。俺は遅くまで残ることにした。どうせ帰ってもやることねぇし。それに………終わったらすぐになにやら書き始める香澄を置いていけないしな。全く世話の焼けるやつだ。

 

「あからさまに嫌そうな顔しないでもらえますかー有咲さーん」

 

「別にしてませんけど。普通に嫌なんですけど」

 

「普通とかやめてくんない?」

 

 その様子を見たりみは荷物を持って、苦笑いしながら言った。

 

「わかった。また後でね」

 

「また後でな。2人とも」

 

「「じゃあねー」」

 

 おたえとりみを送り出した俺は香澄の横に座った。有咲は一旦家に戻ると言って蔵を出て行った。さっきからなにも喋らずもくもくとノートに文字を書き続けて───いない。何にも思いつかないのか、手が止まっている。

 

「何にも思いつかないのかよ……」

 

「違うもん。書きたいことが多すぎて悩んでるだけだもん」

 

 なんだそれ……。

 

 チラッとノートを見ると文章がたくさん書かれていた。見ただけでだいたいわかる。香澄は今、沙綾に手紙を書いているのだろう。

 

「手紙か?」

 

 無言で首を振られた。

 

 違うのかい。さっきの言葉恥ずかしっ!

 

「んじゃ、歌詞か?」

 

「………うん」

 

 毎回というか、今回もそうだけど、香澄はなぜここまで人のために動こうとするのだろうか。普段の姿を見ているとわけわからんこと言ったりもするし、一度言ったのにすぐ忘れるとか結構なポンコツっぷりだけど………。

 

「私の気持ち。沙綾にちゃんと伝えたいから」

 

 そう言う香澄の言葉は震えていた。よく見ると目尻に涙が光っている。その涙は頬を伝って机にポツリと落ちた。

 

「あれ? なんでだろう……なんで、私…泣いてるんだろう」

 

「香澄………」

 

 横で1人泣きながら沙綾に手紙を書いている香澄。このシーンだけ見ていると引っ越しかもうすぐ死ぬから手紙書いてるみたいじゃん。

 

 そんなことはどうでも良い。俺は泣きながら手紙を書く香澄に呼びかけた。

 

「お前の気持ちはわかる。俺だって沙綾の事が心配だ。出来ることなら助けたい」

 

 すると書く手を止めて俺に視線を向けて声を荒げてきた。

 

「違う! 違うの……」

 

 最初は声が大きかったものの、徐々に声が小さくなっていく。俯く香澄に何が違うのか訪ねる。

 

「何が違うんだ?」

 

 少しの沈黙。無音に近い空間で香澄が話してくれるのを待った。

 

「悔しいの……沙綾の気持ちに気付けなくて…迷惑かけてるのは私なのに、沙綾は……」

 

 自分の手をグッと握って涙をこらえていた。悔しい……それが香澄に引っかかっていた問題。恐らく沙綾は自分の気持ちを誰にも話したことないと思う。だから、わからなくて当然。それなのに香澄は…………。

 

「そっか。じゃあ、今は泣け。そしたら少しは気分も良くなると思うし」

 

「でも……」

 

 

 

 

 

 渋る香澄をそっと抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 やるせない気持ちの時こそ、泣いて一時でも忘れるのが経験上一番だから。あの時も沙綾にこうしてもらったし。

 

「誰にも言わないから……。な?」

 

「………うん」

 

 小さく頷くと泣き始めた。俺の背中を掴む手に力が入って服をギッュと握られる中、俺はただ黙って受け止めた。今の俺に出来るのはこれくらいだから。あとは見られてしまった時の対処法を考えておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん。もう大丈夫だよ」

 

 不安なところもあったが、おたえ達は運が良かったのか来なかった。香澄もさっきよりは元気にしていて、再び歌詞を書き始めて居る。もう心配する必要はないかな。これで安心出来る。

 

 するとちょうどおたえ達が戻ってきた。

 

「ただいまー」

 

「ここはお前の家じゃねぇぞ」

 

 おたえの挨拶にツッコンでいると有咲の罵倒が飛んできた。

 

「お前の家でもない。バカなの?」

 

 ちょっとずつ罵倒してくるようになったな有咲。そっちの方がいつも通りで助かるんだよ。何にも言われないととてもとても不安になるでござるよ。

 

「あれ? 香澄、目赤いけどどうしたの?」

 

「え? あー少し泣いただけだから気にしないで」

 

 しかしその反応がいけなかった。なにも心配ごとがない? それはとんだ間違いだった。

 

「最低だな。早く死ねよ」

 

 勘違いをしたジト目で見つめてくる有咲の冷たい冷たい言葉が飛んできた。

 

 これは……まずいぞ。

 

「待て待て。なんで俺が何かした前提で話進めてるの?」

 

「当たり前だろ」

 

「けいちゃんダメだよ」

 

「おたえまで?!」

 

 なぜ俺はここまで信用性がないのだろうか。ただ唯一信じてるのはりみだけ。

 

 おたえの隣で苦笑いしているりみに視線を向けるとそっと視線をそらされた。

 

「りみまで………」

 

「終わったなお前」

 

「ある意味な……」

 

 こうして夜は老けていった。

 

 

 

 

 

 

 香澄の着替えを取りに行くのに付き添った帰り道。俺は右手に鞄、左手にブレザーを抱えて1人寂しく暗い夜道を街頭を頼りに歩いていた。空には明るい星が数え切れない程キラキラと輝いている。

 

 星を見ると香澄と有咲のことを思い出すな。あの黄色い星のシールを追って行って、2年ぶりくらいに有咲に会った。今更だけど、可愛くなってて驚いたよ。口悪いのは相変わらずどころか、進化してたけど。

 

 香澄はすげぇな………どんな人でも分かり合えるんだから。

 

「分かり合う……か。なんで分かり合えるんだ?」

 

 そう考えた時に真っ先に思うのは、香澄はちゃんと相手の気持ちを理解しようとしていること。理解の仕方は多少強引なところもあるけど、ちゃんと気持ちを理解した上で、分かり合えている。

 

「そうだよな……相手の気持ちも知らないで、分かり合えるわけないよな」

 

 独り言を言って夜道を1人で歩いていると、ふと後ろから視線を感じた。1人で夜道。また来たのか………。

 

「お前も暇してるのか? 優衣」

 

 そう言って振り返るとニヤニヤしながらこっちを見ている優衣の姿があった。

 

「わかっちゃうんだ~。やっぱり運命の赤い糸で繋がってるのかもね」

 

 なぜだろう。この時不思議とイラつきは感じなかった。いつもならすぐに否定するところを否定しなかった。

 

「そうかもな」

 

「あれ? いつもなら否定してくるくせに」とジト目で見てくる。

 

 俺がそんな目で見られる筋合いはない。むしろ俺がジト目見る方が正しいんだぞ。

 

「答えは出た?」

 

「………一応」

 

 そう言うと優衣は再びニヤニヤし始めた。いったい何が楽しいんだか、皆目見当もつかない。なぞなぞ好きだったり。…………そんな趣味はなかったな。

 

「じゃあ、どっち? 市ヶ谷有咲か山吹沙綾」

 

 その問題に俺の出した答えは────

 

 

 

 

 

 

「どっちもだ」

 

 

 

 

 

 どうしても選べなかった。有咲か沙綾をなんて。どっちも大切な友達だから……向こうがそう思っていなかったとしても。俺は───

 

「有咲も沙綾も同じくらい大切な友達なんだ」

 

 自信を持ってそう言うと優衣の表情は明らかに変わった。さっきまでのニヤニヤ顔から一変。冷たい表情で俺を睨みつけるように見てくる。

 

「そんな答えであたしがはいそうですか……なんて言うと思った?」

 

「お前の出した問題は、沙綾か有咲、どちらかを選べ……だろ?」

 

「そうよ」

 

 その答えが聞ければ十分だ。

 

「どっちもはダメ……なんて言ってないだろ?」

 

「……っ! それはそうだけど……。そんなの屁理屈よ!」

 

 声を荒げてくる優衣に俺は一歩ずつ歩み始めた。

 

「そうだな。屁理屈って言われたらそれまでだ」

 

 一歩また一歩、歩みを止めずに進める。

 

「屁理屈を言ってでも俺はあの2人を守りたい。ただそれだけだ」

 

 あと2歩くらい歩けばぶつかる位置で止まると、優衣は逆に一歩引いた。俺はずっと逃げていたんだ。一生許せないような事をされて、優衣の気持ちなんて考える必要がないと思っていた。けど……香澄の言葉を聞いてわかったんだ。

 

 

 

 

 

 分かり合う為には相手の気持ちを理解する必要があることを。

 

 

 

 

 

「もう終わりにしよう優衣」

 

 そっと右手を差し伸べた。もうこんなことを終わりにしたい。これ以上誰かに傷ついてほしくないんだ。優衣のせいで俺と有咲みたいにすれ違ってしまう人が増えてほしくない。

 

「………なによ」

 

 声が小さくて何を言ってるのか聞き取れない。

 

「なによ!! あたしの事なんて何にもわかんないくせに。勝手にいい気にならないでよ!!」

 

 叫ぶ優衣の目尻には涙が浮かんでいた。今日、何度目見たかかわからない涙。そんな彼女に優しく声をかけた。

 

「わからないよ。言ってくれなきゃ……俺は超人じゃないんだ。優衣の気持ちは優衣にしかわからない」

 

「なんで……なんでそんなに優しくしてくれるの? あなたに……たくさん酷いことしたのに」

 

 決まってるだろそんなもん。

 

「こんな無益なことを終わらせたいからだ」

 

 笑顔でそう言うと優衣も前みたいなドス黒い笑顔じゃない、普通の……いや、花火を一緒に見た時のような笑顔で言った。

 

「………本当。バカなんだから」

 

「簡単に騙されたし、そうなのかもな」

 

 そう言うと優衣はそっと俺の手を握ってくれた。その手は冷たくて、柔らかかくて花火を見た時に握った感触とはまた違う。あの時は暖かかったような気がする。

 

 これで終わった……。たった数ヶ月だったけど、真実を知る前から始まっていたからか、俺にはとても長く感じた。これで有咲と仲直り出来るのかと言ったらそうでもない気がする。結局今の事実を有咲に隠してて、今度はなんで隠してたの? って言われそうで怖い。それに解決しないといけない問題は1つじゃない。3つから2つに減っただけだから。

 

「なぁ優衣。1つだけ頼みがあるんだけど良いか?」

 

「? 頼み?」

 

「一晩で良いんだけど……泊めてくんね?」

 

 両手を合わせて頼み込んだ。なぜ田舎に泊まろう的な感覚で今日の宿を探して居るのかと言うととてもとても簡単だ。クソ親父と喧嘩したから。マジで本当にありえねえよなあの親父。

 

「全然構わないんだけど、理由は?」

 

「それがな────」

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな。急に泊まらせてくれなんて頼んで」

 

「良いよ。助けてくれたお礼だから」

 

 理由を話したらすごい共感してくれた上に、是非泊まってとなんか歓迎された。まぁ、歓迎されないよりはすごいましだから良いんだけどな。

 

 部屋を見渡して俺はふとあることが気になった。

 

「親は居ないのか?」

 

「………うん。お母さんはあたしを産んですぐに亡くなって、お父さんは仕事ばっかりでもう1ヶ月くらい会ってない」

 

「そっか………」

 

 付き合ってた頃はそんなこと一言も言ってくれなかったから全くわからなかった。お父さんは仕事ばっかりか………それじゃあ頭がおかしくなっても仕方ない……のかな。

 

「なんで言ってくれなかったんだ? 言ってくれれば少しは何か出来たのに」

 

 俺の横に座ると首を左右に振った。

 

「知られたくなかった……。こんなあたしを」

 

 そう申し訳なさそうに言うと、いきなり俺に背を向けて座った。いったいなにをするのかと思っていると、制服を脱ぎ始めたのだ。

 

「なっ?! おまっ! なに脱いで───」

 

「良いから! ………今は見て?」

 

 言葉を遮って寂しそうな声で言う。心臓が早鐘のように動いてる中、制服を上だけ脱いだ優衣。真っ白な下着が露わになるのと同時に絶句した。

 

「お、お前……それ」

 

 下着を見て興奮してるとかじゃない。それ以上に優衣の背中にはたくさん痛々しい痣が出来ていたのだ。

 

「最近は…ないんだけど、中学1年生の頃からお父さんに殴られたりしてね………出来たの」

 

 言葉が出てこなかった。こんな状態で俺と付き合ってたのか。それに二股とかも………。

 

「本当は二股なんかしてないの………全部誰かに流された噂。友達の男の人と遊んでただけなのに、二股してるとか噂になって……」

 

 そこまで言うと優衣の声が震え始めた。その涙は演技かもしれない……また騙されるかもしれない。それでも俺は……今の自分の気持ちを信じる。

 

「もういい。何も言うな……辛かったよな?」

 

「………うん」

 

 小さな声で頷く。小刻みに震えている優衣に俺はそっと花女の制服をかけてあげた。

 

 人にはいろいろ抱えているものがある。嫉妬や怒り、憎しみ、辛いことや嬉しかったこと、悲しいこと。たくさん抱えて生きている。俺も同じだ。だから、共感出来るところがあるとなんか嬉しい。

 

「だから……どうしてもこの気持ちを分かり合える人が欲しかったの」

 

「それが俺なのか……」

 

「………だけど、頭がおかしかったあたしには最低な事しか思いつかなかった……」

 

 それで俺と有咲にあんなことをしたって言うのか? 自分の私利私欲の為に俺と有咲を………。そっか、わかんないよな。こんなおかしい生活してれば人間いかれる。

 

 俺はそっと優衣を後ろから抱きしめた。なんで1日に女の子を2回も抱きしめてるのだろうか俺は。………今はいいか。そんなこと。

 

 帰る場所がない者同士、この日は優衣の家に泊まった。もちろん変なことはしてないし、出来ない。生憎、そんな度胸は持ち合わせてないからだ。明日みんなになんて言い訳しようかな…………。

 




優衣の過去話でしたね。なぜ主人公があのような行動に出たのか……それがわかるのは次回です。

そして残り2話です。

感想、評価等待ってますのでどしどしお送りください!

それではまた次回。
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