BanG Dream!~あの時の約束~完結 作:レイハントン
ここに来たのは2年ぶりだ。そういえばあの時は道に迷ってここにたどり着いたんだっけ。そんで両壁に星のシールが沢山貼ってある所を通ると・・・・・。
ふと隣を見るとそこには戸山の姿はなかった。慌てて周りを見渡す。しかし姿は確認出来ない。
「とや──、ちょ! おまっ! そっちは!」
すでに戸山は星のシールが輝く道に入っていった後だった。そっち行ったら不法侵入になるぞー!! って聞いてないか。声にすら出してないし……。
どうする。連れ戻すか? でも敷地に入って有咲に見つかったらえらいことになるのは目に見えてる。かと言って放っておくわけにもいかない。
どうするか悩む。危険を犯してでも戸山を連れ戻しに行くか。それとも待つか。
「…………あー! もう! めんどくせえ! 考えるのはやめだ!」
逃げてばかりはいられない。有咲に会うのが怖いとか、どうすればいいとか、考えるのはその時だ。
俺も戸山を追いかけるように星のシールが沢山貼ってある道に入っていった。
少し走ると市ヶ谷家の蔵が見える。扉の前には戸山が中を覗いていた。
「戸山ー!」
「ねえねえ、神山君。見て見て」
「ここ人の家の敷地内だ。さっさと出るぞ」
「いいからいいから! あれ!」
仕方なく、中を覗くように見る。戸山が指を指してるのが、目に入った。
それは黒いケースに大きな星と小さな星が描かれているケース。
「あれが気になるのか?」
「うん」
中に一歩踏み出そうとした瞬間───
「両手を上げろ!」
───来てしまった………。間に合わなかったか~。なんで戸山は素直に両手をピーンと上げてるんだよ。
後ろに振り返ると案の定、そこには盆栽を手入れするのに使うハサミを持った有咲。
「簡単に見つかるとは、とんだ素人と大バカだな。初犯と常習犯?」
なんで俺まで犯罪者になってるんだ? あっ、不法侵入。つうか俺は常習犯とか完全に何回もやってるみたいじゃん。
「す、すいません! これ見つけて!」
「両手ー! そっちのお前も!」
振り返る時に両手を下ろしていた戸山だったが、有咲に注意され再び両手をピーンと上げる。
そんなんで両手を上げるわけがないだろ。そこのバカさは変わらないな。
すると有咲はスーッと俺にハサミを無言で向けてきた。そして俺も無言で両手を上げる。
「名前ー!」
「はい! 戸山香澄です!」
「神山恵です」
「お前には聞いてない。口開けんな気持ち悪い」
ひでえ……。そろそろ帰りたいわ……。
俺に見向きもせずに話を進める有咲。完全に相手のペースだ。
「それ本名? 偽名使ってんなら───止めるよ」
意味深な言葉と共にハサミを構える有咲。多分捕まえるとかそういう意味だろ? 息の根止めるとかじゃないはず……。
「そっちは本当に止めてやるけど」
「俺だけ対応おかしくないか?」
「うっさい、黙れ」
当たりが強いとか言うレベルじゃねえ。常にナイフとか銃弾浴びさせられてる感じだ。俺のメンタルはもうズタズタよ。
「お泊まり?」
「違う!」
一歩前に出てそう言う有咲。
こいつは空気読めないのか? どこに止めるが泊めるになるんだよ。てか、犯罪者を家に泊めるとかアホの極みだろ。
すると戸山の制服を見て一瞬動揺したのを見逃さなかった。
「うっ……花女……。うちの生徒か……」
「えっ?! 同じ学校? 何年生~?」
顔を隠しながら「違う!」と否定する有咲だっが、どこも違わない。有咲は間違いなく花女の生徒のはずだ。
「違わないだろ」
「歳近いよね?!」
「うっさい! もぉ~出てって! 質屋はあっち! こっちは全部ゴミ! ついでにお前はここに残れ!」
戸山の手を掴んで引っ張りながら、次々と俺に暴言という暴言を吐きながら物事を進める。
ここに残れってことは俺もゴミになれと。そう言うのか有咲は。とうとう有咲の中ではゴミになったか俺よ。
「あれも?」
「はぁ?」
「あの星の」
戸山が言ってるのは一際目立つあの星が描かれてるケースの事だろう。そこまで言うってことはよっぽど気になってるんだな。
「質流れのギターかなんかでしょ?」
「見ていい?」
少し有咲に距離を詰める戸山。
「はぁ?」
「触っていい?」
そしてまた少し。
「お前な~」
「ちょっとだけー! ちょっとだけー!」
「伸びる! 伸びるー!」
とうとう服を掴まれ有咲を揺すり始めた。
凄い……あそこまで有咲が押されてるとは。戸山香澄……恐ろしいな。
結局戸山の押しに負けた有咲はそのケースの中身を見せることにした。最初っからそうしてれば、あんなことされずに済んだのにな。
「はぁー、触ったら出てってよー」
「う、うん」
「それとお前は早く出てけ。1秒でも早く」
「へぇ~こりゃすげえな」
「人の話聞けよ!」
いちいち反応してたらキリがないので一旦スルー。
ケースを開けるとそこには赤い綺麗なギターがあった。状態からしてそんな古くもない。それに目立った傷も見当たらなかった。
「星のギター………」
「これどっかで見たことあるんだよな~。・・・・ダメだ思いだせん」
その赤いギターを持ち上げて弦を軽く弾いた。すると小さな音が鳴る。
「鳴った…。凄い! 聞こえた?!」
「聞こえた聞こえた」
「ちっさ」
「そりゃあ軽く弾いたからな」
その後も楽しそうに弾く戸山。お世辞にも上手いとは言えない音が響く。だけど、弾いてる本人は凄く楽しそうだ。
まるであの時、1度だけ出会った少女のように。あの子は今でもギターやってるのかな?
「はい。終わり」
「え?! 待って! もうちょっとー」
「終わりっつったろ!」
「もうちょっと! もうちょっと!」
必死にだだをこねる戸山。
どんだけそのギター弾きたいんだよ……。もっと他に弾くとこあるだろ。
「そんなに弾きたいなら、楽器屋さんとかライブハウス行けよ!」
それはごもっともです。そしてその言葉で思いついたのか、戸山がなにかを閃いたような表情をする。嫌な予感しかしねえ。
「ライブハウス?! どこにあるの?」
「知らねーよ!」
「わかった! 探してくる!」
そして戸山はこの場からギターを持って出て行ってしまった。それを唖然と見送る有咲。
いや……たった今犯罪犯しましたよ戸山さん。
「ど、ドロボー!!」
「気付くの遅っ! つうか鞄置いていってるし!」
「お前は早く出ていけ! それとあのギター取り戻してこい!」
「やだよ、めんどくせえ。自分で行け自分で」
「うざっ」
結局悪態をつきながらも戸山を追って蔵を出て行った。俺も戸山の鞄を持って蔵を出ようとした──がしかし、出る直前にドアが閉まって直撃した。
今度は物理的かよ………。随分暴力的になったな有咲。
夕焼け子やけの時間帯。それはもうオレンジ色の世界。こんなに綺麗な夕方は初めてみた。そんな中、星のギターを嬉しそうに抱えて歩く戸山。その袖を掴みながら隣を歩く有咲。俺は2人の後ろにいる。
「どこ?」
「うるさい。ググってるから」
「ここら辺のライブハウスつったらあれしかないだろ。場所は知らんが」
「なんだよ、使えねえな。わかってたけど」
わかってるなら言うなよ……。
「私が居なかったら本当に泥棒だよ? わかってる?」
「うん!」
それはわかってない人のセリフですねわかります。有咲もめんどうな奴に捕まったな。もう逃げ道なんてないから諦めろ。
戸山と出会って少しでも話したら、強制的に友達というランクに上がってしまうのです。
それでも案内する優しい所は未だに変わらずか。
「はぁー。なんで私が……」
有咲の案内に付いていき、曲がり角を曲がる。そこには人が行列を作っている建物があった。
「あった」
「あそこ? やったー!」
「あ! ちょっと!」
ライブハウスを見つけたなり、戸山は走り始めた。袖を掴んでいる有咲も自ずと走ることになる。
走るな走るな。ライブハウスは逃げねえよ………入れるかは知らんけど。
列の最後に並ぶ。ちょうどライブハウスの名前が大きく書いてあった。
「ライブハウス……
「ここって確か、グリグリとかがよくライブしてる所だろ?」
「知らねえよ」
冷たい態度でも気にせず話す。気にしたら負けだからだ。
すると前に並んでいた女の子2人がひそひそと話始めた。
「どこかのバンドの人かな?」
「聞いてみたら?」
その様子を全くと言っていいほど聞いてない戸山。正反対に有咲は右手で顔を隠している。
そりゃバンドでもねえのに、そんなこと言われたら気にするよな。俺はあんまり気にしないけど。
しばらく待つとようやくライブハウスの中に入れた。
「次の方どうぞー」
「はい! こんばんは」
「こんばんは」
戸山の挨拶に店員さんは笑顔で返す。周りの人たちはみんな不思議な目で見てくる。
声を大にして言いたい。バンドじゃないですよー! って。
「ギター弾きたいんですけど」
「え? あ~えーっと」
戸山の言葉で対応に困る店員さん。いや、ここでギター弾けないだろ。それを注意しようかと思ったが、それで簡単に止まる戸山じゃない。
「やっぱ無理なんだって。お前からもなんか言えよ!」
「いやだって、言っても聞かないんだぞ。あのな────」
「ここは練習スタジオじゃないよ」
仕方なく出来ないことを戸山に伝えようとするが、横からの声に遮られた。いかにも優しくなさそうな人だな~。冷たいって言葉が似合いそうだ。
「オーナー!」
オーナーかい………。
「ステージに上がれるのはオーディションに合格した奴だけだ」
「そう…ですか……」
「ほらやっぱりダメだって。帰ろうよー」
落ち込む戸山に帰ろうと促す。するとオーナーがある提案をしてきた。
「見てくかい? ライブ」
「やばいって! なんか頭振ったりすんだよー!」
「それ違う。バンドだけど、違う。たぶんここではもっと普通のやるはずだ」
いったい有咲はなにと間違ってるんだ? ヘビィメタしか考えられないんだけど……。
「高校生かい?」
「違いますー」
素直に高校生って言えよ……どこで意地張ってるんだこいつは。高校生だと料金変わるから聞いてくるんだろ?
「1200円」
高っ! 意外とするな。
「あの……高校生ダメですか?」
「……600円」
「えぇーー!」
ほら見ろ。ここは変な意地張らずに高校生って言えばいいんだよ。
「あっ、俺もです」
しかしそう簡単に高校生として通してはくれない。なぜなら……。
「あっ、こいつは犯罪者なので刑務所送ってください」
「おまっ! やめろそういうの」
結局高校生料金を払って中にようやく入れた。なにが悲しくて刑務所行かないといけないんだよ。
誤解を解くのに結構時間掛かったのは言うまでもない。
「はぁ~。凄いね!」
「いや、まだライブ始まってないぞ」
「ガールズバンドの聖地? なんでこんなとこが」
「文句言ったってしょうがねえだろ…………」
「うっさい。なにさっきから普通に話掛けてるんだよ」
今更だなおい。さっきから普通に棘がある会話してただろうに。今日は早く寝よ。
ライブステージのある部屋に移動すると、そこには人が溢れかえっていた。さすがガールズバンドの聖地と言うだけある。
「みんなライブ見にきた人?」
「それ以外になに見にくると思ってるんだ?」
「なんでこんな人居んの?」
確かに人は沢山居る。周りがみんな女子で俺だけ浮いてるし。ほら、あそこ絶対なんで男子居るの? とか思ってるよ。
「お前なんで居るの? 浮いてるな。場違いなんじゃねえの」
「なんでお前が他の女子の気持ち代弁してるんだよ」
あながち間違ってはいないだろう。だけどガールズバンドというのがどのようなものなのかはかなり気になる。
「知らないバンドばっか」
「凄いね!」
まだ始まってないって……。すると部屋が暗くなりライトがステージを照らした。それと同時に周りがざわつき始める。
そして───
「なるほどな。すげえ人気ってわけか」
ステージに4人の女子が綺麗な衣装を着て上がってきた。それと同時に歓声が一気に上がる。耳を塞ぎたくなる程だ。
「可愛い!」
「Glitter Green」
「そういうバンドなんだ!」
俺も弾いたことがあるバンドのグループ。人気なのは前から知ってたけど、ここまでとは……。
「SPACE! 遊ぶ準備は出来てますかーー?!」
再び歓声が上がる。そろそろ頭が痛くなりそうだ。その歓声が鳴り止むことはない。
「OK! いっくよー!」
そして───運命が加速する。
グリグリのライブが始まった。さっきまで歓声だった声がコールへと変わる。聞きに来ている人は曲に集中するだろう。
俺は自然とギターの手の動きや、ドラムの動き、キーボードの音を聞いたりしていた。動画で聞いた演奏とはまるで違う。じかに聞くライブ。どこから湧き上がるもの。
しかしあまりの音の大きさに有咲は耳を塞いでいた。まあ、それは仕方ないだろう。
「凄い! 凄いね!」
戸山はいつもより大きな声で有咲に話し掛ける。しかし聞こえていない。近くに居る俺でも微かにしか聞こえない。
「は? なに? 聞こえない!」
「凄いね! ね!」
有咲だけでなく俺にも同意を求めてくる。素直に頷いた。戸山が向ける視線はいつも本人が言っている、キラキラした視線。
ライブは、曲がサビに向かっていくに連れて盛り上がりが増していく。
歌の音程もあってる。ギターもこなしていて、ドラム、キーボード、ベース。全部が全部、完璧に近いんじゃないかと思える程の演奏。お父さんもガールズバンドで、女子高生にしては頑張ってるなと言っていた記憶がある。
俺なんて誉められたことないのに……。いつもダメ出しばっかり、挙げ句の果てにバンドについて語り始めるし。
少しだけ嫉妬した………だけどその理由も頷ける。
「凄い……凄い……凄い!」
隣で戸山は周りと同じように興奮している。なにか言いながら。
いや聞こえないんですよね~。ライブの音が凄すぎて! 今全力で有咲に謝っても聞こえないくらいに!!
「これだ……! これだ!!」
今度ははっきりと聞こえた。
この発言がのちのち、ああなるとは微塵も思っていなかった。
どうでしょうか?
少しもマシにならない2人の関係。果たして恵は乗り越える事が出来るのか……? 次回は少しずつ2話に入って、恵と優衣の間の決着が付くかと思います。様々な問題を抱える主人公を応援してあげてください。
お気に入り登録してくれた方々、ありがとうございます!!
高評価くださった、わにがみさん、立石皓一さん、深深さん、コープさんありがとうございます!!m(_ _)m
ではまた次回