BanG Dream!~あの時の約束~完結 作:レイハントン
夜。自分の部屋のベッドで寝転がっていると、予告通りに山吹から連絡があった。
『電話の方が早いからここに連絡してくれる?』
という連絡とalmondのIDが送られてきた。わかったと返事を返しそのIDをalmondを開き打ち込む。するとすぐに山吹とわかる名前が出てきた。これで山吹じゃなかったら笑える。
登録したと送るとすぐに電話が掛かってきた。女子と電話するのはこれで2人目だけど、要件が違い過ぎる。
『もしもし』
「もしもし。で、あそこで話せない事ってなんだ?」
『うん。中1の最初の方かな。姫川さんに二股疑惑が上がったのは』
俺は電話越しで聞いたが、とても信じられる話じゃなかった。かなり長くなったので、要約する。
まずは優衣が他校の生徒と付き合っていたそうだ。それが他の中学校にも伸びていき、結果二股になったらしい。
そもそも中1で二股をしようなんて思うのだろうか。それは本人に聞くしかない。もう訳がわからん。
『ごめんね、急にこんな話して。でも神山君に辛い思いしてほしくなかったから』
「そうか。………お礼を言うのはこっちだよ。サンキューな山吹」
『うん』
それを境に電話を終了した。通話時間はまさかの2時間。時刻は10時を回っていた。スマホを充電器に挿し、ベッドに横になる。
じっと天井を見つめる。
複雑な気持ちで胸が一杯だ。今まで優衣と過ごしてきた時間はなんなんだ? ただのゴミか? あっちにとっては。あの時優しくしてくれたのだって、演技なのか? わからない事だらけで頭が回らん。
今日はもう寝よ。
俺はそのまま目を瞑った………。
早朝。こんな朝早くから起こされたのは初めてだ。それに家の中に入れる母親もどうかしてると思う。それと昨日の夜の事で頭が一杯なのもある。だから俺は少し機嫌が悪い。
「お前こんな時間からなにしてんだよ」
若干機嫌が悪い感を表に出すが、戸山はアホなのかバカなのか察しが悪いのか知らんが、全く気にせずに俺の部屋の前で喋ってる。
「有咲の家行きたいんだけど、道わからなくて。それで神山君と一緒に行こうって思ったの」
話を聞かず俺は自分の部屋の扉を閉める。
バカなのも大概にしてほしい。昨日あれだけ文句を言われたのに、また会えと? 俺にはそんなメンタル生憎持ち合わせてない。
言い出したら止まらない主義なんだろう。戸山は諦めることなく扉を叩く。
「ねえ~出てきてよ~。」
昨日の一件以来、戸山はバンドにもの凄くはまったらしいな。そして出会ってすぐの有咲を誘うとはなかなかコミュ力高い。高すぎてもあれだとは思うけど。
そして朝早くに市ヶ谷家に来た訳だが、いったい戸山はなにをする気なんだ?
「行こう」
「え? マジ言ってるの?」
「もちろん!」
有咲の家に突撃した俺と戸山。それを快く受け入れてくれた有咲のばあちゃん。変わらないんだな……優しいところは。
居間に案内され、戸山は鞄を置くと有咲の部屋の場所を聞くなり上に上がっていった。
そして俺はあの時の自分に言いたい。朝早くに来られるのがどんだけクソ迷惑か。それと人の部屋に勝手に入るのも。
今戸山が有咲の部屋にいってるけど、あいつ人の迷惑考えたことあるのか? マジで迷惑だぞ。人の貴重な朝の時間を奪うのは。・・・・人のこと言えないわ。
「久しぶりね。2年ぶりくらいかしら」
「そうなりますね。お元気でなによりです」
有咲とは違い、いつもと変わらない態度で俺に接してくれる。………知ってるのかな……。俺と有咲の仲は今最悪ってことを。それに急に来なくなっちまったから、心配掛けたかな?
「急に来なくなったから心配してたのよ」
「あー。すいません。ちょっといろいろありまして」
「そうかい、そうかい」
ばあちゃんがそう言うと2階から叫び声と物音が聞こえた。
やらかしたな……戸山。寝てる時に邪魔すると怒るんだよあいつ。あっ、言ってやれば良かったか?
「朝ご飯食べる?」
「いや、大丈夫です」
「そう? それと前みたいに話していいのよ」
「あ、はい」
ごめん……それが出来るかはわからないや。ばあちゃん。もうあの時のグイグイ行ける俺じゃないから。
すると戸山が2階から降りてきた。
「怒られちゃった」
「当たり前だろ。アホかお前は」
「あっちゃんは怒んなかったよ」
「それはあっちゃんだからだろ? 有咲が怒らないとは限らない。・・・・・つうかあっちゃんって誰だよ」
「私の妹!」
妹かーい。いきなり知らない名前出すの止めてくれませんかね。それじゃあ徹と一緒だぞ。
「こんなに早く来て、朝ご飯食べたの?」
「まだです」
朝ご飯という単語を聞いた戸山は腹からグゥ~と音をだした。
あんなに朝早かったら腹減るわな。俺はさっきも言ったが、食わない主義だ。
「そう。じゃあ食べていって」
「良いんですか?!」
「ええ。用意するから待っててね」
そう言うとばあちゃんは戸山と有咲の分を用意しに台所に向かった。勝手に押しかけて来たのに朝ご飯を用意してくれる心の広さ。
それに比べて俺は何もかもめんどくさいとか言って逃げてばかり………有咲の事もそうだ。頑張って誤解を解かないといけなかったのに、諦めて勝手に塞ぎ込んでた。
本当に辛い思いをしてたのは有咲なはずだよな。
どんどんテーブルの上に並ぶ朝ご飯。そして大丈夫と言って断ったはずの俺の前にもご飯の入った茶碗が置かれた。
「えっ?」
「朝ご飯は1日の元気の元だから、ちゃんと食べなきゃ」
「……わかったよ」
これも2年振りか。ばあちゃんの朝ご飯。焼き魚、玉子焼におひたし。普通の朝ご飯。
玉子焼焼きを一口食べる。
「どう?」
「………やっぱり、ばあちゃんの作る物は旨いよ」
ご飯を食べる俺を見て戸山は不思議そうな顔をしていた。
「なんだ?」
「神山君って有咲とどういう関係なの?」
「・・・・・はい?」
え? なに、こいつは今気づいたのか? 俺と有咲がどういう関係なのか。つうかなんでもっと前に聞いて来なかったんだよ……。バリバリ戸山の前で名前呼んでたじゃん。
「まさか悪口言ったり言われたりする関係?!」
「どんな関係だよ! もう黙って食え!」
こいつは察しが良いんだか悪いんだか。いや、今のでわかった。こいつは察しがもの凄く悪いんだろう。
そのあともばあちゃんの作った朝ご飯を食べながら有咲が来るのを待っていた。
「最高です!」
「さっきドカーンって凄い音がしたけど」
「布団バッ! て、取ったら怒られちゃって」
「あの子はもう……」
いやいや、ばあちゃん。完全に悪いのは有咲じゃなくて、戸山です戸山。
「学校でもあんな感じなの?」
「え?」
なぜか戸山は完全に止まった。まあ、無理もないな。たぶん有咲はここのところ学校に行ってないだろう。だから有咲の学校生活の事を知らない。
「行ってくる」
「「えっ?」」
相変わらずあいつも朝ご飯食べない主義か? 全く……あの言葉使いといい、学校行かないといい、いったい誰に似たんだ?
するとばあちゃんは玉子焼と箸を持って玄関へと向かった。
いつものやつね。つうか必死に朝ご飯をかきこんでるんじゃねえよ戸山。はしたないでしょ! お母さんに教わらなかったか! お行儀よく食べなさいって!
いや、言われたの俺だったわ。
「早くしろ戸山」
「待って! あと少し!」
俺は一足先に鞄を持って立ち上がった。
「先行ってるぞ」
「今行く」
玄関の扉の音がすると同時に俺と戸山も居間を出た。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした!」
もちろん朝ご飯を食べさせてもらったお礼もちゃんとしたぜ。
「行ってらっしゃい」
「いってきます」
この日はなにもかもが懐かしかった。2年経っても変わらないものは変わらない。それがわかった朝たった。………こんな朝もたまにはいいか。
「有咲待って! 市ヶ谷さん!」
敷地内を出る直前に戸山がようやく追いついた。
「市ヶ谷じゃない」
じゃあ、なんなんですか?
「でも昨日──」
「ふん!」
戸山が入り口を出ようとした瞬間──扉を閉め始める。それも意外と強い力で。
どこにそんな力隠し持ってた?
一騒動はなんとか落ち着き、ようやく普通に歩き始めた。今日は完全に俺は居ない存在として扱われてる。相手にするだけ無駄って思ったんだろう。
今は青空の元、緩やかな階段を降りている。戸山は有咲の後ろで話掛けながら。俺はその隣でただ話を聞きながら歩いてる。
「てかなんなの? 勝手に入ってきて、ご飯食べて」
「おいしかった~」
「なんで上がり───」
「うわっ!」
階段を降りている途中で振り向けば、案の定ぶつかりそうになる。それを間一髪受け止める有咲。
「セーフ」
「危ねーなお前は」
そう言った瞬間睨まれた。恐らくあの目は黙れか、なんで男なのに助けないの? とか思っている目だ。
あー恐い恐い。
「………なにしに来たの?」
そう言いながら再び歩き始める。
「星のギター」
そうあれから戸山はすっかりあのギター──調べたところ、ランダムスターって言うらしい。お父さんにも聞いてみたけど、なかなかのレア物らしい。でも、うちのお父さんは実物を見て触るまでそんな話は信じない主義だ。
「すぐ追いかけたけど暗くてシール見えなくて。神山君に送ってもらったんだ~」
「シール?」
「うん。……あれ? ここにもある」
Aのような形をした物の一部に貼ってあったシールを指差ししながら戸山が言った。
よく気がついたな。言われるまで気づかなかったわ。・・・・ん? 待てよ……このシールどっかで。
気づくと有咲の姿はすでになかった。
「あれ?」
「あいつ逃げたな」
「嘘!?」
「早く追いかけた方がいいぞ。………戸山」
有咲を追いかけようと走りだす戸山を呼び止めた。
「なに?」
「有咲の事、頼むな。俺はしばらく顔出せないかもだから、今のうち言っておく」
「わかった! 私に任せて! じゃあね、恵君!」
・・・・今あいつ俺の事名前で……。つうか走るの早いな、どっちも。
有咲の事はしばらく戸山に任せるとしてだ。俺は優衣との件をどうにかしないと……。このままじゃどっちみち終われないし。
それと戸山に言った方が良かったかな。有咲は金に目がないって。たぶんあいつの事だからあのギターをオークションとかに出しそうだわ。
軽くなん十万はいくみたいだし。そんなレア物がよく質屋に流れたよな。これも運命ってやつなのか?
それから数日。あれから有咲とも戸山とも会ってない。俺は独自で優衣について調べてみた。1人だと大変だから、徹にも事情を話して手伝ってもらった。本人は親友の為なら仕方ねえと言ってやる気満々だったを見て少し嬉しかったのはここだけの話。
調べたり、花女の生徒に聞いたら出てくるわ出てくるわ。優衣の黒い噂。なんでそれが今までわからなかったのか不思議なくらいだ。
今考えるとデートはやけに遠かったり朝早くに家に呼び出されたりしたのを覚えてる。それは全部付き合ってるのがバレないようにするため。
知れば知るほど腹が立つ。
こんな女に俺は振り回されてたのかと考えると一番腹が立つのは自分にだ。今までなぜ見抜けなかったのか………それは優衣のことを信じきっていたから。
でも……そのことにやっと決着がつく。今日の夕方に会う約束を取り付けたから。洗いざらい全て白状してもらうつもりだ。ここで全部終わらしてやる。
夕方、待ち合わせの公園で待って居ると本人が姿を現した。その表情は若干めんどくさそうな顔。
「用事ってなに? あたしバイトで忙しい───」
「二股。してんだろ? 花女の生徒にも聞いたし、その相手にも確認した。今まで嘘吐いてきたのか?」
「は? なに言ってるの? 二股なんてしてないわよ」
「もう終わりにしようぜ。逃げ場なんてないぞ」
全て知られた。それがわかったのか、俺に見せたことがないような表情でこちらを睨みつけてくる。
「あっそ。じゃあ、あの事も隠す必要もなくなってことよね」
あの事? あの事っていったい……。
「あんた、市ヶ谷有咲と仲良かったわよね。……あたしはね、市ヶ谷が大嫌いだった。だから───」
その後に放たれた言葉はすぐには理解出来なかった。それと同時に1つだけ埋まっていなかったパズルのピースがはめ込まれたように、ある考えが頭をよぎった。
「あんたと市ヶ谷を引き離したのは───」
「あたしよ」
「───は? 俺と有咲を引き離した?」
「そう。目障りだったあの女に制裁を加えたの。そしたらバカみたいにあんた達は離れた」
これで全て繋がった。
新たに高評価くださった、ブブ ゼラさん、九条ユウキさん、神楽光冥さんありがとうございます!