BanG Dream!~あの時の約束~完結   作:レイハントン

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6.悩みの渦中

「は?」

 

 その言葉を理解するのに数秒掛かった。有咲と俺を引き離しのは優衣? 有咲のことが気に入らなかった? もう訳がわかんねえ。

 

「それって……どういう……意味だ?」

 

「そのままの意味よ。あたしはあなたが欲しかった。手に入れるついでに市ヶ谷を引き離して、どん底に沈む恵を助けて付き合う。そういうシナリオなのよ」

 

 それはつまり、1人の我が儘のために俺は有咲との仲を裂かれたのか…………。じゃあ俺も有咲もどっちも悪くないってことになる。

 

 そう考えるだけで、いろんな感情に支配される。怒り、後悔、迷い。ほんの少しの嬉しさ。俺のせいで有咲と仲が悪くなった訳じゃない。だけど、今の有咲は俺の言うことを素直に信じてくれるのか? いや、答えはNOだ。

 

 今は俺に対して憎しみや、怒り、嫌悪感しか抱いてない。だから話しても───

 

「無駄。今の恵が市ヶ谷に何を言おうと無駄よ。あの時の市ヶ谷は面白い程、あたしの話を信じてたし。可笑しすぎて今でも笑えちゃう程にね」

 

「てめぇ……。人の不幸がそんなに嬉しいか?! 人を傷つけて、思いを蔑ろにして!」

 

「うるさい。……あんたにはわからないわよ。才能があるあんたと、才能がないあたしとは……。目障りなのよ…いつも学年トップにいた市ヶ谷がね!」

 

 さっきまで笑顔で楽しそうに話していた彼女はもう居ない。その話から伝わる負の感情。強い憎しみや嫌悪感。有咲から感じるものとはまた違った感情。

 

「どれだけ勉強しても。どれだけ足掻いても追いつけない。埋まらない差。だからこういう手を使ったの。お陰で学年トップを取れた」

 

 そんなことの為に利用されたのか。もう笑うしかねえよな。2年間アホみたいに有咲の事気にして、挙げ句の果てには全く関係ないとこで踊らされてた。

 

 これで全て終わった。そう思った……しかし優衣は喋るのを止めなかった。

 

「だけどあいつはまた学年トップの座に帰ってきた! あんたへの憎しみに駆られて勉強でもしたのかしらね……お陰で私はまた2番目。だからあんたへの思いが薄れてきた。まあ…ちょうど良かったけど」

 

 全然良くない。良いどころか、最悪な奴だ。結局こいつは自分が学年トップを取れないのを有咲のせいにして、俺を利用。だけど、それが余計だった。だから俺は捨てられる。

 

「ふざけんな! 2年もお前を信じた! 裏切られて、はいそうですかで終われっかよ!」

 

「じゃあどうする? 殴る? そしたら社会的に終わるのはそっちよ! 勝手に信じたんでしょ!」

 

「お前!」

 

 殴ろうかと思った。………けどあいつの言った通り…。殴れば社会的にも俺が終わってしまう。でもこんな所で終われない。終わっちゃいけない。

 

「ああ、そうかよ。お前と一緒に居た俺がバカだった。もう終わりにしよう……。じゃあな」

 

「ええ。せいぜい市ヶ谷との仲を戻すのね。まっ、出来ればだけど」

 

 その言葉を背を向け歩いて聞く。そして立ち止まった。

 

「………それと、1つだけ言っておく」

 

「なに? 一生許さないとか言う気?」

 

「いや……」

 

 なんにも言えなかった………。

 

 悔しい……悔しいなんてもんじゃない。俺の人生かき回された挙げ句、有咲との関係も裂かれた。倍返ししてやるとか思っていたけど、とてもそんな気分じゃない。

 

 俺は家に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 夕方の時間帯もあってか人は歩いていない。

 

 クソ……クソ……クソ……。

 

「クソ!!」

 

 無性に腹が立った。

 

 鞄を地面に投げつけ蹴った。教科書が入っているのもあってか、少し痛かったけど、今の俺にそんなの関係ない。

 

 イラついた時とか、よく物に当たる癖がある。親や友達にも物には当たるなよと言われた事があったから抑えてた。

 

 でも今回ばかりは無理だ……。

 

「んだよ……。なにが学年トップ取りたかっただ……。そんな理由で俺を利用した? ははは……もう笑うしか…」

 

 もう1度鞄を蹴ろうとした瞬間───

 

「神山君……?」

 

「あ? ……戸山か……。学校の帰りか?」

 

 冷静に話し掛けたけど、絶対に見られたよな。……ここは早いとこ帰ろ…。

 

「う、うん。どうしたの?」

 

「なんでもない」

 

 俺は戸山に背を向けて歩き始める。戸山の心配そうな視線が背中に刺さるような気がした。

 

 あんな姿見られるとは……。説明するのは次会った時でいいか。

 

 

 

 

 

 家に帰るなり部屋に閉じこもった。こんな気分でギターを弾く気にもならない。というよりなにもやる気が起きない。明日の学校……もう全てがめんどくさい。

 

 その時、ドアをノックする音が聞こえた。

 

「恵? どうかしたの?」

 

 今は誰とも話たくない。

 

「お友達来てるわよ。出てきなさい」

 

 友達? 誰だよ……こんな時に来るのは。

 

「恵君。私。戸山香澄」

 

 なんだよ……。みんなしてさ。ほっといてくれよ。

 

「ねえ。なにかあったの? 私で良かったら話──」

 

「帰れよ。お前に話すことなんてない」

 

 やっと絞りだした声で言った。酷い事を言ってるのはわかる。だけど、今の俺にそれを良し悪しの判断がつかない。

 

「恵! 謝りなさい!」

 

 なぜか俺がお母さんに怒られた。

 

 は? なんで俺が怒られてんの? マジ意味わかんねえ。こっちは今それどころじゃないんだよ。

 

「せっかくあんたを心配して来てくれたのに、その言い方はないでしょ! 早く出てきなさい!」

 

 うるさい……。

 

「出てきて謝りなさい!」

 

「うるせえんだよ! こっちの気持ちもわからないクセに何がどうかしたの? だ! 1人にしてくれよ!!」

 

 今日は誰とも話したくない。お母さんにこんな口の聞き方をしたら絶対お父さんに怒られる。いっつもそうだ。

 

「お母さんはいつもヘラヘラして、こっちの事も知らない。いつも雅史だけ甘やかしてさ。俺の事はいつもほっといてさ……」

 

「……ごめんなさいね。戸山さんは下で待っててくれる?」

 

「はい」

 

 いや帰れよ……。耳を澄ますと階段を降りて行く足音が聞こえる。そして───

 

「ごめんなさい……。恵がそんなこと思ってるなんて、私考えてなくて。でも……恵だって言ってくれないとわからないじゃない。なにかあったんでしょ? ……話して」

 

 こんな優しくされたのはいつ振りだろうか。こういう時だけ優しくしてさ。……確かに言わなかった俺も悪かった。

 

「鍵を開けて話しましょ」

 

 いやお母さん…………。

 

「鍵もともと付いてない……」

 

「えっ? あっ! そうだったわね!」

 

 ったく……なにしてんだよ。

 

 

 

 

 

 

 部屋に入って今まであった事を話した。話を聞いてくれている顔は真剣そのもの。こんな顔して話を聞いてくれているお母さんを見たのは初めてだ。俺もいつの間にか全部話していた。

 

「ん~。それは酷い話ね~。………でもやっぱり恵はお母さんの息子だわ」

 

「なんで?」

 

「そんな酷いことされても、その女の子を責めなかったでしょ? 悪口を言うどころか、忠告までしてあげた。…私に似て優しい子よ」

 

 俺の頭を撫でながらそう言うお母さん。

 

 なんだろう………。ずっと前にもこんな顔したお母さんを見た気がする。ずっと前に………。

 

 そういう事を考えていたからか。俺はいつの間にか頬を伝う程の涙が流れていた。別になにも悲しくない。裏切られたことに関しては怒りしか感じなかった。だけど今は……。

 

「あれ? なんで……俺」

 

 泣いている俺をそっとお母さんは抱きしめた。苦しいし、恥ずかしいけど……涙は止まらなかった。

 

「ごめん……。生意気な……口利いて……」

 

「良いのよ。私も悪かったし、お互い様にしましょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。俺はいつもより早く目が覚めた。昨日はあれからご飯を食べずに寝た。そのせいか、かなりお腹が空いている。気持ち悪いくらいに。

 

 ベッドから起き上がり、1階に降りるとすでに朝ご飯が用意されていた。雅史は朝練の為に家を出たと思う。

 

「おはよう。お腹空いてるでしょ?」

 

「うん」

 

 テーブルに着いて朝ご飯を食べ始める。今日は目玉焼き、ご飯、味噌汁のシンプルなもの。腹が減っている俺にはご馳走にしかみえない。

 

「昨日はよく眠れた?」

 

「ぐっすり。お陰でめっちゃ腹減ったわ」

 

「そうだと思って用意しといたのよ」

 

 やっぱりお母さんには敵わない。なんだかんだ言って俺の健康状態が何気にわかっている。

 

 

 ご飯を済ませ、用意をして高校へと向かった。今日は雨が降るかもという事で、傘を持ってな。明らかに昨日とは違う気持ちが俺の中にはある。

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。外を見ると雲がかかってきてきた。朝と比べると一目瞭然だ。クラスの人達は「やばーい雨降りそう」とか「傘持ってきた?」などと話している。

 

 俺の前で両膝と両腕を床に突いている男が1人。

 

「やべー………。助けてくれ、恵」

 

「理由は知らんが断る。それと傘は貸さんぞ」

 

「“かさ”だけに?」

 

 こいつシバき回してやろうか? 昨日の事と今日の授業が入ってこなかった事でイライラしてるから丁度いい。

 

「お前今からシバくな」

 

「な、なんでだよ! そういうのなんて言うか知ってるか?!」

 

「知らん。知る気もない」

 

「八つ当たりって言うんだよ!」

 

 今日1日、授業には全くと言っていいほど聞いていなかった。お母さんに言われた事と優衣の言葉が交錯していたからだ。

 

 あれからも考え続けた。俺はどうするべきなのか。この事を全て有咲に話して許してもらう。いや……今の有咲にこの事を伝えても言われる事は目に見えてる。

 

「はぁ? 結局人のせいにするわけ? 最低ね」

 

 だからと言ってこの事を伝えないわけにはいかない。この件に関しては被害者は俺だけじゃないから。

 

「つうかそろそろ離せよ!」

 

「あー悪い悪い」

 

「思ってねえだろ……」

 

 徹の首を死なない程度に絞めながら考えたけど、結局答えは出なかった。

 

「とりあえずオレは帰る」

 

「そうか。じゃあな」

 

「おう……」

 

 そう言っておもむろに鞄から折りたたみ傘を出して教室を出ようとした。

 

 マジであいつシバき回してやろうか。

 

「恵。答え出るといいな」

 

 ちっ……今回だけは許してやるか。結局あいつも見てないようで見てるんだよな~。今度なにか奢って……やらない。

 

 

 

 

 

 さすがに悪いかな~と思い。俺は帰りにパンを買って帰る事にした。もちろんお母さんに。

 

 雨が降りそうな天気の下やまぶきベーカリーに向かって歩く。下校時間はとっくに過ぎてるからか、いろんな高校の人が商店街で買い物をしていた。

 

 まあ俺もその1人なんだけど。

 

 いつもの道を歩いて、やまぶきベーカリーに着いた。扉を開けて中に入る。高校生らしき人が数人来店していた。

 

「いらっしゃいませー」

 

 俺の顔を見るとなぜか山吹はバツが悪そうな顔をした。

 

「ん? どうした? お客さんが来たのにそんな顔するのか?」

 

「え? あっ、そうじゃなくて……。ごめん」

 

 なぜか急に謝られた。俺になにか悪い事をしたのか? そんな記憶はないんだが……。

 

「なんで謝る?」

 

「こないだの話……公園で話してたでしょ? それ…たまたま聞いちゃって…。だから神山君落ち込んでるかなって思ってさ」

 

「………そうか。なにも山吹が心配する話じゃない。変な心配すんな。俺は大丈夫だから」

 

 そう強がっても全然大丈夫じゃない。こういう時、大丈夫って言う奴程大丈夫じゃなかったりするけど、実際そうなんだな。

 

「本当に? なにかあったら私に相談しても──」

 

「いいや……。この話は俺の問題だ。山吹には関係ない。だけど……心配してくれてありがとな」

 

 こうやっていろんな人に迷惑かけてるんだな……。改めてわかったよ。……他にも謝らないといけない人が居るな。

 

「山吹。戸山どこに居るか知ってたりするか?」

 

「ん~。多分市ヶ谷さん家の蔵かな。ここ最近ずっと行ってるみたいだし。それに付きまとってるよ」

 

 任せたいって言ったけど、付きまとってくれとは言ってないんだよ。まあ戸山らしいちゃ、戸山らしいのか? 有咲も鬱陶しいとか想ってるんだろうな。

 

「そっか。サンキューな」

 

「うん」

 

 とりあえず前に戸山が買っていたチョココロネとメロンパン、お母さんの好きなアップルパイを買ってやまぶきベーカリーを後にした。

 

 つうかさっきお店に居た5人組の女の子、めっちゃパン買ってたな。しかも1人だけ4人と比べると量が違う。

 

 まだ悩みの中にいる。

 




今考えてるのはアフグロ、パスパレ、ハロパピ、ロゼリアのメンバーも少しずつ出そうかなと考えています。なにか意見がありましたら、感想でよろしくお願い致します。

新たに高評価くださったメサイヤ・ツチヤさん、ウィスペルさんありがとうございます!
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