BanG Dream!~あの時の約束~完結 作:レイハントン
戸山にギターを教えると決心したその日の晩。俺はお父さんにある提案をしようとリビングで待っていた。
「あ~。腹の調子が……」
すると腹を押さえたお父さんが戻ってきた。因みにうちのお父さんは滅法腹が弱い。アイスとか牛乳とかダメなやつだ。俺は遺伝しなかったけど、雅史には……な。
「お父さん」
「ん?」
「俺にギターとかバンドの事を教えてくれ」
その言葉を言ってお父さんのことを見る。今回頼むのは冗談でもなんでもない。本気だ。
初めて本気で人に教えたいと思えた。あんな本気の目見たことなかったし。ちょうどやりたい事がなくなったことだしな。
「ほう……。どうしてまた」
「友達がバンドやりたいって言うからその手伝いをしたいんだ。忙しいのはわかるけど、お願い」
「…………答えは」
いつになく真剣にお父さんは俺の事を見る。俺もここまで真剣にバンドやギターの事を素直に聞いたのは初めてだ。
「NOだ」
「っ……! どうして」
「お前はまだ俺が教えるレベルに到達してない。それに本当に最初から俺に聞いていいのか?」
そう言われるとなんか腹立つ。でも、確かに最初からお父さんに全ての知識を教えてもらっても意味がない。だったら……。
「わかった。じゃあそのレベルに達したら教えてくれ」
「OK~。覚えてたらな」
なんだそのノリは。本当に有名なバンドのギター担当か? 何はともあれ、これで逃げ道は自分で潰した。
それにしたって少しくらい教えてくれてもいいのに………ケチだな。あっ……俺のたまに出るケチな所はお父さんから来てるのか。
次の日。俺はいつも通りの日常? に戻った。ギターケースをかついで、いつもの待ち合わせ場所に行くと、徹が待っていた。それを気付かないフリして通り過ぎる。
「おいおいおい。待ちたまえちみ」
「おいが多い。それとなんだ? ちみって。君の間違いだろ」
「朝からツッコミご苦労さん」
こいつ……。今度は息の根止めてやろうか? と思いつつ学校に向かって歩き始める。
「やっと平常運転に戻ったな同志よ」
「あ? どういうこと?」
「答え。出たんだな」
にししと笑いながら俺にそう告げた徹。………待て待て。俺はいつお前と同志になったよ。同じ志しは持ってへん。
それに近い志は同じ高校に行くしか思ったことない。
「そんなおかしかったか?」
「いつも以上にぼーっとしてた」
「マジか」
結構顔に出てたか。あんまり表に出さないようにはしたつもりなんだけどな。
そんな事を考えて居るとちょうど戸山と有……市ヶ谷さんが居た。呼びづらいよ全く……。居ない所ならバレないかな?
しかし話しかけづらい。何故なら……
「なんであいつギター持って歩いてるんだ?」
「知らねーよ……」
普通はギターケースに入れて持ち歩く筈なんだが、戸山は普通に手でもって歩いていたのだ。
「あっ! おはよう!」
「いや、話しかけないでもらえます? 知り合いだと思われたくないので」
「右に同じく」
「え? どうして?!」
こいつはマジモンのバカなんですか? どこに好き好んでギター弾きながら登校する奴と一緒に居るの? あー1人隣に居たわ。
「マジ有り得ねーから!」
「とりま頑張れよ」
「じゃあ」
これ以上関わるとめんどくさそうなので退散退散。いや~有…市ヶ谷さんも大変ですな~。
「おい待てよ。どこに行くつもりだ」
「いや学校に。それにさ、市ヶ谷さんも俺居るの嫌だろ? だからさっさとおさらばしようかと」
「そうだけど今は残れ。私だけ恥ずかしい思いはしたくねえ」
なんだそれ……。俺達は一緒に巻き込まれろと? そうおっしゃるんですかね? そうじゃなかったら一緒に居ろとは言わないか。
この時から少しずつ思っていた。有咲に罵倒されるのも悪くないかもと…………。いやいや早まるな俺、そう思うのは早すぎるぞ。
「しょうがねえな」
俺がそう言うとよし、みたいな表情をあらわにした。そして、その一瞬の隙をついて、徹の腕を掴んで全力で走った。登校しながらギター弾く奴なんて見たことがない。一緒に居ると変な目で見られる。
これで出し抜いたと思ったその矢先。俺の首が締まった。手で絞められた感触ではなく服で絞まってる感触。つまり襟を掴まれたってことだな。しかも全速力×襟を掴まれる。そしたらどうなるかわかるよな?
「うげっ!?」
「お前の行動パターンは知ってるんだよ」
「離して~離してくれ……」
必死に有咲に訴えるが、首が絞まって上手く声を出せない。カッスカスの声。そんなんで通じるはずはなく、しばらく絞められた。逃げ出した罰だとさ。
どっか行ってほしいのか、行ってほしくないのかどっちかにしてほしいものだ。
結局一緒に学校に行くことになった。
「なんでお前はギター持って登校してるんだよ」
「ん~ギターが弾きたいから!」
「お前はバカか?」
「え~なんでよ~!」
普通に考えてみてくれ。普通、ここが重要だぞ。いくらギターを弾きたいからと言ってケースにも入れずに持ち歩いてるとどうなるか。まず汚れたりするな。あとはおかしな人だと思われる。そもそも常識的に考えればギターを弾きながら登校しようなんて思わない。思っても実行しない。
「さすが香澄ワールド。今日も全開だな!」
「うん!」
「うんって、バカにされてるんだよ」
有咲のツッコミもなかなかのものだ。的確におかしい所をついてくる。そんな事よりあれを聞かないことには始まらない。戸山には聞きたい事が山ほどある。
「戸山、バンドのメンバーになってくれそうな人居るのか?」
「うん! というよりもう1人誘ってあるよ!」
「マジか」
なんだ、なんだ。意外にもメンバーすぐに集まりそうじゃねえか。ギター、キーボードは揃ったのか? いや待て、ここは有咲の事だ。やるとは言わないであろう。それは俺が言った場合だけど、戸山が言えば変わると思う。
「戸山バンドやるの?」
「うん! 有咲とやる!」
「やらねえって言ってるだろ」
「えー! なんで?!」
ほらな。
その後もバンドをやるやらないの話が続き、いつの間にか別れ道。というより花女に着いた。よし! これで恥ずかしいのもおさらばだ! さっさと学校行ってお父さんから借りたバンドの本でも読むか。
「じゃあね!」
「おう。ギター没収されんなよ~」
「お二人ともさらば!」
学校に着いてから、いざ本を読もうと思ったけど、案の定戸山からギター没収されたよ~と連絡がきた。まあ……な。当たり前なのかは知らんけど、どんまい。
この日の授業は英語以外聞かない事を決め、本を読んだ。授業中に指さされたら答える。このスタンスでいけるだろという考えだ。やっぱりお父さんの持ってる本は書いてある内容が濃い。だけどその分わかれば納得が出来るものばかり。
めんどくせえと最初は思ったけど、読んでるうちに少しずつ興味が湧いてきた俺は、授業中にスマホを弄ってはいけないが、わからない単語をメモするために調べたりした。まだまだ知識が足りない。人に教える為にはまず自分が詳しくならないといけない。
1日学生らしからぬ生活を送り放課後になった。戸山がギターを返してもらったのかはわからないけどたぶん返してもらえたんじゃないか? そこまで厳しい学校じゃないと思うし。
徹はバイトだから帰った。
校門まで歩くと、まさかまさかの戸山と有咲が待っていた。
なぜあの2人がここに? あっ、そうか。ギター教えてくれって頼まれてたんだっけ。
俺が「戸山ー」と名前を呼ぶとこっちに気がついたのか駆け寄ってきた。手には袋に入ったランダムスター。どうやら返してもらえたようだ。
「来るなら連絡してくれよ」
「えーしたよー!」
「はい?」
スマホを見ると普通に連絡が来ていた。
あっ……やべ。やらかしたのはこっちだった。
「わ、悪い」
「女子からの連絡見ないとか最低だな」
「そ、それはそうだな」
これは全面的に悪い。だけど少しだけ言い訳をさせてくれ。昨日今日まで彼女が居た人間だったが自分から連絡する事はあんまりなかった。だから仕方ないんや。
当然そんな事を言っても、はいそうですかなんて言ってもらえるはずもないから、心に留めておく。
なぜ花高まで来たのか理由を聞いた。話がかなり長いから、省略するとギターを教えてほしいのと、えっと…牛込さん? っていう人をバンドに誘ったんだけど、曖昧な返事が返ってきたらしい。それを俺に説明するために来たんだと。
スマホに連絡してくれればいいのに……。あっ、俺が反応なかったからか。
「それでどうしよう~~」
有咲の家の蔵に着いた俺達はさっそくギターの弾き方を教え始めた。有咲は盆栽の世話をしている。本当にバンドをやる気はないんですな。あと実際に名前で呼ばなければアウトじゃないからそうさせてもらうわ。
「いいか? 左手はここを抑えるんだ。で、右はピックを持って弾く。すると音が鳴る」
自分のギターで俺なりにわかりやすく教えた。しかし戸山は、ん? と首をかしげた。
あれれ? 全然わかってらっしゃらないようで………。なんでだ?
「こことここを抑えて弾くと、CM7のコードだ。わかるか?」
「…………全然」
「マジか……」
「教えるの下手クソだな」
今まで誰かにギターを教えたことなんてないからか、全くと言っていいほど戸山には通じなかった。
さて………どうするか。
「悪い。俺の勉強不足だ」
「そうだな」
「返す言葉もありません……」
これで勉強する事が増えた。まあ、仕方ない。それに戸山は戸山でなにか悩み事がありそうな雰囲気だ。たぶん牛込さんの事だろうけど。
「まずは解決しないといけない事があるな」
「うん………。明日もう一回話してみる!」
「そこまで避けられて話せるか?」
「それはそうだけど………」
ここは1つ作戦を考えないとな。だけど避ける相手にどうやって接触する? ……戸山得意の人の家に行って無理やり会う? いや、そんなことしたらますます逆効果だ。だからと言って今まで通りに過ごしても結果は同じ。
「有咲はなにかない?」
「ない」
「即答かよ」
このあと3人……実質2人でどうするか考えた。どうやったら牛込さんをバンドに誘えるかを。いろいろな考えを出したが、どれも行動を起こしても効果はあるのかわからないものばかり。
まず1つ目は普通に聞きにいく。だけどそれはもう行ったも同然。却下だ。
2つ目は家で待ち伏せをする。牛込さんの迷惑になるかもだから、却下。
3つ目はスマホに連絡を入れてみる。返信が返ってくるかわからないから行動に移すか迷うところだ。
「なんか考えれば考えるほどわからなくなってくるね~」
「まあそうだな。………もうこんな時間か」
ふと時間を確認するとすでに6時半を回ろうとしていた。さすがに帰らないといけない時間だ。
「戸山、そろそろ帰るぞ」
「うん。あ、でもギターどうしよう」
「ケース買うまではここに置いてもらえばいいんじゃね? 市ヶ谷さんが良ければだけど」
俺がそう言うと戸山はキラキラした目で有咲を見る。すると有咲はジト目で俺のことを見ると「好きにすれば」と言った。これでギターで恥ずかしい思いをすることはないだろう。時間的に一応俺が戸山を送ることにし、蔵をあとにした。
新たに高評価くださったpanputyさん、黒田ロタさん、srシャリさん、silverhornさんありがとうございます!!