No.1 コア
『序文』
防術機を防術機たらしめている存在の一つとして、『コア』がある。これは防術機がジャマー環境下で活動するために必要不可欠な物体であり、これが無い、もしくは起動していない防術機がジャマーにさらされた場合、数十秒と持たずに活動不可となるだろう。
これはジャマーによる侵食効果と関節固定、そして電子機器の破壊によるものだ。対処するにはジャマーを付着させないことしかない。しかしジャマーはナノマシンの集合体であり、どんなコーティングやシールを施しても内部への侵入や関節部への付着を防ぐのは困難である……不可能と言ってもいい。そのためコアは『付着させない』でなく、『機体の周囲に寄せ付けない』というアプローチでジャマーを防いでいるのだ。
方法は現在確認されている所、数十もある。有名な物として、ジャマーの電波放出と性質を利用しジャマーを遠ざける『電磁式』、特殊粒子を機体表面に定着させ、粒子によってジャマーを破砕し付着を防ぐ『BB粒子式』、ジャマー内部の電波放出機構を逆に使い、パルス波でジャマーを加熱させ機能を破壊する『PPS式』などが存在する。
コアの方式はどれも違っているように感じられるが、実はどれも後述するどちらか二つに分類できる。
一つはジャマーに働きかける『破砕型』。ジャマーその物を破壊してしまうという方法である。こちらは強力ではあるがジャマーの進化に弱く、付着したジャマーを装甲板表面の高周波振動によって破砕する『HBB式』が開発され広く運用されたと記録があるが、開発から十年後にエルフが進化しジャマーが付着した物体の破壊能力を得たため使用されなくなったと言うような例があることからも明らかである。現在は変化できない電波放出機構を攻撃する『PPS式』が開発されたため、エルフとの開発競走は一時の休息を得ている。
もう一つはジャマーを遠ざける『回避型』。ジャマーの進化に強く、初代リロードのものですら現在も使用可能。さらに被弾に強いという特徴があるが、運用するには高い出力と特殊な機構が必要な物が多い。しかし現在はこちらが主流となっているため、そのすごさが如実に現れていると言えるだろう。
・現代のコアの構造解説
『電磁式』
ジャマーは全体として反磁性体であり、強力な磁場を当てられると反対方向に力を受ける。しかしそれだけでは単体でのジャマーを押しのけることしか出来ず、ある程度まとまったジャマーの付着を防ぐには不充分なため、機体表面からの放電により空気をイオン化し、それと反応させジャマー付着への活性を落とさせることにより、ジャマーの付着を防いでいる。
そのため強力な出力を引き出せる機関が必要であるが、現在は燃料式のパワーパックに代わる高出力なリチウム炭素バッテリーが開発されたため解決している。
欠点は磁場による防護の不確実さや、一部環境では磁場防護が使用不可である事。
『BB粒子式』
ジャマーの物体への付着を利用し、高エネルギーを持つ粒子を機体表面に安定して還流させることにより、機体の防護を行う。電磁式と一部似通っている点(粒子の機体表面での還流)が存在するがこれは電磁式がBB粒子式から発展し独立したためである。
使用される粒子はさまざまで、電磁式で用いられるイオン化粒子、粒子装甲に用いられるBB粒子がそれらの代表例であり、現在はほぼ全てがそれらを用いる。
欠点として、粒子タンクの容量によって活動限界が決まってしまう事があると言う点がある。
『PPS式』
ジャマーが通信妨害を行うために存在する、電波放出用のマイクロコイルを利用するタイプ。マイクロコイルに高い磁場を当て、ジャマー内部の電子回路を焼き切ってジャマーを無効化する。電磁式から発展したが、こちらは一切機体本体の防護を行わないのが特色といえるだろう。
欠点として、装甲表面に電気を流し機体を磁化、そしてそこから磁場を放出するため、パイロットや周囲の人間に害を与えること、放出された磁場はパルス状となっている為、コイルを搭載した電子機器は防護仕様になっていなければ破損してしまうことなどがある。
・コア搭載上の問題
電磁式、PPS式、BB粒子式どれも機体表面を利用し何らかの方法での防護を行うため、装甲は専用のギミックに対応した物で無ければ運用できない。さらにオープンで搭載しなければコアの性能は落ちてしまうのだ。
No.2 ジャマー
『序文』
大戦前に運用されていたほとんどの陸上、航空兵器が運用できなくなった大きな原因が、『ジャマー』である。これによって航空機は海上と少ない非ジャマー効果範囲内に、戦車は低濃度のジャマー効果圏内までに活動範囲を狭められた。
どちらも構造の都合上コアを搭載できないのが大きな原因であり、現在は唯一コアを搭載できる防術機のみがジャマー範囲内での運用を許されているのだ。
それらにはジャマーの持つ二つの性質が大きい……つまりは、電波妨害と付着した物体の破壊だ。そしてそれらは、旧来型兵器がジャマー環境で運用できない大きな理由となっている。
『ジャマーの構造』
ジャマーは大きく分けて、三つの部分から成り立っている。一つは電波放出部。さまざまな種類の電波をバラバラに放出する事でノイズを生み出し、電波での通信を困難とする機構である。これはマイクロコイルとマイクロバッテリーから構成される。
二つ目は付着部。表面の特殊加工と静電気、分子間力を巧みに利用した物で、とてもナノレベルの細かい毛を表面に並べ、帯電により毛同士をくっつけないようにしている。そして毛の分子間力によって物体表面に貼りつくのだ。
そのため、こちらは防護方法は無い。しかしジャマーが破壊されればこの機能は失われるようである。
三つ目は付着した物体の破壊だ。これはもともと存在しなかった性質で、エルフが防術機の台頭に対し進化したことで獲得された。仕組みは単純で、ジャマーに装備されたカーボンナノチューブ製のマジックハンドが分子どうしの結合を切るというもの。単純だが防護方法はほとんど無い。
以上三つの性質により、ジャマーは多数の兵器を活動不能にすることを可能としているのだ。
『ジャマー環境対応兵器』
ジャマーの搭乗に合わせ、ほとんどの兵器もどうにかしてジャマー下に対応できるように進歩してきた……内部に酸素ボンベを搭載しジャマー下では吸気をほとんどしないことで運用可能になった輸送機群や、主機をバッテリーにし予備を大量に搭載する事で内装式コアの搭載を可能とした主力戦車がその分かりやすい例だ。
しかしそれらは現在、防術機を支援するための兵器と化している。吸気を不要とした輸送機は稼動時間と速度を損ない、装甲を保った主力戦車は内装式コアの都合上運用できるのは履帯にジャマーの付着し難い低濃度環境下に制限されたからだ。いくら強力でも、エルフやGAIDAの現れる高濃度環境に出張っていけないのでは意味が無い。そのため防術機はオープンタイプのコアを搭載しもともとあまり出ないスピードで持ってその対処に当たるのだ。