ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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ボス攻略戦が始まり、すでに1時間半ほどが経過していた。あれだけあったボス、固有名《イルファング・ザ・コボルドロード》のHPは少しずつ減少していき、最後の一本のイエローゾーンまで突入していた。
現在の死者はほとんど奇跡とも言える0人。誰もが、このまま終わってくれと願っていただろう。そう、誰もが…。


第12話 死者

「キシャアアアア!」

「フッ!」

 

コボルドロードの取り巻きであるセンチネルのハンマーを俺は下から迎撃した。上から繰り出されたハンマーは俺の斬撃で跳ねあげられ、奴に一瞬の隙ができる。

 

「スイッチ!」

 

俺が後ろにいるプレイヤーにすかさず声をかける。

彼女は目がくらむようなダッシュで前に出ると、右手のレイピアをライトグリーンに染める。

 

細剣ソードスキル基本技《リニアー》だ。

細剣スキルの中では基本技なのだが、彼女…アスナのリニアーは極限なまでのスピード補正によりとてつもない速度となっていて、軌跡しか目で追えなかった。

 

「ハアアアア‼︎」

 

彼女のレイピアがセンチネルの急所である喉元を捉える。センチネルは不自然な格好で硬直するとその体を無数のポリゴンへと変えた。

 

「グッジョブ。」

 

俺は暫定的パートナーの背中にそのような言葉をかけた。俺とアスナは次の獲物を見つけると少しだけ頷きあってから一目散にダッシュした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「オオオ!」

 

黄緑色の尾を引きながら剣がセンチネルの胸に吸い込まれる。

俺の剣は獰猛に鎧ごとセンチネルの体を切り裂いた。だが、半分ほどあった奴のHPをそれだけで削れるはずがない。予想通り、ソードスキル後の硬直を狙って俺に狙いを定める。

しかし、それも途中で終わる。奴の体をライトブルーの輝きが叩く。

 

片手剣ソードスキル単発基本技《ホリゾンタル》。俺の後ろで待機していたシュンヤが最高のタイミングでソードスキルを発動したのだ。

そこで、俺の硬直も解けたので通常技で残り少なくなっていた奴のHPを削りきった。

 

少しシュンヤと拳をぶつけ合った、その時。

後方で雄叫びが上がる。見るとロードのHPが最終段のレッドゾーンへと突入していた。セオリーだとここで全員での攻撃を…

 

「どけ!俺が出る!」

 

しかし、そこで1人のプレイヤーが前へ出た。体を銀色の鎧で包み、手には盾と片手剣。髪は少し深い青色。

 

今まで勇敢に全部隊へ指示を出していたディアベルだ。どうやら単騎で突っ込むらしい。止めるべきかと思ったが、ロードのHPは残り少ないし武器を入れ替えるといってもタルワールはそこまで防御の難しい武器ではない。俺とシュンヤは前に向き直り…

 

 

いや、待て。

 

俺とシュンヤは同時に後ろへと向く。

奴の腰にぶら下げている武器、あれはタルワールなどではない。そこまで考えたところでロードはアックスと盾を放り投げて腰の武器を抜刀する。

 

やはり、あれはタルワールではない。俺たちはあの獰猛な剣の輝きとしなっている形をかつて見たことがある。

 

そう、この層ではなく…どこか、もう少し上の…第十層で。

 

「ま、まさかあれは…」

 

俺のつぶやきとロードの雄叫びが重なった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

『…野太刀!?』

 

俺の頭で思考がスパークした。背筋がスーッと冷たくなる。

 

まずい、俺はすぐにそう思った。タルワールは一発一発が重いかわりに予測可能な範囲の単純な軌道の技しか出してこない。

 

しかし、野太刀…つまり《カタナ》は別だ。

 

一発一発の攻撃が軽いかわりに、ほぼ予測不能な連撃を繰り出してくるのだ。あれを、ディアベル1人で防ぐのは…

 

「ダメだ!今すぐ後ろ飛べー‼︎」

 

俺の声に何人かは振り向いたがディアベルには届かなかったのか、戻らない。

いや、戻れないのだ。すでに、ソードスキルを発動してしまっているのだから。

 

ロードはその巨体を極限まで縮ませると一気に跳躍する。凄まじいスピード。俺ですら、目で追えなかった。ロードは天井に両足をつけると、さらに下に向かって跳躍。

 

弾丸じみた速さでディアベルに突っ込む。

ロードのソードスキルが、ディアベルに直撃する。

 

「うわあああ‼︎」

 

現時点で、高レベルプレイヤーであるディアベルが紙切れのように吹き飛ばされる。

 

しかし、ロードの攻撃はそれで終わりではなかった。

ディアベルにもう一発、ダメ押しのように攻撃を加える。とてつもない音とともにディアベルの体がさらに吹き飛ばされる。

彼の体はしばらく滞空した後、地面に叩きつけられた。

 

「ディアベル!」

 

俺は彼に近寄り、剣を鞘に押し込んでバックパックからポーションを取り出す。

 

「どうして1人で…」

 

彼の口に入れようとしたポーションの先を彼は自分の手で押さえた。

 

「…!」

 

俺は息を呑む。ディアベルはうっすらと目を開けると、俺に囁きかけた。

 

 

「お前も…元ベータテスター、なら…分かるだろ…?」

「!」

 

 

俺の頭はさらに驚きに包まれる。

俺は、自分がベータテスターであることをパーティーメンバーにしか伝えてない。

他の奴らは知ってても名前ぐらいのものだ。

だが、今ディアベルは俺のことをベータテスターだと言った。彼は俺の正体を名前だけで看破したのだ。

 

…つまり、そういうことだろう。

 

「ラストアタックボーナスを狙った…?ディアベル…あんたは…」

 

俺の問いに彼は少しの笑顔で返すとすぐに顔を引き締める。

 

「頼む、キリトさん…!ボスを…倒し…」

 

 

カシャアアアァァァンッ…

 

そこで、彼の言葉は途切れ体はポリゴンへと変化した。

こうして、ボス攻略レイド最初のレイドリーダー、ディアベルはこの世界から、そして現実世界からも永久退場したのだ。

 

「…」

 

俺はポリゴンが空へと消えるまで、体を硬直させていた。

 

「ディアベルはん…なんで、なんでリーダーのあんたが…」

 

キバオウは小さな声で呻く。ラストアタックを取りに行ったからだ、というのは容易かったが今はそのようなことを言っている場合ではない。俺は立ち上がろうと…

 

 

「ガアアアアア!」

 

 

ロードの雄叫びが部屋に響き渡る。見ると既に新しい標的を見つけていた。ロードの前に倒れているのは、紫の装備に身を包んだ華奢なプレイヤー。

髪も紫色のショートヘアー。女性プレイヤーだろうか

 

俺はすぐに手を剣の柄にかける。だがそこで目の前にセンチネルが姿を現した。

 

「くそっ!」

 

毒づきながら、俺は女性プレイヤーに目を向ける。既にロードのカタナはソードスキルの光に包まれていた。

 

「まずい!」

 

俺は前に進もうとするが、前にいるセンチネルがそれを許さない。

 

『どうすれば…』

 

そう思った瞬間、右方から声が響く。

 

「ユウキー‼︎」

 

俺は右に目を向けると、ある人物が猛然とダッシュしていた。その人物はすぐにレイドメンバーたちを追い抜き、かぶっていたフードも風のせいでめくれる。

 

彼…俺の弟でもあり、ベータテスターでもあるカズマは少女とロードの間に強引に割り込んだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

加速する。加速する。加速する。

他の奴らが、俺のことを見ているのか、それすらも検討がつかない。目に入らない。

いや、正直そんなことはどうでもよかった。目に映っているのは、大切な幼馴染と、それを襲うモンスターだけ。

 

俺の速さは限界を超える。

限界を超え、20メートルを一瞬で駆け抜ける。

 

俺は高速で繰り出されたカタナを《ホリゾンタル》で弾く。

 

両者硬直を強いられるが、同時に解けたところでさらに跳躍。

今度は体を捻ってスレスレでソードスキルをかわし、こちらも黄緑色の光を剣に宿らせる。片手剣ソードスキル突進技《ソニックリープ》。

 

ブーストは地を離れていたのでプラスできなかったが、それでもロードの体を吹き飛ばすだけの威力はあった。

 

直撃した途端にロードは回転しながら吹き飛び、15メートルほどで着地…いや、着弾した。奴のHPがわずかだが削れる。

 

俺は剣を構えてから仲間と俺の背中を見ているユウキとランに一瞬目を向ける。しかし、すぐにロードへと視線を移す。

 

「守れ…今度こそ!」

 

自分に言い聞かせるように小声で、しかし確かな声でそう叫ぶと同時に、ロードはカタナを赤色に染める。俺はそれに少し遅れて剣をもう一度黄緑色に染めると、ロードがニイッという獰猛な笑みを浮かべる。俺もそれに片方の唇を上げて返すと、同時に跳躍。奴の巨体が、俺に迫る。

 

「グオオオオオ‼︎」

「ぜりゃあああ‼︎」

 

俺の剣とロードのカタナが衝突し、凄まじい光と音を生み出す。辺りが、一瞬だけまばゆく煌めいた。

 

 




長くなっちゃった。テヘペロ☆それは置いといて…とりあえずディアベルさんが死んじゃった(涙)さて、これからどうなるか、非常に見ものです(俺だけかもしんない)‼︎感想送ってね♡
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