ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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「オオオオオオ‼︎」
「グガアアアア‼︎」

一号打ち合うたびに、俺のHPはじわり、じわりと減少していき、すでにイエローゾーンに突入していた。

普通ならここで兄貴…キリトやアスナ、そしてシュンヤたちに変わるところなのだろうが、残念ながら3人ともセンチネルの相手をしていてそれどころではない。他の奴らはディアベルが死んだことによりほとんどの奴らが腰を抜かしている。

それだけ、レイドリーダー出会った彼の存在は大きかった。だからこそ、彼がいなくなったときのデメリットも大きい。
当然のギブアンドテイクだ。

「まったく…本当やらしい性格してるぜ…」

俺は剣をホリゾンタル発動の位置に構え、ロードのソードスキルを迎え撃った。

「このゲームを作った奴は‼︎」

俺と奴の剣戟はさらに加速していく……。


第13話 決着

「すげえ…」

 

少数精鋭ギルド、スリーピングナイツのメンバーである大剣使いのジュンはそう呟いた。

おそらくほとんどのプレイヤーたちがそう思っただろう。眼の前で繰り広げられている、剣戟を見て。

 

それは、スリーピングナイツリーダーのユウキも例外ではなかった。そして、彼女は見とれると同時にある違和感を覚える。

 

「ねえ…姉ちゃん…」

「…どうしたの、ユウキ?」

 

双子の姉の質問にユウキは弱々しく答える。

 

「あの人、あの人の後ろ姿…見たことが…ある気がする…。」

「…!」

 

その言葉にランの顔がこわばる。ランはすぐに口を開きかけ…しかし、すぐに閉じる。

 

自分は今、何をしようとしたのだろう。

ランは首を横に振った。

 

昨日の夜、話したではないか。例え記憶が戻りそうでも、彼の決心がつくまでは何もしないと。何も教えないと。そうだ、教えてはいけないのだ。それが、彼の私欲だったとしても。

 

ランは自分より少し背の小さい妹の両肩に手を置き、囁くように話しかけた。

 

「そう…なら、目に焼き付けておきなさい。ユウキ。彼の助けてくれたときの後ろ姿を…彼が誰なのか…思い出した時に、お礼を言えるように…。」

 

ユウキは少し不思議そうな顔をランに向けたが、すぐに

 

「うん」

 

と頷いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺の視線は、集中は、すべてをロードの剣に向けていた。そのおかげですべてを相殺できている。

 

だが、数回打ち合った時にそれは起きた。

 

「オオオオオオ!」

 

俺の剣がロードの腹にあたり、10メートルほど吹き飛ぶ。俺はそれに追い打ちをかけようと…

 

『馬鹿!周りにも注意しなさい!』

 

そんな言葉が、俺の耳に響いた。とても小さな声が、俺のすぐ近くで呼ばれた感覚。俺は反射的に自分の右側を見る。

 

数十センチの距離でセンチネルがハンマーを振りかぶっていた。

 

『ヤベッ…!』

 

俺はすぐに自分の剣を縦に構える。盾を持ってないプレイヤーの防御動作だ。

 

俺の剣にハンマーが当たった瞬間、とてつもない衝撃が俺の体と剣を叩く。そのあまりにも強い衝撃で俺は吹き飛ばされる。宙に浮いた体が勢いそのままに柱の一本に背中から激突する。

 

「ガハッ…‼︎」

 

肺から空気が漏れるほどの衝撃に、息が詰まる。

 

地面に落ちてから、立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。打撃系の攻撃をくらった時に稀に出る《弱スタン状態》。

時間としてはかなり短い時間だった。しかし、この場では致命的な時間となったのだ。

 

「くそっ…」

 

俺は毒づきながら前に出てきた巨体を見つめる。ロードが勝ちほこるような笑みを浮かべた。

スタン状態は、まだ解けない。

避けられない。そう確信するには、十分だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「スイッチ!」

 

俺が叫ぶとアスナが前に出る。もう慣れた手つきでセンチネルの首元にリニアーを喰らわせて、HPを削りきる。

 

本当は拳を合わせたいところだが、女性であるアスナがそれをしたがるわけでもないし、それをしている時間もない。

取り敢えずセンチネルは俺の方は全部片付いた。あとは、カズマを援護して…

 

「危ない!」

 

そんな声が、中央付近から響いた。見ると、吹き飛ばされたカズマが一本の柱に激突している。そのせいで弱スタン状態となってしまったようだ。

 

ロードはニヤリとした笑みを浮かべ、勝利を確信している。奴のカタナが上にあげられ、ギラリと光る。

 

ソードスキルではなく、通常技で決着をつけるつもりらしい。

 

「ねえ!」

「分かってる!」

 

アスナの声に、俺は同じような音量で返す。俺は30メートルほどあるカズマの場所まで、一直線に走った。

 

その途中で、見た。

 

先ほど見た華奢なプレイヤーと彼女に似た女性らしきプレイヤーが、立場が逆転したかのようにカズマの前に割り込んだのを。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺は一瞬、死を覚悟した。この仮想の体が巨大な剣に真っ二つにされるのを幻視した。

 

直後、奴は剣を容赦なく振り下ろす。

 

ためらいなどなく、俺の脳天に振り下ろす。俺は、目を閉じなかった。別に、理由は無かった。

 

しかし、だからこそ見えたのだ。

 

俺の幼馴染2人が、ロードの攻撃を防いだのを。轟音。衝撃。

2人の交差された剣が、押し込まれる。

 

「なっ…!」

 

俺は目を見開く。ランは妹の記憶を取り戻すために必要だからという名分で俺を救う理由にはなる。だがユウキにはない。俺を救う理由が。彼女は俺のことは忘れているはずだ。何もかも、綺麗さっぱり。

 

ならば、何故…

俺のその考えに応えるかのように2人は声を出す。

 

「ボクは君に聞きたいことが山ほどあるからね!」

「私は…まあ、このまま死なれると困るので!」

 

その言葉に俺は少し目を見開いた後、何故か笑いが漏れる。

 

そして、昔のことを思い出した。

何故かはわからないが、楽しかったあの日々のことを。

スタンから回復した俺は転がっていた剣を拾って彼女たちの止める剣を弾いた。そして、ロードの土手っ腹に通常技の連撃を喰らわせて、吹き飛ばす。

 

「まったく…困ったもんだ。せっかく救った命を捨てかけるなんてな。」

 

俺の言葉にユウキが「ウッ…」と呻いてから俯向く。

 

その仕草も昔のままで、少し涙が溢れる。

俺は涙を隠すように前を向くと、静かに、本当に静かに…

 

「…ありがとう、迷惑かけたな。」

「えっ…」

 

礼を言った。

ユウキが何か言葉を発する前に兄貴とアスナが到着する。遅れて…シュンヤも。

 

「…生きてたのか。」

 

兄貴のそんな言葉に俺は苦笑を漏らす。

 

「おいおい。死にかけた弟に向ける言葉がそれかよ。」

 

俺の言葉に困ったように呻く。

 

「…他になんて言えばいいんだよ。」

「…それもそうだな。」

 

俺たちの会話が終わると、シュンヤが声を張る。

 

「エギルさん、そちらのパーティーで壁役をお願いできますか⁉︎」

シュンヤの言葉にエギルは少し間を置いた後に笑いながら答える。

「おう!任せな‼︎」

 

リーダーの言葉に他のメンバーも頷く。

シュンヤが持ち前の知識でカタナスキルについて教え込んでいく。

 

「カタナ系スキルは速いですけど、そこまで威力はありません!突進系以外はガードしなくてもこちら側で対処します‼︎」

「応よ‼︎」

 

今度もエギルだけが叫んだ。そして、エギル達壁部隊はボスの前に躍り出てカタナ攻撃を止めた。

ロードがソードスキルを発動した後、俺たち4人は猛然と地を蹴った。まるで、獲物を狩る狩人のように。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「手順はセンチネルと同じだ!俺が剣を弾くからそこにスイッチしてくれ!」

「了解!」

 

アスナは俺の言葉にしっかりと答える。俺たち4人は並列して走り、エギルのパーティーを飛び越える。

しかし、そこでアスナが先行し過ぎたのかロードの視線がアスナを捉える。奴はソードスキルを発動せず、行動の早い通常技を選び、アスナを狙う。

 

「アスナ‼︎」

 

俺が叫ぶと同時にロードの剣がアスナの頭に命中する…直前でかわし、フードケープだけが切り捨てられる。

 

アスナはフードケープを置き去りにしながらレイピアを黄緑に染める。今まで幾度となく見てきた基本技のリニアー。

 

 

その瞬間、俺たちは見とれた。

彼女の扱う剣技に。

そして、彼女自身の美貌に。

 

今まで、フードケープに隠されて見えなかった素顔に俺たちはただ見とれる。彼女は、まるで戦場に現れた女神のように輝いていた。

一瞬の沈黙が訪れた後、リニアーに吹き飛ばされたロードが立ち上がる。

 

「グアアアア!」

 

奴は叫び、体を丸めて…

 

ズガァン‼︎

「ガアッ⁉︎」

 

ロードが驚きの声を漏らす。奴は切り捨てられて地面に転がる。そして、ロードを倒した張本人…カズマが呟く。

 

「馬鹿が、やらせねーよ。」

 

ロードは必死に立ち上がろうとする。しかしそれをまた、黄緑色の光が襲った。シュンヤがソニックリープを放って、さらにHPを削る。ロードがまた10メートルほど吹き飛ばされ、転がる。

 

『…好機!』

 

そう考えた俺は、剣を構えながら叫ぶ。

 

「行くぞ、アスナ!」

「…ええ!」

 

俺の言葉に一瞬こちらを見たが、アスナはすぐに返事を返した。

俺たちより先に、ロードが動く。突進系の、ソードスキル。奴の体が、弾丸めいた速度で発射される。それは、俺たちを直撃…する前に止まった。

目の前にスキンヘッドの巨体と、複数の影が現れる。

エギル達だ。エギルは斧で攻撃を止めながら、叫んだ。

 

「行け!キリト‼︎」

 

俺は追い抜き際に叫んだ。

 

「恩にきる!」

 

俺たちは加速する。

今なら、速度なら誰にも負けない気がした。

 

ロードが立ち上がって、ソードスキルで俺を狙う。俺はそれをホリゾンタルで相殺して、少し減速するとアスナが前に出る。

 

「セアアアア!」

 

リニアーを土手っ腹に突き込まれるが、ロードは耐える。足を踏ん張る。今度は、アスナを狙おうとするだろう。

 

だが、もう遅い。

 

俺はさらにアスナを追い越すと、ソードスキルを発動させる。剣がまとった光は、ホリゾンタルと同じ青。

俺の剣がロードの右脇腹から腹を切り裂く。

通常ならここで技後硬直を強いられる。

 

ロードのHPは…残り1ドットを残すのみだった。

ロードは何度も見た獰猛な笑みを浮かべる。勝ちを確信した、顔。

 

俺はそれに、片方の唇を吊り上げて返す。

 

そう、俺の技はまだ終わってない。まだ青い光をまとったままだ。

俺は足に力を入れて一気に跳躍。俺の剣がロードの腹から左脇腹を切り裂いていく。

片手剣ソードスキル2連撃技《ホリゾンタル・アーク》。

 

「オオ…ラアアア‼︎」

 

泥臭い叫び声とともに、剣がロードの体を突き抜ける。

ピッという音とともに残りの奴のHPがなくなり、ピシッという音とともに奴の体に亀裂が走る。

 

そして、轟音。爆散。

 

とてつもないポリゴンとともに、第一層ボス、イルファング・ザ・コボルドロードはその姿を消した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

しばらく、誰も何も言わなかった。俺も、剣を突き上げたまま静止している。まだ、緊張が抜けておらず全員が硬直している。

唐突に、ファンファーレがなった。俺が顔を上げると、そこにあったのは…

 

 

《Congraturation‼︎》

 

 

その言葉を見た途端、俺は全身の力が抜けその場にヘナヘナと座り込んだ。

そして、プレイヤー達の歓声が、主の存在しないボス部屋を揺らした。

 




ははは!やっと第1層が終わったねー。長かった!ここまで長かった!まだ第1層だけどね(爆笑)さて、一応第1層がまだあと1話だけ続きます!それが終わったらどうよっかなー。何層まで行こうか…まあ、また今度でいいか!とりあえず、感想と評価!お願いね♡
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