ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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最近よく書いちゃうんですよねー。なんかストレスでもたまってんのかな?あははははは。ま、気を取り直していきましょう。


第14話 ビーター

「ハア、ハア、ハア…」

 

途切れ途切れに俺は肩で荒い呼吸をする。俺たちベータテスター組の3人はしばらくその場に膝をついていた。

向こうではレイドメンバー達が喜びを分かち合っているが、どうもその中に入ろうとは思わなかった。

 

すると、目の前にウィンドウが現れる。それが表示されると莫大な量のアイテムと経験値が俺たちのステータス等に追加される。すべての経験値が加算された後、もう一つ、小さなウィンドウが出現する。

 

「これは…」

 

書かれていた内容は、ラストアタックボーナス、つまり特別報酬ゲットの報告だった。

 

アイテム名は、《コート・オブ・ミッドナイト》。

どうやら防具類らしい。

 

「ん…?」

 

カズマが不思議そうな声をあげてウィンドウを凝視する。

 

「…どうした?」

 

質問できない俺の代わりにシュンヤがカズマに質問する。カズマは後頭部を掻きながら立ち上がってウィンドウを指差す。

 

「…いや、なんか俺にもユニークアイテム獲得の知らせが来てるんだよ…。ラストアタックは兄貴だったのに…おかしくねえか?」

「ふむ…ちょっと見せてみろ」

 

シュンヤがカズマによって、ウィンドウを確認する。そこで「あっ」という声を上げる。

 

「これ、ラストアタックじゃねえな。見てみろ。ここに《MVP》て書いてるだろ?」

「MVP…?」

 

怪訝そうな顔をするカズマにシュンヤが驚きの顔を浮かべる。

 

「お前…MVPの意味も知らないのか?」

「知ってるよ。どんだけ俺低評価なんだよ。馬鹿にすんな。」

 

カズマが少しだけシュンヤを睨む。

 

「つまり、俺は一番頑張ったからこうして特別報酬を貰えた…って言ったらあれだけど。だからこうしてユニークアイテムを手に入れてると。」

「ま、端的に言えばそうだな。MVPボーナスなんて聞いたことねえけど…多分追加されたんだろうな。正式サービスに乗じて。あと、デカかったのは1人でロードの攻撃を防ぎ続けたことだろうな。しかも剣一本で。」

 

俺はなるほど、と思う。確かにあの時のカズマは凄かった。剣一本で全てを弾き、相殺するあの姿は多数のプレイヤーに驚きを与えただろう。

 

しかし、あれだけのことをしておいてすでに立てていることがおかしい。俺はまだ少しだけ息が上がっているというのに。

 

俺がゆっくりと息を整えていると、別の人物から声がかかる。

 

「お疲れ様。」

 

背後を見ると、そこには俺たちの暫定的パーティーメンバーのアスナが立っていた。予備のフードケープはないのかまだその美貌を露出して(何か如何わしいが)いる。

 

その言葉に続いて、アスナの横のナイスガイが低いバリトンで声を発する。

 

「見事な指揮…そして剣技だった。congraturation。この勝利はあんた達のものだ。」

「「「いやいや、俺なんて…」」」

 

3人が完全にハモり、俺以外の4人が少し大きな声で笑う。

 

するとアスナが俺に手を差し伸べ、微笑みながら「立てる?」などと聞いてくるので、少しだけ心臓が跳ね上がる。俺は少しだけ凝視してから、その手をつかもうと…。

 

 

「なんでや!」

 

 

後ろから悲鳴に似た絶叫が轟く。ボス部屋全体の雰囲気が一気に冷たいムードへと変化する。

全員が声の主…つまりキバオウの方に振り向く。

俺たちが静かにあぐらを組んで座っている彼を見ていると、さらにキバオウが叫ぶ。

 

「なんで…なんでディアベルはんを見殺しにしたんや…!」

「見殺し…?」

 

カズマが少しだけ怪訝そうに呟くと、キバオウは勢いよく顔を上げる。その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

 

「そうやろが!お前らはあの武器のスキルを知っとったやないか!あの情報をちゃんとみんなに教えとったら…ディアベルはんは死なずに済んだんや‼︎」

 

彼の言葉に、パーティーメンバーであろう人物が声を張り上げる。

 

「きっと、フードのやつだけじゃない…ほかの2人も元ベータテスターなんだ!だからいろんな情報を知ってたんだ!知ってて隠してたんだ!他にもいるんだろ⁉︎ベータテスター共…出てこいよ!」

 

彼の言葉に全員がざわめき始める。彼らの視線は俺たちに向けられていることだろう。背中に少し冷たい視線が刺さる。

 

これは、非常にまずいことになった。

 

俺たちのことはまだ良い。ばれることを覚悟であのような行動をとったのだから。だが、このままでは内輪もめになったり情報屋をやっているアルゴ達も迫害される可能性がある。

それだけは避けなくてはならない。

 

しかし、どうすれば…。

 

そこで、俺の頭に一つの案が浮かんだ。しかし、これをすれば俺は、俺たち3人はパーティーに入れなくなる可能性が高い。

そうなれば…

 

「兄貴」

 

カズマの声に少しだけ顔を後ろに向ける。少しだけ、苦笑する気配。

 

「わざわざ俺たちのことは考えなくて良いよ。乗りかかった船だ。好きにしな。」

 

俺の考えを察したのか、カズマがそんなことを言ってくる。その言葉にシュンヤも同意するように首を縦にふる姿が横目で見える。

 

「…悪いな。迷惑かける。」

 

俺は、俺たちは…演じなければならない。彼ら、プレイヤーにとっての悪を。他のベータテスター達に、怒りを向けさせないために。俺は一つ唾を飲み込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おい、お前…」

「あなたね…」

 

しびれを切らしたのか、アスナとエギルがキバオウ達に近づく。キバオウがアスナとエギルを睨む。

そこで、状況が動いた。

 

「ハハハハハハ!」

 

その笑い声にボス部屋にいる全員が発生源に向く。彼はゆっくりと立ち上がり、あざ笑うかのような目でキバオウを見下す。

 

「元ベータテスターだって?」

 

彼はゆっくりと歩き始める。

 

「俺たちをあんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな。」

「な、なんやと⁉︎」

 

彼はなおも歩き続ける。

 

「良いか?ベータテストはとんでもない割合の抽選だったんだぜ?おかげでほとんどの奴らがレベリングの仕方もわからない奴らばかりだったよ。」

 

彼は唐突に足を止める。

 

「でも、俺たちはあんな奴らとは違う。」

 

彼はさらにキバオウを見下す。

 

「俺たちは、他の誰もがたどり着けなかった層まで登った。ボスの攻撃パターンを知ってのはずっと上の層でカタナを使うモンスターと戦ってたからだ。」

 

彼は唇の片方をあげて毒々しく笑う。

 

「他にも色々知っているぜ?情報屋なんか、問題にならないくらいにな。」

 

その言葉に、キバオウやその他のプレイヤー達も目を見開く。アスナ達も少し驚きの顔を浮かべる。

 

「な、なんやそれ…そんなもん、ベータテスターどころやないやないか…もうチーターや!チーターやんかそんなん‼︎」

 

その言葉を火種に、数々の声が上がり始める。ベータテスターとチーターという言葉はやがて合わさり、《ビーター》という言葉に変わる。

 

「ビーター…良い呼び方だな。それ。」

 

彼の言葉にまた部屋の空気が凍りつく。

 

「そうだ、俺たちはビーターだ。たかがテスターごときと一緒にしないでくれ。」

 

彼はウィンドウを開いて、装備フィギュアを操作する。彼の戦いでボロボロになった麻のコートが黒革のコートへと変わる。

イルファング・ザ・コボルドロードのラストアタックボーナス、《コート・オブ・ミッドナイト》。

 

「…フッ。」

 

彼は少しだけ笑ってから後ろに向いて歩き始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺の発言で恐らくプレイヤー達の中で《ただのベータテスター》と《情報を独占する卑劣なベータテスター》というような感じで別れるはずだ。

 

『これで良い…』

 

正直、アスナとエギルが全て分かっているというようような顔でこちらを見ていたのは、かなりの救いだった。

 

俺が前を通る時に、カズマがフードを被って装備フィギュアを操作する。特に変わった様子は見えなかったので恐らくアクセサリーの類だったのだろう。

 

2人が俺に続いて歩き始めた。

 

「…大層な演説だったな、兄貴。」

「…うるさい…」

 

しかし、そこで後ろから足音が聞こえる。俺たちは足を止めて後ろに振り返る。

そこに立っていたのは、俺たちの暫定的パーティーメンバー、アスナだった。

 

「…何か用?」

 

俺が聞くとアスナは俺の目を見ながら言葉を発する。

 

「あなた、戦闘中に私の名前呼んだでしょ。」

 

そうだったけ、と俺は思う。確かに、どさくさに紛れて呼んだかもしれない。

 

「ああ、ごめん。勝手に呼んで。それとも、読み方違った?」

「そうじゃなくて、なんであなた私の名前知ってるのよ。」

「何故って…HPバーの上に…」

 

ここで、俺はアスナがこのゲーム初心者でパーティーを初めて組んでいることを思い出す。なるほど、知らないのも当たり前だ。

 

「HPバーが視線の右上にあるだろ。そこを見たらわかる。」

 

俺がそう言うとアスナは視線を右上に向ける。

 

「き、り、と…キリト?これが、あなたの名前?」

 

彼女はそう言うとすぐにクスリと笑う。

 

「なんだ、こんなところにあったのね。」

 

俺たちはそれに少し笑って返すと、扉に向かって歩き始める。その間、俺の口からアスナへのアドバイスが流れ出る。

 

「君はきっと、強くなれる。だから、信頼できる人にギルドなんかに誘われたら、断るなよ。」

「…君は、君達は、どうするの。」

 

その言葉に、俺たちは同時に扉の前で足を止める。

 

「ま、気ままに行くよ。嫌われ者は、嫌われ者らしくさ。」

 

カズマの言葉に俺たちは少しだけ頷く。

 

「そう…」

 

それを聞いた、アスナの声は少しだけ震えていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

二層への階段を上っていると、また足音が聞こえてくる。

またアスナが追いかけてきたのかと思ったが、さすがにこんなに早くに登ってくることはないという考えに至る。

 

それよりも彼女の年齢は何歳なんだろうか。年上に見えたが、どうも敬語というのは扱いにくい。

 

しかし、今度からは極力敬語を使うようにしようなどと考えていると登ってきた人物がその姿を表す。

俺はその姿を見て少し目を見開く。

紫色のショートヘア、同色の目に、体も紫色のシャツの上から麻のコートを着ている。

スカートは少し短めだが、腰から巻いた長い布のせいでほとんど見えない。俺の幼馴染である、ユウキだった。

 

「…追いついた。」

 

彼女は肩で息をしながら俺の方をまっすぐと見る。その美しさに一瞬息を飲み込むが、そんな場合ではないと思いながら首を振る。

 

「ユウキ…待ちなさい!どうしたのよ…」

 

後ろからランも現れ、感動の再会…とはいかないが、こうして俺たちは再会を果たした。

もっとも、ユウキが記憶を失っていなければ、だが。

俺たちの様子を見て混乱していた前を歩く2人に俺は手を追い払うようにふる。

 

その動作を見て、兄貴とシュンヤは上に歩き始める。

2人が見えなくなると、俺はフードを被ったまま片頰を上げて、少し笑う。

 

「さて、何か用かな?かわいこちゃん達。」

「か、かわ…⁉︎」

 

俺の言葉にランが反応して、頬を赤くする。おい。

 

「ボクから君に質問があるんだ。」

「…へえ。」

 

彼女の口調は、真剣だった。おかげで俺も少し口調を固くする。

 

「答えれる範囲なら答えてやる。」

「ありがとう。じゃあ、一つ目だけど…君たちは、なんであんな行動をとったの?」

「…」

 

あんな行動、というのはキバオウと対立のようなことをしたことだろうか。俺はそれに冷ややかに答える。

 

「別に、実際その通りだし隠すまでもなかったからな。」

「でも、君たちはこれじゃパーティーに入れないよ。」

「だろうな。」

「だろうなって…もしかして、君たちはあの場にいるプレイヤーの怒りを君たちだけに向けるためにあんなことをしたの…?」

「…」

 

俺はその言葉に少し言葉を詰まらせる。ユウキは普段は天然だったり鈍感だったりと抜けてるところがあるのだが、こういう時にとんでもなく鋭くなる。

 

「さあ…それはあにっ…キリトがやったことだからな。俺にはよく意図がわからなかった。」

「…本当に?」

「そういうことにしてくれたらありがたい。」

「そう…なら、これはやめておこう。二つ目の質問。」

 

ユウキは少し間を空けてその言葉を口にした。

 

「なんで、ボクの名前を呼べたの?」

「…!」

 

俺はさらに息を詰まらせる。これは、致命的だった。俺は逃げるように目をそらすと、こう呟く。

 

「…呼んだっけ?」

「呼んだ。」

「いや、聞き間違いという線も…」

「絶対呼んだ。」

 

ダメだこりゃ。

そう思うと同時に長くため息をついた。

そうだった。こいつは自分の意見を必ず曲げようとしない。そんな奴だった。

 

「…たまたまだよ」

「…たまたま?」

 

俺は苦し紛れの言い訳を呟く。

 

「ああ。お前が他の昔世話になった奴に似てたんだ。そいつと見間違えたから、名前を呼んじまったんだよ。」

「それは、嘘だね。」

 

うん、実際俺も苦しいと思ってました。

微妙な顔をする俺にユウキは一段、足を前に出す。

 

「わかるんだよ。君はあの時、確実にボクの名前を自分の意思で呼んだ。見間違えとかじゃなく、ボクの名前を確実に知った上で呼んだんだ。」

「うっ…」

 

俺は悲痛な声を出す。

 

本当に厄介だわ。こいつの感知センサー。ましてやさっきので詰め寄られて顔と顔がつきそうになるまで距離が縮んでいた。フードコートのおかげで顔は見えていないようだが。

 

「さあ、答えて。君は誰なのか。」

 

俺は頭の中で悩み始める。教えるのが正解なのか、答えるのが正解なのかよくわからない。後ろのランを見ても、任せると言いたげな顔をしていた。俺は少し俯いてから答える。

 

「…悪いな、言えないんだ。」

 

正直、この答えは良くなかったと思う。ここはなんの関わりのないただの他人を演じるべきだった。本当に、彼女のことだけを思うなら。だが、俺はそうしなかった。恐らく、いつかは自分の正体を明かすべき時が来るのをわかっていたから。

 

ユウキは俺の顔と目を少しだけ凝視してから息を吐いた。

 

「そう…」

 

ユウキは俺の近くから顔を離す。俺は終わったと考え、後ろを向いてまた階段を上り始めた。しかしまた、足を止めなければならなくなる。

 

「なら、どうしたら教えてくれる?」

「…どういうことだ?」

 

ユウキの目は依然としてこちらに向けられていた。

 

「どうすれば、君の正体を明かしてくれるの?」

「…」

 

俺は、答えられなかった。結局、自分の心の弱さが正体を明かすのを拒否している。これは、俺の心の問題だ。だから、ユウキがすることなど…

 

「わかった。じゃあこうしよう。」

 

ユウキは指で俺を指す。

 

「ボクは君に助けられた。それはつまり、ボクが君より弱いってことだよね。だから、ボクが君よりも強くなったら君は正体を明かす。それで、どうかな?」

「… へえ。」

 

彼女らしい、考えだった。負けず嫌いの彼女らしい…。俺の口から自然と笑みが漏れた。

 

「判定方法は?」

 

俺の質問にユウキはニッと笑う。

 

「デュエルで決めよう。半減決着モードでね。それなら安全でしょ?もちろん、君がOKすればだけど。」

 

その言葉に、その笑顔に、俺は動かされた。

 

恐らく、彼女が俺に勝つ日はそう遠くないとは思う。そして、彼女が俺に勝つ時には…

 

「いいぜ、のってやる。やりたいんだったら、いつでも来な。歓迎しよう。」

「フフフ、約束だよ?」

「ああ、何年かかるかわからないけどな。」

「すぐに追い越してみせるから!」

 

俺の心も、少しは強くなっているだろうか。

俺は2人での会話を懐かしく感じながらそんなことを考えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

カズマの姿が見えなくなると、ユウキはランに声をかける。

 

「姉ちゃん、ボク…」

 

満面の笑みでランの顔を見る。

 

「新しい目標、見つけたよ。」

「ええ…。」

 

ランの目は、涙で濡れていた。

ユウキは下に降り始める。しかし、3段ほど降りた時にピタリと足を止めてから叫んだ。

 

「ああ!名前聞くの忘れてた!」

 

ランのクスリという笑い声が風によってかき消された。




長え!すげえ長くなった!初めて書いたわ、こんなの!楽しかったけどね!
さて、ユウキがカズマを倒すことができるのはいつなのか!下手したら勝てない!最短で次の日!どうなるどうなる⁉︎
と読者の皆さんは思っているでしょうからなるべく早く投稿します。評価と感想、よろしくね☆アデュー♡
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