ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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俺たちは二十一層の主街区帰ってきていた。
素材集めがまだ終わってなかったが、そんなもんは正直いつでもできるので途中で切り上げた。

俺は後ろにいる少女に目を向ける。

彼女の名前は武藤 沙綾。
俺と同い年で現実世界の俺のお隣さんだ。現在は両親と兄の4人暮らし(だったはず)。ちなみにその兄は現在俺の兄さんと同時期に失踪した。

俺はNPCカフェを見つけて、店内へと入った。


第17話 シャムの悩みと解決

「いらっしゃいませ。室内とテラス席のどちらにしますか?」

「テラスで。」

「かしこまりました。どうぞこちらへ。」

 

とても聞きやすい発音でNPCウェイターが俺たちを歓迎してから、席へと案内する。

 

俺がこの店を選んだ理由は客が少ないからだ。

客が多いとその中に、攻略組がいる可能性がある。それにより、沙綾の悪い噂が流れるのは死守しなければならない。

俺と沙綾が案内された席に座るとウェイターがポケットから伝票を取り出す。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「コーヒーのホット。」

 

俺は黙ってこちらを見ている沙綾と目を合わせながらウェイターの方を指差す。

 

「あ、じゃあカフェオレで…」

「はい。ホットコーヒーとカフェオレですね。かしこまりました。」

 

そういうと女性ウェイターはそそくさと店内に入っていく。

 

約10秒後、テーブルへと届けられたコーヒーカップに口をつけて中身を啜る。

沙綾も両手でカップを持ち上げながらゆっくりと啜る音が聞こえる。

2人ともカップを下ろしてから、まず沙綾が言葉を発した。

 

「あの、ありがとうございました。助けていただいて…」

「ん?いいよ礼なんて。それより、ああいう輩も増えたからお前も気をつけろよ?」

「そう、ですね…」

 

少しだけ静寂が訪れる。俺はカップを持ち上げながら、唐突に質問する。

 

「なあ、お前って本当に沙綾か?」

「え?」

 

俺の質問にキョトンとした顔を浮かべるとこくりこくりと頷く。

 

「ええ、そうです…どうかしたんですか?」

「いや、俺が記憶しているお前の性格だと俺のゲームの腕に対して文句言ってるぐらいしか思い出せないんだよ。」

「は、はあ。」

 

俺の言葉に彼女は少し困った顔をする。

 

「もしかして沙綾の双子って線も…」

「ないですから!沙綾本人ですから!」

「えー…」

 

俺は少し疑いの目を向ける。

 

「私、兄はいても姉妹はいませんから!そんなに疑うんだったら隼人さんの恥ずかしいエピソードムグッ!」

「よしわかった、落ち着こう。な?」

 

俺は爆弾発言を仕掛けた口を慌ててふさぐ。

ていうかなんだよ俺の恥ずかしいエピソードって。

逆に気になるわ。

いや絶対に言わせんけど。

 

「それにしてもあれだな、本当に性格変わったな、お前。」

「ええ、まあ。あなたと遊ばなくなってから男性と接する機会が減りましたから…」

「じゃあ今ぐらい良いじゃないか。2人きりなんだから。ほれ。素で喋ってみろよ。」

 

俺は少々わざとらしく手を広げる。沙綾は少しだけ硬直していたが、すぐに俯く。

 

「…こっちの方が慣れてきてるのでこちらで…」

「…あらそう。ならしょうがないな。」

 

俺はもう一度コーヒーを啜ってカップを置く。

 

「それじゃ、早速だけど二つ質問して良いか?」

「え、ええ。どうぞ。」

 

沙綾が手招きするので俺はすぐに一つ目の質問をする。

 

「お前、プレイヤーネームはなんていうんだ?」

「え?」

 

少し驚いた顔をするので俺は言葉を続ける。

 

「プレイヤーネームだよ、プレイヤーネーム。いつまでも本名で呼べないだろ?」

「あ、はい。私は、名字と氏名から頭文字をとって《シャム》っていう名前にしてます。」

「シャム…武藤の《武》に沙綾の《沙》か。安直だな。」

 

俺の言葉にシャムは唇を尖らせる。

 

「そ、そういうあなたはなんなんですか?プレイヤーネーム。」

「俺?シュンヤだよ。霧谷の《谷》に隼人の《隼》。」

「あなたも同じようなものじゃないですか!」

「別に良いんだよ、男なんだから」

「プレイヤーネームに性別は関係ありません!」

 

シャムはしばらく息を荒げていたが、すぐに立ち上がっていたのに気づいて椅子に座りなおす。

 

「ま、いいや。次が本命だから。」

「…別にいいなら言わないでくださいよ。」

「良いじゃないか。楽しいし。」

 

俺の言葉にシャムは唇を再度尖らせる。

 

「それじゃ、次の質問だ。」

 

俺は持ち上げていたコーヒーカップを皿の上に戻す。

 

 

「どうして、ソロで迷宮区にいたんだ?」

 

 

俺の言葉に、ビクリとシャムはの体が震える。

その一言で、空気が変わった。

 

「ど、どうして、と言いますと?」

 

俺はシャムの装備を一瞥してから喋る。

 

「この層…つまり二十一層はないまだ攻略されてからそんなに経ってない、いわゆる準最前線って所だ。まだまだ攻略組もそんなに油断できない難易度になってる。そんな所で攻略組でもないお前がレベリングなんてすれば危険な状況になることは目に見えてたはずだ。もちろん、オレンジギルドのことも含めてな。」

 

シャムは俺が喋るごとにどんどん萎んでいくが俺は言葉を続ける。

 

「見た所、お前の装備からしてレベルは20から22位だろ。まだまだ安全マージンは取れてない。せめて階層の数字よりも5から7上…29、8にならないと攻略は難しい。しかも、パーティープレイならまだしもソロプレイをするならもってのほかだ。せめて13上…34はいる。」

 

俺はぐいっとシャムに顔を寄せる。

 

「なあ、なんでお前はパーティープレイをすることを嫌うんだ?ソロプレイは危険が多いことくらい分かってるだろ?」

 

俺の質問に、シャムは少しだけ黙り込んだ。

何か言いたくないことでもあるのだろうか。

 

 

「…嫌ってるわけじゃ、ないんです」

 

彼女は消えてしまいそうな、小さな声を出す。

その表情は、暗い。

 

「私は、パーティープレイを嫌いじゃありません。むしろ良いことだと思ってます。危険を回避できるし、攻略も効率よくできるし、何より人と仲良くなれますから。」

「じゃあ…なんでソロプレイなんかを?」

 

俺が教師のような口調で問うと、シャムは小さな声で答えた。

 

「女だからって特別扱いされるのが、嫌いなんです。」

 

シャムは拳を強く握ったのか、腕が少し震える。

 

「私は、ギルドを何度も転々としました。みんな優しくて、楽しいと思ったことは何度でもあります。けど…みんなみんな、私を特別扱いするんです。」

 

俺には、一生わからない悩みだなと俺はそう思った。

 

「食事に行った時も、絶対におごってくれたり、ラストアタックも必ず譲ってくれたり、欲しいものが被ったら譲ってくれたり…。最初は心地良いんです。けど…いつまでも続くと、ただの重荷になってくるんです。私ばかり特別扱いして、みんなに迷惑をかけてるんじゃないかって…。」

「理由は…それだけ?」

 

俺の言葉にシャムは首を振る。

 

「もう一つだけ、あります。」

 

 

そういうとシャムは俺を指差した。

 

「あなたに、追いつきたかったから」

「…俺に?」

 

シャムはこくりと頷く。

 

「シュンヤさんは知らなかったかもしれませんけど、私ずっと攻略組の人たちが迷宮区に向かう前の転移門前で集合するときに近くにいたんです。…ただの、興味本位の見学でしたけど…。」

 

「そんな時でした…あなたを見つけたのは。」

 

シャムは指を下ろしてまっすぐと俺を見つめてくる。

 

「見ただけで、私はあなたとわかりました。中学でも、顔を合わせてましたから。私よりも高性能の防具と武器を身につけて、迷宮区に向かうあなたを見てると焦燥感が襲ってくるんです。『隼人さんがあそこまで上り詰めてるのに、私は何をしているんだろう』って。変な所で負けず嫌いになっちゃったんです。」

「…」

 

シャムは笑いながらそう言うが、実際悔しかったのだろう。幼馴染である俺と彼女の差があまりにも開いていることが。今でも、俺とカズマのレベルの差は1開いていて時に悔しくなる。

 

「だから、変なプライドと変な焦燥感にかられて私はあそこでレベリングをしてたんです。…すいません。バカみたいな理由で。」

 

その言葉を、俺は受け止める。俺は少し考える。こいつが、早く強くなれて、かつ安全な方法を。

俺が一緒に攻略する?いや、それじゃあシャムの悪い噂が立ってしまう。

近場の効率の良い狩り場を教える?いや、効率がよくても危険に陥ることはある。

どうすれば……

 

「あっ。」

 

そこで、俺はあるアイディアを思いつく。俺の顔をキョトンとした目で見ていたシャムに質問する。

 

「お前は特別扱いされなくて、強いギルドが良いんだよな?」

「え?え、ええ。少し欲張りですけど1番はそれが良いです。というか特別扱いされなければどこでも…」

「よし、わかった。」

 

俺はウィンドウを操作してメッセージ作成の欄を押して、ある人物とメッセージのやり取りを開始した。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

《カズマ、ちょっとユウキに聞いて欲しいことがあるんだけど。》

《近くにいるけど、どうかしたのか?》

《あっそう?デート中に悪かったな。》

《デートじゃねえよ》

《ま、良いや。ユウキにギルドメンバー1人増えても良いか聞いてみて。ちなみに女性プレイヤーな》

 

ーーーーーーーーーーーー

 

俺はシュンヤのメッセージを見てから後ろで木の花の匂いを嗅いでいたユウキに声をかける。

 

「おい、ユウキ。今お前のギルドメンバーに1人入れても大丈夫か?」

「ん?」

 

ユウキは俺の方に向くと少し嬉しそうにする。

可愛いなちくしょう。

 

「あ、まさかカズマが入ってくれるの⁉︎大歓迎…」

「違うわ。」

 

俺は手を広げて近づいてきたユウキの頭を鷲掴みにして、動きを止める。

 

「シュンヤの知り合いを入れたいんだと。女性プレイヤーだってさ」

「ああ、そう。うん、大歓迎だよ。レベル制限は…20あったらボク達であげてあげるから。」

「はいよ」

 

俺はユウキの頭から手を離してメッセージを返す。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

《レベル20あったらOKだってさ》

《おーサンキュー。》

《お礼として飯一回おごれ。》

《…考えといてやる》

 

ーーーーーーーーーーーー

 

そこまで返した所で俺はウィンドウを閉じて、メモに少しだけ文字を打ってから可視化モードにしてシャムに見せる。

 

「今日、いつでも良いからこの場所に行け。できれば夜が良いな。俺の名前を出して紹介されたと言ったら良いと思うから。」

「…何ですか?この住所。一体誰の…」

 

その質問に俺はニヤリと笑って返す。

 

「ギルド《スリーピング・ナイツ》のギルドホームの場所だよ。」

 

その名前を聞いてシャムは大きく目を見開く。そして頭と手を同時にブンブンと振る。

 

「む、無理ですよ!私が入れるわけないじゃないですか!」

「?何でだよ。」

「だ、だって…スリーピング・ナイツって攻略組、ですよね?そんなところに低レベルの私が入ったって…」

 

俺は少しため息をついて説明を始める。

 

「ギルドのリーダーに聞いてもらったけど20あったらOKだってさ。多分レベリングにぐらい付き合ってくれるんじゃないか?それにギルドリーダーがお前と同性だから特別扱いされることはまずないだろう。」

「い、いや…でも私なんかが…」

「どうせレベリングするんだったら安全で効率悪いより、安全で効率良いほうが良いに決まってるだろ。ギルドリーダーに許可もらったから問題ないって。」

「は、はあ…」

 

俺はそのメモを半用紙に写して机の上に置くと席を立つ。

 

「俺の仕事はここまでだな。あとは自分でやれ。」

 

俺は席を戻してから出口に歩き始める。

 

「あ、あの…シュンヤさん!」

 

俺は顔だけをシャムに向ける。

 

「ありがとう、ございました!」

 

俺は少しだけ笑ってから手をあげて、ひらひらと振った。

 

 

あれから数日が経った。どうやらシャムは無事スリーピング・ナイツに入って、一生懸命レベリングをしているようだ。たまにレベリングを手伝って欲しいというフレンドメッセージが来る

あいつはこれからどんどん強くなっていくだろう。今はレベルが足りないが、いつか一緒にボスと戦う日を想像すると自然と口がほころんでしまう。

 

「楽しみだな…。」

 

そんなことをつぶやいて、俺は迷宮区に一歩足を踏み入れた。

 




ふー、疲れた。なかなかの重労働。ていうか俺今週書きすぎたね。来週は休憩期間かなー、多分。ほんじゃま、感想と評価頼んだぜー。
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