ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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( ̄▽ ̄)⇨(´・_・`)⇨Σ(゚д゚lll)


第22話 まさかの出来事

鳥のさえずりが俺の鼓膜を通って脳に伝わる。それと共に金管楽器の優しい音色が頭の中を流れていく。毎晩セットしている起床アラームだ。

 

「…」

 

俺は薄く目を開ける。

その視界は、薄く滲んでいた。目を手の甲で拭ってから、ようやく自分の目から涙が流れていることに気づく。

 

夢を見ていた。

楽しかった、あの頃の日々を。

俺自身の弱さを悔やんだ、あの日のことを。

 

「…」

 

涙は少しの間だけ手の甲に溜まっていたが、すぐに小さなポリゴンとなって消滅する。

 

もうこの世界にとらわれて一年以上の月日が経過していた。アインクラッドもすでに半分近くが攻略され、解放への希望がプレイヤーの間でも現れ始めていた。

ちなみに、現在の月日は12月31日。もう新年まで残り24時間を切っている。

 

「よっと…」

 

俺はベッドから降りて、丸テーブルの脇を通り過ぎて窓のカーテンを開ける。

今まで遮断されていた光が一気に差し込み、少し目がくらむがそれもすぐに消える。

同じ高さの周りには色とりどりの建物が並び、下では朝の9時半にも関わらず、たくさんのプレイヤー達が行き交いとても賑わっていた。

 

ここ、第四十層主街区の中にある少し小さめの宿屋は俺の今の住処となっている。気分によって宿屋は変えていくのだがこの宿屋は中も広く、キッチンもあるのでなかなか気に入っている。

下に少しだけ視線を移すと、数人のパーティーが笑いながら転移門の方に向かっていくのが目にとまった。

 

サービス開始当初にはありえなかった《笑う》という行為。

誰もがダンジョンに向かい、数多くの人々が命を落とした最初の1ヶ月間。

 

だが、今は違う。

今はアインクラッド中に《悲しみ》だけでなく《喜び》すらも溢れている。つまり皆、慣れてきているのだ。この《アインクラッド》に。

 

「解放、か…」

 

俺はプレイヤー達を見ながらひっそりと呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「〜♪」

 

包丁を使って具材を切り、その具材を水と共に鍋に入れてレンジに投入。時間を設定してOKボタンを押す。これだけで朝飯の調理はほぼ終わった。

 

ちなみに今朝のメインはシチューなのだが、シチューが2分程度でできてしまうのはどうかと思う。普通はもっと手順があるのだが、具材を切ってそれを水と一緒に鍋に入れてレンジに投入するだけでこの世界の料理は終わってしまう。つまらないことこの上ないのだ。

 

俺が時間を持て余してアイテム欄の整理をしていると、部屋のドアがノックされる。

 

この世界では部屋の外から宿屋のドアを開けられるのはパーティーメンバーか借りた本人、または夫婦に限られる。他のものは外から開けようともしてもビクともしない。

 

「はいはい。」

 

俺はベッドから立ち上がって、ドアに駆け寄る。俺が今宿屋の場所を教えているのは、兄であるキリトと、たまに行動を共にしているシュンヤのみだ。

 

『あいつらと会う約束なんてしてたっけな。』

 

俺はドアを押し開ける。

 

「どちらさんで…」

 

しかし、その正体はキリトでもシュンヤでもなかった。

 

体を紫を基調としたTシャツとその上から寒さ対策の同色のコートを羽織り、下半身はジーパンに似たズボンで包んでいる。目と髪は同じ紫色で、髪の長さは元々のショートではなくロングに変えている。口元に浮かぶ笑みと真っ白い肌が妙に眩しい。

俺は攻略組でもトップクラスの実力を誇る少女、ユウキの顔を見ながら質問する。

 

「…なんか用かな?」

「えへへ〜、来ちゃった♪」

「そう、ご苦労様。それじゃさよなら。」

 

俺がそそくさとドアを閉めようとするとドアと壁の間に足を入れて締められないようにする。

 

「…あの、やめてもらえますかね。変な宗教のご勧誘なら結構ですので。」

「うふふ、誰もそんなこと言ってないよね。あとボクはちゃんとした宗教の信者だから。キリスト教だよ、キリスト教。」

「そうですか、それは恐れ多い。あいにくと私、神などというものはそこまで信じておりませんので。」

「いやいやいやいや、ちょっと待って。話を聞いて。ギルドメンバーにいかがわしいことを言ってたって言っちゃうよ?それでもいいのかい?」

「おい、せこいぞ。俺が他に仲良い奴いないことを知ってて言ってるのか?」

「当たり前でしょ。ほら、うちのギルメンに嫌われたくないんだったらさっさと開ける。」

 

俺は少し間を空けて渋々ドアを開ける。この世界で俺と仲良くしているのはキリト、シュンヤ、アルゴ、エギルとエギルのパーティーメンバー、クライン、アスナ、そしてスリーピング・ナイツの面々のみだ(ジュンという大剣使いには嫌われてる節があるが)。

 

なのでスリーピング・ナイツの面々に嫌われると俺の味方をしてくれる人物が減ってしまう。そういうのは日頃は困らないがいざとなったときかなり困る。

 

「それで、何の用だよ。」

「朝ごはんを頂戴しにきました!」

「うん、素直でよろしい…とでもなると思ったか?」

「少しだけ。」

 

ユウキはなぜか照れ笑いを見せる。俺は後頭部を掻きながらユウキを見る。

 

「お前なあ、そんなもんランに食わせてもらえよ。姉妹なんだろ?」

「あはは…それが…」

 

ユウキはなぜか目をそらす。

 

「?なんだよ。」

「実は、姉ちゃんも来てるんだよね。」

 

そうユウキが言うと扉の向こうからひょっこりとユウキに似た顔立ちの少女の顔が現れる。

 

「…すいません。」

「…お前まで金ないのか?」

 

俺の質問にランはこくりと頷く。

マジか。金遣いの洗いユウキはともかく几帳面なランに限ってそんなことが…

 

「何か理由があるのか?」

 

俺の質問にランは俺から目をそらす。

 

「実は…この前スリーピング・ナイツのギルドホームの移転をしたんです。」

「ほう。確かに前のはちょっと狭かったからな。良いじゃないか。」

 

ギルドホームの移動はかなり頻繁に行われる。一年くらい同じだったギルドはこいつらくらいのものだと思う。

 

「はい、それで…引っ越したのは良いんですけど…」

 

なるほど、だいたい察した。

 

「つまり、引越しに使った金のせいで今は財布の中がほぼ空ってことか。」

 

ランは申し訳なさそうにこくりと頷いた。

 

「というわけで、食べさせて!」

 

俺は両手をお椀にして出してくるユウキを見る。こいつ、反省の色が全く見えない。そもそもギルドリーダーのこいつがしっかり予算案を出せば良い話だったのだ。

それに朝飯くらいはゆっくり食いたい。俺は1番手っ取り早い方法を取ろうとする。

 

「悪いけどもう食っちまっ…」

ポーン。

 

最悪のタイミングで最悪の効果音が流れた。シチューの完成した音。その音を聞いてユウキはにっこりと満面の笑みを浮かべる。

 

「今の音って、料理ができたときの音だったよね。」

「…シチューが丁度出来上がったみたいだな。」

 

俺は大きくため息をついた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

正午過ぎ、朝飯を食べ終えた俺はある場所に来ていた。次層まで続く長い塔の中。つまり迷宮区だ。

 

現在、ヒースクリフ率いる血盟騎士団とユウキ率いるスリーピング・ナイツが二番目ほどの位置を攻略している。

風林火山やエギルたちは血盟騎士団の少し下ぐらいだろう。

なら1番上は誰かというとソロプレイヤー、攻略組の中で《トップスリー》やら《ビーター》やら言われている3人だった。

その中には俺も入っている。

 

この3人は攻略ペースがほとんど同じなので同率一位である。

そして、俺は今第五十層の迷宮区に生息するガイコツを相手にしていた。名前は無駄に長いので省くが、こいつは動きが遅い代わりにかなりの筋力パラメーターが設定されている。

 

「キシャアアアア!」

 

俺は上段切りを顔スレスレで避けて攻撃に転じる。

片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》を発動。キュキュキュキュンッという音を立てて剣が高速で相手の体を切り刻む。

 

「グアッ!」

 

それだけでは満タン近くまであったHPを削ることはもちろんできない。技後膠着を強いられた俺は一歩も動けない。その姿を見てガイコツはケタケタと笑う。

 

奴はまた懲りずに上段切りを繰り出してくる。奴の剣が振り下ろされた…直後。奴の腕は何かにぶつかったかのように同じ方向に跳ね返る。

当たり前だ。俺の仕掛けた罠にはまったのだから。

 

「王手。」

 

俺はつぶやきながら通常の剣技を繰り出した。それだけで奴のHPは全損して、ポリゴンへと変化する。

 

俺はまた歩き始める。

 

それにしても朝飯を食べたあと、ユウキたちは何やら急いでギルドホームへと帰って行った。今日は元日の前の日だから当たり前なのだろうか。俺はこの世界に来てからほとんどそんなことをしたことがないのでよくわからない。

 

それにユウキの足取りがいつもより軽かったような気がしたのも気のせいだろうか。

そこで、歩いていた廊下の一部が下がる。いや、引っ込んだ。

 

「ヤベッ…!」

 

俺はこれがトラップだということを瞬時に判断した。たまにこういうトラップが存在するのだ。いつもはよく注意しているのだが、考え事をしているとそうはいかなかった。

 

前方から矢が5本飛んでくる。俺は剣を抜いて4本は斬り伏せたが、一本は逃した。その一本は俺の左胸へと吸い込まれて刺さる…はずだった。

 

 

カァンッ!!

 

「ん?」

 

 

しかし矢は左胸に刺さる直前に見えない何かに弾かれたかのごとく下に落ちた。そして、俺の胸にはある英語が書かれていた。

 

日本語に直すと…《不死属性》。

 

俺は左胸をさらに凝視する。どうやらコートではないらしい。コートは少しだが破れている。つまり、中になにかある…もとい居るというわけだ。

俺は左胸ポケットに手を突っ込んで何かを掴むかのように指と手を動かす。

 

「わっ…ちょっ…やめ…」

 

そんな声がポケットの中から聞こえるがもちろんやめない。十数秒後、俺はそれを捕まえて引っ張り上げる。

俺はそれを訝しげに見つめる。女だった。虫のようなサイズの、羽の生えた女。一言で表すと、妖精のようだった。

 

「は、はぁい♪」

 

引きつった笑みを浮かべる妖精に俺は質問をした。

 

「誰だ?お前。」

 

妖精はいつまでも、引きつった笑みを浮かべていた。

 

 




見つかっちゃった( ̄▽ ̄)なんということだ。そんなことがあって良いのか!良いんですね、これが!
さて、次回はお話が多くなります。ていうか最近バトルシーン書いてねえ。落ちてないかなあ、腕(´・_・`)
感想と評価、頼んだ。
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