ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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「ねえ、カズマ。どこに行くのよ。こんな低層まで来て。」
「ここ四十層だから全然低層じゃない。準最前線の一つだからな。一応。」

カズマは歩きながらメルにそう呟く。カズマに見つかってからというものメルは普通に顔を出して喋っていた。

「どこに行くのよ。行くなら最前線でしょうに」
「ちょっと待ち合わせがあってな。」

その言葉にメルは何やら意味深な笑みを浮かべる。

「あら?彼女からのお誘いよりも大切な待ち合わせ?お姉さん気になっちゃうわ。」
「彼女じゃねえし、俺はお前より年上だろう。」
「知能的な問題よ、カズマ君」

その言葉にカズマは少しだけメルを呆れた目で見つめる。午後4時ということもあって、歩き人々もだんだんと多くなっていた。


第24話 レッドプレイヤー

「それで、あの人とはどこまでいったの?」

 

かなりの数の細い木を持ちながら、シウネーが質問する。その質問に聞かれた張本人であるユウキはぱちくりと目を瞬かせた。

 

「へ?あの人…ってどの人?それにどこまでいった、ってどういう意味?」

 

ユウキの言葉を聞くと、シウネーは顔を近づかせる。

 

「ほら、あの人よ。フードコートを着た攻略組《スリートップ》の1人のカズマさん。」

「あ、ああ…カズマね…。どこまでいった、とは?」

 

その答えに今度はランがため息をつく。

 

「ユウキ、あなた察し悪すぎよ。シウネーが言いたいのは、あなたとカズマさんの関係がどこまで進んだかってこと。」

「え、ええ‼︎」

 

ユウキは驚きのあまり手に持っていた薪を全て落とす。

 

「な、なんで…そんなことを…」

「あら?知らないの?《攻略組の中で付き合っている疑惑のある人たち》っていうアンケートをアルゴさんが取ったらしいのよ。そしたらなんと、1位はあなたとカズマさんだったわ。」

 

「ええええええ!いやいやいやいや、ありえないって!たいしたこともしてないのになんでそんな…」

 

その言葉にシウネーが少しだけ呆れたような目を向ける。

 

「ユウキ、あなたいつもカズマさんと話したり街を歩いたり、挙げ句の果てには抱きついたりしてるでしょ?それが主な原因ね。」

「うっ…!」

 

ユウキが痛いところをつかれたというふうに胸を押さえる。

 

「ぼ、ボクとカズマが…そんな…」

「あら、嫌だった?」

 

シウネーの問いにユウキはブンブンと首を振る。

 

「そ、そんなことないよ。ただ…カズマからしたら迷惑なんじゃないかって…」

「それはないんじゃない?カズマさんだって表面上では少しめんどくさがってるけどまんざらでもない感じだったし。きっといいカップルになると思うけどなあ。」

「う、うーん…」

 

そんなシウネーの言葉にユウキは顔を赤く染め、恥ずかしそうにうつむいていた。

 

「あ、それで2位がシャムちゃんとシュンヤさん。3位がアスナさんとキリトさんだったわ。」

「ええ⁉︎私もですか?」

 

今まで黙っていたシャムが大きく声を上げる。

 

「ええ、この三組は4位以下ととんでもない差があったらしいわ。」

「良いわねー。青春って感じで。ユウキ、お姉ちゃん羨ましいわ。」

「か、からかわないでよ!」

 

ユウキはダメージ直前の強さでランの肩を殴る。2人は笑い、もう2人は恥ずかしそうにうつむいている。なんてことない、楽しそうな光景。それがこの後、地獄に変わる。

彼女たちが通り過ぎた林の中から、何者かが動く音が聞こえた。

 

ーーーーーーーーーーー

 

俺は多くなってきた人混みを抜けて、一本の路地裏へと入る。現時刻は飯も食っていたので、午後6時。夕飯時で、かなり人通りも多くなってきた。

しかし、路地裏に入った俺の耳にはそんな喧騒は入ってこない。俺は路地裏を歩き続け、その先で、少し小さめの広場に出る。

その広場に設置された小さな花壇の上に、こじんまりとしたシルエットが一つ。

俺と似たフードケープをかぶり、少し見えるほおには両方に3本のペイント。どこかネズミを連想させる小柄な体型。

俺はそれに近づく。するとあちらも気づいたようで、笑っている口元をこちらに向ける。

 

「やあ、カズ坊。2分遅刻だゾ。」

 

俺はその声に手を上げながら答える。

 

「ごめんごめん、電車が遅れて。」

 

そんな俺の完璧なジョークにアルゴは大きくため息をつく。

 

「ジョークのセンスもキリ坊並みカ。さすが、兄弟ってのは怖いネー。」

「…兄貴と同レベルはかなりきついな。」

 

俺は頭をかきながらそう呟く。彼女こそが俺と待ち合わせをしていた、凄腕情報屋。

アルゴは俺を少しだけ見つめる。

 

「な、なんだよ…」

「いーヤ。なんか寂しそうな顔してるなと思ってサ。ユーちゃんと何かあったカ?」

 

ユーちゃん、とはユウキのことだ。何故かアルゴは他人のことをあだ名で呼ぶ節がある。俺は少しだけため息をつく。

 

「あったというかなかったというか。キャンプの誘いを断っただけだよ。」

「彼女からのお誘いを断るなんてバチが当たるゾ。」

「さっきも同じこと言われたような気がする。だから彼女じゃねえって。どんだけ俺をからかう気だ。」

「ホウ、この前のアンケートで1位を取った奴が何を言ウ。」

「…」

 

この前のアンケートとは攻略組の中で付き合っている疑惑のある人たち、なんていうアンケートを勝手にアルゴが行いやがったのだ。プライバシーが少しだけ侵害された。

 

「…あれ嘘入ってねえ?」

「入ってるわけないだロ。俺っちはガセネタは売らないんでナ。」

「…さいですか。」

 

そんなくだらない話をしていると、さらなる闖入者。

 

「すいません、アルゴさん。遅くなりました。」

 

古風な赤い着物に身を包んだプレイヤー。俺とももう長い付き合いとなるシュンヤだ

 

「おー、シュン坊。遅いぞ。」

「すいません、人混みに巻き込まれました。」

 

その言葉を聞いてアルゴが二ヒヒという笑みを浮かべる。

俺はその顔を見て内心ため息をつく。なんで楽しそうな顔なんだろう。

 

「まあいいヤ。役者が揃ったところで商売をしようカ。」

 

アルゴはバックパックから取り出した汎用紙を花壇の上に広げる。そこに映し出されているのは、数々の数字と少しの文字。

アルゴはまず《1〜10》と書かれた部分を指差す。

 

「まずは低層からだナ。一〜十層の被害状況は以前からは少なくなってル。あと十一〜二十層も同じ、かなり少なくなっていル。」

 

アルゴは両手でトントンと叩きながら俺たちを見つめる。

この汎用紙に書かれているのは、その層で死んだプレイヤーの数だ。しかも、ただの死亡者数ではない。PK…つまり、プレイヤーキルをされた死亡者数だ。どうやって調べているのかは知らないが、アルゴは俺たちが頼むと必ず調べてきてくれる。

 

「四十層から上はほとんどゼロだな…やっぱ高レベルプレイヤーが多いからか?」

 

俺の問いにアルゴは真剣な顔で頷く。

 

「ま、そーだろーナ。レッドたちは必ずと言っていいほど自分たちより弱いか同じ力量のやつを選んで襲ウ。だから上層には手を出さないんだロ。」

「なるほど…だとしたら問題は…」

 

シュンヤが《31〜40》の部分を押す。

 

「ここですか。」

「あア。」

 

アルゴはこくりと頷く。

 

「最近、三十層から四十層の間でのPKが異様に増えてる。案の定1番やりやすいからなんだろうガ…これはやっぱり異常だヨ。」

「約半年で100人…これは確かに異常だな。」

「対策は何か?」

 

アルゴはシュンヤの質問に首を振る。

 

「いいヤ。こればかりは対策のしようがないからナ。一人一人が注意するしか方法はないんだヨ。…けどまあ、それが難しいからお前達がいるんだけどナ。」

 

アルゴは、少しだけ笑みを浮かべる。

 

「ま、そうなるな。」

 

俺とシュンヤは、3ヶ月に一度。こうしてアルゴと集まり、レッドたちの捜索に出ていた。最近になってレッドが増えているとの通報を攻略組が受けて、俺とシュンヤが捜索員に選ばれたという次第だ。今まで捕まえたレッドの数は3桁にのぼる。

そのせいか、俺とシュンヤにはとても不愉快なふたつ名をつけられてしまった。

そのことを思い出したのか、アルゴが少し笑う。

 

「いやーしかし面白いよナ。お前ら2人のふたつナ。」

「…やめてくださいよ。気にしてるんですから。」

「いいじゃないか、かっこいいんだかラ。」

「…フォローになってないです。」

 

肩を落とすシュンヤの肩をポンポンと叩く。

アルゴはそれからこちらに向き直ると、俺にもう一枚汎用紙を渡してくる。

 

「ここがよくレッドたちが出現する場所ダ。多分ここの近くに根城を構えていると考えていイ。」

「分かった。」

 

俺は汎用紙のマップを広げる。位置は森の中で、かなり深いところに印が入っている。

 

「そこは結構景色が綺麗で、キャンプとかにも最適らしいナ。」

「へー、キャンプね…」

 

 

 

……ん?キャンプ?

 

俺は閉じようとしたマップをまた素早く開く。そこはかなり狭い木々の間にあり、西の方角には開かれた場所がある。おそらく…日の出が見える場所。そして、階層は…三十二層。

 

「…なあ、アルゴ。30層代で、キャンプができるのはここだけか?」

「ン?ああ、そうだナ。二十代に行くと増えるんだけどその代わり三十代は少なくてそこだけダ。モンスターも湧かないしナ」

 

…何故だろう。額からの汗が全然止まらない。なにか、なにか引っかかることがあるはずだ…なにか…。

 

 

『三十層あたりでキャンプするんだよ。モンスターのわかない場所でね。』

 

 

俺の頭に浮かんだのは、昼に聞いたユウキの言葉。

三十二層。モンスターが湧かない。キャンプ。そして、増えているレッドたちの事件。

そのピースが全て重なり合う。

 

俺の恐れが、ほぼ確信に変わる。

 

「…まずい…!」

 

俺はウィンドウを開いてからアルゴから貰った汎用紙に書かれている場所にマークを入れる。そして装備フィギュアに移動して、愛剣を装備する。その時間、わずか2秒。

 

「シュンヤ!今すぐここに行くぞ‼︎」

「へ?なんだよ急に…っておわ⁉︎」

 

俺はシュンヤの腕を握って、敏捷力パラメーター全開で走る。路地裏を3秒で駆け抜け、転移門まで全力のダッシュ。まるで他のプレイヤーたちが止まっているかのようだった。

 

「転移…‼︎」

 

転移門に着くや否や、三十二層の主街区の名前を叫んで転移する。一瞬の浮遊感の後、視界がクリアになると俺はもう一度ダッシュを開始する。しかし、今度は俺の肩をシュンヤに掴まれた。

 

「なんだよ、説明しろ!」

 

シュンヤの声に俺は声を張る。

 

「今日、ユウキたちがキャンプをするんだよ!…恐らくこの層で!」

「は…?キャンプ…?」

 

シュンヤは少しだけ考え込んでいたが、すぐにハッとした顔になる。

 

「そう、この層でキャンプをするってことはあの場所にしかない。…PK多発の場所しかな!」

 

俺はそれを告げるとまた走り出す。

 

「それは…やばいな!」

 

付いてきたシュンヤが声を上げる。

 

「ああ、かなりやばい!俺の幼馴染も、お前の幼馴染もな!だから、今は急ぐしかない‼︎」

 

俺はさらに速度を上げた。主街区の家々が、霞んで見えていた。

 

ーーーーーーーーーーー

 

「あっ…う…」

 

ユウキは動かない体を動かそうとする。しかし、体は言うことを聞かない。まるで不可視な何かに体の所有権を奪われているかのように。

横や後ろでは、《スリーピング・ナイツ》のメンバーである…ラン、シウネー、ジュン、テッチ、タルケン、ノリ、クロービス、メリダ、そしてシャムが倒れている。

 

ユウキは自分のHPバーを見る。そこには、麻痺を知らせるアイコン。つまり、誰かに麻痺させられたのだ。しかも、タンクであるテッチの耐毒を超えるほどの高レベルな毒を…。

 

『…いったい、誰が…』

 

そんな言葉に答えるかのように、ユウキの前から足音が聞こえる。それも、かなり多くの。

顔だけを上げてみると、そこには30人〜40人入るであろうフードの集団が立っていた。アイコンは、全員《赤》。

 

「…レッド…プレイヤー…」

 

その声に呼応するかのように、中央のプレイヤーはニヤリと口元を歪めた。




ようやくここまできましたね。俺がこの小説で本当に書きたかった話。それはこれから後の話です。面白いかどうかわかりませんが、これからもお付き合い宜しくお願いします。感想と評価、宜しく( ̄▽ ̄)
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