ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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♪〜♪〜♪〜

綺麗な音色が、俺の鼓膜を揺らす。俺が昨晩セットしておいた目覚ましアラームの音楽だ。

俺は目を開けて、数回瞬きをしてからウィンドウを開いて現在時刻を確認する。別にウィンドウを開かなくても見れるには見れるが、今は首や目を動かしたくないので、唯一動かせる手を動かす。

現在時刻は、朝の2時。
まだまだ日は昇っておらず、外は暗闇に包まれている。さすがの年越しパーティーも終了しているようだ。昨夜のような喧騒は窓から聞こえてこない。

俺は今日、少し予定があるので朝早くに起きなければならなかった。

「よっ…と…」

俺は手をベッドの上について、体を持ち上げよう…としたところで、俺の体がグッと引き止められた。
腰には何かが巻きついているような感触があり、一向に離れようとしない。

「あー…すっかり忘れてたな…」

俺は頭を掻きながらベッドに寝そべる体を反転させて、後ろに振り向く。
俺が後ろに向いたことで、肩甲骨と肩甲骨のあいだに埋めていた顔が、俺の胸に埋める形となる。数秒おきに繰り返される温かい寝息が俺の胸を熱くする。

俺はなおも起きようとしない少女…ユウキに囁きかけた。

「…ユウキ、起きろ。出かけるぞ。」
「…んむう…?」

ユウキはゆっくりと目を薄く開けると、パチパチと瞬きをしてから寒さを感じたのか俺の体にさらに自分の体を押し付ける。柔らかい感触が肌に伝わり、甘い香りが鼻腔をくすぐることで俺は「んぐっ…!」という奇妙な声を喉から出した。

昨晩、俺は夜道は危ないということでユウキを家に泊めた。昨日あんなことがあったばかりだしな(何故かユウキの方から先にお願いしてきたのだが)。
俺の部屋のベッドはツインではないので俺は床に寝袋を敷いて寝ようとしたのだが…ユウキに却下された。そして、畳み掛けるように一緒に寝るようお願いされた。
もちろん(即断ではないが)OKを出した。

皆は今、俺が甘すぎると思っていないだろうか。

…考えてもみたまえ、男性諸君。
君たちに異性の幼馴染がいるとしよう。その子は今まで君がずっと思い続けた、可憐な少女です。そんな彼女が上目遣いに、目を涙で濡らしながらこうお願いしてきました。


『ね…一緒に…寝てくれない…?』

断れる?俺なら絶対無理だね。


…だってしょうがねーじゃん!可愛いんだから!破壊力抜群なんだよ!?心臓に水素爆弾落とされた気分だよ!?

…とまあ、そんなことがあって俺はユウキと一緒に寝ることになったのだが…これまた服装がいやらしい。
まるで俺を誘ってきているかのようだ。

俺はユウキを見下ろす。
まずユウキの肩に目を向けた。
暗闇ではあまり見えないが、首よりの肩の上に細い紐が掛かっている。それはよく見える。だが、それだけだ。あとは真っ白な肩が全て露出されていた。

そして、さらに目線を下ろす。
今度は丁度胸のあたりだ。まず背中を見る。隠す気ゼロだった。シャツは来ておらず、ブラジャーも付けていない。薄紫色の薄い布1枚だけ。
ブラジャーも付けていないということは、もちろん、ち…いや、言わない方がいいな。
とりあえず大切なものがほぼ剥き出しになっていた。

俗に言うこのナイトキャミソールなるものは本当にやばいと思う。女性が男性の前で着ていいものでは無い。とにかく隙が多すぎる。悩殺専門服なのだろうか。

俺は視線を外してユウキの柔らかい肩を掴んで、さらに揺すった。

「おい、ユウキ。時間だ起きろ。」
「ん…ええ…?」

ユウキは謎の言葉を呟くと、俺の胸にさらに強く頭を押し付けてきた。温かい体温が肌に伝わり、俺の体温も一気に上がる。

「あと…5分…」

その言葉に俺は少しキョトンとすると、少し微笑んでユウキの頭に手を回してギュッと抱きしめた。

「…あと5分だけな」
「は〜い…」

ユウキは嬉しそうにアハハと笑った。

「ハハッ…。」

それにつられて、俺も笑った。


第30話 I LOVE YOU.

「眠い…」

 

目を擦りながらそう呟くユウキを見ながら俺は苦笑する。

 

「まあ、まだほとんど夜だからな。気持ちは分からんでもないが…」

 

俺は少しだけユウキの手と繋いでいる左手の力を強める。そうした方が温かくなるから。

 

結局あの後、ユウキは30分程も寝た。俺は何度も起こそうとしたが、頑として起きようとはしなかった。俺が甘すぎるだけなのかもしれないが…

 

俺は少しため息をつく。

とにかく、俺たちはある場所におよそ5時までにつかなくてはならない。その理由はというと、そうしないと見れないものがあるからだ。事前にアルゴから情報はとってるので、見えるかどうかは心配ない…はずだ。多分。

 

…まあ、あいつはガセネタは売らない主義らしいので大丈夫だろう。

俺が手を引きながら坂を登っていると、ユウキは体を震わせた。俺は少しだけ足を止めるとユウキに振り返る。

 

「…寒いのか?」

 

俺の質問にユウキは俯きがちに頷いた。今のユウキの格好は「着てみたかったから」という理由で期間限定装備の振袖を着用している。

鮮やかな紫色の上に、美しい様々な色の花が描かれていてとても可愛らしい。首筋に巻かれたファーがなかなか温かそうだがそこまで甘くないようだ。

 

「…これって4つぐらいアイテム欄取るから、多分その時に厚い上着は除けちゃったんだと思う…」

「あー、じゃあお前が今日…じゃなかった。昨日着てたのはあれは薄い素材のやつなのか。」

「…」

 

ユウキは頬を少し紅潮させ、黙って頷く

俺も思わず今朝の絶景…もとい、ユウキの格好を思い出してしまい、「んんッ」と咳払いでごまかす。

…だが、ユウキの少し申し訳なさそうな顔を見ていると自然と笑いがこみ上げてきた。

 

「プッ…」

 

思わず少し吹き出してしまう。俺の様子を見て、ユウキは可愛いらしくぷくーっと頬を膨らませる。

 

「な、なにさっ!わざわざ笑うことないじゃないか…!」

「いや…ごめんごめん。つい…」

 

俺は笑いを引っ込めてから、息を整えた。俺とユウキの視線が交錯する。

俺は少しだけ笑いかけた。

 

「お前は、昔からそんなとこがあるよな。なにをするにも、毎回ちょっと抜けててさ…やっぱそんな可愛いとこは変わってないよな。」

「む、む〜…」

 

ユウキは頬を赤くし、口をへの字にしてそんな声を出す。やがてぷいっとそっぽを向くと、言葉を発する。

 

「ふ、ふん。そんな顔されたら…なんも言えないじゃん…」

「?なんか言ったか?」

 

俺の質問にユウキは答えなかった。何も言わず、ただただそっぽを向き続ける。俺はその光景にも微笑しながらウィンドウを操作する。そしてある物をオブジェクト化してユウキの頭の上に放り投げた。

 

「わぷっ…!」

 

ユウキはびっくりしたのか、そんな声を出すと放り投げられたものを掴んで自分の目の前に持ってくる。

俺がユウキに投げ渡したものとは…

 

「コート?」

 

そう、予備のコートだった。

俺はいつも同じコートしか着ていないので、予備は正直不要だったが…兄貴に「一応持っとけ」と手渡されたのでここ2ヶ月ほどアイテム欄に収納したまんまだった。

…まさかこんなところで役に立つとは。

 

「えっ…いいの?使っても…」

「ああ、俺は全然使わないから。」

 

ユウキはぱあっと顔を明るくすると急いだ様子でコートを着る。

ほおっという安らいだユウキの顔を見て…俺は少しだけ、たった1人の兄貴に心の中で感謝した。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

俺の目の前で、燃え上がる炎から離れた火の粉がパチッと爆ぜる。炎から発せられるオレンジ色の光が俺とユウキの顔を控えめに照らす。

今現在の時刻は午前4時きっかり。目的の時間まであと1時間といったところか。俺達は目的の場所で、焚き火を炊いていた。周りを床無しのテントのようなもので囲って風をしのいでいる。

 

俺が木の枝で炎の調整をしていると目の前で体育座りをしているユウキが話しかけてきた。

 

「カズマとさ、キリトは…兄弟、なんだよね。」

「え?…ああ、そうだな。」

 

俺はその質問に少し驚きながらも答えを返す。ユウキは今、記憶を取り戻しているので昔、1度だけ兄貴と会ったことも思い出しているはずだ。

ユウキは少しだけ微笑んだ。

 

「本当に…変わったね、二人とも。昔は性格とか髪の形とかが全然違ってたから『あ、あんまり似てないな』とか思ってたけど…4、5年も経つとここまで変わるんだね。記憶が戻った今ならわかることだけど…」

「…似てるってことか。」

「うん。ボク、たまに間違えちゃってたからね。実の話。」

 

確かに、コートをフード付きにしてなかった時があったが、その時に二、三度ユウキに「キリト〜」とか言いながら呼び止められたことがあったっけ。俺が今フード付きのコートを着ている理由はそれもひとつだ。

 

「ま、それを言えばお前ら姉妹は昔っから似てたけどな。」

「あー、そうだね〜…昔はクラスメイトの子達によく間違えられてたな〜。あっ、そういえばカズマは1度も間違えたことなかったよね!」

「愛情の量の違うんだよ。」

「え〜…ちょっと気持ち悪いよ。」

 

体を抱くようにして後ずさるユウキを見ながら俺はもう一度笑う。

実際、俺は木綿季と藍子のことを間違えたことは一度たりともなかった。それが愛情のおかげなのかどうかは分からないが、なんとなく感覚でわかるのだ。幼馴染とは、そういうものなのだろうか。ある意味、超能力に近いと思われる。

 

「…楽しかったね。あの頃は。」

「…ああ。」

「も、もちろん!今も楽しいからね!?」

「分かってるよ。別に慌てて訂正しなくてもいいって。」

 

俺は微笑みながらそう返す。

そう、あの頃…小学校3年までは、本当に楽しかった。馬鹿みたいにはしゃいで、泣きあって、笑いあう日々。今でも、俺の大切な思い出だ。

 

「ね…教えてよ。ボク達と分かれてから…どんな日々を歩んできたのか。」

 

俺はそんなユウキの要望に驚きの表情を浮かべると、少し戸惑ったような笑みを浮かべる。

 

「…中学までの俺の人生ほど、楽しくないものはねえぞ?」

「…そうだとしても、ボクは知りたいんだ。カズマのこと。」

 

その言葉から、俺たちは少し黙り込んだ。俺の目の前にあるユウキの眼にはオレンジ色の炎が揺れている。恐らく、あちらから見える俺の目も、そうなっているだろう。

俺たちはしばらく見つめ合い…俺が最初に、静寂を破った。喉から、少しだけ笑い声を漏らす。

 

「…そこまで言われたら、教えないわけにはいかねえな。」

「ありがとう、カズマ。…ボクのワガママに付き合ってくれて」

「そんなもんは慣れっこだ。…ただし…」

 

俺は少しだけ笑うと、ユウキの薄い小さな唇の前に自分の人差し指を立てた。

 

「つまんなくても…途中で投げ出すんじゃねえぞ?」

 

俺の言葉に、ユウキは力強く頷いた。その頬は、少しだけ…紅潮してた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「お前達と別れた後、俺は何も手がつかなくなってた。好きだったゲームもせず、メールのやり取りもせず、剣道もせず…勉強も、正直何もやる気が起きなかった。」

 

俺は顔を下に俯けたまま、昔の自分を語り出す。俺の声に合わせて、炎も少し揺れる。

 

「…その頃の俺は、《あること》がきっかけで少しだけ…まあ、人間不信になってな。クラスメイトはもちろん、友達のはずの冬木でさえ…敬遠してた。」

 

先程、俺は人間不信になり《かけた》と説明したが…あれは細かく言うと正しくない。実際、人間不信になっていたのだ。あくまで《重度》のものにはならなかったものの…《軽度》なものにはなっていた。

 

「そんな俺にも…冬木のやつは気にかけてくれてさ。毎日話しかけてくれてたよ。…やっぱ友達ってのは良いもんだな。今だからわかるけど…俺はあいつに、かなり救われてたと思う。」

 

俺の話を、ユウキは黙って聞いている。その顔色は、俺にも読めない。

 

「結局、人間不信が軽くなったのはかなり最近で…小六の時、やっと冬木と話せるようになったんだ。」

 

俺の話は一区切りついた。ここで、ユウキがようやく言葉を発する。

 

「…その間、カズマは何してたの?」

「その間は…勉強と剣道に明け暮れてたよ。一応、ゲームとかもしてたけど…やる気起きなくてさ。道場の師範代も、かなり気を使ってくれて…俺にはあまり話しかけなかった。俺が話せたの、家族だけだったからな。」

 

俺の話した後、ユウキは俯いて黙り込む。二人の間に、静かな時が流れる。ユウキはなおも下に俯き続け…その目尻から、透明な雫がこぼれ落ちた。

 

「ユウキ…?」

「ごめん…ごめんね…カズマ。」

「な…なにが…?」

 

謝られている理由がよく分からず、俺は少しだけ首を傾げる。俺の話した中に、ユウキが謝ることなんてあっただろうか。ユウキは涙を流す目を手で擦る。

 

「ボクを…ボク達を助けたから…そんなことに…ボク達のせいで…」

「それは違う。」

 

俺はユウキの意見を真っ向から否定した。ユウキは俺の目を見る。

 

「あれはユウキのせいなんかじゃない。お前達をいじめた加藤たちと、あいつらを甘く見てた俺のせいなんだ。それに、俺は自分の意思でお前達を助けたんだ。お前やランが気に病む必要は無い。」

 

俺は自分の意見をはっきりと述べた。

そう、あれは俺が俺の意思で選んだ道だ。雰囲気に流されたわけでもなんとなく助けた訳でもない。大切だったから、守りたかったから。だからこそあそこで俺は行動した。

しかし、俺の意見を聞いても、ユウキはどこか申し訳なさそうだった。

 

「だ、だけど…」

「…」

 

俺は少しだけため息をつく。ユウキの意見を曲げないという性格は、こういう時に少しだけめんどくさいことになる。

俺は木の枝を置き、立ち上がると身を屈めながら狭いテントの中を移動し、ユウキの横で膝をつく。

俺の視線とユウキの濡れた瞳が交錯した…その直後。俺はユウキの体を自分の体に抱き寄せた。

 

「え…?」

 

ユウキは少し驚いたような声を出す。俺は背中に手を置いて、ユウキの頭を撫でる。少しだけ違う点はあるが…昨夜の光景と、立場が逆になっていた。

 

「あれは…俺が選んだ道なんだよ、ユウキ。たとえ世界中の誰からも拒絶されたとしても…お前らは俺が守るって、そう決めたんだ。俺はあのことをお前らのせいになんてしない。だからさ…そんなに思い詰めるなよ。」

「…うん。」

 

その後は、パチパチと火花の爆ぜる音と、ユウキの嗚咽だけがテント内を満たしていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「おっ、もう五時か。」

 

俺はウィンドウを開いてそう呟く。

俺たちはあの後、ユウキが俺の膝に乗ったまま話の続きをした。内容は…また後日ってことで。

とりあえず、ようやく俺が目当ての時間になったわけだ。俺は立ち上がるとユウキに手を伸ばす。

 

「ほら、行くぞ。」

「あ…う、うん。」

 

ユウキは俺の手を掴む。俺はユウキの手を引っ張って立ち上がらせる。

 

「そういえばさ…今日は何を見に来たの?来た時は、別に何も無かったけど…」

「そんなの、決まってるだろ?」

 

俺はニヤリと笑うと、テントの入口部分に手をかける。

さあ、ここでクエスチョン。

場所は崖の上。時刻は早朝。日付は元日。天気は晴れ。

さあ、この状況で見るものといえば…?

正解は…

 

 

「これだよ。」

 

 

俺はテントの入口部分を捲り上げた。すると、とてつもなく眩しい光がテント内に入り込んでくる。ユウキが眩しさのあまり目を細める。俺はユウキの手を引きながら外に出た。

そこにあったものは…青い空に囲まれた、一つの巨大な、光る球体だった。

 

「うっ…わあ…!」

 

ユウキは感激のあまりか、そんな声を出して文字通り目を輝かせる。

そう、答えは…初日の出だ。

 

そしてここは、俺とアルゴだけが知っている穴場。

元は日頃の感謝を込めて攻略組で来ようと思っていたのだが…今日バタバタしてたので二人で来ることになったのだ。正直申し訳ないとも思うが…しょうがないとも思う。

 

「綺麗…」

 

目を輝かせるユウキを見ながら、俺は少しだけ微笑む。その笑顔だけで、ここに来た価値があるだろう。

そして、俺はユウキの肩を抱き寄せながら、独り言のように呟く。

 

「そういや…俺去年ここである願い事をしたんだよな。」

「へえ…どんな?」

 

俺の言葉にユウキは興味津々と言いたげに目を輝かせた。

 

「いや…恥ずいな…」

「ほらほら、言った方がいいと思うよ?ボクにそんな面白そうな話をしといて話さないってのはルール違反だよ?」

「なんのルールだよ…」

 

俺は笑うユウキを横目で見ながらそんなことを呟く。ユウキの顔は満面の笑顔で、とても楽しそうだ。

しかしまあ、これだけは今日伝えておこうと考えていたので、俺に話さないという選択肢はないのだが。俺は少し息を吸いこんで、去年の願いを口にした。

 

 

 

「《ユウキに振り向いて貰えますように》…って、お願いした。」

「えっ…?」

 

 

ユウキは驚きのあまり俺の方に向く。俺はユウキの顔を見るのが出来ずに、ぷいっとそっぽを向いた。流石にここで顔を見れる奴は勇者だと思う。多分、俺の頬は今真っ赤に染まってるだろう。かなり、頬が熱い。

 

そんな時間が続いていると、不意に後ろから「プッ」と少しだけ吹き出したような声が聞こえて…俺は、飛びつかれた。不意打ちだったので、俺は地面に倒れてしまう。

 

「ぐえっ…!」

 

俺は背中から倒れて、仰向けになる。ユウキは俺の顔の横に手をついて、四つん這いになる。

俺とユウキの視線が再度交錯する。

ユウキは見るからに嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

「アハハッ。それは告白のつまりなのかな?…それにしても、カズマにしては随分と可愛いお願いしたね。」

「…るっせえな。」

 

俺は頬が熱いことを感じながら少しだけ歯ぎしりをしながらそっぽを向く。

 

『くそっ…言うんじゃなかったな…』

 

俺がそんなことを考えていると、ユウキは自分の体と俺の体を密着させる。

 

「…?」

 

俺はユウキの行動の意味がわからず、そのまま大の字になって転がり続ける。そして、その状態のままユウキは言葉を発する。

 

「…バカだなあ、カズマは。せっかくの初日の出にそんなことをお願いするなんてさ。」

「…悪かったなバカで。そんぐらいしかお願いすることなかったんだよ。」

 

俺が視線を上に向けたまま不貞腐れたかのようにそう呟くと、ユウキはアハハと笑う。

 

「本当にバカだよ…。だって…」

 

そこまでを口にすると、ユウキは地面についていた腕を伸ばして状態を上げる。ちなみに、今の俺たちの体勢はユウキが俺にまたがるような体勢になっている。

そんな他の奴らが見てたら誤解しそうな体勢で、ユウキは言葉の続きを口にした。

 

 

 

「…ボクの答えなんか、五年前からとっくに決まってたのにさ。」

「…えっ?」

 

 

俺は予想外の返答に、驚きの表情を作る。それと同時にユウキが自身の両手を俺の頬に移動させて、挟み込む。そして、ユウキの顔がゆっくりと近づいてきた…瞬間。

 

俺の唇に、柔らかい感触が生まれる。まるで、何かをあてた…いや、何かを重ねたかのような、そんな感触。

いつまでもユウキの顔が離れないということは…そういうことなのだろう。

 

「…!?!?」

 

俺は驚きのまあまりユウキの肩を掴んで押しのけようとするが、ユウキは俺の頬を挟み込んだままそれを許さない。俺の方がSTRは高いはずなのにユウキはまったく微動だにしなかった。ユウキの力が強かったのか、それとも…俺の腕に力が入らなかったのか。恐らくそれは、一生分からない案件だろうと俺は感じた。

 

 

 

「ん…」

 

十数秒してから、ユウキは自分の唇を俺の唇から話す。

 

「ぷはっ…」

 

俺は足りなくなった酸素を補充するために荒い呼吸を繰り返す(仮想世界だから酸素とか必要無いが)。

呼吸を整えて、真上を見ると恥ずかしそうに微笑むユウキの顔が目に入る。

 

冬場だというのに少しだけ汗ばんで、頬に髪がひっついているユウキはいつもより少しだけ大人っぽく見えて、少々ドキリとしてしまう。

 

「アハハッ、ファーストキス…かな?奪っちゃった。」

 

いつも通り、しかしいつもより恥ずかしそうに笑うユウキに俺は返答する。

 

「…ああ、ファーストキスだよ。…もちろん、お前もだろ?」

「正解。」

 

ユウキはそう言って微笑むと俺の顔の横に自身の顔を持ってくる。

 

「…やるんなら、やるって言えよな。このバカ。」

「ごめんごめん。カズマが可愛くって、ちょっと焦っちゃった。」

 

俺はユウキのその返答に少しだけ笑みを作る。相変わらず、不器用な奴だ。

俺はユウキの背中をポンポンと叩いてから話を進める。

 

「今のキスは…OKってことで良いのか?」

 

俺がそう聞くと、ユウキは俺に巻き付けている腕の力を強める。そして、恥ずかしそうに一言。

 

「…何度も言わせないでよ、バーカ。」

 

俺はその一言を聞いて、ほっと一息をつく。その一息は安堵か嬉しさか。それは分からなかったけれど…一つだけ言えることがあった。それは…

 

「ちゃんと、幸せにしてよね。ボクやボクの周りの人たちをさ。」

「…任せとけ。お前も、ラン達も…みんなまとめて俺が守ってやるよ。」

「…うん。」

 

俺たちの絆が、愛情が、さらに強固なものになったということだった。

 

 




遅れてごめんねー(*´▽`*)俺にも予定があってさー(*゚▽゚)ノアハハハハハハハ(⌒▽⌒)という訳で、ようやくくっつきましたよユウキとカズマ君。遅すぎだろという人も抑えて抑えて( ・ㅂ・)و ̑̑次からはキリトとシュンヤくんもバンバン出ると思うので楽しみにしててね!( 厂˙ω˙ )厂うぇーい
それではまた次回!感想と評価よろしく!うぇーい乁( ˙ω˙ 乁)

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