ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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「半減決着モードで…Yuuki、と。…ほれ。」
俺はコマンドを押し終わって、ウィンドウを目の前に立っている少女に飛ばす。
「おっ、きたきた。やっぱ階層攻略した後はこれがないと始まらないよね〜。」
少女はOKボタンを見ながらそうやって笑う。俺はそれに苦笑しながら返した。
「もう俺の正体分かったんだからやる必要なくね?」
「いやいや〜。これが今のボクの唯一の楽しみなんだよ?ボクから娯楽を奪うつもり?独占欲の強い彼氏だな〜」
「独占欲の使い方間違ってねえか?」
俺のツッコミに少女はOKボタンを押しながら笑う。
彼女がOKボタンを押すと同時に頭上でカウントダウンが進み始める。俺は背中から、少女は腰から剣を抜いてそれぞれの高さで剣を構えた。
「というわけで…手加減はしないでよ、カズマ。」
「そこは安心しろ。…ユウキとのデュエルで、手を抜いたことは一度もないからな。」
俺のその言葉にユウキは嬉しそうに微笑む。それと同時にカウントダウンが0となり《DUEL!》の文字が弾け飛んだ。
ユウキは一筋の風となって俺に走り込んできた…


第32話 またもや再会

かなりの犠牲者が出た第五十層のボス攻略が終わった…翌日。51層にあるかなり広い闘技場に剣戟の音と火花が飛び散る。観客席があるが、観客は誰一人いない。つまり、今ここにいるのは俺とユウキの二人だけ、ということだ。

第二層からもはや定番となった俺とユウキのデュエルだが…俺の正体がユウキにバレた(というか思い出した)今も続いている。いつもは第十四層にあるここよりは狭い闘技場でしていたのだが、五十一層にあるここの存在を知って戦闘場所をここに移した。ここは少しだが障害物もあるので、かなりやりやすい…

 

 

「ハアアアアア!」

「セアアアアア!」

雄叫びとともに青と黄緑の閃光が交錯する。俺とユウキはその衝撃によって後ろに吹き飛ばされた。

「よっ…」

「ととっ…」

俺たちは互いにすぐ立ち上がり、一瞬だけ相手を見つめる。そして…無音の跳躍。ソードスキルの撃ち合いから通常攻撃の剣戟に移行する。

ユウキの音速の斬撃を俺は先読みですべて迎撃していく。

その剣戟の間、ユウキの口角が上がっていく。それは…本当に幸せそうな、笑みだった。それにつられて、俺も口角が上がる。

俺とユウキのデュエルは、いつもこうだ。こんな剣戟が続くと、絶対に楽しくなって、口角が上がっていってしまう。これでは巷で《戦闘狂》などと呼ばれても仕方ないだろう。

「フッ…!」

俺はユウキの剣を思いっきり弾いて、互いの距離をとる。俺が剣を構えなおすと、ユウキが笑いながら話しかけてきた。

「アハハハ。相変わらず強いねー、カズマは。さすが攻略組の《スリートップ》の1人って言われてるだけはあるなあ。」

「ま、それが攻略の中でのソロプレイヤーの利点だよな。他のパーティーがいない分自分のレベル上げに集中できる…」

「そうだけど、いつまで経ってもボッチなのはデメリットだよね。」

「ほっとけ…よ!」

俺は右足を思いっきり踏み込んだ。大地が揺れる。一瞬の跳躍。ユウキは微笑んだまま俺の攻撃をいなすと、俺に神速の突きを繰り出す。

「ほいっ…と!」

俺はそれを弾くと、ユウキに斜め上段切りを繰り出した。前に出したユウキの剣と俺の剣が交錯して、鍔迫り合いとなる。

俺は剣を押し込みながらユウキに話しかける。

「ちょっと速くなったか?」

「まあね〜。最近結構レベルも上がったし筋力と敏捷が少しだけ上がったよ。」

「へえ、随分と調子いいんだな」

「あー、そうだね。…やっぱりファーストキスのおかげかな?」

その言葉を聞いて、俺の脳裏にあの時の記憶がフラッシュバックし、唇に感触が蘇る。そして、俺の顔の温度が一気に上がった。

ユウキはニヤニヤと笑っている。

「あ〜、カズマ赤くなってる〜。」

「う、うるさい!からかうな!」

俺はニシシッと笑うユウキに少し強めの声を出す。やはり、俺の叱責などこいつには全く効果がない。

「もぉ、かわいいな〜カズマは。…これ終わったらまたしてあげようか?」

「おまっ…!何言って…!?」

ユウキの言葉に動揺した俺は、力を少しだけ緩めてしまった。その隙を逃さず、ユウキが俺の剣を弾く。

「お前な…」

「フッフッフッ〜、不意打ちも戦略のうちだよ〜。」

「…ったく…」

俺は地面につけていた膝をゆっくりと持ち上げて剣を片手に構える。

ユウキは左手を前に出し、右手の剣を肩に担ぐ。どう見ても《ヴォーパル・ストライク》の構えだった。

「それじゃ、これで決めさせてもらうよ、カズマ。」

「…今回はかなり早めなんだな。」

俺の言葉にユウキはアハハッと笑う。

「この後予定があるからね〜」

「さいですか…」

俺は左足を前に出す。ユウキの剣が赤い光を発する。炎のような紅の光が、辺りを照らす。

俺は目標をしっかりと見据えると…右足を大きく踏み出した…はずだった。

右足を動かした俺の体がなにかに引っ張られるかのように引き戻される。

「!?」

俺は右足を見る。俺が目にしたものは…ふくらはぎに、ワイヤーが刺さっていた光景だった。

恐らく、先の鍔迫り合いの時に仕掛けられたのだろう。

「しまっ…!」

俺はすぐにユウキの方に振り返る。

ユウキは…すでに、動き出していた。そして、一言。

「チェック(王手)。」

 

 

ユウキに躊躇はない。

自分の筋力では、カズマの膨大なHPを吹き飛ばすことは不可能であることを知っているから。何よりも、本気で彼に勝ちたいと思っていたから。

ユウキは踏み込む。跳躍して、右手を突き出す。赤い刃が、カズマに向かって伸びる。

『とった…!』

ユウキは瞬時にそう思った。カズマがこれを躱す方法や受け切る方法は、何一つないから。

しかし…彼はまた、ユウキの思考を裏切った。

 

フッ…

ユウキの剣が当たる寸前、カズマの姿が掻き消える。ユウキの剣は虚空を切り裂いた。

「あ、あれっ!?」

ユウキは辺りを見回す。しかし、カズマの姿はない。

『一体、どこに…』

…直後、ユウキの顔に影がかかる。ユウキは反射的に上を向いた。目にしたのは…片脚を無くして、飛翔しているカズマの姿だった。かなりのスピードでユウキに向かって落下している。

「わわっ!」

ユウキは剣を自分の体の前に出すが、カズマに軽々と弾かれ、剣を離してしまう。カズマは剣を持ってない左手でユウキの肩をつかむとそのまま押し倒して、ガラ空きの首元に紅色の刀身を突きつけた。

「…」

「…」

先程までの剣戟が嘘だったかのように静かな時間が闘技場内を包む。

その静寂を破ったのは、カズマだった。

「チェック…かな。」

唇の片方を上げて、不敵な笑みを見せる。

「アハハ…」

ユウキは乾いた笑みを見せると、目を瞑って呟いた。

「アイ・リザイン。」

その言葉と同時にデュエルが終了する。カズマは勝利のファンファーレを聞きながら剣を鞘に収めて片足で立ち上がった。ユウキもそれと同時に上体を上げる。

「あーあ…また負けちゃった。」

「あはははは。今回は惜しかったじゃねえか。ワイヤー使われた時はちょっとだけびっくりしたぜ。」

その言葉にユウキは「むー」っと唇を尖らせる。

「上手くいったと思ったのに…どうやってワイヤーを切ったの?あれって鋼鉄製だから普通は切るのに1分ぐらいかかるはずなのに…」

「あそこ見ればわかるさ。」

カズマはある方向を指差す。そこはカズマがトラップに引っ掛かった地点だった。

ユウキは指差された方向に視線を向ける。そこには…一本のワイヤーと、黒いブーツを履いた左足が転がっていた。ユウキはカズマの無い左足を見てから苦笑を浮かべる。

「…足、切ったの?」

「ああ、もちろん。」

カズマは何ともないかのように腰に手を当てる。

「ワイヤーから抜け出すためにはそうするしかなかったしな。自分で足切って抜け出した。」

「…相変わらず、無茶苦茶だね。」

ユウキの苦笑にカズマはしゃがみこんで、ユウキのおでこを人差し指でつついた。

「人の戦術パクったやつに言われたくねえよ。」

「あうっ…」

ユウキは顔を俯かせた。カズマは座り込むとユウキに笑いかける。

「ま、いいんじゃねえか?強くなるためにはそうやって貪欲に人から技術を盗むのも大切なことだし。」

「…」

カズマの言葉にユウキは顔を上げる。カズマは腰からハイ・ポーションを取り出すと一気に煽る。空になった瓶を地面に放り投げる。二割ほど減っていたHPがじわじわと回復していく。

 

…………………………………………。

 

しばし、先程同様に静寂な時間が流れる。二人の髪をそよ風が控えめに揺らした。

ユウキは視線を少し上げて現在時刻を見た。そして、一瞬で立ち上がる。

「…どうした?」

「ごめん!今日はこれで解散ね!」

そう言いながらユウキは装備フィギュアを操作し始める。

「なんかあんのか?」

「今日はこれから姉ちゃんやシウネー達と買い物なんだよ!集合時間がもうちょっとなんだ!」

「ふーん…」

ユウキが装備フィギュアの操作を終える。そして、今までの戦闘服が一気に可愛らしい私服へと変化した。カズマは少しだけ見とれていたが、ユウキはすぐに出口へと方向転換する。

「じゃっ!また今度!」

「ああ、楽しんでこいよ。」

「勿論!」

そう言うとユウキは走り始める。

…しかし、途中で「あっ」と言いながら急ブレーキをかけると、カズマに再度近寄る。

「?なんだよ。」

カズマが訝しげな視線を向けるとユウキはニッコリと微笑んだ。

「ごめんごめん、忘れてた。」

そう言って、ユウキは自分の唇をカズマの唇に重ねた。そして、数秒後に離すとカズマが言葉を発する前に手を上げた。

「じゃねっ!」

そう言うとわずか10秒ほどで闘技場から出て行った。

「…」

カズマは少しだけフリーズしてから、少し唇を触って苦笑した。

「…ったく、台風みたいな奴だな。」

カズマは視線を上げる。空には、次層の蓋がすっぽりと覆いかぶさっていた。

 

 

「…」

俺はアルゴに貰った地図を見ながら人の多い道を歩き続ける。

この層は最前線にかなり近いので見慣れた攻略組のメンバーも多い。そして、転移門から歩き始めて、およそ5分後。俺は目的の場所に到着した。

それは…何の変哲もない、鍛冶屋だった。

 

少しだけ話は変わるが、俺には行きつけのプレイヤー経営の鍛冶屋があった。40層に店を構えるあまり大きくない鍛冶屋だったが、店主の腕は良かった。

店主は《ドナウ》という名前の少しおとなしい男性プレイヤーで、俺と同じ歳だった。

同じ歳だったということもあってか俺と彼はすぐに仲良くなり、暇な時はいつもその店に通った。彼の鍛冶にかける情熱はすごいもので、一度鍛冶について語り始めるといつもユウキを止めている俺ですら止められなかった。

しかし、彼の話はとても俺の興味を引いて、いつも俺を楽しませてくれた。

現実に戻れたら、絶対に彼と再開し友達になろう。そう思っていた。

だが…先日、その希望は奈落の底に落ちた。

彼は素材も自分で調達していたので、よくフィールドに仲間と共に出かけていた。

どうやらその日も素材取りに行っていたらしい。仲間によると、彼はモンスターと対峙していた時に、仲間達と離れてしまったらしい。

見失ってしまった彼の仲間達は一生懸命に捜索したそうだ。

しかし…捜索の途中で、彼はいきなり麻痺し数分後、HPバーが消滅した。

彼らはさらに必死に捜索したがアバターはおろか武器すら見つからなかったらしい。念の為、黒鉄宮へと確認に行ったそうだが…彼の名前には、横戦が引かれていたそうだ。

 

「…」

俺は自分の回想に息を詰まらせる。今まで何人もの死を間近で見てきたが、親友の死ともなるとその精神的ダメージはかなり大きかった。それに、彼がなぜ死に落ちたのか、その理由もわかっていない。彼らの捜索していた森は普通、麻痺毒を使うモンスターは出現しない。普通の毒はあるが。アルゴの情報によると、かなり遠い遺跡のフロアまで行ったのではないかということだった。そこなら、麻痺毒を使うモンスターが出現するから。だが、俺はどうも腑に落ちない。とりあえず、彼の件は不可解な点が多すぎるのだ。

俺は深呼吸をしてから気分を落ち着かせる。俺の目の前にはドナウが開いていた店と同じくらいの大きさの鍛冶屋がある。看板には英語で《ウッド武具店》と書かれている。

恐らく、ウッドというのがプレイヤーネームなのだろう。

『…多分、本名は《木下》さんとか《荒木》さんだな。』

俺はそんなどうでもいいことを考える。

この店はアルゴがおすすめしてくれた店だった。『攻略組なら、新しい行きつけの店が必要だろう』ということだった。正直、かなりありがたかった。俺も必要かなとは思っていたが、どうも自分からは言いにくかったから。

アルゴは地図を渡す時、俺の顔を見るやいなや「あまり気にするなヨ」と声をかけてくれた。

そこら辺は、アルゴからの気遣いだったのだろう。

俺はもう一度心の中で顔馴染みの情報屋に礼を言うと目の前のドアを押し開けた。

ドアの鈴がカランカランと鳴る。店の中は、無人だった。いや、一応NPCがいるにはいるが、それだけだ。プレイヤーは誰一人いない。あまり繁盛してないのか、剣は一本も売れてない(売れる度に補充しているのかもしれない)。

「いないのかな…」

俺は店主がいないことを確認してから商品棚に目を移す。そこには色とりどりの剣が置かれていた。どれもがとても美しい光を放っている。店主の腕が良い証だ。

俺はまず目の前にあった剣を手に取った。俺の筋力値には軽すぎるのか、羽のように感じる。それから全ての商品を手に持ってみたが、最重量のもので包丁ぐらいの重さだった。

「…スピード系の鍛冶屋か。」

俺はボソリと呟いた。俺的にはパワー系の鍛冶屋の方が良かったが、贅沢は言えない。俺は輝く刀身を見つめながら呟く。

「…メンテだけ頼もうかな。」

そこで、バァンッ!と工房に繋がるドアが開いた。俺はその音に背筋が凍る。どうやら、店主は外出中ではなく工房にこもっていたらしい。

「いらっしゃい!今日は何をお求めで!?」

店主の若々しい声が響き渡る。

…ん?この声、どこかで聞いたような…気のせいか。

俺は剣を棚に置きながら店主の方向に振り返る。

「あー、メンテを頼みたい…ん…だけ…ど…。」

店主の顔を見た瞬間、俺の頭は驚きのみで埋め尽くされた。

俺は店主の顔をマジマジと見る。驚きのあまり、思わず声がか細くなってしまう。

俺は再度、店主の全身を見る。身体は作業着を着てブーツを履いている。そして、顔に頭、パーツは全て見たことのあるものだった。…そう、現実世界で。

俺は震える指で相手を指さしながら、これまた震える声で相手の名を呼んだ。

「ふ、冬木…?」

相手も、驚きを隠せない声と顔で俺の名を呼んだ。

「か、和真…」

 

 

 

 

 




あー、最近あんまり寝てねえなあ!つっかれたなあ!
…あ、感想と評価お願いね♡
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