ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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遅くなってマジですんません!
生活環境変わって大変だったんです!
長くかけたので多分面白くなってる…はず!
それでは、どーぞ!


第33話 追ウ者

青い空の中。そこに、その城は建っている。

…いや、厳密には建っているのではない。《浮いて》いるのだ。地上数百メートルに浮かぶいくつもの層が積み上がった鋼鉄の城。

今はそれが、プレイヤー達の全てだ。正確には、VRMMO《ソードアート・オンライン 》をプレイするユーザー達の、だが。

電子の牢獄と化したこのゲームは、プレイヤーにHPが0になると現実の体も死に落ちるようになってしまった。そんな中、プレイヤー達は鋼鉄の城の中で剣を振り続ける。いつかこの城の最上階まで登りつめ、ゲームをクリアするために。今日もプログラムであるモンスター相手に一心不乱に戦い続ける…

……いや、モンスターだけを相手にしているわけではない。時と場合によっては、プレイヤー同士で戦わなければならない時もある。

いわば、人と人の《殺し合い》。そんなことを、連続して続けられる強心臓の持ち主は、たった一部のプレイヤーのみである…。

 

ガキィィィィン…!カラン、カラン…

黒衣の剣士が、ボロボロのローブを着ている小柄な男性の剣を自身の剣で弾く。

弾かれた剣は遠くまで飛んでいき、影の闇に包まれて見えなくなる。

黒衣の剣士は手に持つ同色の剣の切っ先をローブの男の首元に突き付けた。

黒衣の剣士は、声を低くして一言。

「多勢で俺を襲って首でも取ろうって魂胆だったんだろうが…悪いな。」

剣士は不敵な笑みを浮かべる。

「いっつもソロな俺も、今日だけは…《仲間》がいたんでな。」

ローブの男は悔しそうに歯嚙みをする。

ローブの男の周りには、同じ服装をした同志が手と足を紐で縛られて転がっている。そして、その中の一人はある男が椅子がわりに使っていた。

「殺す…貴様、必ず殺す…!」

乗られている男の殺意の篭った声と視線を、だが座っている青年は軽く受け流す。咥えていたハッカ草を吸って、息を吐く。

「あっそ。やれるもんならやってみれば?」

そう言うと座っている黒フードコートの青年は自分の背中に吊っていた剣を抜くと…座っている男の鼻先に突き立てた。

「剣なら貸してやるぜ?」

その余裕な様子にさらに苛立ったのか下に転がっている男は激しく身じろぎする。

その様子を見ながら、その隣にいた赤い着物の青年がため息をつく。

「カズマ…お前あんまり刺激すんなよ?逆恨みされたら色々面倒なんだから。」

その言葉にカズマはハッカ草を吸いながらさらに答える。

「やだよ。こいつらのせいで余計な仕事が増えてこちとら睡眠時間削られてんだよ。苛立ってんだよ。ストレス発散しないと割に合わねえだろ。」

着物の青年はやれやれと首を振ってから腰のポーチから回廊結晶を取り出し、ゲートを開く。彼らがいつも使っている牢獄に繋がれている結晶。

その後、黒衣の剣士・キリト、黒フードコートの青年・カズマ、着物の青年・シュンヤは手際よく黒ローブの男をゲートの中に放り投げた。そして、最後の一人を放り入れた後、カズマは大きくため息をついた。

「はあ、嫌だ嫌だ。兄貴一人殺すためにまさか四十人も投入してくるなんてな。」

「人気者ですね。」

そう言ってシュンヤが同情の笑みを浮かべた。キリトはバツが悪そうな顔をする。

「勘弁してくれよ。こんな事で人気者になんざなりたくない。」

キリトは大きく肩を落とす。その肩を、カズマは慰めるようにポンポンと叩いた。

 

シュイイイイイィィィィィ…

少し狭い工房の中に硬いものが擦れ合うような音が響く。その発生源は、こげ茶のズボン、黒いシャツ、青色のコートを着ている一人の青年からだった。

手に持っている紅色の剣を丁寧に回転する伽石に当てている。もう数秒ほどその動作を繰り返すと、彼は剣の刀身を少し見る。紅い刀身が昼の太陽の光を眩く照らし返す。

青年は頷くと、剣を鞘に収めて無造作に、しかし狙いを定めて剣を投げる。その放物線上にいた、もう一人の青年がそれを受け取るとお返しとばかりに金貨を一枚、指で弾く。

「毎度」と青色のコートを着ている青年は金貨を受け取りながら呟く。

剣を受け取った青年は紅い刀身を少し鞘から抜き出し、少ししてからまた鞘に戻す。

背中に剣を吊りながら青年は笑う。

「相変わらずいい腕じゃねえか。これでパワー系の鍛冶屋だったら尚いいんだけどな。」

その言葉に青色の青年は苦笑い。

「うるせえ。なんでてめえに合わせなきゃなんねえんだよ。うちはスピード系専門の店なんでな。」

そう言って二人は笑い合う。

 

青いコートの青年のプレイヤーネームは《ウッド》。

本名・冬木 淳。

カズマ、ユウキ、ランの同級生で三人の親友。数年前の事件の時に学校の委員会でいなかったため、標的にはされなかった。

父親が大手製薬会社の社長で、本人はその後継ぎを目指しているようだ。

 

和真は工房の扉に手をかける。そして、振り返り、冬木に向かって微笑む。

「じゃあな。目的も達せられた事だし、帰るわ。メンテ、ありがとよ。」

その言葉に、冬木は手をヒラヒラと振る。

「そんな社交辞令みてえな挨拶はいいから、とっとと帰って寝ろ。どうせまた、攻略とかで2、3時間しか寝てねえんだろ?」

「お、バレた?」

冬木の言葉に和真は少しだけ笑みを薄めた。

冬木は「当たり前だ」と言わんばかりに鼻を「フンッ」と鳴らした。

「ほら、さっさと寝てこいって。お前に死なれちゃアインクラッドのプレイヤー全員が困るんだよ。」

そう言いながら冬木は和真の背中をグイグイ押す。

「わ、分かった!分かったって!!」

和真は背中を押されながら工房の扉を開く。柔らかい日差しが入り、工房の中を少し照らす。そして、和真は冬木に一言。

「また茶でも飲みにきてやるよ。」

その言葉に冬木は苦笑して、腰に手を当てる。そして、返答。

「…出来れば売り上げに貢献してくれ。」

和真は踵を返す。そして、手を振りながら「考えといてやるよー。」と答えながら転移門へと向かっていった。

 

「ただまー」

「おう、おかえり。」

キリトは自宅というか、居候しているある男の店に入り、その店主に軽く挨拶をする。スキンヘッドの店主は男らしい笑みを浮かべながら、キリトに話しかける。

「今日の攻略はどこまで進んだんだ?」

キリトは振り向かず手を横に振った。

「大して進んでねえよ。途中でレッドの邪魔が入ってな。攻略どころじゃなかった。」

レッド、と聞いた瞬間スキンヘッドの店主…エギルは目の色を変える。

「レッドに襲われたのか…!?…よく無事だったな。」

エギルの言葉にキリトは何気なく答える。

「その時はカズマとシュンヤがいたからなあ。すげえ楽に戦えたんだわ。人数が多いっていいよな。あ、コーヒー頂戴。」

話が長くなることを悟ったキリトは流れるようにコーヒーを注文する。エギルはバツが悪そうな顔でカウンターにあるコーヒーポットからコーヒーを注ぎながら「うちは喫茶店じゃねえぞ…」とボヤく。

「サンキュ」

キリトはコーヒーカップを受け取って店の端っこにある椅子に腰掛けた。

「お前ら3人は本当に息ピッタリだよなぁ。よく3人だけでいるし。」

エギルは不敵に笑いながらそう呟く。対してキリトは微妙な笑みを浮かべた。

「まあ、あいつらぐらいしか俺につるむ奴なんていないからな…。」

基本的にビーターの3人はほかの攻略組プレイヤーから敬遠されていた。ただでさえ一般プレイヤーから畏怖されている攻略組の中でもあぶれるプレイヤー。…いや、これも畏怖と言えるのかもしれない。

この3人と友好関係を築こうとするものなど本当に少ない。

「俺はこの店があるし、スリーピングナイツの連中もあいつらなりの攻略があるしな。自然とそうなるのか。」

「ま、そうだな。」

キリトは無糖のコーヒーを啜る。

「にしても、お前らもよくやるよな。これで捕まえた犯罪者何人目だよ。」

「さあ…俺とシュンヤはまだ50とかそこらだけどカズマは個々で100とかいってんじゃねえの?」

キリトの返答にエギルは目を剥く。

「おいおいマジかよ…たった1人でそこまで相手にしてんのか…。何があいつをそこまで突き動かすのかね…。1つ上の兄貴から見てどう思う?」

エギルの問いにキリトは肩を竦めた。

「…うーん、さすがに兄貴だからってなんでも分かるわけじゃねえしな…。…ただ、」

キリトは少し口篭る。

「ただ?」

エギルは先を促す。キリトは横目でエギルを見ながら、答える。

「あいつが犯罪者…特にレッドと戦ってる時は妙な違和感を覚えるんだよな…」

キリトはそう言うとコーヒーカップを棚の上に置く。

「なんていうか、こう…なんて言うのかな。…何かを探そうとしてるっていうかさ。」

「…探す?何をだ?」

「さあ…」

エギルの問いに、キリトも首を傾げた。

 

………

………………

………カラン…

闇が広がるレンガ造りの建造物、迷宮区。その中で微かな金属音が、確かに響く。モンスターがあまり出現せず、階層自体が攻略され尽くして人通りの少ないその道の角で、その音は発生した。

その発生した場所に現在ある光景は…

冷たく暗い硬い床に、無様に寝転がる様々な服装のプレイヤーが複数人。彼らは麻痺で動けないのか各々の武器を全てファンブルしてしまっている。そしてそのカーソルは、全てがオレンジ。つまり、犯罪者プレイヤー。

そんな中、1人だけゆったりと立ち、紅い剣を手に持つ緑カーソルのプレイヤーが1人。

彼は無様に寝転がる…いや、彼が麻痺で《寝転がさせた》犯罪者プレイヤーを見下すと、ため息と共に一言。

「また、ハズレか…」

その言葉の意味はその場の中では言葉を発した張本人と、その胸ポケットの中にいる小さい妖精にしか分からなかったであろう。

だが、オレンジプレイヤーたちの疑問などさらさら興味のないように、彼はバックポケットから深い青の結晶を取り出した。そして、力なく呟く。すると…

「コリドー・オープン」

牢屋と現在地を繋ぐ、いわゆるパトカー代わりの門が彼の目の前に出現したのだ。

 

彼…カズマは犯罪者をコリドーの門に放り込んだ後、溜息をつく。

「…あんた、最近寝てないでしょ。」

彼の胸ポケットから出てきた羽のついた妖精…NHCPのメルはボソリと呟くように、カズマに質問する。

カズマはそれに並行して動きながら答える。

「ああ…でも、そんなことはどうでもいい。」

「どうでもいいってあんた…」

メルは浮かびながらこめかみに手を当てた。

この世界での睡眠時間の削減又は消滅は、文字通り命に関わってくる。戦闘中にめまい等の症状が現れれば戦闘リズムは崩れ、それこそかつてのアスナのように迷宮区内で倒れる可能性もあり、大変危険なのである。

そんな中…カズマは現在四徹中である。

さて、これを聞いて皆どう思うか?

もちろん、『こいつ頭おかしいんじゃねえの』であろう。実際、メルがそう思っているのだから。

「カズマ、あんたはもっと自分の体を大切にしなさい。ただでさえあんたはこのゲームを攻略するのに最重要な《攻略組》でもトップクラスの実力者。そんなあんたが死んだとなるとペースは大幅に遅くなってもおかしくない。それに、大切な彼女も、その彼女を助けるための夢もある。ここまで無茶は…」

「必要あるんだよ」

半ばメルの言葉を遮る形でカズマは声をかける。彼はメルを横目で見る。

「もちろん、お前が言ったことも俺の《将来》では最優先事項だ。人生の最高目標はそこにある。…だが、それはあくまで未来、将来の話だ。」

カズマは地図を取り出してしっかりとそれを見据える。

「俺が今やってるのは、《今》の俺に必要なこと。俺の人生のターニングポイントの1つ。ここでやらなきゃ、俺は確実に《タイミング》を逃す。それだけは、我慢ならねえ…!」

カズマは尚も横目でメルに笑いかける。

「俺を心配してくれる気持ちはすげえありがてえ。…ただ、これだけは譲れねえんだ。これが終わったらたっぷり休暇取るからさ。見逃してくれや。」

そんな、頼み込むような表情に…メルが折れる。ため息をついて、呆れたように笑う。

「やれやれ、とんだ馬鹿主人を選んじゃったものね…ま、こいつしか選択肢なかったけど。」

メルはカズマの胸ポケットに入り込む。

「いいわ、認めてあげる。ただし、今やってることが終わったら、ちゃんと睡眠を取りなさい。それが絶対条件よ。」

「ああ、分かった。」

カズマはしっかりと頷き返す。

その直後、地図上に書かれた旗印の1つを×で印した。

「見つけてやる…絶対に…!」

その声と同時に、カズマは歩き始める。一歩一歩、闇の中に溶け込むように…

 

彼が持つ地図は、ある座標が記されていた。

その座標は…

 

 

 

 

 

《ラフコフ》の、アジト候補地だった…。

 




ふむふむ、もう少しでラフコフ突入かもですね。ヘタしたら次回から?まだ構成は決まってねえです。ていうか今回のアニメはやばかったね。バトルの描写が。…え?凌辱シーン?そんなのあったっけ?
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