ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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アニメのアリスとアスナの可愛さにやられたぜ…




第41話 窮地

血盟騎士団のギルド。

そこでは、凄まじい論争が繰り広げられていた。

 

「だーかーらー!同じ攻略組のメンバーを捜索するためなんだから、少しくれぇオタクのメンバーを貸してくれてもいいじゃねえか!安全は俺らが保証すっから!」

 

「それが嫌だと言ってるんです!いいですか?今回の捜索対象はただでさえ単独行動のしすぎでこちらも扱いに困ってる、問題児なんです!そんな奴のためにうちの大事なメンバーの命は賭けれません!」

 

「おめェらボス攻略でカズマやキリト達にいつも面倒事押し付けるクセによく言うな!どういう神経してんだ!」

 

「その代わりに毎度毎度LAとMVPの権利は()()()()()()()じゃねえか!こちらとしてもあれが取れないのは痛いんだぞ!」

 

「恩着せがましすぎんだろ!」

 

…まあ、ほとんどクラインと《聖竜連合》、《血盟騎士団》のお偉いさんの言い合いであったが。

それを、進行係のアスナは黙って聞いていた。

 

「それに、いなくなったって、所詮家出程度のものでしょ?そんなもの探したところで実は街にいましたーってオチじゃないですか?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()なんて異常すぎんだろ!これをただの家出なんて割り切れるか!」

 

「そうは言ってもねぇ…」

 

煮え切らない論争に、クラインは業を煮やしたのか…

 

「だー!これじゃラチがあかねえ!シウネーさん!あんたは何かねえのか!?」

 

「え?!」

 

気分転換とでも言わんばかりに、今まで黙っていたスリーピング・ナイツの《ギルドリーダー代行》シウネーに話題を振る。

シウネーは少しだけ考えてから…

 

「えと…ない、ですね。」

 

シン…

その言葉に、全員が黙る。

どこか予想外すぎたその言葉は、静寂を生み出した。

そしてそれを、シウネーの後ろのプレイヤーが破る。

 

「ていうかさー、この話し合いする必要あんの?」

 

「ああ?どういうことだよジュン。」

 

赤髪の少年、ジュンの言葉にクラインが反応する。ジュンは「だからさー」と続けた。

 

「別にこんな会議しなくても、探しに行きたい奴らが探しに行きゃいいじゃん、ってこと。」

 

至極最もなその意見に、クラインは「あー」とうなり、背中を壁に預けていたエギルは「ま、その通りだな」と笑う。

要は、全員頭に血が上って、最善の策を思いつかなかったのだ。

そこで、今まで黙っていたアスナがゆっくりと立ち上がった。

 

「さて、議論はまとまりましたね。カズマ君の捜索に関しては、各々やりたいものがそれぞれの判断で行う。何か反論は?」

 

アスナの言葉に、異を唱えようとするものはいない。いや、異を唱えてもすぐに論破されるであろうから、しないだけか。

とりあえず、彼らの議論はここに終結した。

 

「シウネー、クラインさん、エギルさん。あなた達のギルドメンバーは全員参加することで良いわよね?」

 

「おう!」

 

「ああ、勿論」

 

「はい」

 

3人の返事にアスナは頷く。

 

「それなら私もそこに参加していいかしら。邪魔にはならないと思うから。」

 

「おお!《閃光》のアスナさんなら大歓迎だぜ!」

 

「やめてくださいクラインさん」

 

笑うアスナに、先程までクラインと論争していた血盟騎士団の幹部が叫ぶ!

 

「ふ、副団長!それはいくらなんでも…!そんなことに時間を取っては攻略が…!」

 

()()()()()…?」

 

「ヒッ…!!」

 

「あーあ…」

 

完全なる、失言。

ジュンの横にいたノリがため息をついた。

 

「確かに、今このアインクラッドでは攻略が最優先されるべきです。…けど、その攻略も充分な人員がいなければ進めることは不可能です。カズマ君は攻略組として、多大な功績を上げてきたプレイヤー。ならばその彼の心配をして捜索に行くのは普通では無いですか?」

 

「い、いや…あの…その…」

 

「それに、あなた先程そのカズマ君の功績をあたかも自分が譲っているように言っていましたが、それはゲームの1プレイヤーとして…いえ、」

 

 

「人としてどうかと思います。」

 

 

「副団長として命令します。今日はもう部屋に戻りなさい。数々の失言への処罰は追って連絡します。以上。」

 

アスナの冷たい声は無情に会議室に響き、幹部は膝から崩れ落ちた。

そして、アスナは…

 

「さ、行きましょうか。」

 

笑顔でそう告げたのだ。

 

「こっわ…」

 

ジュンの一言に、その場の男全員が頷いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「アルゴさんの情報によれば最前線でマッピングをしてるらしいですけど…」

 

先程の戦闘から更に数回こなした後、ランは剣をしまいながら通路の奥を見る。

 

「まだ追いつきませんね。」

 

「だなぁ。今がだいたい迷宮区の八割目あたりだから、そろそろ追いついてもいいと思うんだけど…」

 

キリトは頭を掻きながらマップを確認して、唸る。実際、恐らくあと数回戦闘をこなせばボス部屋に近づくであろう所まで彼らは来ていたため、カズマと鉢合わせる可能性が少なくなってきたのだ。

…と、そこで。

 

「おっと。」

 

シュンヤの声に、チラリとキリトが視線を向けると、彼がユウキの肩を持ち、彼女を支えていた。

どうやら、ユウキがシュンヤに倒れ込んだようだ。

 

「ユウキ、大丈夫か?」

 

「あ、うん。ごめんねシュンヤ。ありがとう。」

 

「ユウキ、あんまり無理しちゃだめよ?あなたココ最近ずっと寝れてないんだから。」

 

ピクリ、とキリトがそれに少しだけ反応する。

 

「う、うん。でも、カズマを探すためならこれくらい…」

 

「ユウキ。」

 

キリトはユウキの前に立つ。

そして、言い放った。

 

「今すぐ、街に戻れ。」

 

「え…?」

 

突然の言葉に、ユウキだけでなくランとシュンヤも体が固まる。キリトはそれに構わず、淡々と続ける。

 

「あまり寝てない。それは集中力が持続出来ないって言うことだ。最前線でのそれはどんなデバフよりも危険だ。いくらユウキが少数精鋭揃いのギルドのリーダーでも、ここから先は連れては行けない。」

 

「け、けどボクは…」

 

「約束したよな?」

 

ユウキの言葉を遮り、キリトは引き締めた、真面目な顔で問う。

 

「俺達パーティーを組む時、《俺の判断で危険だと感じた時は、主街区に戻ってもらう》って。」

 

それは、彼と彼女達の約束。

かつて、彼はあるパーティー…いや、ギルドを全滅させた。自身の怠慢のせいで出しては行けない犠牲を出してしまった。

かつては自暴自棄にまでなりかけた彼はこれまで他人とパーティーを組むことを避けてきた。

もう、パーティーメンバーを死なせたくない。

それが、この世界での唯一の肉親の、大事な人となればその気持ちは一層強まるだろう。

 

「…今のユウキはかなり危険だ。多人数でサポート出来るならまだしも、今は少数で動いてるんだから尚更な。」

 

キリトは寝不足な彼女を叱ると言うより、納得させるように話していく。

 

「俺もなんだかんだソロプレイヤーとして結構な数のフィールドを駆け回ってきた。その分、ソロプレイの危険なんかはわかってるつもりだ。」

 

「う…」

 

「勿論、ユウキがカズマのことを心配してくれてることは分かるし、あいつの兄貴としてもありがたい。…けどそれと同じくらい、俺はパーティーメンバーを死なせたくないんだ。」

 

キリトはそう言って、ユウキの肩に手を置く。

ユウキは俯いて、目を瞑り考える。

ここで拒否すれば、恐らく捜索は中断される。下手をすればカズマが危険な目に会うかもしれない。

冷静に考えれば、ここは承諾するべきなのだ。

 

『けど…だけど…』

 

ユウキの胸の内に、引っかかっていることがひとつ。それが彼女の返答を邪魔する。承諾するなと言わんばかりに、口が動かない。

張り詰めていないが、静寂が広がる…

…そこで、シュンヤがそれを破った。

 

「…?」

 

彼はチラリと迷宮区の奥を見る。

 

「シュンヤさん…どうしたんですか?」

 

ランの言葉に、キリトとユウキも反応する。

 

「…なにか聞こえた。」

 

「え?」

 

「それって…」

 

「シッ。」

 

シュンヤは人差し指を立てて、そのまま耳をすました。

 

「……………………ォー…………」

 

遠吠えのような、しかしどこか綺麗な音。

 

「……………とぉー………」

 

それはだんだんと近づいてくる。

自然とキリト達は剣の柄に手をかける。

 

「………りとぉーー………!」

 

「ん?」

 

キリトの目が捉えたのは、飛来する何か。

しかし、それにカーソルはなかった。

やがて…

 

「きりとぉーー!!」

「うわっ…!」

 

キリトの胸に、それは飛び込んだ。

そして、パタパタと離れ、浮遊したそれを見てキリトは…

 

「よ、妖精…?」

 

「ひ、久しぶりね!キリト!…あ、じゃなくて!みんな早くこっちに来て!」

 

「い、いや、その前に君は…」

 

「私の事なんてどうでもいいから!早く来て!」

 

「な、なん…」

 

「早くしないと…!」

 

 

「カズマが死んじゃう!」

 

 

ガシッ!

「ヒッ!?」

 

ユウキの手が妖精を掴む。

 

「それ、どういう意味…?」

 

「わ、訳は移動しながら話すから!とりあえず道案内するから走って!」

 

「分かった。」

 

ユウキはその言葉に、有無を言わさずに走り出す。それはまさしく風の如し。シュンヤ顔負けのスピードだった。

 

「あ、おい!ユウキ!」

 

「ああ、もうあの子ったら…!」

 

「はえぇー…」

 

遅まきながら出発し、シュンヤは「これが愛の力か…」なんて呟いていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここ?」

 

「そ、そう!」

 

ユウキに問われて妖精はコクコクと頷く。

ユウキは小部屋の前につき、そのまわりをキョロキョロと眺めて、そして…

 

「これは…」

 

小部屋の中で何かを見つける。

それはチェーンにぶら下げられた紫色の指輪だった。誰かの落し物だろうか。

 

「あ、それ!カズマがいつも付けてたやつ!」

 

「これが…?」

 

そういえば最近首にチェーンをかけてたような気もするとユウキも思い出す。

やがて少し遅れてキリト達が到着した。

 

「ユウキ…どうだ…?」

 

「…カズマの持ち物は見つかったけど、カズマ自身は見当たらない。それにここで集会してたっていう6人組も。」

 

「そうか…」

 

それにシュンヤが、疑いの目を妖精に向ける。

 

「…まさか嘘じゃ…」

 

「ち、違うわよ!私が出る前にカズマを担いで6人組がそこの出口から出ていったわ!きっとあの先よ!」

 

「あそこに行ったら無数の罠が…」

 

「ないないないから!!」

 

シュンヤがブラフをかけまくるが、妖精はひたすら否定して首を振る。

それにキリトがため息をついた。

 

「ま、他に具体性のある情報もないし行ってみるのもいいだろ。念の為耐毒ポーション飲んどけよ。」

 

「分かりました。」

 

「…了解。いなかったら別のとこ探せばいいだけですしね。」

 

そう言って、2人ともポーションを煽る。

そういえばと、キリトはユウキの方を見た。

 

「ユウキ、お前は…」

 

…しかし、その先は言えなかった。

ユウキの目。

それは今までになく鋭く光り、先程までの体調の優れない彼女はそこにいなかった。

まるで獲物を狩る前の、獣。

そんな彼女に、「お前は帰れ」などと言える訳もない。いや、言っても聞かないと言うべきだろうか。

キリトは、剣を引き抜いた。

 

「…行くぞ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…ん…?」

 

少し、寝ていたのかもしれない。

背中の鈍い衝撃で、俺の意識は微かに戻る。

見たところ、どうやら俺の体は地面に突き落とされたようだ。背中にあるのはおそらく壁だろう。

 

少し視線をあげると、6人のプレイヤーが俺を囲んでいる。

先程俺が盗み聞きしていた声の主たちか。

仲間の増員は無し。

装備も全員が同じローブのため違いがわからない。しかし、表情は見える。

 

俺を見て笑うもの。

何かを話し合っているもの。

おおよそこの二つに分かれている。

ただ、俺の体にも異変が起こっていた。

 

視覚、触覚はある。聴覚がまったく機能しないのだ。今も、何故か目の前の6人の声は聞こえずまるで消音の映像を見ている気分になる。

もしかしたら、俺のナーヴギアが不具合を起こしているのかもしれない。もしくは…

 

俺自身が、何も聞かないようにしてるからか。

 

体は依然として麻痺している。

しかしそれも回復仕掛けている。今動こうと思えば動けるかもしれない。…だが、体がそれを拒む。

親友を死なせておいて、また生きるつもりか。

償いもせずに、のうのうと。

そんな声が聞こえてくる。

 

そうだ、ドナウの死は俺が原因だ。

俺が余計なことをしなければ、彼は、ドナウは死ぬことは無かったのだ。

そもそも、俺がこのゲームをプレイしていなければ、彼は誰にも恨まれずに生きられた。

いや、まず小学校の頃に余計なことをしなければ、あんなことにはならなかった。

俺とあいつらが別れることも、あの家族の病状が悪化することももしかしたら無かったのかもしれない。

 

……

………

………あれ?

 

俺、なんのために生きてるんだ?

死んだ方が、マシじゃないのか?

 

そんな思考が、思わず彼を埋め尽くす。

今の彼には、罪悪感だけが蔓延し、生きることになんの希望も見い出せなかった。

やがて、6人が動く。

彼らの1人が高々と剣を掲げる。

 

それは、先程俺を攻撃した、オレンジへと変わったプレイヤーだった。

そして、剣が振り下ろされる。

 

ザシュッ

 

それだけで俺のHPの2割が減る。

もう1発。

さらに減って、イエローに変わる。

 

ーー俺は、最低だ。ーー

ーー自己の為に、親友さえ犠牲にしたーー

 

もう1発。

ついに、HPがレッドに変わる。

俺に恐怖はなかった。

 

ーー俺に、生きてる価値なんて…ーー

 

そんな思考が過ぎる。

やがて俺は、触覚と視覚も切り離した。

 

 

 

彼の見る世界は、真っ黒な闇に呑み込まれた…

 





ーー少しして。
俺はおもむろに目を開いた
あれから、どれだけの時間が経ったか分からない。
もしかしたらまったく経っていないかもしれないし、大袈裟に言えば、数年経っているかもしれない。
俺は久方ぶりのような感覚で、意識を覚醒させたーー。

「…え?」

…そこは、地獄でもなければ、天国でもない。
ましてやさっきまでいたであろう迷宮区でもなく。
まず飛び込んできたのは、白い光。
そして、背中を押し返す柔らかい感触。

…俺は、ある部屋のベッドに寝かされていた。

「え…は…?」

予想外の状況に、思考が追いつかない。
どこか懐かしい香りが鼻腔をくすぐりながら、俺は上体を起こした。

「…ん…?」

左側に感じる重みに、自然と視線を向けた。
そこに居たのは、ベッドというか、俺の体に自分の上半身を預けて眠る、ロングヘアの女の子と、ショートヘアの女の子。
そして、隣のソファで寝る、茶髪の男性プレイヤー。
「…お前ら…」
カズマが呟くと…

「…んん…」

ロングヘアの少女がゆっくりと目を開けたーー。
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