ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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ちなみに言っとくけど…



まだ終わらないからね?!


最終話 頼ること

カズマとユウキの結婚祝いパーティーの後。

片付けの終わったリビングからベランダに出るひとつの影。

そして、それをテーブルの周りで待つ2つの影。

リビングから出てきた人物は持ってきたコーヒーを2人の前に置いた。

 

「カズマ、ユウキは眠ったか?」

 

「ああ、アスナさんとランと一緒にぐっすりだよ。俺のベッドはシャムとリズとリーテンに取られたし。」

 

「まさか全員泊まるとはなぁ…迷惑じゃなかったか?」

 

「いいよ。ユウキは大人数でいる時にテンション上がるから。『お泊まり会だー』って言ってたし。」

 

「男連中は床に転がってるしな。スリーピング・ナイツの他の女性陣には?」

 

「俺らの寝袋貸した。…にしても、シュンヤも持ってたんだな。」

 

そう言われて、シュンヤは肩を竦めた。

 

「俺も一応《ビーター》だからな。《演じ続ける》ためにレベルは上げ続ける必要があるから、ダンジョン泊まりも結構多い。」

 

そう言ってから、シュンヤは苦笑する。

 

「…俺の話はどっちでもいい。お前が俺とキリトさんにしたい大事な話って、一体なんだよ。」

 

「…ああ。ちゃんと話すよ。」

 

カズマは1口、コーヒーを飲みこんだ。

 

 

 

「影武者?」

 

カズマが口を閉ざすと、シュンヤがまず疑問符を浮かべた。カズマはコクリと頷く。

 

「それは…本当か?」

 

「勿論、ヒースのおっさんか情報の出処が嘘ついてるって可能性もあるが…そうしてメリットがあるとも思えない。…信じたくはねえけどな。」

 

キリトは考えるように目を瞑って、トントンとテーブルを叩く。

シュンヤがまた質問する。

 

「もしかして、もう犠牲者が…」

 

「いや、あれ以降ラフコフの物と見られる犯罪は起きてない。気付いてないだけっていう可能性もあるけどな。」

 

そう言ったところで、キリトが口を開く。

 

「…カズマ、お前が例の参謀役と対峙していた時に流れた音声。あれはどう説明付ける?あれはお前の親友のものだったんじゃないのか?」

 

「…それについては、今から話すよ。」

 

カズマは1口コーヒーを口に含んでから、また話し始めた。

 

「まず、今回俺らが迷宮区で捕まえた内通者達。アイツらのアイテムストレージから《あるもの》が発見された。」

 

「あるもの?」

 

「何か危険性のあるアイテムか?」

 

「広い意味ではそうとも言える。…ゲーム管理者しか使えないアイテム…いわゆる《チートアイテム》ってやつだ。」

 

これにはシュンヤとキリトが同時に怪訝そうに眉を寄せた。

 

「それも、それを使うだけでモンスターに気付かれずに且つ、無条件で迷宮区内の次の階に行けるって代物だ。俺ら攻略組からすりゃ、喉から手が出るほど欲しいもんだな。」

 

「恐らく、昔第3層であったエルフイベントの黒エルフ側…キズメル達が使ってマントアイテムの上位互換だろうな。あのマントで体を覆うと隠蔽(ハイディング)効果が100%になって、モンスターやプレイヤーから見つからないっていう代物だった。」

 

かつて、キリトがアスナとペアを組んで進めていた《エルフ戦争イベント》。

そこで行動を共にしていたダークエルフNPCの名前を出してキリトはそう告げる。

 

「確かに、そうですね。…ただ、どこからそんなもんが?一般プレイヤーなら手に入るはずないだろ。」

 

「そんなもん、一般プレイヤーの俺が知るわけないだろ。…考えられんのは開発者、またはその関係者が渡したってとこか?」

 

「まさか、茅場晶彦が…?」

 

「分からん。会えねえやつに質問も出来ねえしな。」

 

「そうだな。…ただ、チートアイテムがそうしてプレイヤーに渡るかもしれないのは確かに問題だな。…もしかして、ドナウの件も?」

 

「ああ。ヒースのおっさんの考えでは別のドナウっていうプレイヤーの声を、《変声機》に近いアイテムで変えたんじゃないかってさ。そんなもん、管理者アイテムであるのかって話だけどな。」

 

「ただ、それでも1つ疑問が残る。」

 

キリトはさらに質問した。

 

「あの記録結晶に記録された音声には、親友であるお前の名前が出てた。それに対しての反応も、演技とは思えない。それについてはどうだ?」

 

「…これは完全な憶測だけどさ。」

 

カズマは少しの間の後に答えた。

 

「あの時、良く考えればショウマのやつは記録結晶のボタンを2度押してたんだ。それはつまり、前半の親友のくだりはドナウ自身がやり、後半のリンチは影武者のドナウ氏の声だった…のかもしれない。」

 

「…よく覚えてたな、そんなこと。」

 

「記憶力には自信がある。…ただ、これにはドナウがラフコフのメンバーであり、生きているという確証がいる。まだ、仮説の段階だ。」

 

「とりあえず、プレイヤー全員になおもレッドプレイヤーに対する厳戒態勢を忠告しておいてもらおう。また明日、アスナさんに話しておく。」

 

「頼む。…で、こっからは2つ目の話だけど…」

 

言うやいなや、カズマは胸ポケットを開いた。そこから飛び出す1匹の妖精。

 

「こっからはこいつに話してもらおう。」

 

「はぁい、久しぶりねお二人共。」

 

妖精はパチリとウィンクをした。

 

「あぁ、この前の…」

 

「数日ぶりだな、メル。」

 

シュンヤが思い出したように呟き、キリトは微笑みながら声をかけた。

 

「ええ、キリト。相変わらずイケメンね。」

 

「なんのお世辞だ。」

 

「あれ、キリトさんこの妖精とお知り合いでしたか?」

 

「あー…まー、知り合いっていうか…」

 

「どころか、私の元々の主はキリトよ。キリトのおかげで私は産まれることが出来たんだから。」

 

「俺がしたのは仕上げだけだけど…まあでも、そう言ってくれて嬉しいよ。」

 

キリトの微笑みに、メルも微笑みで返した。

 

「なら良かったわ。…それで、話っていうのはね…私と一緒に来た子達のことなの。」

 

「他の子達…ヒカリのことか?」

 

「誰だそれ?」

 

「俺が作ったのはメルだけじゃなくてな。ヒカリっていうやつも作り出したんだ。…メルがここにいるってことは…」

 

「ええ、ヒカリもこっちに来たわ。もう1人、アカネっていう子と一緒にね。」

 

その言葉に、シュンヤがピクリと反応する。

それをカズマは見逃さない。

 

「どした?」

 

「ん、ああいや、アカネって…」

 

「ええ、あなたに付き従ってたAIよ、シュンヤ。彼女もこちらに来てたわ。」

 

「なに、お前もAI作ってたの?」

 

「い、いや…俺の場合は兄から受け継いだというか…託されたというか…」

 

「なるほどね…それで、メル。その2人がどうしたんだよ。こっちの世界に来たってことは、今もどこかにいるんだろ?」

 

「ええ。居るはずよ。…というか、この場に居るはずなのよ。」

 

メルはそう言って、キリトの胸ポケットとシュンヤの帯に付いた巾着袋を指差した。

 

「あなた達の、そこにね。」

 

「「え…?」」

 

2人は同時に動いて中身を確認するが…

 

「…いないけど…」

 

「こっちもです…」

 

「…メル?どういうことだ?」

 

2人の反応に、カズマはすぐにメルに問う。

彼女は少しの間を空けたあと…口を開いた。

 

「…異変が起きたのは、数ヶ月よ。」

 

彼女は、事の顛末を話し始めた。

 

「私達は、月に1度は集合場所と時間を決めて会ってたの。」

 

ただ、3ヶ月ほど前の集合場所に2人は現れず、更にはキリトとシュンヤの近くからも存在が確認できなくなったようだ。

 

「私達はいま、メンタルヘルスカウンセリングプログラムとしてダイブしているから、リアルワールドに戻るのは不可能に近い。けど、家出なんてする子達じゃないわ。」

 

「それで、2人へのお願いがあるの。」

 

「2人がいないかどうか、攻略中に気にかけたりするだけでもいいから、探してくれないかしら。」

 

「勿論、攻略に支障も出るかもしれないから、強制はできないわ。私がカズマと一緒にいる中でできるだけ捜索するから、それだけでも…」

 

「分かった。」

 

「ま、それくらいなら支障にもなりませんしね。」

 

サラッと、2人は承諾した。

あまりのスムーズさに、メルは少しだけフリーズする。

 

「え、あの…だ、大丈夫なの?」

 

「あのなぁ、メル。俺達がどれだけソロプレイヤーとして活動してると思ってんだ?これくらい、朝飯前だよ。」

 

「それに、3人は俺達のことを思って…1万のプレイヤーを助けようとしてこっちに来てくれたんだろ?…なら、俺達もそれくらいしなきゃ、釣り合わない。」

 

キリトとシュンヤにそう言われて、なおもメルは固まっていた。

するとメルの頭を撫でるように、人差し指をクリクリとカズマが動かした。

 

「そういうこった。だから、安心しろ。ま、見つけられる保証はねえけどな。」

 

「…馬鹿みたい。私が嘘ついてるって、考えないんだ。自分達に大した利益も出ないのに。」

 

その言葉に、ニカッとキリトとカズマが笑った。

 

「当たり前だろ。」

 

「そんなこと考えれるんなら、《ビーター》なんざ名乗り続けたりしねえよ。」

 

2人の言葉にシュンヤは苦笑した。

 

「ま、そうですね。」

 

そうやって笑い合う3人を見て、メルはなおも呟く。

 

「…なんだ、やっぱり馬鹿じゃない。」

 

どんな時も自分のことなんて後回しで。

自分を犠牲にするなんてことは、ただの呪い。

他人のために、危険なことをおかして。

他人のために、未来を決めて。

他人のために、自分にメリットがない事をやって。

そんな癖して、人の感情には鈍感で。

そして、どこか抜けてる。

 

そんな、最悪にお人好しな3人は。

 

最高に、カッコいいのだ。

 

 

 

 

「…兄貴、シュンヤ。最後にもう1つ、話がある。」

 

「ん?なんだよ。」

 

「これ以上まだあるってのか?」

 

「ああ。…これは、絶対他言無用で頼む。」

 

「…なんか嫌な予感がする。」

 

「ま、まあ分かった。とりあえず聞かせてくれ。」

 

「…話というか、少し依頼なんだけどな。」

 

ゴニョゴニョゴニョゴニョ…

 

 

「「はぁ?」」

 

 

 

「ふう…」

 

2人がリビングに戻った後、俺は腕を手すりに置いて体重を預けたまま、ゆっくりと息を吐く。

手に冷たい雪が染み込むと同時に、肺に冷たい空気が入り込んだ。

 

「…あれで良かったのかね…。」

 

カズマは天を仰いでそう呟いた。

彼が話したことは、全て仮説だった。

ドナウのことも、最後の話も。

それをあの二人にだけに話したのは、あの二人のことを全面的に信頼しているからだ。

物理的な強さも、精神的な強さも。

そして、口の硬さも。

 

「正直、ドナウの件は話しても良かったけど…」

 

しかし、ただでさえこのデスゲームに取り込まれて、モンスターにもプレイヤーにも襲われる危険があると警戒している奴らに、わざわざさらなる恐怖を与えて、精神的負荷をかける必要も無いだろう。

そして…

 

「……」

 

最後の仮説は、恐らく誰も信じないだろう。

あの二人も、恐らくは半信半疑なはずだ。当たり前だ。俺だって、まだ《もしかしたら》の段階なんだから。

それも踏まえて、それを含めて俺は話した。彼らに、その《可能性》を。

勿論、無駄足かもしれない。

かつて俺が行っていた、ラフコフのアジト探しのように。

ただ、それでも可能性があるなら、真っ先に潰す。それだけ、この世界は酷く危ういのだから。

 

「…ま、俺が偉そうに語れるモンでもねえがな。」

 

カズマはそう言って笑った。

 

キィ…

リビングの扉が開く音。

カズマは無意識にそちらへ向く。

そこにあったのは、今日貰った着流しを着た最愛の少女の姿。今や《家族》となった、たった1人の関係の彼女だった。

 

「カズマ…?」

 

どこか寝ぼけ眼な顔を擦りながら、カズマに近づいてくる。

 

「ああ、もうユウキ。外寒いんだからそんな格好で出ちゃ駄目だろ。風邪引くぞ。」

 

最早夫ではなく、母親のようなセリフを喋りながら、カズマは彼女に自身のコートを着せた。

 

「ありがとー…わあ、あったかい…カズマの匂いがする…」

 

「いや、そんなラブコメみたいなセリフ言われてもな。」

 

「可愛かったでしょ?」

 

「お前はいつも可愛いだろ。」

 

その言葉に「えへへ」と照れたように笑うと、ユウキはカズマの肩に頭を乗せた。

 

「…今日、楽しかったね。」

 

「…まあ、そうだな。」

 

「…カズマ途中でどこか行っちゃうし。」

 

「…ああいうのは慣れてないんだよ。」

 

「ボクも慣れてはないよ。」

 

そう言う彼女の言葉は、どこか暗かった。いくら取り繕っていても、カズマは見逃さない。少しだけ沈んだ、彼女の様子を。

 

「…そうだな。なら、早くクリアしないとな。そんで、早くあっちに帰って。お前らを救うための薬、作り出さないとな。」

 

「…出来ると、思う?」

 

カズマの言葉に、ユウキはそう問うた。

それにカズマは、少しだけ笑った。

 

「…俺だけじゃ無理だ。」

 

それは、かつての彼なら零さなかった。変なものを余計に背負い込んで居た彼なら。

…だが、それはもうない。

 

「医者や研究者っていうのは、患者や使用者なんかの、相手がいなきゃ役に立たない。…だから、まずはお前に生きててもらわなきゃな。」

 

その言葉に、ユウキはカズマを見た。

その口元には笑みが浮かび、そして彼女の頭に優しく手を置いた。

 

「だから、俺も頑張るから、お前も頑張ってくれ。…俺がしっかり治せるように、精一杯生きててくれ。…そうしたら、俺が絶対に助けるから。」

 

ーーかつての彼は、なんでも1人で解決しようとした。リアルワールドでも、VRでも。たとえ親友であっても、親であっても兄妹であっても…全て抱え込んで、自身だけでどうにかしようと…。…しかし、彼は…ある姉妹との再会を経て、それを変えられた。変われたのだ。《人を頼ることを覚える》。それは、小さな変化かもしれない。

 

…だが、確かな変化に、変わりはないのだ。

 

「…スパルタだなぁ、ボクの旦那さんは。」

 

「あれ、知らなかったか?」

 

「知らないよぉー…だってこれまで、全然頼ってくれなかったから…。」

 

「…そうだな。」

 

「…でも、うん。これから頼ってくれるみたいだから、許す。」

 

「…ありがとな。」

 

カズマはユウキの腰に手を回して抱きしめる。そして、ユウキもカズマの胸あたりのシャツを掴んだ。

 

2人は見上げる。

巨大な蓋がある、上空を。

そこにあった、少し離れた位置にある一際光の強い星が2つ。

その2つは動かない。近づかない。

…しかし。

その直後に、近くでふたつの星が流れた。

まるで交錯するように、確かな軌跡を描きながら。

それは、一瞬の輝きだったけれど。

 

…それでも、一際美しかったのだーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月後。

 

 

「まさか、この場でバレるとは思いもしなかったよ。」

 

暗い部屋。

少し火の点るその部屋に、少し低い声が響く。赤い鎧と白い巨大な盾が一際目立つ。

彼が歩く度に長い白髪が揺れる。

 

「君達は些かイレギュラーな存在だと疑ってはいたが、まさかこれ程とは…予想外と言えるかな。」

 

くつくつと笑うその男に、呼ばれた者達は威嚇するような視線を注ぐ。

 

…いや、それは威嚇ではなく、明確な《殺意》。4つの黒い眼光が睨めつけたーー。

 

 

 

 

「そうだろう?……キリト君、カズマ君。」

 

 

 

 

 

 

 

to be continued…






とりあえず一区切りすることが出来たのは良かったです。これも皆さんがお気に入り登録や感想などあらゆるところで支えてくれたおかげだと思ってます!ありがとうございました!
なんか最終回っぽい雰囲気になりましたけどまだ続きます!これからもお付き合いお願いします!

これからもよろしく!
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