ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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いやー、僕も忙しいんで遅れちゃいました。これからもがんばるんでよろしくお願いします。ちなみにこれはカズマが視点なんで。あ、あと出来れば感想もよろしくお願いします。では、どーぞ‼︎


第5話 もう一つの現実

「いてっ!」

 

俺の体が石畳に叩きつけられる。腰のあたりに衝撃と鈍い痛みが広がる。この世界の痛みは現実よりは軽いと言っても気持ちいいとは言えない。

この世界にログインしてから約4時間が経ち、レベルも6レベルに達したのでログアウトしようとした数秒後、いきなり鐘の音が鳴り響き、強制転移だと理解した時には既に体が石畳に叩きつけられていた。

ひとまず立てろうと足に力を込めると俺の前に手が差し出される。見ると黒髪の青年が笑いながら微笑んでいた。

 

「大丈夫か?」

「ああ、ありがとう。」

 

俺は遠慮なくその手につかまり体を起こす。

 

「悪い、迷惑かけたな。俺ベータテスターなんだけど飛び降りたり飛んだりしたのはそんなにしたことなかったから…」

「いや、人として普通のことをしたまでさ。ちなみに俺も元ベータテスターなんだ。」

 

彼は笑いながら答える。

 

「お前、名前は?」

「え?」

「名前だよ名前。プレイヤーネーム。」

 

名前を教えることに少しの躊躇があったがどうせゲームだろうということで素直に答える。

 

「カズマ、っていう名前にしてる。」

「そうか。俺はキリトだ。よろしく。」

 

俺とキリトはちょっとした握手を交わす。

 

「それにしても…」

 

俺が辺りを見回すと既に数千のプレイヤーがこの大広場に転移させられているようだ。全員、何がどうなっているかわからず混乱している。

 

「これは一体…」

「…わからない。」

 

キリトは消えそうな声でつぶやいた。

 

「不具合の緊急呼び出しでも無さそうだし、何かの催しならもうGMが姿を現しているはずだ。」

「不具合って…」

「ログアウトボタンの消滅さ。」

 

するとキリトの後ろにいた赤髪の人物が声を発する。

 

「ログアウトボタンの…消滅…?」

 

俺は言っている意味が分からなかった。

 

「自己紹介がまだだったな。俺はクライン。信じられないなら自分のウィンドウを開いて見てみな。」

 

俺はすぐさまウィンドウを開き、一番下のログアウトボタンを確認する。だが俺が見た最後のボタンは…オプション設定ボタンだった。

 

「…マジかよ。」

 

俺は小さく呟く。キリトは頭をかきながらこう付け足す。

 

「まあ、ただの不具合の緊急呼び出しかもしれないけどな。そこらへんはまだわからない…」

 

 

 

「おい!上を見ろ‼︎」

 

 

何者かが大声を出す。俺はその言葉通りに上を向く。すると上空から何かドロリとした赤いものが落ちてきている。

 

その泥はすぐさま形を変え、たちまちローブのような形に変わる。

 

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

 

「私の世界?」

 

俺はとっさには意味がつかめなかった。隣のキリトとクラインも同様だろう。混乱する俺たちの耳に赤ローブの言葉が続いて届く。

 

 

『私の名は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』

 

 

茅場晶彦。

SAO開発ディレクターであると同時にナーヴギアそのものの基礎設計者でもある。

数年前まで弱小ゲーム会社だったアーガスを最大手と呼ばれるまでに成長させた原動力となった若き天才ゲームデザイナーにして量子物理学者。恐らく、いや確実にこのゲーム内で知らない者はいないだろう。

 

 

 

『プレイヤー諸君は既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていることと思う。だがこれは不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなくSAO、ソードアート・オンライン本来の仕様なのだ。』

 

 

「し、仕様?」

 

ということはあの茅場を名乗る(本人の可能性が高いが)赤ローブはこうなることを想定…いやこうなるように仕向けたというのか。

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることは不可能となる。』

 

「この城…だと?そんなものどこに…」

「…あるじゃないか。というより俺たちが立っているアインクラッドが。」

「…ああ、なるほど。」

 

俺は数秒かけてキリトの言葉の意味を理解する。つまり赤ローブはこう言っているのだ。『このゲームをクリアし、脱出せよ』と。

 

 

『また、外部の人間…つまり諸君の家族、友人等に値する人々などの外部によるナーヴギアの停止、あるいは解除が試みられた場合。そして諸君らのHPがゼロとなった場合…』

 

 

この場のプレイヤー全員が喉をごくりと鳴らす。

 

 

 

『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される。』

 

 

 

「なっ…!」

 

俺は、驚愕に目を剥く。

脳を破壊する。つまり、殺す…ということか。

い、いや。だがそれでも…

 

「な、ナーヴギアは、一ゲーム機だぜ?そんなもんで人が殺せるはずが…」

「…いや、理屈としてはいけるな。」

 

クラインのうめき声にキリトが答える。

 

「ナーヴギアってのはヘルメット内部に埋め込まれた無数の信号素子から微弱な電磁波を発生させ、脳細胞そのものに擬似的感覚信号を与えるんだ。まさに最先端のウルトラテクノロジーと言えるけど、原理的にはそれと全く同じ家電製品が40年も前から日本の家庭では使われてるんだよ。」

 

「…電子レンジか。」

 

俺はギリッと歯と歯を擦り合わせる。

 

「…そう、十分な出力があればナーヴギアは俺たちの脳細胞中の水分を高速振動させ摩擦熱によって蒸し焼きにすることは可能ってわけだ。」

「で、でもよう…原理的にはありえなくもないけど…ハッタリに決まってるじゃねえか。いきなりナーヴギアの電源コードを引っこ抜けば、とてもそんな高出力の電磁波は発生させられないはずだ。大容量のバッテリーでも内蔵されてない…限り…」

 

クラインの言葉が止まりキリトが引き継ぐ。

 

「内蔵してるんだよ。ギアの重さの三割はバッテリセルって説明書に書いてただろ。」

 

キリトが焦っているが淡々とした声で告げる。すると赤ローブがさらに続ける。

 

 

『先ほど述べた条件は既に外部世界では当局及びマスコミを通して告知されているので諸君らのナーヴギアが強引に除装される確率は極めて低いだろう。ちなみに現時点でプレイヤーの家族友人等が警告を無視しナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果』

 

 

少しの間。

 

『213名のプレイヤーがアインクラッド、そして現実世界からも永久退場している。』

「213名…だと…?」

 

つまりおよそ五十分の一プレイヤーが現実世界で死に至っていることになる。

 

赤ローブの周りを回っているスクロールを見るとニュースの画面が映されているようだ。

俺と同い年くらいの女の子が母に手を置かれ、泣きじゃくっている映像が目に入る。

その横のスクロールではご老人二人が、さらにその横のスクロールでは男子高校生三人が救急隊員が持っている担架にすがりつきながらあるものは絶叫し、あるものはただただ涙を流し続けている。

 

俺はその全てが合成された映像には見えなかった。

 

一瞬俺のアバターの、もしくは現実世界の体の喉が詰まる。俺はベータテスト中に軽く100回は死んだだろう。恐らく隣にいるキリトも。

だがRPGとはそういうものだと思う。

何度も死に、学習し、プレイヤースキルの熟練度を上げ、クリアしていくものなのだ。

 

それが…できない?

 

ならこれはゲームではなく、この舞台アインクラッドもただのフィールドではない。自分たちを殺しにくるモンスターが闊歩している…戦場だ。つまり、デスゲーム。

 

「…馬鹿馬鹿しい。」

 

キリトが低く呻く。

 

「そ、そんな条件下でフィールドに出る奴がいるわけねぇだろ‼︎」

 

クラインが叫ぶ。すると赤ローブはすべて聞こえているかのように次の託宣を降り注がせる。

 

 

『諸君がこのゲームから解放される条件はたった一つ。アインクラッド第百層までたどり着き、そこに待つ最終ボスを倒せば良い。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう。』

 

 

「やっぱりか…」

 

俺の考えていた通りだ。やはり『この城の頂を極める』という言葉の意味。それはアインクラッド全ての迷宮区を駆け上がれ、とそういう意味なのだ。

 

「クリア…第百層だと…?無理に決まってんだろ!ベータじゃろくに上がれなかったって聞いたぞ‼︎」

 

クラインの言った通り、俺たちはベータテスト中に第十層までしかクリアできなかった。ましてや今は蘇生もできない。それを考えると何年かかるか見当もつかない。

 

 

『もしかしたら諸君らの中には無理だと思っているプレイヤーが複数人いるかもしれない。だが君たちがこの世界から脱出するにはゲームクリアをするしかないのだよ。…いやひとつだけ《自殺》という選択もある。まあそのかわり、現実世界からも永久退場してしまうがね。』

 

 

まるで嘲笑うかのようなその言葉に、俺は無意識に口に力を加えた。

 

確かに、俺たちがこの世界から離脱する方法がないのは確かだ。この世界からログアウトするにはログアウトボタンを押すしかない。だがそのログアウトボタンが消滅している。このゲームには脱出モーション等も設定されていない。つまり脱出するにはゲームクリアしか道はないのだ。

 

 

『諸君らは何故、と思っているだろう。SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?と』

 

 

赤ローブは一呼吸入れる。

 

『私の目的は既に達せられている。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアとSAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた。』

 

「「茅場…!」」

 

俺とキリトはギリリッと歯に力を込める。

 

『それでは最後に、私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ。』

 

俺は歯ぎしりをしながらウィンドウを開きアイテムボタンをタップ。すると一番上に《NEW!》の文字がついた《手鏡》と書かれたアイテム。俺がそのボタンを押すと目の前に現実世界でよく目にする手鏡がオブジェクト化する。

 

俺は意味もなくその鏡を見つめていると、隣でクラインの体が白い光に包まれる。

 

「おわあ!」

「クライン!」

 

周りを見わたすと他のプレイヤーも同じようなことになっている。

そして俺の視界も真っ白な光に呑み込まれ、3秒ほどで回復する。

光が消えてからは元の風景が現れ…ていなかった。目を開けると横にいたクラインの顔がまるっきり変わっていた。

 

「お前…誰?」

「お前こそ誰だよ。」

 

俺は手鏡を使い自分の顔を見るとそこに写っていたのは…現実世界で見飽きた、自分の顔。

俺は驚きのあまり手鏡を落としてしまい手鏡はポリゴンとなって四散する。俺はクラインと同様にキリトの顔も覗き込む。

 

…直後、俺の頭をクラインの変化を見たときよりも数倍の威力を秘めた驚きが襲った。

艶やかな少し跳ねた黒髪、丸い漆黒の目。

その顔は一瞬女かと見間違えるほど整っている。

 

…こちらも、現実世界では見飽きた顔だった。

 

俺は指をさしながら震える声で呟いた。

 

「…兄貴。」

「…和真、なのか?」

 

俺たちのフリーズを茅場の声が遮った。

 

 

『以上でソードアート・オンライン正式サービスチュートリアルを終了する。…プレイヤー諸君の健闘を祈る。』

 

 

直後、赤ローブは一瞬で姿を消した。

 

 

 

 

しばしの静寂。

 

「…いやだ。」

 

誰かが呟いたその一言が火種となったように声はあたりに広がっていく。

 

「おい出せ…こっから出せよ‼︎」

「いやだ…いやだいやだいやだー‼︎」

「くそっ…どうなってんだよ‼︎」

 

広場は混乱に包まれた。

俺も放心していると誰かに肩を掴まれ正気に戻る。

 

「カズマ、クライン、ちょっと来い!」

 

そういうと兄…キリトは走り出すので俺たちもその後を追った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「いいか、この世界で生き残るためには強くならなきゃダメだ。俺は…もちろんカズマもその強くなるための最短距離を知ってる。だから一緒に来い。」

 

俺は前に進み出て言葉を発する。

 

「俺は行く。」

「そうか、ありがとう。…クラインは?どうする。」

 

クラインは少し悩んでいたがすぐに返答が返ってくる。

 

「悪い、俺は始まりの街に他のRPGで遊んでた仲間を残してるんだ。その仲間たちのために…俺は行けねえ。」

 

キリトは少しショックを受けていたがうつむくと言葉を発する。

 

「わかった…ならここでお別れだな。何かあったらメッセージ飛ばしてくれ。…じゃあまたな、クライン。」

 

目を伏せ、振り向こうとした俺たちにクラインが短く叫んだ。

 

「キリト、カズマ!お前ら案外カワイイ顔してやがんな!結構好みだぜ‼︎」

 

キリトはその言葉にこう返す。

 

「お前もその山賊ヅラの方が10倍似合ってるよ‼︎」

 

 

この世界での初めての友に背を向け、俺たちは走り始めた。

 

数分して振り向くが、もちろんそこには誰の姿もなかった。

 

俺たちはこの次にある村へ胸を締め付けるような痛みを振り払うかのように猛スピードで走り始めた。

 




えー、スキャンやらキャリブレーションやらの説明はちょっとめんどいんで今回入れてません。次回で入れられたらいいですね。それではまた次回。バイバーイ♡
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