ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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おめでとう…。゚∵・(ノД`)∵゚。



第10話 世界と再会

あれから、数時間後。

 

 

コウヤと名乗るプレイヤーの話を聞き終えた5名…いや、7名は各々の行動をとっていた。

ある者は拠点に戻り。

ある者はその場に残り。

そしてある者は、違う仲間の元へと。

 

一人一人、違う思いを胸に…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…この世界は、現在ある者の手中にあります。」

 

コウヤとなる青年は、そう話し始めた。

齢およそ20代半ばと言ったところか。

キリト達程ではないにしても、若さが伺える。

 

「…その者の名は、須郷伸之(すごうのぶゆき)…茅場晶彦の後輩にあたる人物です。」

 

「須郷…!?」

 

その名を聞いた瞬間、アスナが少しだけ反応を見せた。それに、コウヤは頷く。

 

「…あなたは、アスナさん…ですね?貴女は確か、あの男とリアルでお知り合いでしたよね?」

 

「…ええ。父の部下で、時折私の家にも招かれていたから…」

 

アスナはそう返答した。

コソコソとリーファがキリトに耳打ちした。

 

「お、お兄ちゃん…アスナさん、家に招くって…お嬢様ってことじゃ…」

 

「…いや、よくは知らん。」

 

「ええ?でもお兄ちゃんとアスナさんって…」

 

「結婚はしてるけど、リアルの話はしないよ。ルール違反だし…」

 

「ていうか部下呼ぶくらいなら親父もちょくちょくあったろ。」

 

「あー…まあそっか。」

 

兄妹3人の会話をよそに、コウヤの話は続く。

 

「須郷は茅場先生…いや、茅場がSAOにダイブしている隙を狙って、アーガス本社に残されたSAOのメインコンソールに干渉し、それによって管理者権限を自身に移行したのです。」

 

「SAOにダイブしている最中にハッキングされりゃ、そら対処も出来ねえわな。」

 

「ええ。…それは、特に気の抜けない戦いの最中であったと、聞かされています。」

 

「気の抜けない戦い…?…あ、もしかして…」

 

ユウキの声に、コウヤは頷く。

 

「ええ。…キリト君とカズマ君。2人が彼に挑んだ時です。」

 

「…ああ、あん時か。」

 

「そうか…あの時のヒースクリフの強制退場や、その後に起きた不具合は…」

 

「はい。管理者権限が須郷に移ったことによる不具合だと思われます。」

 

「…つまり、そのよく分かんねえ奴の勝手な行動で俺らはまだこの世界に囚われてるってことか…面倒なこった。」

 

カズマが全員の気持ちを言葉にしてボヤく。

少しだけコウヤが申し訳なさそうに顔を歪めた。

 

「…申し訳ありません。私達がもっと対策をしていれば…」

 

「終わったこと悔やんでも仕方ないでしょ。…それより、コウヤさん…でしたっけ。須郷が何を企んでるか分かってるんですか?」

 

「君は…カズマ君だったね。弟がお世話になってます…」

 

「あぁ、いえ。くそ生意気な弟さんで…」

 

「やかましい。」

 

「まあまあ、2人ともやめとけって。えと、俺はキリトって言います。コウヤさん、実際そこら辺はどうなんですか?」

 

「須郷の目的は明確には分かっていません。ただ、この状況は良くないものです。シュンヤにも言いましたが、今この世界は須郷が操っているため、《クリア》という概念が存在していることすら不明なのです。」

 

「…ま、そうだろうな。」

 

そもそも、現段階で《ヒースクリフ》という元々のラストボスはこの世界にはいないため、この世界が成り立っているかすら怪しいところだ。

 

「御託は構いません。」

 

コウヤの説明の後、キリトは最初に声を上げた。

 

「あなたは、俺達にいったいどうしろと言うんですか?」

 

キリトの問。

それにコウヤは、一呼吸だけ置いて、ハッキリと答えた。

 

「…私からの要求は、一つだけです。」

 

…そして、その要求に、その場の全員が戦慄した。

 

「これ以上の攻略を中止していただきたい。…ここから先は、警察と私達元アーガス社員が受け持ちます。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…面倒なこった。」

 

第43層主街区。

そこに建つ1つの鍛冶屋に、カズマとユウキ、そしてメルはいた。

彼らの目の前には、店主のウッドと、ユウキの姉、ランの姿もある。

 

「須郷伸之の乗っ取り。そして、クリア条件の不明…。確かに面倒だな。」

 

「ゲームというこの世界では、最も欠けてはならない2つですね。…いえ、それよりも、ゲームとして成り立っているかすら危うい状況です。」

 

ウッドの言葉に、ランも共感するように頷く。

 

「…ま、回避できない問題だな。正直、《クリア》っていう一種の目標が形、予測としては絶たれたわけだからな。…攻略組のメンタルがもつかどうか…」

 

「そうだね…下手すれば、現攻略組の解散も…」

 

「有り得るだろうな、充分に。」

 

カズマはそう言って、卓上の茶を啜った。

そして、チラリと少女になったメルを見る。

 

「…で、お前も何か言いたいことあんだろ?」

 

「え…気付いてた…?」

 

「ココ最近空元気なお前が神妙な顔してっから、そんぐらい誰でも気付くよ。…で、何があった?」

 

カズマのフリに、メルは少しだけ視線に影を落とす。そして、呟くように語り始めた。

 

「…あの時…キリトとカズマが、ヒースクリフを倒した時…私、感じたの…」

 

「感じた…?」

 

「それは、不具合のこと…?」

 

ユウキとランの問に、メルは首を横に振った。

 

「ううん…そうじゃない…」

 

「それじゃあ、いったい…」

 

 

 

「…アカネと、ヒカリのこと…」

 

 

 

「…アカネ?」

 

「…ヒカリ…?」

 

「…なるほどね。」

 

その名前に、3人が疑問符を浮かべる中、カズマだけは納得したように呟いた。

 

「…カズマ、何か知ってるのか?」

 

「…まぁ、知ってるし…須郷って奴は、随分と用意周到なクズ野郎ってことに気づいたって感じか…。」

 

カズマはそう言って、メルの話を受け継ぐ形となる。

カズマは簡単に、アカネとヒカリというMHCPについて3人に説明した。

 

「…ボトムアップ型AI…!?お前、そんなもの手なずけてたのか…!?」

 

「んー、手なずけたってのはちと語弊があるが…まぁ、色々助けてもらってたのは確かだな。」

 

「…ぼとむ…」

 

「アップ…?」

 

「…ああ、うん。お前らは知らんだろうけど。…とりあえずAIが俺だけじゃなくて、キリトとシュンヤにもついてたってことだよ。」

 

カズマはそう言うと、3つの角砂糖を卓上に無造作に並べた。

 

「あー、なるほどね。」

 

「…けど、何でそんなことに…」

 

「…元々兄貴がヒカリとメルを作ってるし、シュンヤの兄貴がアカネをあいつに引き継がせたらしいからな。」

 

「…お前の兄貴何者…?」

 

「ただの中学生だよ。…それより問題は。」

 

カズマは、2つの角砂糖を掴み、それをそのまま自身のティーカップに入れた。

 

「その2体のAIが、須郷の手に落ちた可能性が高いってことだ。」

 

「…でも、元々ヒカリとアカネはキリトとシュンヤのAIなんだよね。なら、その須郷って人が奪うのは不可能じゃない?」

 

「…ま、普通ならそうなんだけどな。ただ、今そのメル達はMHCP…つまり、このゲームの支配下にある。その分、奪い取りやすさとしては格段に上がってる。」

 

「なら、なんでそこのメルちゃんは無事なんだ?それこそ管理者なら、全員捕まえるなんて余裕だろ。」

 

「悪いけど、そればかりは何とも言えん。それこそ何か理由があるとは思うけど、俺もただのプレイヤーだしな…」

 

カズマはそう言って、砂糖の解けた甘い液体を飲み下した。

 

「ま、その二体に関しては、メルには悪いが後回しにせざるを得んだろうな。俺らはまだ須郷伸之に会ったこともねえし、それに、どう奪い返すかも思いつかんからな。」

 

「…そうね。こればかりは、しょうがないわ。」

 

「…それより、当面の問題は攻略についてだ。攻略組の面々を、どうするか…」

 

「それはまた、アスナさん達も交えて話しませんか?」

 

「…だな。鍛冶屋で話すことじゃねえや。」

 

「なんだよー。昔は色々語り明かした仲じゃねえか。」

 

「そういうの抜きで、これはお前と話しても意味ねえだろ。」

 

「えー。俺一応両手槍熟練度900超えてんのにー。」

 

「…じゃ、攻略組の人手が足りなくなったら呼んでやるよ。」

 

「えっ。」

 

カズマの言葉に、少し固まるウッド。

その様子に、2人の少女が笑った。

4人の楽しそうな声は、しばらく続いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ごめんね、シュンヤ君。」

 

「…いえ、兄さんは今、全SAOプレイヤーの恨みの対象でもありますから…。…軟禁されるのも、仕方ないです。」

 

薄暗い路地の中、シュンヤはそう言って、アスナに笑いかけた。

 

「今日は、ありがとうございました。わざわざ集まってくれて…」

 

「ううん、攻略の為だもん。当然のことだよ。」

 

「…それと、兄さんの言葉を信じてくれて、ありがとうございます。」

 

シュンヤはそう言って頭を下げた。

アスナはそれに微笑みながら頷く。

 

「…それじゃ、私は行くね。またね、シュンヤ君。」

 

「はい。また…」

 

アスナはそう言って、日に照らされた栗色の髪を揺らしながら、転移門と向かっていった。

シュンヤは、それを見送ってから…

 

顔を俯かせた。

 

「…クッソ…」

 

彼に渦巻くのは、戸惑い。

間接的にとはいえ、人殺しに加担してしまった兄。

そしてその弟である自分。

その自分が果たして、攻略の責任を担うような役割をしていていいのか。

気にすることでもないのは分かっている。

…だが、それでも…

 

…キュッ。

 

「…?」

 

その瞬間、シュンヤの右手を包み込む温かさ。

それは、ある少女の手。

シュンヤは自然と、背後にいたシャムに視線を向けた。

 

「…シャム…」

 

「え…と…なんと、言うか…」

 

ツインテールの少女は、どこか煮え切らないような、言葉が出てこないような感じで口篭り…やがて、思い切って口を開いた。

 

「しゅ、シュンヤさんは、悪くないです。」

 

「え…?」

 

「えと…コウヤさんがSAO事件に関わったのも、きっと何も知らされてなかったからでしょうし。…あの人が、そんなことさせないのは無理だとしても、知ってたら協力する訳ありません。」

 

「シャム…」

 

「それに、私は…私達は、ずっと。ずっとずっと、あなたが頑張る姿を見てきました。攻略に一生懸命なあなたを。だから、きっと大丈夫ですよ。」

 

彼女はそう言って一層力を強めて、花のような微笑みと共にシュンヤに語りかけた。

そして、その瞬間。

 

「…ッ…」

 

シュンヤは、思わずシャムを抱き締める。

秘めていた思いがさらけ出すように強く、細い体を包み込んだ。

 

「シュンヤさん…?」

 

困惑したような、シャムの声。

だが、シュンヤは一層力を込めて、呟いた。

 

「…悪い。少し、こうさせてくれ…」

 

「…ええ。分かりました。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はい、キリト君。」

 

「ありがとう、アスナ。」

 

第22層のログハウス。

キリトとアスナはそれぞれの甘さのコーヒーで一息つく。

 

「…それにしても、びっくりだったよ。」

 

「…ああ、まさかシュンヤの兄貴がアーガスの元社員だったとはなぁ…」

 

「…それもだけど…」

 

「ん?」

 

「キリト君、ちゃんと向こうの世界に戻りたいんだなって。」

 

「な、なんだよそれ…」

 

「だって一時期凄かったじゃない。向こうに戻ったら、私との関係もなくなるのかー、なんて言ってたし。」

 

「う…ま、まあ…そうだな…」

 

キリトは少しバツの悪そうにコーヒーを少しだけ飲むと、外の森に視線を向けた。

 

「…正直、今もその不安はほんの少しだけある。…けど、向こうに戻っても、今こうやってアスナと過ごしてきた時間が無くなるわけじゃないしな。」

 

「…そうだよ。私達が愛し合ってるこの時間は、どうやったって無くならない。いつまでも、ね。」

 

「…向こうに戻ったら、アスナの両親に挨拶しなきゃな。」

 

「…そうだね。」

 

 

 

「…向こうに戻ったら、迎えに来てね…?」

 

「…ああ。必ず。」

 

 

 

 

「…あ、そう言えば…」

 

「?どうしたの、キリト君。」

 

「いや、76層に来た時にロストしたアイテム、まだ全部は把握してなかったんだよ。まぁ、そんなに大事なものは……ん?」

 

「…?どうかした?」

 

「…いや、アスナ。アイテム欄…」

 

「え?なに?」

 

「アイテム欄…光ってる…」

 

「え…?…あ、本当だ。えーっと…でも、特に変わったことは…あれ?」

 

「どうした?」

 

「ロストしてるアイテム名の1つが光ってて…押してみるね。」

 

「うん。」

 

ピッ。

 

そして、その瞬間。

アスナの髪がフワリと浮き上がる。

 

「え?!」

 

「アスナ!?」

 

キリトがアスナに駆け寄る。

すると、アスナの首元から、1つのクリスタルが飛び出した。涙型のそのクリスタルは宙に滞在すると、やがて淡い光を帯びる。

 

「き、キリト君…これって…」

 

「まさか…」

 

そして、その光は段々と強いものに変わっていき…

 

そして、一瞬にして強い光がログハウスの中を包み込んだ。

 

2人は思わず手を目の前に翳した。

…しかし、キリトは指の間から捉えていた。

強い光の中。

白いその閃光のなかで形作られていく、1人の少女の姿を。

長い黒髪、小さく細い体。簡素な白いワンピース。そして、幼げなその顔には見覚えがあった。

 

 

それは…かつて、最下層で悲しき別れを告げた、2人の最愛の、少女()の姿。

 

 

少女が床に足を着き、ひっそりと立つ。

視界の回復したアスナが、躊躇うようにゆっくりと少女に近づいていく。

…たが、数十センチ手前で、足が止まった。

まるで、幻かもしれないという恐怖を体現しているように。

…だがーー

 

「…ママ…?」

 

少女が振り向き、アスナに対してその言葉を投げかけた瞬間に、アスナは耐えられなかった。

思わず手を伸ばして、その小さな体を抱き寄せる。

かつてはなくした温かさを、もう放さないように。

 

「ママ…!ママ…!!」

 

「ユイ、ちゃん…!ユイちゃん…!!」

 

抱き合う2人の可憐な少女。その目元には、涙が浮かぶ。

その上から、更にキリトは黒髪の少女を抱き締める。やさしく、力強く。

 

「パパ…!」

 

「キリト、君…!」

 

「…奇跡ってのは、起きるんだな…」

 

 

キリトはそう言って、目尻に涙を浮かべながら呟いた。

 

3人は、再会の時を、長く、長く、噛み締めたーー。

 




つっかれた…

長くなった…

次回もお楽しみに!
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