ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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最近マジで眠すぎワロタ(´°ω°)チーン



第13話 お誘い

ー第72層ー

 

 

「ゼアアァァァ!!」

 

キイィンッ!

 

キリトの黒剣が巨大カマキリモンスターの鎌を弾く。カマキリはそれにより動きが阻害される。スタン状態。

 

「リズ、シリカ!スイッチ!」

「分かった!」

「はい!」

 

キリトの掛け声を合図にに2人は飛び出す。

そのまま怯んだカマキリの体に片手棍と短剣を繰り出した。

それにより、更にカマキリは仰け反る。

 

「エギル!スイッチ!」

「おうよ!」

 

2人の後から更に筋肉質な野郎4人が前に出て、ソードスキルを叩き込んだ。

それを喰らった直後に、カマキリはスタンから回復。すぐ様硬直しているエギル達を狙い撃つ。…だが。

 

タァンッ!

「ギギッ!?」

 

彼らの後ろから飛来した何かがカマキリの頭を直撃。攻撃がキャンセルされる。

 

「行くぞ、リーファ。」

「うん、カズマ!」

 

すかさずリーファとカズマが前に出て、それぞれのソードスキルを発動。

カマキリのHPバーが最後の1本のイエローゾーンに突入した。

そして、最後は…

 

「シャム、一緒に行くぞ。」

「はい!」

 

シャムとシュンヤが同時に前に出る。

だが、カマキリもそれを迎え撃つべく、2本の鎌を繰り出した。

 

「…!」

 

だが、それも予想していたのか、シュンヤは素早く前に出て、ソードスキルを発動せずに居合の通常技を繰り出す。

 

キキィンッ!

 

鳴り響く金属音。

シュンヤは居合の一太刀で2本の鎌を弾き切る。

そして、その後ろからシャムが等身を紫色に染めて走る。

 

「ヤアアァァァ!」

 

渾身の突きがカマキリの胴体を貫いた。

巨大カマキリの体は大きく歪むと、1度動きを止めて…

 

カシャアアァァンッ…!

 

そのまま四肢をポリゴンへと変えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「んー。1週間弱でこの層まで行けるようになったのは正直驚きだな。」

 

ポーションを口に咥えながらキリトは唸るように呟く。

それにはシュンヤも頷いた。

 

「そうですね。結構な時間短縮が出来てる。非常に良いペースです。…それも、エギルさん達とシャムが入ってきてくれたおかげですよ。」

 

シュンヤの言葉に、エギルは大笑いをして答える。

 

「ハッハッハッハ!相変わらずお世辞が上手いなシュンヤ。…まぁ、俺達職人クラスを兼任してる奴らは、時折休ませてもらっちまってる。そんなに畏まらなくていいぜ。」

「それでも、《アニキ軍団》の方々が一斉に入ってきてくれたことは、かなり有難かったです。これからもよろしくお願いします。」

「おう、任せときな。」

 

「シャムも、来てくれてありがとうな。正直アタッカーの人手足りてなかったから有難かったよ。」

「い、いえ。お邪魔になっていないなら良かったです。」

「お邪魔になんてしないよ。大切な戦力なんだから。」

「そう、ですね…」

「うん…」

 

……

そして流れる、微妙な空気。

何処か沈んだようなその空気に、明るい声が入った。

 

「なぁに湿気た空気出してんのよっ!」

「グホッ!?」

「…!?」

「り、リズさん!?」

 

リズベットがシュンヤの背中を思いっきり叩いて、シリカとシャムが困惑したような反応を示した。

 

「痛つ…リズさん、もうちょい優しく叩いてくださいよ…」

「まーまー、細かいことは気にせずに。それより参謀さん、この層のエリアボスも倒せるようになったし、もう最前線に行ってもいいんじゃない?」

「全然細かくないんですが…。まあでも、そうしたいのは山々なんですが、どうしても75層より上はここら辺の層のモンスターよりも強い傾向があります。あまり焦らず、ゆっくり行きましょう。」

 

「そう、なんですか?」

「うん。シリカがこの前相手にしてたドランクエイプみたいなモンスターも山ほど出てくるし、モンスターのアルゴリズムに変化が出てきてる。あまり焦らない方がいいだろうな。」

 

キリトの説明に、リズがへーっと感嘆の声を上げた。

 

「さっすが、攻略組トッププレイヤーのギルドマスターは違いますなぁ。」

「茶化すなよ。あともう1戦だけしたら帰るから、しっかり休んどけよ。」

「はい。」

「分かってるわよ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「シノンさん。はい、ポーション。」

「…ありがと。」

 

リーファが小瓶をシノンに差し出すと、シノンは礼を言って、それを受け取った。

それにどう切り出すが少しだけリーファが戸惑っていると、彼女の肩をカズマが叩く。

 

「…カズマ。」

 

彼は目線とジェスチャーで「少しあっち行ってろ」と促す。リーファはそれに従って、2人から離れて少し離れたところにいたキリト達の元へ駆け寄った。

 

「さっきの弓のタイミングは良かったな。」

「…そうね。」

 

カズマの賛辞にもシノンは素っ気なく返した。カズマは懲りずに話し続ける。

 

「どうだ、この世界の《弓》にも慣れてきたか?」

「…正直、百発百中とは行かないけど、八割くらいは狙ったところに行くようになってきた。」

「そうか。なら良かった。…今の熟練度は?」

「大体700くらい。…初めから500まで上がってたから早いわね。」

「ま、そんだけあれば十分か。…でだ。」

 

カズマは少しだけ視線に鋭さを増させる。

 

 

「…なんでパーティーメンバーを避ける?」

 

 

カズマの指摘に、シノンはピクリと反応を示す。

 

「…それは、重要なこと?」

「ああ。非常に重要だ。パーティーメンバーってのはいわばそいつに命を預けてるようなものだからな。なら、そいつとの仲が宜しくなけりゃ、安心して背中なんざ任せらんねえだろ。」

 

カズマの言葉に、シノンはしばらく何も言わなかったが、少しだけため息をつくと、返答する。

 

「…別にそこまで気にすることじゃないじゃない。私は、ちゃんと仕事をこなして、皆の邪魔にならないようにサポートしてる。なら、これ以上何をしろと言うの?」

「まあ、確かにそうだけどさ…」

「なら、この話は終わり。…早く進みましょう。時間、ないんでしょう?」

 

シノンはそう言うと、移動の準備を始めているキリトたちの元へと向かった。

 

「…やれやれ…」

 

カズマはそれを見ながら、もう一度ため息をついた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あー、つっかれたー!」

「もう動けないですぅ…」

 

第76層に移転した、エギルの店。

そこの1階スペースでリズベットは椅子に座りながら大声でそう愚痴り、シリカは溶けるように座り込んだ。

ここは1階でレストランと、商店を兼営しながら2階は宿屋になっている。かなり奮発したようで、「また頑張んねぇとな」とエギル自身も意気込んでいたのも新しい。

 

「お疲れさん。」

「明日からの1週間は休みを挟みながらやっていくので、少しずつ回復してください。明日は休みですのでゆっくり休んでくださいね。」

「やたー。」

「わーい。」

 

覇気のない2人の声に、「ぅー」というリーファの声が重なる。

 

「どうした、リーファ。お前も疲れたか?」

「そりゃそうだよ…ていうか、道中の敵+エリアボス三体の戦闘したのにピンピンしてるのがおかしいんだよ。」

 

「ほう、そりゃ困った。この場にはおかしい奴が5人もいるのか。いや、アニキ軍団の面々合わせりゃ8人か。もうアイツら帰ったしな。」

「ヴー…そういえば、ウッドさんとコウヤさんはどうしたの?今日いなかったけど…」

「ウッドの奴は鍛冶屋の依頼があったから今日は休み。コウヤさんは急用出来たから休みだって昨日の内に言ったろ?」

「そうだっけ。」

「ったく…」

 

カズマは呆れたようにため息をつく。

それを見てキリト達は苦笑をうかべた。

 

「そう言えば、明日は血盟騎士団と聖竜連合が合同でクリスマスパーティーを開くらしいですよ。」

「あー、それ私も聞いたわ。」

「私もです。それぞれの決められた層に屋台が出るらしいですね。」

「宣伝のためか?珍しいな。」

「まあ、それだけ両ギルドとも人手不足なんだろうよ。…それに、それだけじゃないだろ。」

「…ま、分かってるけどな。」

「え。そうなんですか?」

 

シュンヤとカズマの会話に、シリカが疑問符を浮かべた。

それに、キリトが苦笑を浮かべながら答える。

 

「まあ、勿論そういう側面もあるだろうけど、大元は《こんな日くらい、皆に楽しく過ごしてもらいたい》っていうことらしいぞ。ただでさえこういう状況だし。」

「へー。お兄ちゃんよく知ってるね。」

「そりゃお前、兄貴の嫁さんそれの主催者のボスだぞ。それくらいの情報は入ってくるだろ。」

「あ。そっか。」

 

弟と妹の会話に、キリトも「まぁそうだな」と笑いながら答えた。

やがて、シュンヤが手を叩き、乾いた音が鳴り響いた。

 

「さ、それじゃ明日しっかり休めるようにさっさと家に帰りましょう。あまり居座ってもエギルさんに悪いですしね。」

 

「それもそうねー。」

「皆さん、また明後日!」

「俺らも帰るか、兄貴。」

「だな。」

「ま、俺はここで店番だがな。」

「私もこの宿借りてるから。じゃあねー、皆。」

「…お疲れ様。」

「皆さん、お疲れ様でした。」

 

各々の挨拶も簡潔に、攻略組の新しい一角を担う者達は、帰路に着いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そういや、今年のクリスマスはどうすんだよ兄貴。」

「え、どうするって?」

 

第22層への帰り道、キリトとカズマの2人は冬用の毛皮付きコートに顔を埋めながら寒空の下を歩く。

 

「だから、参加すんのか?血盟騎士団のクリスマスパーティー。」

「ああ…その件か…」

 

カズマの問いにキリトは少し困ったように頬をかいた。

 

「アスナとも話したんだけどさ、やっぱり俺は行かない方がいいだろ。ほら、俺って嫌われてるし。」

「ま、懸命な判断だわな。」

「だろ?」

「なんてったって天下の《ビーター》様だしな。」

「そりゃお前もだろ。」

「ああ、不名誉なことにな。」

「お揃いだな。」

「嫌なお揃いだ。」

「違いない。」

 

一連の掛け合いを終えて、2人は笑い合う。ーーそして、自然と二人の目線は空に向く。

あるのは星空…ではなく。

覆い被さる鉄の蓋。だが、人工の光は星のような美しさを醸し出していた。

 

「…もう、2年も経つのか…」

「正確には、2年と2ヶ月弱だけどな。」

「わざわざ訂正しなくていいよ。」

「ははは…。いやまあでも、あの頃はここまで来れると思ってなかったな。」

 

「…はじまりの街でカズマと再会して、アスナとも出会って、シュンヤとも出会って。一月後にようやく第一層突破して。」

「…色々あって、嫌われソロプレイヤーの俺らが今やギルドリーダーとサブリーダーだぜ?2年前の俺らに言ったら信じられるかな?」

「いーや、無理だな。」

「だよなぁ。」

 

2人はもう1度笑い合う。

2人が笑い会う度に、息が白く可視化する。

笑い終わると、キリトはもう一度天を見上げた。そこには、蓋を見上げるような視線は存在しない。彼が見つめるのは、蓋よりも()()()()

その上に待ち続ける、数々の町やフィールド。

 

「…もう少しだ。」

「もうちょい進んでから言おうぜ、そのセリフ。」

「…ま、それもそうか。」

「そうだよ。…じゃ、そのセリフがもう一度言えるように、頑張りますかね。」

「だな。」

 

 

「これからもよろしく頼むよ、兄弟。」

「ちゃんとついてこいよ、兄貴。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふぅ…」

 

キリト達が解散した後、シャムは2階部分に取ってある自分の部屋に戻って、装備を解除し私服に着替えて、一つ息をついた。

 

このエギルが経営する宿はなかなかいい間取りで、そこそこ広めの部屋にソファとテーブル、デスク、ベッド、キッチン、更にお風呂までついている特別仕様である。

かつて彼女が使っていた、《スリーピング・ナイツ》の部屋よりもグレードアップしており、コレがエギルの厚意により割引価格というのだから驚きだ。

 

シャムはとりあえず疲れを癒すために、風呂に入ろうと考える。

一応仮想世界なので筋肉疲労などは存在しないが、精神的休憩というか、入った方が休まる()()()()程度のものだ。

だが、彼女自身風呂を欠かしたことは1日もない。

シャムはウィンドウを開いて、髪飾りをのけて、バスタオルと下着を取り出した。

 

正直言うとわざわざ下着やバスタオルを取り出しておく必要は無いのだが、風呂を出て濡れた体のままウィンドウを操作するのは、どうも気色が悪い。

というか、出来れば冷える前にタオルで水滴を拭き取りたいのだ。

そんなこともあってか、入浴前に洗面具を取り出すのはもはや癖となっていた。

 

 

「よし…」

 

シャムは着替えとタオルを手に、バスルームへと踏み出したーー

…ところで。

 

コンコンっ

 

外からドアの叩かれる音。

それに釣られてシャムは180度体を回転させる。そして、その瞬間に声がかけられた。

 

『シャム、いるか?ちょっと話があるんだけど。』

 

それは、シュンヤの声だった。

彼はこの宿のシャムの隣の部屋を取っているため、コンタクトは非常に取りやすい。

彼は今、彼女達のギルドの作戦を立てているので、もしかしたら急ぎの用かもしれなかった。

 

「は、はい!今開けます!」

 

シャムは少しだけ早足にドアへと近づくと、ゆっくりとその扉を開いた。

そこに居たのは、間違いなくシュンヤだ。

着流しに身を包んだ青年は、少しだけ高い背をかがめながらシャムに問う。

 

「悪い、疲れてるところ。…ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな?」

「あ、はい!もちろん!どうぞ…」

「あ、悪い。ありがとう。」

 

シャムは寒そうなシュンヤに気を遣い、なんの躊躇いもなく自身の部屋へと彼を招き入れた。部屋は暖房が効いて暖かい。

…そう。ただの気遣いだったのだ。

 

「あ」

「へ?」

 

そこにあったのは、畳まれた白い布地と、小さく象られた水色の三角形と、囁かな2つの膨らみ。

ーーそう。

さっき出した物(下着)であった。

 

「〜〜〜〜〜ッ!!」

 

シャムはベッドの上に置かれていた《それ》に気付いた瞬間、猛スピードで《それ》を回収。

あまりの勢いでベッドに正座してそれを抱え込んだ。

あまりの羞恥に顔が赤く、プルプルと震えている。

シャムはシュンヤを見る。

彼自身、ドアを閉めながら右手で目元を隠してはいるが、先程の反応を見る限り…

 

「………見ました?」

「………何を?」

「………見ましたよね?」

「………見てない。」

 

見ている。

あの反応は、ガッッッッツリ見ている。

それを確認した瞬間に、シャムは更なる羞恥に襲われた。顔の温度が上がり、今にも頭から煙が出そうな程である。

 

「ぅぅ…わ、忘れてくださいぃ…」

「……み、見てないから。」

 

2人はそのまま、しばらく動けなかった。

 

 

 

「…えっと、もう落ち着いたか?」

 

それから10分後。

シャムはようやく落ち着きを取り戻し、ようやくシュンヤと顔を対面で合わせる。

…が、よく見ると未だに頬が朱色に染まっていた。

 

『…言ったら多分話進まんな。』

 

シュンヤはそんなことを考えながら、1つ咳払いをしてから話し始める。

 

「コホン。えー、まぁまずは1つ正式に礼を言わなけりゃなと思ってな。」

「礼…ですか…?」

「ああ。…改めて、ギルドに入ってくれてありがとう、シャム。お前が来てくれたおかげで俺達もかなり立ち回りやすくなった。」

「あ、い、いえ。前にも言いましたけど、それは、ギル…ユウキさんの指示で…」

「だとしても、行くって決めたのはシャムだろ?なら、その決断をしてくれたことに感謝する。…謙遜するのはいい事だけど、し過ぎんのは駄目だぜ?」

「は、はい…。それじゃあ…どう、いたしまして…?」

 

どこかぎこちない返しに、思わずシュンヤも笑ってしまった。

 

「わ、笑わないでくださいよ!」

「いや、すまん…ビクビクしてんのが面白可愛くてつい…」

 

そう言って尚も腹を抱えるシュンヤを、シャムは恨めしそうに見る。

やがて笑いが収まったシュンヤは、もう一度彼女に頭を下げた。

 

「これからもよろしく。」

 

「あ、いえ。どうぞこちらこそ…」

 

物凄く堅苦しい挨拶の後、2人は同時に顔を上げて、少し見つめ合い、そのまま同時に吹き出した。

 

「あ、私お茶入れますね。」

「ありがとう。貰うよ。」

 

ソファに座ったシュンヤに即席のお茶が運ばれてくる。彼はそれを一口口に含んで、そして、ゆっくりと口を開いた。

 

「…実は、用はもう一つあってな。」

「え…?」

「…まあ、これはギルド参謀としてじゃなく、俺個人としての話なんだがな。」

「は、はい…」

 

シュンヤはそのままティーカップを置いて、頭を少し掻きながら、「まー、えっと…だな…その…」と、何処か煮え切らない言葉が並ぶ。

ーーだがやがて、シュンヤは意を決したように、息を吐いた。

 

「シャム。」

「は、はい。」

 

シュンヤはシャムの目を真っ直ぐと見つめる。その視線に、彼女は不意にドキリとしてしまった。

だが、それも知らずにシュンヤはその言葉を言い放った。

 

 

「明日、一緒に出かけないか?」

 

「は、はい。…え?」

 

 

 

 

ーークリスマス(恋人の季節)は、まだ始まってもいない。ーー





今年のクリスマスは明るくなるでしょう。

次回もお楽しみに。
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