前編と後編の間に別の話盛り込んでいくぅ!
(書きたかっただけ)
12月24日。
カズマは今朝届いた朝刊に目を通す。
そこには大々的に《Merry Xmas!!》と言う文字やイルミネーションの写真が一面を飾っていた。
「…メリークリスマスって、いつから言うんだろうな。」
基本的に、日本ではイヴから《メリークリスマス》という語句を使う。だが、元々外国などではどのように使うのだろうか。
彼の、純粋な知識欲。
それにメルが解答を送る。
「元々《Merry》は《愉快な・幸福な》っていう意味。だから別にクリスマス当日だけで使う必要は無いわ。日本以外の国では12月の上旬から使うらしいわよ。」
「ああ、MerryーGoーRoundとも言うしな。そう考えれば確かにそうだな。」
カズマは納得したように頷くと、満足そうにもう一度朝刊に視線を戻す。
メルはそれを怪訝な目で見つめた。
「…ねえ、新聞読むのって楽しいの?」
「んー、楽しくはないな。ただまあ、どんな情報があるかわかんないんで見てるだけ。」
「…あらそう。」
2人がそんな会話を交わしたあと、訪れる静寂。
外の鳥の囀りや、風の音が聞こえる。
…だが、その時。
「…カーズマああぁぁ!!」
超大音量の声と共にカズマに飛来する紫色の弾丸。傍から見れば何か分からない現象であろうが、カズマは左手で新聞を持ちながら、右手でその弾丸を受け止めた。
「ギャフっ!?」
弾丸はそんな声を上げて足を止める。
その正体は、紫髪の美少女、カズマの妻であるユウキだった。
ユウキは足を止めると「えへへー」と破顔しながらカズマに話しかけた。
「流石はカズマ。腕を上げたね。」
「お前も流石だ。レベル上がって速さがさらに増してる。STR全開にしなきゃ危なかった。」
「でしょ?」
「その分ダメージでかいから突進やめろって言ってるだろ。あれやられたら下手すりゃ脳が揺れるんだよ。…いや、揺れる脳ないけど。」
「むー…しょーがないなぁ。」
「膨れてもだめ。…それより、料理できたのか?」
「あ、そうだった!」
ユウキはそう言うと思い出したようにキッチンに戻り、彼女が作った料理を持ってくる。
「はい、どーぞ!!」
「…また味見するの?」
「もはや日課だろ?慣れろ、メル。」
メルの愚痴をカズマは容赦なく跳ね除けた。
ココ最近はユウキの花嫁修行(?)ということで、3食を彼女が全て作っている。
カズマと付き合うまで(記憶が戻るまで)ほとんど料理スキルを上げていなかったユウキは、最初こそ凄まじいペースで熟練度が上がっていたが、今はビギナーズラックも無くなり、しかしぶつくさ言いながらも反復練習を続けている。
カチャ…モグ…
小皿に取り分けられたそれぞれの料理をカズマとメルは順番に口に運ぶ。
今日のメニューはケーキと甘辛チキン。
チキンは中級者メニュー。
ケーキも、クリームなどがあるものは上級者向きだが、今回は比較的簡単なカップケーキだった。
数回咀嚼、嚥下してから2人は感想を言う。
「…うん、最初よりは上手くなったわね。」
「本当に?メルちゃん。」
「ええ…。」
「まあ最初は全然熟練度上がってないのに上級者メニュー作って、思いっきり失敗してたからな。あれはなかなか食うの辛かった。」
「…まあ、そうね。」
カズマの言葉で苦い思い出を思い出して、メルも苦笑する。
「ご、ごめんね…?」
「…ま、今となっちゃいい思い出だよ。…にしても、やっぱり上手くなってきたな。いい感じに味もまとまって来てる。」
「本当に?!」
「近い。」
「ぎゅむッ。」
「まあ、細かいとこ言うとチキンのソースが少し焦げてて苦味があって、ケーキも少しばかり砂糖の入れすぎだけど、これはこれで味があって美味い。」
「それ褒めてる?」
「褒めてるよ。…まあ、わざわざそこまで完璧にする必要はないしな。この2つなら《パーティー》に持っていってもいいだろ。」
カズマの間接的な《合格》に、ユウキは飛び上がりながら喜んだ。
「ぃやったー!!カズマからようやくOK貰ったぁ!!」
「うん、よくやったな。《食える》ところから《美味い》と思える所まで持っていくとは、大したもんだ。」
「確かに。ケーキはカズマのより美味しかった。」
「え?!」
「メルは甘党過ぎなんだよ。あれでちょうどいいなんて言うやつは糖分不足のやつくらいだ。」
「いいのよ。この世界じゃ太ったりしないし。」
「太るも何も、お前まずAIだろ。」
「細かいこと気にしちゃやーよ。」
べっ、と舌を出すメルに、カズマは呆れたようにため息をつく。
「うんうん。いいと思うよ。ボクも甘いの好きー。」
「あら、珍しく気が合ったわね。」
「ねー、カズマー。帰ったら3人で一緒にクリスマスパーティーしようねー。」
「はいはい、分かってるよ。で、一緒に料理すればいいんだろ?」
「うん!」
カズマの返答に、ユウキは満面の笑みで答えた。そしてカズマは「それより…」と続ける。
「お前そろそろ時間だろ。ギルドのクリスマスパーティー。」
「あ、そうだった!やばいやばい!」
ユウキは急いで残りのチキンやカップケーキをストレージにしまうと、その場でパジャマから私服に着替える。
「…カズマ、見たわね?」
「夫婦なんだから見てもいいだろ別に。」
彼女はいつも家の中なら何処でも着替えを行うため、勿論その場にはカズマが同伴している時もあり、その時は当然下着なども目に入る。
…まあ、彼自身見慣れているからなんとも思わないらしいが。
「それじゃあカズマ、行ってくるね!」
「いってらっしゃい。楽しんでこいよ。」
「うん!」
ユウキは満面の笑みで返事をして、玄関を出た。
訪れる静寂。カズマがコーヒーを飲むだけで、音が響く。そして、それを飲み干して…
「…さて、メル。行くぞ。」
「…分かった。」
カズマはコートに袖を通して、コーヒーカップを洗ってから、静かに家を出た。
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「皆ー!お待たせー!」
「おぉ、ユウキ!遅せぇぞ!」
「ユウキ、3分遅刻。」
「えへへー、ごめんなさい。」
ユウキが少し大きめの建造物に入ると同時に湧き上がる、多種多様の歓迎の言葉。
《スリーピング・ナイツ》のギルドホームにはメンバーが勢揃いしていた。
…といっても、結婚しているユウキ以外は全員このギルドホームに住んでいるので、当たり前と言えば当たり前だが。
「ユウキ、今日はどうしたの?」
「気にすんなよシウネー。どーせこいつ、またカズマとイチャついてたんだろうし。」
「否定はしないけどねー。」
「そこは否定しろよ。」
ユウキの言葉とジュンのツッコミに、一同に笑いが起こる。それにつられてユウキも笑う。
「そういえば、シャムはどうだった、ユウキ。やっぱり来ないって?」
「んー、一応メッセは送ったけど、今日は予定があるんだってさ。」
テッチの質問に、ユウキは少し困ったように返す。それにノリが納得したように「あー」と頷いた。
「まー、今日はクリスマスだしね。あの子にも《そういう相手》はいるから、大方《そういうこと》でしょ。」
「だねー。」
ユウキの相槌と共に、その場にいる全員が「うんうん」と頷いた。そこで、パンパンと乾いた音が響く。
「はいはい、シャムちゃんのプライベートの詮索はしないの。クリスマスパーティー始めましょ。」
「あ、今日はボクも料理作ってきたから、みんな食べてねー!」
「え''…」
「ユウキの…料理…」
「わ、私は少しお腹の調子が…」
「待て、逃げんなタルケン…!」
すごすごと逃げようとするタルケンを、クロービスが止める。
あまり宜しくない反応に「むー!」とユウキは頬をふくらませる。
「な、何さ!ボクだって最近は上手くなってきたんだから!ちゃんとカズマのOKも貰ってるし!!」
「あ、なんだ。それなら安心だ。」
「ユウキ、1つ貰っても?」
「なんかムカつく!!」
そう言ってはじまった取っ組み合い。
ランとシウネーは、それを微笑ましそうに眺めていた。
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「……」
第46層ダンジョン《玲瓏の洞窟》。
そこの最深部に立つ、コートを着た青年。
背中には紅い剣を背負い、コートには見慣れたフードがついている。
「おい、ご丁寧に地図まで付けて呼び出した癖に、挨拶もなしかよ。」
そう言って、カズマは右手に持っていた半用紙をピラピラと振る。
その呼び掛けに、反応はない。
…しばらくして。
カツン、カツン、カツン…と、彼に近づく足音が響く。カズマは一瞬背中の剣に手を添えるが、敵意のないことに気付くと、ゆっくりとその手を下ろす。
…そして、暗がりから現れたその人物の顔に…
カズマは、顔を歪めた。
「…よぉ。久しぶりだな、カズマ。」
「…やっぱりお前か。ドナウ。」
カズマの反応に、ドナウはわざとらしく手を広げた。
「なんだよ、気付いてたのか?名前は伏せてたはずなんだがな。」
「はっ、メッセに関しちゃ、お前は名前伏せたって分かるよ。いちいち文章を改行する癖…お前しか見たことない。」
カズマの指摘。それにドナウは驚くことも無く、ピュウッと口笛を鳴らした。
逆に、かつてと違う彼のその仕草にカズマが少しだけ戸惑う。
「流石の勘の良さってところか。攻略組トッププレイヤーは違うな。」
「それはどーも。…で、どっちが本当だ?」
「ん?何がだ?」
「
「……」
「かつて、鍛冶屋に落ち着いてたお前は、真面目で、寡黙な奴だった。お前自身がどう思ってたかは知らんが、俺はそう感じてた。」
「……」
「今のお前は、それこそかつての様子は微塵もない。まるで別人だ。…何がお前をそこまで変えた。」
「…クハッ…」
ドナウに対する、カズマの問い。
…それに対して、ドナウは吹き出した。
「ハハ…ハハハハハハハハッ!!」
腹を抱えて、哄笑する。
しばらく洞窟内に響く、ドナウの笑い声。
それには思わずカズマも顔を顰める。
「…そんな笑い、ダンジョンでするモンじゃねえだろ。ここ、安置じゃねえぞ。」
「…安心しろ、モンスターは
「…は?」
「《シンユウ》との大切な話し合いだ。邪魔は入れたくなかったからな。」
ドナウは笑い終わると、目元の雫を拭い、不敵な笑みを浮かべた。
「俺を変えた、か…。俺は《変えた》んじゃない。元々《変わってた》んだよ。」
「…どういう意味だ。」
「深い話じゃないさ。こうしてなんの驚きもなく話してたんだ。俺の行方不明までの過程は大方察してんだろ?そして、それまでの俺のことも。」
「……」
「黙秘はYESととるぜ。…俺は元々、参謀として《ラフコフ》に席を置いてた。うちの野郎共はまあ、頭が使えねえもんで、俺が作戦を立てなきゃただ襲うしか脳がなかった。」
「昔話は他でしてくれ。」
「安心しろ、すぐに終わる。…そんなこんなで参謀としてゴタゴタしてた訳だが…どうにも、どんなものを仕掛けても殺りきれない奴らがいた。そう、攻略組の連中だ。」
「……」
「他の雑魚はともかく、トッププレイヤー達はそうはいかない。詳しい情報の上綿密な作戦を立てなきゃ俺らが削られる。…だからこそ、ラフコフで唯一のグリーンカーソルだった俺が、偵察として鍛冶屋に扮したわけだ。俺の代わりに参謀してた奴も、俺の事を変に崇拝してた奴を祭り上げて、俺の指示に従わせてただけだよ。」
「……」
「わかるか?お前が仲良くしてた《ドナウ》っていうプレイヤーは、俺がお前らの元に潜り込むための《演技》に過ぎない。…お前の《シンユウ》は所詮、偽物だったんだよ。」
「俺の本当の名前は《ショウマ》…《ラフコフ参謀役》のショウマだ。」
「……」
ドナウ…いや、ショウマが話し終わっても、カズマは表情を変えない。頭を掻いて、何処かめんどくさそうとも取れる仕草のまま、ため息をついた。
「ま、長々と説明してもらった所悪ぃけどさ。要は《ラフコフ》としてのお前が
「ああそうだな。」
「じゃ、話は早い。お前は敵だ。」
カズマの結論は正しく即決。
これにはショウマも引き攣りかけた笑いが出る。
「…躊躇いはねえのか。」
「何も。まあ、つーかさ。
「ああ。」
「それなら問答無用で敵だよ。思考する必要も無い、決定事項だ。」
「俺の中の敵味方は意外と簡単でな。害がそこまでなければ味方。害が多ければ敵。関わらなけりゃ、無関係。俺の独断と偏見で決めるが。」
「自分語りか?」
「俺も付き合ったんだから五分だろ。…そんなわけで、お前は俺の《1番大切なモノ》を壊しにかかった。…それはそれまでのことがあっても、払拭しきれねえ《害》だ。なら、俺はお前と敵同士。Do you understand?」
何処か説明口調な言葉をカズマが言い終わると、ショウマは口角をさらに上げる。
「良いね。やっぱりお前は最高だよ。」
「実に、殺しがいがある。」
「やってみろよ。ビビり野郎。」
「…つっても、俺はここで殺り合うつもりは無い。ここは舞台も整ってねえしな。」
「…逃げんのか?」
「ああ。逃げるとも。俺は今丸腰だしな。…ああ、そうそう。」
「あ?」
後ろを向き、また暗闇に溶け込みかけたショウマは立ち止まって、再度カズマに話しかける。
「今の俺は、《ラフコフ》所属じゃない。」
「…何?」
「俺は今、《とある男》と協力関係にある。…ま、期間限定ではあるが。」
「とある男…?」
「いずれ分かるさ。…知りたければ、この塔を最後まで駆け上がることだ。」
「ハハハハハハハハッ!」
ショウマは哄笑を辺りに響かせながら、闇に溶けていった。
…しばらくカズマは動かなかったが、そこには、もう誰の姿もなかった。
カズマは一息ついて、胸ポケットに視線を向ける。
「…メル、どうだ?」
「ん、録音バッチグー。」
「了解。…帰るか。とりあえず保存しといてくれ。」
「分かった。記録結晶に入れとくわ。フォルダ名《カズマの自分語り》。」
「やめぃ。」
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第22層・カズマの家の最寄り転移門
「ふぅ…もうすっかり夜だな…。」
転移門で46層から22層へ転移したカズマは少しだけ伸びをしてから、呟いた。
そして、彼の胸ポケットからふよふよと妖精姿のメルが姿を現した。
彼女はカズマの肩に座ると、話しかける。
「…あなた、ドナウっていうプレイヤーに話しかけられても、大した心拍の揺らぎはなかったわね。大したものだわ。」
「…ま、元々話に聞いてた、っていうのもあったからなー…。それと、《ドナウ》じゃねえ。《ショウマ》だ。…あいつは、もうあの頃とは別人だ。」
「分かってるわよ。ただ、こっちの方が呼び慣れてただけ。」
メルは長い髪を払って肩にかける。
「…にしても、随分な変わりようだったわね。あのなよなよした鍛冶屋はどこに行ったんだか。」
「…だな。けど、人間には必ずしも裏表があるからな。あいつはそれが顕著…なのかもしれない。」
「何それ。二重人格ってこと?」
「そういう訳じゃないけど…。まあでも、どの道、《乗り越えなきゃならない壁》であることに、変わりはねえだろ。」
「…そうね。」
「ま、それはまた後で考えよう。さっさと帰ろうぜ。ユウキが待ってる。」
「ええ。」
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「さ!今度はプレゼント交換だよー!」
あれから、家に帰ったカズマとメルは、既に準備完了だったユウキに「早く早く」と家に押し込まれて、すぐさまクリスマスパーティーが開催された。
「ウェーイ。」
「うぇ、うぇーい…」
コートを脱いで私服に着替えたカズマと少女型になったメルがそれぞれのトーンでテンションを合わせる。
いや、全く合ってはいないが。
「もー、2人ともテンション低いよー!」
「いやいや、めっちゃ高いよ?ほら、ウェーイ。」
「棒読みじゃん!」
カズマとユウキのいつもの痴話喧嘩(という名のイチャイチャ)が始まり、メルも苦笑するしかない。
しかし少しして、カズマが「早く交換しようや」と提案すると、すぐに通る。
これも、夫婦としての2人のいい所だろう。
「じゃ、ボクからカズマにはこれ!じゃーん!」
「ん?これは…」
「サンタコスチュームだよ!この時期の限定クエスト報酬なんだ!」
「いや、これ女性用だろ。俺貰っても意味ないぞ。」
「ムフフ。それはねぇ…」
シャララララン…
「こうして、ボクが着ることがプレゼント!!どう?カズマ!」
「perfect!!」
カズマは短く、しかし最高の褒め言葉と共に親指を立てた。そして、そのまま無言で記録結晶に撮った画像を保存していく。
「こりゃ永久保存だな…」などと呟きながらカズマはストレージを操作した。
「んじゃ、俺からはだな…ほいこれ。」
「わ、ありがとう。これって…」
「バンダナ。ユウキ、ロングにしてからずっと同じバンダナ頭に巻いてるだろ?ちょっと色変えて、赤主体の緑と茶が散りばめられてるデザインをえらんでみた。」
「クリスマスカラーなんだ!ありがとう、カズマ!大事に保存しとく!」
「いや、着けろよ。」
「あ、そっか…」
ユウキはそう言って笑うと、ウィンドウを操作してすぐに頭のバンダナを先程貰ったものに変える。
そして…
「よし、んじゃ後はメルへのクリスマスプレゼントだな。」
「え?」
カズマはそう言うと、何処か驚きに目を剥いたメルに近づく。そして、ストレージからマフラーをオブジェクト化して、首に巻いた。
「ほれ、メリークリスマス。」
「わぁ、可愛い。青と水色と白色なんだ!」
「おう。風も通しにくいし結構温かいぞ。」
「良かったね、メルちゃん!」
ユウキがそうメルに笑いかけると、メルはようやく我に返って、首に巻かれたマフラーをのけ始める。
「い、いやいや。私はいいわよ…」
「おいおい、何してんだよ。ほら巻け巻け。遠慮すんな。」
しかしカズマが素早い手つきでそれを奪い去ると、もう一度彼女の首に巻き付ける。
巻き終わったあと、メルはのけることはなくなったが、少しだけ申し訳なさそうに顔を歪める。
「なんだ、気に入らなかったか?」
「ち、違う違う。そんなんじゃないわよ…」
「どうしたの、メルちゃん。こういうの苦手だった?」
「そ、そうでもなくて…」
メルはそう言うと少しだけ気まずそうに口ごもった。
やがて、ポソポソと話し始めた。
「だって…私…お金持ってないから…プレゼント、用意出来ないし…」
「あー…」
「なぁんだ、そんなことかよ。」
メルの言葉に、ユウキはなるほどと言わんばかりに声を上げて、カズマは何処か呆れたようにため息をつく。
「別に気にしなくていいよ。これはあくまで俺の気持ちってだけだ。お返しなんざいらねえよ。」
「で、でも、プレゼント交換って言ってたし…」
「あはは…それは確かにね…」
「そこは納得すんなよ。…まあでも確かに、お前の気持ちはわからんでもないがな。」
「で、でしょ。だから…」
「ならこれはアレだ。《サンタさんからのプレゼント》ってやつだ。」
「へ?」
「実はさっき煙突から入ってきた白い髭で赤服の不審者のオッサンからお前への貢物として貰ってな。これはそれだ。オッサンからの気持ちに感謝だな。」
「…いや、それは逆に欲しくない…」
カズマの例えに即答するメル。
その様子を見ながら、ユウキも苦笑する。
「まあ、そんなわけで貰っとけ。つーか、これはお前用に用意したんだから、貰ってくれなきゃ逆に困る。」
「う…」
「子供はいつの時代も貰うだけでいいんだよ。遠慮すんな。」
「…カズマも、子供…」
「お前よりは年上だ。」
カズマが言い切ると、ユウキはクスクスと笑いながら、ゆっくりと前へ出る。
そして、ストレージからアイテムをオブジェクト化させる。
「ね、メルちゃん。これは本来、物である必要はなくてね?これまでの感謝とか愛情を込めて、それが分かりやすいように物を渡すんだよ。だから、メルちゃんが物を私達にくれる必要はないんだよ?感謝してくれたら、その気持ちだけで十分だよ。」
ユウキは満面の笑みでそう言うと、メルの髪にゆっくりと触れる。
そしてそこには、輝く小さな装飾品が付けられていた。
「メルちゃん、メリークリスマス。受け取ってくれる?」
「…ありがとう。」
「うん。どういたしましてっ。」
「…カズマも、ありがとう。」
「おう。どういたしまして。」
お礼を言われて、カズマは少し笑うとゆっくりメルの頭を撫でる。
「……」
メルは、それにされるがまま、照れた赤い頬で撫でられ続けた。
それと同時に、彼女の胸に、なにか温かいものが広がった。
クリぼっちでした。( ºωº )