話は出来てたけど文章まとまらなくて投稿出来ませんでしたすみませんでしたーーーー!!
12月24日。
デスゲームに囚われたプレイヤー達も、何処か浮き足立つこの日。
シュンヤはいつもとは少し違う服装で、第76層にある街灯に背中を預けていた。
基本的に外出する時もシュンヤは和装なのだが、今日は隣に幼なじみとはいえ異性が歩く。
だからこそ、今日は黒のジーパンを履いて赤色のシャツの上から少し茶色がかったコートを着ていた。
ちなみに、今シュンヤが立っている街灯はエギルの店の前の物であり、今はシャムを待っている所であった。
…まぁ、待ち合わせ時間の30分前だが。
『あ''ー!やべぇ…めっちゃ緊張する!!』
心臓バックバクであった。
というか、彼は既に30分待っているので、待ち合わせの1時間前からエギルの店の前に張り込んでいる訳だ。
おかげで行き交う人々に「何やってんだコイツ」みたいな視線を向けられる始末である。
『ま、まあ遅れるより早くに待ってた方が良いだろうからな!うん!』
何処かめちゃくちゃな理論で自分を納得させていた。
…だが、そろそろストレージの整理も終わって退屈し始めていた、その時。
「…あ、あれ…シュンヤさん…?」
「…?!」
見慣れたツインテールの少女が背後の建造物から姿を現し、シュンヤは驚きに目を剥く。
時間を見ても、まだ30分前だ。
そして、その服装にも目を奪われた。
いつものスリムな戦闘用の服装ではなく、少し大きめの白いコートに身を包み、スカートは赤色と白の少しだけ短いもの。
スラリと長い足は、いつもの黒いものではなく、白基調のタイツに包まれていた。
靴も、同色のハイヒール。
いつもとは雰囲気の違う彼女に、シュンヤは戸惑った。
「シュンヤさん…?どうかしました…?」
「あ、ああ。いや、なんでもない…」
「…もしかして、この服何処か変だったですか?」
「い、いや違う!雰囲気違って戸惑ったけど、そうじゃないんだ!」
「た、ただ…綺麗だなって、思って…」
「そ、そうですか…よかったです…ありがとうございます…」
言い終わって、2人は同時にポポポポッと赤面した。周りの気温も相まって、湯気が出てもおかしくなかった。
2人は、しばらく顔を合わせられなかった。
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「シュンヤさん、今日はどうするんですか?」
隣に立ちながらシャムはシュンヤに問う。
最初こそ緊張はしたが、いつもと同じだと思えば意外と早く順応することは出来た。
「うん、昼飯食ってから、色々ブラブラしようとは思ってるんだけど…シャム、昼飯エギルさんの店でいいか?待ち合わせしときながら悪いけど…」
「はい。構いませんよ。エギルさんの作るご飯は美味しいので。」
シャムがそう言って微笑むと、シュンヤは少しだけ息を飲み込み、「じゃ、じゃあ行こう」と目の前の店に入った。
「らっしゃい!…っと、なんだお前ら。デートか?」
シャムとシュンヤがカウンター席に座ると、エギルがニヤニヤ笑いを浮かべて、からかうように話しかけた。
「ッ…ま、まぁ…そう、だな…」
「一応は…そうだと…」
「ハッハッハ!そう緊張するこたぁねえだろ!もう攻略組で長ぇ付き合いなんだからよ!…ま、これくらいにしとくか。それで、ご注文は?」
顔を真っ赤にしている2人に気づいて、エギルは苦笑いを浮かべた。
2人は慌ててメニュー表を見始めた。
「そ、それじゃあ私は…あの《キノコのクリームパスタ》を…」
「えと…俺は、《シーフードパエリア》でお願いします…」
「はいよ!クリームパスタとパエリアだな!」
エギルは元気よく注文を受けると、そのまま厨房へと下がっていった。奥で、野菜や魚の下処理をしている姿が見える。
「あ、すいませんシュンヤさん。私、上の部屋に忘れ物しちゃったんで席外しますね。」
「お、おう。」
「すぐ戻りますから。」
そう言って、シャムは階段を駆け上がっていく。その姿を見送ってから、シュンヤは「ハー…」と机の上に崩れ落ちた。
少しだけ頭を抱えながら「うー…」と唸る。
「どうしたよ、シュンヤ。いつもの的確な判断力はどこにいったよ。攻略組の攻略責任者の肩書きが泣くぞ?」
「…ボス戦とじゃ意味が違いますよ…。…正直、生半可なボス攻略よりは緊張してます。」
エギルの豪胆な笑いと共に、既に出来上がったパエリアとパスタがカウンターに置かれた。
「さっきも言ったが、そう緊張するこたぁねえだろ!攻略組でもそうだが、お前らリアルでも知り合いなんだろ?なら、いつもの感じで良いじゃねえか。」
「…そんなのは分かってますよ。…でも、それが分かんないから苦戦してるんです…」
「なんだぁ?カズマからのアドバイスじゃ足りなかったのか?」
「…いや、そんなことは…って、なんでカズマにアドバイス貰ったの知ってんですか。」
「あいつからメッセ送ってきたからな。やー、ようやく勇気出したかって2人で喜んだもんだよ。」
「…いや、それは知りませんけど…。」
「ま、こんな機会滅多にねえんだからよ。楽しんで、後悔はねえようにしとけよ。…ただでさえ、俺らの命は明日も知れねえんだから。」
「…分かってますよ。」
少しだけ不貞腐れたようにシュンヤが答えると、エギルはもう一度逞しい笑みを浮かべた。
その後、シャムが戻ってきて、2人はエギル手製の飯をしっかりと平らげた。
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「…何だこの空間。」
そこは、華やかな服達が並ぶ洋服店。
ピンクや黄色などの彩りはさることながら、服の手触りから凄まじい高品質な布が使われていることは間違いない。
女性用下着もあるにはあるが、シュンヤの視界にはかすみがかかってほとんど見えない。
…そして、目の前では。
「ほぉら、シャムちゃん!動かないの!」
「ちょぉっ…!レインさん…!自分で選べますから…!」
「やー、シャムの肌ってスベスベだよねー。羨ましい…」
「ちょ、フィリアさんまで…!」
…なんだか、見てはいけない光景が繰り広げられていた。
シャムにくっつく、茶髪よりのグレー?らしき髪色をするロングヘアの少女と、明るい茶髪のショートカットの少女。
ロングヘアの少女はあーでもないこーでもないとシャムに様々な服を当てて、ショートカットの少女はスリスリと二の腕に頬を擦り寄せていた。
「もぉ!1人で出来ますから!」
ピシャッ!
「あー…」
「逃げちゃった。」
2人の猛攻に耐えあぐねたのか、シャムは服と共に試着室にとじこもる。
その瞬間、彼女達の目線がシュンヤに向いた。
完全に興味が移ったようだ。
ヒクッとシュンヤは顔を引き攣らせる。
「君が噂のシャムちゃんの彼氏?確かシュンヤ君だったよね?私はレイン。よろしくね。」
「私はフィリアだよ。よろしく、シュンヤ。」
「あ…どうも。シュンヤです…一応誤解を解いておくと、俺は別に彼氏では…」
「え、違うの?」
レインの少し驚いた表情。
フィリアは懐疑的な視線を向ける。
「ホントにぃ?」
「ほ、ホントですよ。」
「それにしては、随分と仲良さそうだけど?」
「そうそう。シャムが付けてる髪飾りも、君がプレゼントしたんでしょ?」
「…まあ、幼なじみですから。それくらいはしますよ。」
シュンヤの素っ気ない答えに、レインは含み笑いを浮かべながら「ふぅん…」と小悪魔のようなため息を漏らす。
「…な、なんですか…」
「君ってさ、頭良いんだよね?」
「いや、あまり…」
「シャムちゃんから色々聞いてるから、私達に嘘は意味無いと思うよ?」
「…まあ、それなりの知識はありますけど。」
「そんな君が、
「…ッ…」
ムグッ、と。
シュンヤは痛いところを突かれたように口ごもる。その様子にレインとフィリアは苦笑いを浮かべて、続けた。
「君、嘘が下手だねぇ。」
「…あまりついたことがないので。」
「へー、真面目だね。生真面目で通ってるシャムと気が合うわけだよ。」
「…どうも。」
「…頑張ってね。シャムちゃん、あなたのこと話す時、本当に楽しそうにしてたから。きっと悪い結末にはならないと思うから。」
「大丈夫、きっと上手くいくよッ。」
「…ありがとうございます。」
レインとフィリアの鼓舞。
シュンヤはそれに微笑みながら礼を言う。
その微笑みに、2人は少しだけ硬直するとフイッと顔をシュンヤから背けた。
その行動にシュンヤが少し疑問符を浮かべた。
「試着終わりましたー…。…あれ?2人共どうしたんですか?」
「あー…うん。…シャムが射止められた理由が分かったというか…」
「…シャムちゃん、頑張ってね。」
「へ?」
2人の言葉の意味が、シャムにはよく分からなかった。
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「シュンヤさん、2人と何話してたんですか?」
「んー…からかわれてただけ。」
洋服店を出て、2人は少し雪の積もったレンガ造りの道を歩く。
ここは攻略済みの層で、そこまで魅力もないのでこの層に住むプレイヤーの数は少ない。
「そういえばあの店って、例のカリスマお針子の…」
「あ、はい。あそこは《アシュレイ》さんの直営店で、彼女が認めた会員しか入れないんです。私は何度か彼女にオーダーメイドを頼んだので、それで…」
「あー、なるほど…。それって、俺が入って良かったのか?」
「シュンヤさんは私のお友達だって言ったらOKくれました。一応、あそこで買い物しても良かったんですよ?」
「あはは…あの値段の洋服なんて、大層なことがないと買わないよ…」
「確かに、アシュレイさんの服は高級素材しか使ってませんからね。」
そう言って、2人は笑いあった。
そんな中、シュンヤは少しだけ考える。
『…お友達、か…』
シャムの言った単語のひとつに、思いを馳せる。
いや、実際その通りだ。
この世界ではあまり他人に個人情報は教えられないし、別に付き合ってる訳でもない。
…まあ、なんでかレイン達にはバレてたが。
たとえそうだとしても、友達以上の関係などではないのだ。
「…さん…シュンヤさん!」
「ッ…!」
唐突に名前を呼ばれて、思いふけていた脳が引き戻される。目の前には、覗き込むシャムの小さな顔。
心配そうな顔を向ける彼女に、シュンヤは慌てて謝罪する。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた…」
「…大丈夫ですか?シュンヤさん、最近忙しいみたいですし…無理してません?」
「や、本当に大丈夫だから。ほら、早くしないと日が暮れちまう。行こう。」
シュンヤはそう言うと、シャムの手を掴んで歩き始める。少し慌てた足取りで歩くシュンヤに、シャムは驚いたような表情で着いて行った。
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カランカランッ
「らっしゃーい。…お、ご両人のご来店か。」
「妙な言い方しないでくれ、ウッド。」
「ウッドさん、ご無沙汰してます。」
そこは、2人と同じギルドメンバーでもあるウッドの鍛冶屋。
先程は、シャムの用事を済ませたので次はシュンヤの番というわけだ。
「お前ら、せっかくのクリスマスデートにわざわざウチを選ばなくて良かったのに。もっと雰囲気あるとこあったろ。」
「…デートであることは否定しないけど、そう言う目的じゃない。」
「いや、でも手ぇ繋いでるし。」
ウッドのその言葉にシュンヤは今気付いたのか、繋いでいた左手を慌てて離した。
「わ、悪い。無意識に…」
「い、いえ…」
「あ、と…お、俺武器受け取ってくるから…」
「は、はい。」
ぎこちない会話の後、シュンヤはシャムから離れてウッドの立つ場所に急ぐ。
その様子を見て、ウッドは苦笑を浮かべる。
「…相変わらずぎこちねぇな。誘ったのシュンヤなんだろ?ちゃんとリードしてやれよ?」
「…分かってるよ。」
「…ま、いいや。とりあえずお前のオーダーメイド取りに来たんだろ?ちゃんと出来てるよ。」
ウッドはアイテムウィンドウを開き、《カタナ》の欄から1本をオブジェクト化。
それをシュンヤに手渡した。
「どうだ?前よりは少し筋力値上げたんだが、重すぎたりしねえか?」
「…うん、いい感じ。スピードも出るし、これならこの先の硬い奴でも通りそうだ。ありがとう、ウッド。はい、代金。」
「毎度。ちゃんとデート楽しんでこいよ。」
「分かってる。…シャム、行こう。」
シュンヤはそう声をかけた。
だが、シャムは悩むような仕草をしてからシュンヤに話しかける。
「すみません、シュンヤさん。少し私も買いたい物があるのでいいですかね?」
「ん、分かった。じゃああそこの棚見とくから、終わったら声掛けてくれ。」
「はい。」
そう言って、今度はシャムがウッドに近づきシュンヤが数メートル先の棚に注視する。
数分後、2人は礼と共にウッドの店を後にした。
「そういや、シャムは何買ったんだ?」
「…女の子の買い物は聞かない方がいいですよ。」
「え、そうなの?わかった、覚えとく。」
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「ところで、デートの時間帯は?」
「昼前から。朝は早いだろうしダラけるような気がして。」
「んー、まあ、そうだな。それくらいが丁度いいだろうな。ひとまず待ち合わせはして、そこからレストランは選んどけ。デートで行くとこは食事中にでも決めとけ。以上。」
「…そんだけ?」
「他にどう言えと?この世界にゃテーマパークも博物館もなし。ショッピングするのが1番の娯楽だろ。ウィンドウショッピングにでも興じとけ。」
「…まあ、それもそうか。」
「…あ、でも1つ言うとすれば。」
「?なんだよ。」
「クリスマスプレゼントは確実に用意しとけ。」
「そうすりゃ上手くいけばプレゼント交換もできるし、向こうが買ってなくても渡すことで好感度アップも狙える。」
「…や、そんなに好感度が欲しいわけじゃ…」
「告白すんなら、好感度なんて高い方が良いだろ。」
「いや、まだ決めてないからな?!」
「はいはい、お前の初々しいアピールはいいから。大体、クリスマスなんて重要イベントにお誘いなんて、お前も覚悟決めてんだろ?」
「う…ぐっ…」
「痛いとこつかれたみたいな顔する前に認めろよ。…まあ、告白にはアドバイスとかないからな。『頑張れ』としか言えん。」
「…そうなのか。」
「あれはあくまでもそいつ自身の気持ちを伝えるものだろ。なら、他人が口出すものじゃない。…ま、ちょっとハショッた俺が言える事じゃないけど…」
「…分かった。ありがとうな、カズマ。」
「ん、頑張れ。陰ながら応援しとくよ。」
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ーー夜。
周りの喧騒も大きくなり、広場のイルミネーションも輝く中。
シュンヤとシャムは広場から少し離れた場所のベンチで、美しい景色を並んで見つめていた。
「……」
チラリと、シャムは彼との距離を少し見て、3センチほどその距離をつめる。
「………」
「………」
広場の喧騒の横で広がる、異様な静寂。
それは、二人の間で少しの間続く。
…やがて。
「…きょ、今日、楽しかったですねっ。」
「…楽しかったか?」
「は、はいっ。とても…。」
シャムの笑顔に、シュンヤは苦笑して答える。
「…悪かったな、いきなり誘って。もうちょい早くに誘えたら良かったんだけどな。…勇気が出なくて。」
「い、いえそんな…」
その言葉を最後に、会話はまた途切れた。
またも訪れるその静寂。
…だが、今度はシュンヤがその静寂を破った。
「…楽しそうだな。」
「え…?」
「あ、いや…こんなゲームの中でも、皆楽しそうだなって、思って。」
「…そう、ですね。皆、笑顔が増えてきました。それもこれも、攻略組の皆さんやシュンヤさんが頑張ってくれてるおかげです。」
「お前もだけどな…」
「…ただ、近頃考える。…俺は、間接的にとはいえ、このデスゲームを作った内の1人の男の弟だ。…なら、そんな奴が、この人々の運命を左右するような立場にいていいのか…?」
「シュンヤさん…」
「…分かってる。…そんなのは、自意識過剰なことくらい。…ただ、俺は怖い。…それで恨まれて、皆に突き放されるのは…。」
齢15歳。
中学生の少年が背負う、あまりにも大きな期待とプレッシャー。そして、恐怖。
それは正しく、彼の心からの本音。
1人ながらも、皆に支えられてきた彼の本心だった。
「…悪い。こんな日にこんな話して…忘れてくれ。」
「…私も…」
「…私も、1人でした。」
「あの日…このゲームが始まった日に、私は宿に籠って怯えていました。いつまでも、何回夜を明かしても目に入るのは同じ天井。…正直、恐怖に押し潰されそうでした。」
「そんな時、第1層クリアの通達が私の元に届きました。」
「正直言うと、本当に嬉しかったです。…それと同時に、『何してるんだ』って気持ちになりました。最前線の人達が頑張ってるのに、私だけ籠ってる訳には行かない。…そう、思えたんです。」
「…けど、レベルをそこそこ上げてギルドに入っても、私は1人でした。色目を使うように見つめる男性プレイヤーや、コミュニケーションが苦手で同性の友達も出来ず、私はどんどん孤立していった。」
「…そんな時、あなたを見かけたんです。」
「最初は、目を疑いました。ボス攻略の日、転移門に集まり他のプレイヤーと談笑するあなたをあなたとは思えなかった。…それと同時に、焦りました。」
「かつて横にいたあなたが、すごい遠くにいる。そんな風にも思えて、私は衝動的にギルドを抜けてソロへと転向したんです。」
「…浅ましい考えのツケは、すぐに来ました。これまで受けれていた難易度のクエストが受けられず、逆に効率は下がり、更には入った迷宮区で犯罪者プレイヤーに襲われました。」
正直、死を覚悟したと言う。
それほどまでに、あの体験は恐ろしかったようだ。
…だが、そこで遂に。
そこから彼女は《スリーピング・ナイツ》へと加入し、攻略組の一員として腕を上げていった。だが、それもこれも、
「…私は、
「…あなたがたとえ、SAO製作者の弟だろうと関係ありません。私はあなたが救ってくれたことを…胸を貸してくれたことを決して忘れません。たとえ、この世界が敵に回ったとしても…」
「私は、あなたの味方です。」
「…それに、皆もシュンヤさんの頑張りは見てきました。…そんな、突き放されるなんてことは有り得ませんよ。絶対に。」
「…そうだな。」
どこか長いとも感じられたシャムの言葉。
だが、その言葉は、シュンヤの胸に刺さった氷を溶かすように、スーッと浸透していく。
それを感じながら、シュンヤはシャムに微笑んだ。
「シャム。…ありがとう。」
「…はい。」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「…なんか、辛気臭くなっちまったな。」
「いえ、シュンヤさんの本音が聞けて良かったです。…貴重な時間でした。」
「…そうか。」
「…くしゅんっ。」
シャムは寒さに身を震わせ、思わずクシャミを1つ。それに、シュンヤも少しだけ反応した。チラリと、シャムを一瞥する。
「す、すみませ…」
フワッ…
「……え……」
次の瞬間、彼女の首に触れる繊維のような柔らかい感触。そして、一息に近付くお互いの顔の距離。
それにより、シャムの鼓動が一気に早くなる。顔の温度が更に上がる。
『え…え……?』
「…寒いだろ。これ巻いとけ。」
「え…?」
やがて、首に巻かれたものは冷たかった感触から、しばらくして温かくなっていく。
シャムの口元まで埋めるそれは、マフラーだった。
それも、ここまでの断熱効果はかなり高級な毛糸を使わないと現れない。
「まあ、今日はクリスマスってことで。クリスマスプレゼント。」
「…こ、こんな良いものどこで…」
「アシュレイさんの店で、レインさんとフィリアさんに相談して買った。『オーナーに許可は貰ってるから』って。」
「…ありがとう、ございます。とても嬉しい…です。」
「喜んでくれたなら良かった。」
そう言って微笑むシュンヤ。
その姿は、彼女にとって一層輝いて見えた。
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ーーそうだ。
私は、いつもこの笑顔に助けられた。
あなたに追いつきたくて。
あなたと並べる人になりたくて、私は…。
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「好きです。」
「…私は、あなたが…シュンヤさんが、好きです。」
白い雪が降り始める。
その中、シュンヤの袖を掴みながらシャムは呟くように、しかしはっきりと言い放つ。
自身の気持ちを、なんの装飾もなく言い放った。
「……」
シュンヤはそれに、何も言わない。
少しだけ目を見開き、無言のまま時は流れる。
…やがて…
「……ハァー……」
彼は、頭を抱えて大きくため息をついた。
その様子に、シャムはオロオロと慌てる。
「あ、えと…すみませ…あの…嫌、でしたか…?」
「…あー…すまん。そうじゃなくて…自分のチキンさに呆れてただけで…」
「え…?」
「…女性に先に言わせちまうとか、色々と問題ありというか…」
「…??」
疑問符を浮かべるシャムに、しかしシュンヤは「まあいいや」と呟いて、シャムを見た。
最初は少しだけ険しかった顔も、少ししてから破顔して柔らかい表情になる。
「…シャム、俺も好きだ。お前のことが1番。」
「…ッ…」
その言葉を聞いた瞬間、シャムの目尻に雫が溜まる。火照った頬に一筋の雫が流れ落ちた。
その雫を、シュンヤは指で掬いとる。
シュンヤはもう一度微笑みかけた。
「…俺と、付き合ってくれるか?」
「…はいっ。喜んでっ。」
雪降る聖夜。
喧騒の傍らで。
互いを思う2人の男女は、
しばらく、お互いを離さなかったーー。
メリークリスマス!!(2週間前)