思うんだけどさ。
よく自分の名前に《アルベリヒ》(妖精の王)なんて付けれるよね。
普通に恥ずい。
攻略組参入前の実力試験。
それは、3ヶ月に一度ほどの頻度で行われていた。
そこでは、普段はPvPなどは実施しておらず、基本的には圏外へ出てモンスターへの対処などを見ることを主としている。
しかし、今回ばかりは事情が違った。
須郷に限りなく近い人物…アルベリヒの実力を重点的に見る為にもこの変更は仕方の無いことだったのだ。
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第55層転移門広場。
そこの一角に円を作った大衆が歓声を上げている。
その中心では、対峙する5人のパーティーと、2人のプレイヤー。
2人の片方、カズマは大股のステップで前に出て、手に持つ剣を5人の中のタンクに叩き込む。
「グッ…ゥッ…!!」
「良い硬さだ…!」
タンクは少し押し込まれながらも、カズマの連撃を5発受け止め、カズマが手を止めた瞬間に叫ぶ。
「スイッチ!!」
「「おう!」」
すぐ様2人のダメージディーラー役が前に出て、カズマに向かって剣を振りかぶり、そのまま振り下ろした。
だが…
ギィンッ!!
「グッ…!」
「くそッ…!」
すかさず前に出たコウヤの巨大な盾に、その攻撃は虚しくも弾き返され、彼らの流れは止まってしまう。
その隙をコウヤは見逃さず、右手の剣を青色に染めた。
「フッ…!!」
閃く右手。青い軌跡を描いて、剣は空間を走る。
放たれた3発の斬撃は、ダメージディーラー2人を容赦なく吹き飛ばした。
「クソっ…!」
当然タンクは守りを固めようと腕に力を込めて、迎撃態勢を整えた。
…しかし。
ガァンッ!!
「なっ…!?」
カズマの盾の《縁》に対する攻撃により、思わず盾と体が傾いてしまう。もちろん、態勢を戻そうとはするが、しかしカズマの方が一手早い。
「ゼアァッ!!」
「うわあぁっ!!」
タンクのプレイヤーは、呆気なく吹き飛ばされてしまった。
そして…
「そこまで!!」
アスナの可憐な声が響き渡ったのだった。
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今回の実力試験は、パーティーメンバーで挑むものはコウヤとカズマの2人が、3人以内で挑む者はカズマ1人で相手をすることになっている。
今回はあくまで、モンスターへの対処というより、それぞれの連携と技量を見ることが目的だからだ。
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ー昨夜ー
「明日の実力試験ですが、圏内でのPvPを行いたいと思います。これについて何か質問があればお願いします。」
アスナの発表。
それにすかさずユウキが手を挙げた。
「はい、ユウキ。」
「PvPっていうのは、デュエルでもするの?」
「いいえ。あくまで安全な…圏内で剣を交えるだけ。それならHPも減らないし、コードも出ないから安心でしょう?」
「あー、なるほど。」
「俺からもいいですかね」
「はい、シュンヤ君。」
「相手をする人数なんかはどうするんですか?試験する人達と同数でやるんですかね?」
「いいえ、基本的には3人以内なら一人、それ以上ならタンクとダメージディーラーの二人で対処してもらおうと考えています。あまりこちら側が多くなると、その人達が力を発揮できなくなるかもしれないからね。」
「なるほどね、つまりその人達を俺らの残りの人達で評価すると。」
「そうなるね。」
キリトが理解したように頷くと、アスナもそれに相槌を打った。
「それじゃ、相手をする人はどうするかなんだけど…」
アスナはぐるりとその場にいる全員を見渡す。
そして、シュンヤは誰も挙げないことを確認してから…
「あ、それじゃ、俺が…」
「俺やりますよ。」
シュンヤが言い終わる前に、カズマが声を上げた。
シュンヤはすぐ横にいたカズマを見る。
カズマはシュンヤを「なんだよ」と言わんばかりの目で見つめた。
「…珍しいな。お前が立候補するの…」
「別にいいだろ。たまにはこういう事でも役に立たせてくれ。ギルドの人事係としても、やっぱり肌で感じときたいしな。」
カズマはそう言うと、立ち上がった。
「それに、やりたいこともあるしー。」
「やりたいこと?」
「うんにゃ。なんでもねえ。それじゃ、タンクの係はコウヤさんに頼んでも良いすか?シュミットとかシバちゃんにはギルド重鎮として評価する側にまわってほしいんで。」
「ああ、構わない。」
「アスナさん、それでいいですか?」
「ええ、勿論。…2人共、よろしくね。」
「うぃっす。」
「分かりました。」
「それじゃ、やりますかね。」
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作られた大衆の円の内側。
実力試験を見守る数人のプレイヤー。
しかし、そこには何処か値踏みするような視線が向けられていた。
「まったく…カズマの奴、ほとんど本気じゃないか…」
「まあでも、あれくらいしてもいいんじゃない?手加減しても意味無いだろうし。」
「…まあ、そうなんですけど…あいつ俺に『お前は速すぎて攻撃当たんねえだろ』って言ってたのに、今のところカズマの奴ほぼ全部避けてるじゃないですか。」
「あははは。カズマ楽しそう。」
アスナは微笑み、シュンヤはボヤキ、ユウキは羨望の眼差しを向ける。
「…まあ、カズマの野郎なら『俺如きに当てられないやつがボスに当てられるか』、なぁんてこと言いそうなもんだけどな。」
クラインの苦笑混じりの言葉に、キリトも同調して「だな。」と呟いた。
「そういえば、今日はシャムちゃんも見に来てるんだっけ?」
「はい。あいつの友人がこの試験受けるらしいので、大衆の中にいると思いますよ。」
「レインさんと、フィリアさんだっけ?あの2人は良かったよね。」
「今のところ、唯一攻撃当ててますからね。カズマも嬉々として2人のこと見てましたし。」
スカウトするかもなぁ、とシュンヤはため息混じりに呟いた。
それには、キリトとアスナも苦笑いを浮かべるしか無かった。
「キリトさん、アスナさん。来たぞ。あいつだろ?」
リンドの声に、その場にいた全員が黙って中央に注目する。
先程までの5人が引き上げ、その様子を卑下じみた顔で見つめる、金髪のプレイヤー。
その装備品も金や白を基調としたものであり、所々紫や赤も入ってはいるが、余計に目がチカチカする。
正しく、アルベリヒであった。
そして、一瞬。
カズマは彼らの方へ顔だけ振り向いた。
そして、僅かに口を動かした。
そのまま向き直ってしまう。
「なんだ?」
「『ちゃんと見とけよ』じゃないかな?」
「多分、そうね。」
「すげえな、ユウキ、ラン。よく分かったな。」
「いや、勘。」
「あの人的外れなことは言わないので、多分それじゃないかと。」
「なんだそりゃ。」
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「おや、あのタンクは私の相手では無いのですね。」
アルベリヒの言葉に、カズマは笑みを浮かべた。
「残念ながら、あの人の参入は4人以上が相手の時だけだ。あんた1人だろ?」
「そうですか。私は別に2人でも構わなかったのですけどね。」
「へえ、自信満々だな。そりゃ楽しみだ。」
カズマは笑う。
そして、それと同時にアスナの声が聞こえた。
「2人共準備はいいですか!?」
「おや、そろそろ時間のようだ。それでは、よろしくお願いします。」
「ああ。よろしく。」
アルベリヒは控えめな挨拶を交わすと、腰の鞘からゆっくりと細剣を引き抜いた。
その刀身を見て、観衆から感嘆の声が上がる。
色は赤黒く、形はまるでお菓子のアポロのような形が何段も積み重なり、先の1つが鋭利に尖っていた。
エストックに見えるが、しかし側面からも鋭い光が見えることから、側面も攻撃判定ありだろう。
禍々しいその武器を、アルベリヒはカズマに向けた。
…しかし。
ザワッ
「…なっ…?」
騒ぐ大衆。
驚きの声を上げるアルベリヒ。
それを見てカズマは、不敵な笑みを浮かべた。
カズマはあろうことか、抜いていた剣を背中の鞘にしまい、静かに佇む。
「…なんのつもりだ?」
アルベリヒの少し怒気の含まれた口調に、カズマはヘラヘラと返す。
「いやなに、自信満々のあんたのその剣技を俺も見てみたいと思ってな。剣撃ち合ってちゃ、分からないだろ?それに、
カズマはそう言いきった。
その瞬間、アルベリヒは凶悪な笑みを浮かべた。
「クククッ…なるほど。それなら、後悔させてあげましょう。この私を、侮ったこと…!」
「…そう熱くなんなよ。《ゲーム》なんだからさ。」
憎悪に滲んだその笑みを、しかしカズマは笑みで受ける。
笑みを浮かべたまま、カズマはゆっくりと手を挙げた。
準備完了の合図ーー。
「…それでは、始め!!」
アスナが叫び、砂時計をひっくり返す。
「キエエエエエェェェェェッ!!」
始まった瞬間、アルベリヒは突進を開始。
凄まじい速度のそれを視認できたのは、おそらく少ないだろう。
アルベリヒは笑みを浮かべたまま、勢いそのままに右手の剣を突き出す。
その刀身が、カズマの胴に命中した。
ヒュオッ…
「…え…?」
……いや、命中した
事実、彼の細剣の先には何も無く、あるのはただ虚空のみ。
そして、その少し横にズレた先にいる、黒衣の青年。
カズマはポケットに手を突っ込んだまま、アルベリヒに笑いかけた。
「どした?そんなに惚けて。」
「
「…ッ…この!!」
繰り出される二撃目。
それもカズマは難なく躱した。
「言っただろ…?」
「《
わーい、鬼ごっこ鬼ごっこ〜!
殺伐としすぎだけどネ★