ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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いやー、遅れてすいません。いろいろと用事が出来ちゃって。あははははは。それじゃあ、どーぞ!


第7話 結城明日奈

カチャカチャというフォークとナイフを動かす音だけが広いリビングに響き渡る。これまた広いテーブルの脇に置かれた椅子の一つに腰掛ける少女、結城明日奈は綺麗に盛り付けられた料理を機械のような動きで口に運んでいく。

 

一度小学校の時に同じクラスだった女の子三人を家に招いたことがある。少女達は明日奈の家の外装と内装を見て口々に「すごーい」や「快適そう」などの感嘆の声をあげていたが明日奈自身はそうは思わない。なぜなら今住んでいるこの家は自分を縛り付ける牢屋でしかないのだから。

 

明日奈は当時大学の准教授だった母と大手企業の代表取締役だった父の間の長女として生まれた。ゆえに小さい頃から兄と共に英才教育を受けて育った。

試験は幼稚園の頃から始まり、今までその全てに合格してきた。幼稚園の入学試験、小学校の入学試験、中学校の入学試験全てに《勝利》してきた明日奈にもたらしたのは《達成感》などではなく大きな《虚無》だった。

これまで明日奈に与えられてきたものは親からの信頼と親戚からのライバル心のみだった。《友達》などというものは出来たことがない。いや、たとえ出来たとしても母によってすぐに引き離された。

携帯電話の使用もかなり制限され、ましてやゲームなどというのはほとんどしたことがなかった。それは兄も同様だった。

しかし、その兄が先日不思議なものを買ってきた。最新型のゲーム機である。なぜそんなものを兄が買ってきたのかは明日奈には皆目見当がつかなかった。兄も同じような道をたどってきたはずなのになぜ…

 

「明日奈。」

 

明日奈の思考を母の鋭い声が遮った。

 

「なに、母さん。」

 

明日奈はフォークとナイフを置いてから喋る。

 

「今日のノルマは机の上に置いてあるから、しっかり目を通しておきなさい。」

 

「…うん。」

 

忠告にも似た言葉に明日奈は力なく答える。料理の食べ終わった皿を重ねて、机の真ん中に移動させる。

大きな扉に近づいてゆっくりと開けてから外に出て音が出ないように閉める。扉から手を離して階段までまっすぐに歩いて行き、階段を登り始める。

兄が買ってきたゲームは今日が正式サービス初日でかなりのネットニュースになっていた。さて、明日奈の兄当人はどこにいるかというと、おそらく今は飛行機を降りて見たことのない風景に見とれている頃だろう。

明日奈の兄は正式サービス初日の日から海外出張が入っており、とても悔しがっていた。そんな明日奈は海外出張直前の昨日、兄にこう頼み込んだ。

 

『一度だけゲームをプレイさせてくれないか』と。

 

なぜかはわからないがVRMMOというものは明日奈の好奇心をとてもくすぐった。「どんなものなんだろう」「体験してみたい」という気持ちが日に日に強くなっていった。

明日奈は自分の部屋を通り過ぎ、その奥、兄の部屋の前に立ち、ドアノブを捻る。

カチリという音と共にドアが開き明日奈は足音を立てないように(別に誰がいるわけでもないが)忍び込む。そうして準備万端にセットアップされていた卵型の機械を頭に被り、ベッドに寝そべる。

現時刻が12時59分。正式サービス開始まで残り1分。母にいつ機械を外されるかわからないので、この1分すらもどかしい。そう考えていると59という数字が00に変わるので明日奈は目を瞑り、あの一言を呟いた。

 

「リンク・スタート」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

そこまで考えた時点でアスナの思考は回復し始める。

 

『なんだ…寝てたのか…』

 

明日奈は瞬時にそう判断した。そして、その考えの否定も。

なぜなら、そうだとかなりおかしな点がある。

なぜ自分は死んでいないのか。アスナが倒れた場所は迷宮区の通路だったはずだ。アンチ部屋でもなければ眠ってしまったらリポップしたモンスターによってHPを0にされるはずだ。

 

しかも自分が座っている地面も固い石畳の迷宮区ではなくふかふかの芝生のようなものに変わっている。ゆっくりと目を開けて、上を見るとそこには迷宮区の低い天井ではなくどこまでも広がる青空に似せた蓋。そしてそこまで伸びる白い建物、迷宮区だ。

どう考えても迷宮区の外に出ている。つまり、誰かがアスナを迷宮区から、連れ出したということになる。

 

『いったい誰が…』

 

そう思いながら辺りを見回すとアスナの前にある大樹の下にその答えはあった。

長めの黒髪に、灰色のロングコート、黒いズボンに同色の鞘と柄。どう見ても迷宮区でアドバイスしてきた青年だろう。

目を覚ましたのか顔を上げたことで見えるようになった瞳も黒で満たされている。顔を上げた彼にアスナが浴びせた言葉はお礼とは程遠いものだった。

 

「余計な…事を…!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「余計な…」

 

二言目が女性フェンサーの口から飛び出しかけたところで俺は口を開く。

 

「別に、あんたを助けたわけじゃない。」

 

フェンサーはしばらく無言だったが再び口を開く。

 

「なら、なんで助けたの?」

 

「俺が守りたかったのはあんたの持ってるマッピングデータだよ。あれだけ奥にいたんだ。未踏覇エリアもかなりマッピングされてるはずだ。それがあんたと一緒に四散するのはもったいなくてね。」

 

俺がその言葉を口にするとフェンサーは少しウィンドウを操作してトレードウィンドウをこちらに飛ばしてくる。

 

「なら、これで満足でしょう。私もう行くから。」

 

「待てよ、フェンサーさん。」

 

立ち上がり、迷宮区に向かおうとするフェンサーを声をかけて止める。

 

「あんたも、要はゲームクリアのために戦ってるんだろ?なら、《会議》には出るべきじゃないのか?」

 

「…会議?」

 

俺は大きく首を縦にふる。

 

「今日の午後5時から、第一層ボス攻略会議が開催される。」

 




さて、お次はみんな大好きディアベルさんと人気投票まさかの10位キバオウさんの登場だよー!お楽しみにー。
「俺の名はディア…」
「わいの名はキバ…」
「はーいはい、引っ込んどいてくださいね。出番は次回にあるから。」
「うわー!」
「なんでや!」
「それではまた次回、アデュー♡」
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