おっ膝ー!!
というわけで何日空いたか知らんけど久しぶりの投稿!
多分長め!面白くは出来たと思うんで、どうぞご覧あれ!
「え…?」
広い部屋の中、シュンヤの呆気からんな声が響く。
目の前にいる、机の上で手を組む人物…現アインクラッド最強ギルド団長であるアスナは、彼の様子を見て、もう一度言った。
「聞こえませんでしたか?」
「あなた方に対するお咎めは、特にありません。…これからも、攻略組として頑張ってください。」
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あの実力試験から、既に3日が経過した。
だが、実力試験の結果を気にする者はあまりいなかった。
むしろ、
その中の1人が、かつて《ドナウ》という名で攻略組のサポートメンバーに名を連ねていたこと。
そして、もう1人の仲間が、攻略組メンバー・シャムの近親者であること。
今や、攻略組によって公開された、《アルベリヒ》…須郷伸之の情報により、彼はアインクラッド全プレイヤーの敵として認知されている。
その男の仲間の近親者である者がいれば、危険なのではないかという声も少なくない。
一部のプレイヤーにいたっては、「処分が下されるだろう」という意見を唱えていた。
それは、シャムやシュンヤ、コウヤも、同じ考えだったのだが…
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「ちょ、ちょっと待ってください!アスナさん!」
ハッキリと告げたアスナに向かって、シュンヤはどこか食い下がるように、彼女に近づく。
「いくら俺が
「なら聞きますが、私達はあなた方の、
「そ、それは…」
食い気味のアスナからの問に、シュンヤは思わず黙ってしまう。
彼の中にあった、《償わなくては》という、どこか使命感にも似た考え。
しかしそこには、確かな具体性は無かった。
黙り込み、少し俯くシュンヤを見て、アスナは気を落ち着かせるようにため息をつく。
「…ごめんなさい。少し、イジワルでしたね。」
彼女はそう言って、前かがみにしていた体勢を崩し、力を抜くように体重を椅子の背もたれに預ける。
そして、姿勢を正してからもう一度目の前の3人に目線を送った。
その口元には、微笑が浮かぶ。
「先程も言いましたが、我々攻略組ギルドはあなた方を咎める気はありません。これからも、その腕を存分に振るっていってもらいたいと考えています。」
「…どうして、ですか。」
「それも先程言いましたが、あなた方を咎める理由が、今は何一つないのです。例えばあなた方が須郷伸之、もしくはシャムちゃんの近親者であろう彼の仲間に、情報漏洩などを行っていれば、迷わず処罰するでしょう。」
「しかし、今回は
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アスナの言葉に、3人は何も言わなかった。
しかし、しばらくしてからコウヤがゆっくりと手を挙げた。
「…アスナさん、1つ良いですか?」
「どうぞ。」
「
「…」
「…ですが、私は違います。せいぜい、皆さんとの付き合いは数ヶ月程度。…2人が築いたモノとは程遠い…。私への《処罰無し》という判断に、反感がないとは考えられません。」
コウヤのその指摘に、アスナは口ごもった。
悩むような間の後、アスナは口を開く。
「…正直、それについて批判がなかったと言えば嘘になります。あの者達と、最も《繋がり》がある可能性があるのは…コウヤさん、あなたですから。」
「……」
「ただ、それでも。やはり、我々の中で貴重な戦力であることは間違いありません。…それに、先程『信頼がない』と仰っていましたが、コウヤさんは攻略組内で十分信頼を得ていると私は思いますよ。」
「それは…どういう…」
「あらゆるところで見せる気配りや、優しくも確実な指摘。それらはこの世界で、簡単に出来ることではありません。…それは、シュンヤ君にも言えることですが、とても魅力的な要素です。実際、その事で短い期間でもあなたを信頼しているプレイヤーは多くいます。あなたが、どう思っているかは分かりませんが…」
「コウヤさんは間違いなく、我々の《仲間》です。」
「ですから、これからもお力添えをしていただけるとありがたいです。」
「…分かりました。《あいつの親友》としての落とし前は、ゲームクリアの貢献でつけることを約束します。」
「…期待しています。」
「…はい。必ず…。」
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「さて…シャムちゃん。」
「は、はい…」
どこか怯えたような、申し訳なさそうな様子のシャムに、アスナは優しく微笑む。
「そんなに気負わなくて大丈夫よ。今回はシャムちゃんになんの落ち度も無いんだから。」
「…はい…」
「シャムちゃん、あの時いたのは、シャムちゃんのお兄さんで、間違いない?」
「…はい。間違い、ありません。」
「分かったわ。それじゃ、今度の攻略会議も3人とも参加してね。本当は休ませてあげたいけど、そこまで戦力に余裕がある訳じゃないから。」
「はい。」
「分かりました。」
「…はい。」
「…それじゃ、今日はこれぐらいにしておきましょう。3人とも、ゆっくり休んでね。」
ーーその後、3人はエギルの宿へと歩を進めた。
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ーーアスナによる報告から、数十分後。
シャムは、静かに頭を下げていた。
彼女の目の前には、彼女と同じギルド《ビーターズ》のメンバー達。
そこには、シュンヤやコウヤだけでなくキリトやリズ達も同席していた。
その中の1人、カズマはため息混じりに呟いた。
「…シャム、お前本気か?」
「『このギルドを抜けたい』なんてさ。」
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ー数分前ー
「…シュンヤさん、私ギルドを抜けようと思います。」
「え…?」
「シャム、お前…攻略組はどうするんだよ。」
「…ソロとして参加出来ればと、思っています。最近は私の腕も上がりましたし、レベルも余裕が出来て…」
「そんな事、許せるわけないだろ。」
シャムの言葉に、シュンヤの鋭い声が割り込んだ。
…だが、シャムは少し黙ってから続ける。
「…それに、戦闘での立ち回りも上手くなりましたし…あと…」
「シャム!!」
一段と鋭く、大きな声が街道に響く。
少ない通行人が少しだけ彼らを見るが、また流れ始める。
「頭が混乱してるのは分かる。俺だって、まだ頭の整理がついてない。けど、自棄になるのだけはやめろ!そんな事しても、誰も浮かばれないのは目に見えてるだろ!」
説得するようなシュンヤの声にシャムは俯いたまま答えない。
そして、その声に同調するようにコウヤも言葉を発する。
「…シュンヤの言う通りだ。それに、アスナさんもさっき言ってたが、気負うことがあるなら攻略で償えばいい。それは、今のギルドでも可能だと思うぞ。」
「兄さんの言う通りだ。わざわざ自分の《死の可能性》を上げてまで償う必要は無いだろ。それに…」
「…違う。」
「え…?」
「そんな、そんな事じゃ…ありません。」
「じゃあ…」
何。
と、そう発する前に。
シュンヤはシャムの浮べる顔を見て、絶句する。
見たこともないほど、悲痛な表情。
「…怖いんです。今回の件で、
「…ッ…!」
シャムは、かつて。
《スリーピング・ナイツ》に入団するよりも前にも、ギルドに所属していた。だが、特別扱いのようなものを受け続け、それに耐えきれず脱退した過去がある。
どうやらそこには、同じ女プレイヤーでも格差があったようで、自分よりも扱いが下だったプレイヤーもいたようだ。
それに、彼女は耐えきれなかった。
自分は何もしていないのに、広がってしまう団員との、精神的溝。
《それ》は彼女に、凄まじいトラウマを植え付けていた。
「…どうせ離れるなら…私から…ッ」
シャムはそう言って、口を閉ざした。
震える体を見て、シュンヤは声をかけようとする。
だが、何も言えない。思い浮かばない。
何を言えば正解なのか、分からない。
「…クソ…ッ…」
大切な人が困っているのに、何も言えない不甲斐なさに、シュンヤは誰にも聞こえない声で毒づいた。
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「んー…」
カズマは呟いてから、小さめのため息をつきながら頬をかいた。
「KoBのギルドから帰ってきて、随分どんより雰囲気で帰ってくるから何があったのかと思ったら…また思いきったな。」
カズマはそう言ってから、チラリとシュンヤを見た。
「…ま、彼氏の方は随分『やりきれねぇ』感満載の表情してるけど。」
「…うるさいな。」
「…シュンヤさんは悪くありません。これは、私の独断です。…なので、どうかこのギルドを脱退させてもらえればと…」
「おう。いいぞ。」
「ちょ、カズマ!?」
「カズマさん、何考えてるんですか!?」
カズマの答えに、後ろに座っていたリーファとシリカが立ち上がって驚きの声を上げた。
「や、何考えてるも何も。このギルドは基本的にメンバーの意見尊重する方針だし。俺達の呼び掛けに答えて貰ってる立場なわけだしな。だろ?兄貴。」
「…あぁ。」
「ちょ、おに…キリト君まで…!」
「けど。」
リーファの言葉を遮る形でキリトはシャムに話しかけた。
「…ギルドリーダーとしては、《理由》を把握しておく必要がある。…大事な戦力を手放すかもしれないんだからな。」
「…分かりました。」
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「…私は、今回の兄の行いに責任を感じています。…そして、何よりも。私がこのギルドにいることで皆さんに迷惑をかけるのではないのかということを、案じています。」
どこか淡々としたシャムの言葉。
その言葉に嘘はなく、しばらく聞いていた全員が口を開かず黙り込む。
ーーだが。
真っ先にキリトがその静寂を破る。
「…シャムの気持ちは、まあ、分かったよ。確かに、そういうことでギルメンに迷惑かかるのは嫌だろうしな。俺…というか、俺、カズマ、シュンヤの3人は同じ立場っちゃ同じ立場なわけだし。」
「……」
「けど、その…責任、っていうのか?それをシャムが背負うのは、何か違う気がするんだよ。」
「キリトさん…?」
言いにくそうにそう告げるキリトに、シュンヤが疑問符を浮かべる。
血縁者の不祥事に、責任を感じるのは普通なのではないかと、考えてしまう。
「ああいや、責任を感じるかどうかは、当人の自由だから好きにしてくれたらいいんだ。…ただ、今のシャムは
「それは…」
「確かに、家族は大切な存在だ。俺だってカズマやリーファが何か悪いことをしたら悲しいし、怒ると思う。2人もそうだろ?」
「うん、そうだね。」
「俺は兄貴が悪さしたら今進めてるであろうゲームの全てのデータ消す。」
「ワオ、具体的ぃ…」
カズマの真顔の発言に苦笑しつつも、キリトはシャムに向き直った。
「けど、そういうもんだ。いくら家族、兄弟って言っても別の人間。そいつが進む道なんて、誰にも分からない。だから、俺らが出来るのは間違った方向に行きそうな時に、叱って、寄り添って、正してやることだと俺は思うよ。」
キリトの言葉に、シュンヤは気付かされる。
あの時、何も言えなかった時。
必要だったのは説得の言葉だけでは無い。
シャムの心に寄り添う事も含めて、必要だったのだ。
「…それとさ、シャム。」
キリトの言葉に皆が聞き入っていた直後。
今度はカズマが口を開いた。
「理由、それだけじゃねえだろ?」
「…お前、またギルメンが離れるのが、怖いんじゃないのか?」
「…ッ…!」
カズマの言葉に、シャムの体が少しだけ揺れた。
それは、明確な意思表示でもあった。
「俺だってな、一応はこのギルドのNo.2張ってんだ。…ギルメンがどんな奴なのか、どんなことを経験したのかくらいの情報は収集してる。」
苦笑しながら、チラリとギルメンの方を見ると、何名か分かりやすい程の反応を見せる者がいた。
「…ま、お前がギルドリーダー他男性プレイヤーから《特別扱い》を受けて、それが原因でギルメンとも疎遠になったってのは、確かにトラウマになってもおかしくねえ。」
シャムが先程シュンヤに話した
「…けど、ウチの女性陣はそんな事一切ないと思うけどな。」
「そうよシャム!!そんな過去の気にしてもしょうがないわよ!!」
カズマの言葉の直後、ピンク髪の少女、リズベットが声を上げた。
「確かにシャムは昔辛い経験をしたかもしれない。…でも、それを乗り越えてるって事は、その時よりも成長してるってことだと思うわよ!!」
「そ、そうだよシャムちゃん!それに、私達はそれくらいで疎遠になったりしないし!」
「はい!むしろ私達から仲良くしてとお願いしたいくらいですよ!!」
「…皆さん…」
飛び交う女性陣からの《励まし》の言葉に、思わずシャムの目頭も熱くなる。
そして、そこに近づく一人の少女。
「…シノン、さん…」
「……」
シノンはシャムの目の前にゆっくりと歩を進めると、少しそこで思考するような仕草をしてから、口を開いた。
「…私も、少し前までは皆と関わるのをやめようとしてた。…シャムの理由とは、少し違うのかもしれないけど…他人を、信じられなかったから。」
「…シノン…」
「…けど、それでも。関わりを持つことを勧めてくれる人がいた。…私を受け入れてくれる、あなた達がいた。」
「……」
「…まあ、その勧めてきた奴はデリカシーも何も無い、いけ好かない奴だったけれど。」
「ブッ!!」
何処か満足そうに茶を口に含んでいたカズマは、思いっきりそれを吹き出した。
「…そんな、どうしようもない私を受け入れてくれたギルドの皆には、本当に感謝してる。だからシャムも、自分からそれを手放すなんてことはしない方がいい。私は、そう思う。」
「…だから、なんでも言って。受け入れてくれたお返しに、今度は私が…私たちが、シャムを支えるから。」
シノンのその言葉に、その場にいた全員が確かに頷いた。
そして、それにシャムは目頭を熱くする。
ーーだが。
「す、すみません…」
慌てたようにシャムは涙を拭おうとする。
まるで何かから隠すように、無限に溢れる雫を拭い続けていた。
…トスッ。
「…え?」
シャムの背中に腕が回され、シュンヤは彼女の体を軽い力で抱擁する。
呆気に取られたような顔をするシャムと、「キャー」と軽く歓声をあげる女性陣。
シュンヤはそれを気にする素振りもなく、左手でシャムの頭を撫で始めた。
「…
「俺の胸くらいなら、いくらでも貸してやる。」
「…ッ…はい…」
ーーその後、エギルの店には少しの間、少女の泣き声が響き続けた。
まるで、それまで抱え込んでいたものを、吐き出すかのようにーー。
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オマケ
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「…はぁ…」
「どした、シュンヤ。ほれ、コーヒー。」
「あぁ、キリトさん。ありがとうございます。…いえ、俺今回ほとんどなんもしてねぇな…って。」
「そか?シャムに胸貸したり、最初に話聞いたのもお前なんだろ?十分じゃねえか。」
「…知り合いならともかく、俺はあいつの彼氏なんで…も少し上手くできたな…と。…それこそ、キリトさんみたいな説得を…」
「んー、まあでも、俺もほとんど何もしてねえけどな。どちらかと言えば、あれはリズとか女性陣の説得の方が響いてるだろ。」
「…そうっスかね。」
「ああ。…いくら《彼氏》と言えど、異性だからな。その性別の人がどんな悩みを抱えてるのか、俺らじゃ分かりかねない事もある。…その分、女性陣ならそこら辺も分かってるしな。シャムの問題は、正しくそれだったし。俺らは、俺らが出来ることで支えたらいいんじゃねえかな。」
「……」
「それこそ、《泣いてる彼女に胸を貸す》なんて事は、彼氏しかできない事だしな。」
「…ですかね。」
「ああ。…さて、明日からまた攻略だ。しっかり頼むぜ、参謀。」
「…はい。」
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「やー、まさかシノンが《仲間》について説く日が来るとはなぁ。師匠は嬉しいぞぉ。」
「あー、もううっさい。これだから言いたくなかったのよ…」
「そう言うなよー。いやー、俺の言葉が以外にも響いてるみたいで嬉しいなぁ…」
「…シャムは…」
「ん?」
「シャムは、色んな感情や過去があって、あの決断をしてたと、私は思う。…それこそ、私みたいに短絡的なものではなくて。」
「…ああ、だからお前、あの時『違うかも』って言ってたのか。」
「…まあ…」
「けどま、トラウマに重い軽いも、良い悪いもないけどな。大事なのはそいつが《どう受け止めてるか》。それを《乗り越える気があるのか》ってことらしいからな。そうでもしなきゃ、《受け入れる》ことすら不可能だし。」
「…あなたも…」
「ん?」
「あなたも、乗り越えなきゃいけないんでしょう?」
「……まあ、そうだな。」
「…なら、今度はあなたの番よ。ちゃんと、私達に
「…おう。」
「それより。あなたのその…説得?の言葉、どこから出てくるのよ。随分なレパートリーの多さね。」
「ん?まあ昔、ジャーナリストとかの自伝なんかよく読んでたからな。言葉選びはそこら辺からも出てるかな。経験あるのは確かだけど。」
「…そ。博識ね。」
「それ程でもある。」
「……ムカつく。」
まあでも確かに、男からそんな目で見られたら女の人は嫌かもね。
俺は女の人にそんな目で見られたら興奮するけど(アホ)
それでは、次回もお楽しみに!!