《第0層》。
それは、SAOプレイヤーの知らぬ間に《第1層地下ダンジョン最奥部》の、その先に突如出現した層である。
第0
…そして、キリト達攻略組の面々は確信していた。
ーーそのダンジョンが、
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ー第55層・転移門広場ー
攻略組のプレイヤー達が中央にある転移門に集まる中、その周りを多数の一般プレイヤー達が離れたところで彼らを囲む。
「攻略組ー!絶対勝てよー!」
「KoBー!!」
「聖竜連合ー!!」
「スリーピングナイツー!!」
「風林火山ー!!」
「頑張ってー!!」
周りのプレイヤー達から飛ぶ声援に、ギルド《ビーターズ》の面々は感嘆の声を上げる。
「凄い…こんなに人が…」
「こんなの…見た事ないよ…」
「たしかにな。俺も初めて見たよ…」
シリカとリーファの感嘆の声に、キリトも驚きながら微笑し、頷く。
「こりゃあ負ける訳にはいかなくなったな!キリの字よぉ!」
「元からそのつもりだよ、クライン。」
笑いかけ、肩を組んで来るクラインに、キリトは笑いながら返す。
「なんだぁ?クライン。負ける予定でもあったのか?」
「あぁ?バカ言ってんじゃねえよエギル!おめぇこそ、店のことチラついたりなんかして余所見すんじゃねえぞ!?」
「んなこたぁしねぇよ!」
大の大人2人の言い合い。
それを聞きながら、キリトはクラインの腕に掴まれたまま笑う。
その様子を、アスナとユイは微笑みながら眺めていた。
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「や、シュン坊。調子はドーダイ?」
笑いを浮かべながらシュンヤに近づく、フードを被ったプレイヤー。
頬に特徴的なペイントのあるそのプレイヤー…《情報屋》のアルゴに、シュンヤは手を差し伸べた。
「アルゴさん。来てくれたんですね。」
「そりゃあ、英雄サマ達の凱旋だからナ。来ない訳にはいかないヨ。」
ニシシッ、と。
からかうようなアルゴの言葉に、シュンヤも苦笑いを浮かべる。
「これまで、2年半の情報面でのサポート、本当にありがとうございました。今の俺達があるのは、アルゴさんのおかげです。」
「オヤ?敗走なんて微塵も考えてないみたいダナ。攻略責任者サマも、随分自信がついたようデ。」
「え?い、いや。そういう訳では…」
狼狽えるシュンヤの様子に、アルゴは笑う。
「ニャハハハ!冗談だヨ!…オレッちの方こそ、悪かったナ。上層…特に90層超えてからは、あまり役に立てなくてサ。」
「…いえ、俺らの方こそすみませんでした。いくら攻略速度を上げるためとはいえ、情報屋の皆さんをないがしろにして…」
「フン、そりゃお門違いってもんサ。元はと言えば、コウヤよりも早く情報集められないオレっち達が悪いんだからサ。」
「いや…流石に元から情報持ってる人に勝つのは…」
「無理でしょ」と、言いかけたその時。
「そぉやでぇ!シュンヤはん!」
鋭い言葉。
独特の訛りを含んだ言葉が、シュンヤの耳に入る。
声の方に向くと、そこにはシュンヤの元に近づくプレイヤーが1人。
そのプレイヤーはこれまた特徴的な形をした髪の毛に、鋭い眼光を備えていた。
ギザギザ頭のプレイヤーはアルゴの横に立つと、腕組みをしてシュンヤを見る。
「そないな些細なこと、天下の攻略組のメンバーが気にすることやないで!ドンと構えて、しゃんとせな!!」
叱咤とも取れる言葉。
シュンヤはその人物を見ながら、笑みを浮かべた。
「…お久しぶりです、キバオウさん。」
キバオウ。
かつては攻略組の一員として、最古参のギルドで、今は壊滅した《アインクラッド解放軍》を率いていたプレイヤー。
《軍》とのひと騒動の後、シュンヤの勧めによりアルゴの手伝いをするようになっていた。
「キバオウさん、アルゴさんの元での情報収集の手伝い、お疲れ様です。」
「ソウソウ。キバオウ氏が意外と素直で驚いたもんサ。てっきり反発されると思ってたからナ。」
「…まぁ、ワイもシンカーはんとのひと騒動の後、心を入れ替えたからな。シンカーはんには、本当に悪いことしたと思とるし…」
「それに、気付いたんや。あんなやり方で攻略組に戻ったとしても誰もついてこん。それやったら地道でも、人の為んなることやろうかなと思たんや。…ま、それもちいとばかし遅かったみたいやけどな。」
「…そんなことないですよ。」
キバオウの言葉に、シュンヤは微笑みながら返す。
「たとえ過去に過ちをおかしても、それを償うことに決して《遅い》なんてことはないと思います。それに、そうすることで《彼ら》も浮かばれると、俺はそう思います。」
「…ほぉか。」
シュンヤの言葉。
彼の言う、《彼ら》という言葉の意味に気づき、キバオウは笑う。
その目尻に雫を溜めながらも、彼はそれを振り払った。
「…頼んだで、シュンヤはん。」
「シュン坊、武運を祈ってるヨ。…勝ってコイ。」
「…はい、必ず。」
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「カズマーー!!」
「おふっ。」
ユウキと話をしていたカズマの腰周りに、軽い衝撃が走る。そこに居たのは、彼の腰から腹回りに腕を回す、1人の少年。
やがて、四方八方から同じように少年少女か彼に抱きついた。
見ると、ユウキも同じような状態だった(ただし女子限定)。
彼らは、カズマ達も良く面倒を見ていたサーシャの孤児院の子供達だった。
「なんだぁ?どした、お前ら。」
カズマの問いに、彼らは答えないまま動かない。
…やがて、そのひとりが口を開く。
「ねぇ、カズマ。…本当に勝てる…?」
「んー?どしたよ突然。心配か?タケル。」
少年の名を呼びながら、カズマは彼の頭を撫でる。
そして、その横の少女が口を開いた。
「…だって、今から戦うのは《ゲームマスター》、なんでしょ?なら…」
少女のその先を、カズマは遮るように頭を撫でる。
取り囲む子供達に視線を向けながら、笑いかけた。
「不安かー?俺達が『《ズル》で負けるかも』ってさ。」
更なるカズマの問いに、少年達は答えない。その沈黙をYESととり、カズマは話し始めた。
「そりゃまぁ、そんなもん使われちまったらいくら俺らでも
「でも、
カズマのその言葉に、数名が顔を上げた。
「俺らは《攻略組》だぜ?それくらいの危機危険は、嫌という程経験してきた。…安心しろ。お前ら皆まとめて、家族の元に…《向こう》に帰してやるから。」
「…本当に?」
「あぁ。…信用、出来ねえか?」
カズマの問いに、少年達はブンブンと顔を横に振った。
「なら、信じて待ってろ。お前らが信じてくれりゃ、俺らは絶対に負けねえよ。」
「…うん、分かった。」
「がんばってね、カズマ。」
「おう。任せとけ。」
「…ユウキちゃんも、がんばってね。」
「うん、任せてみんな!」
「…シノンさんも、がんばって。」
「…ええ、ありがとう。必ず、勝ってくるわ。」
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「……さぁ、行きましょう。」
プレイヤー達が見守る中、シュンヤの手に持つ紺色の結晶が砕け散る。
凄まじい歓声の中、攻略組のプレイヤー達は、青いゲートの中へと身を投じたーー。
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ー第1層・地下迷宮最奥部ー
キュアァァァ…!!
薄暗い空間の中。
宙を浮遊する、一体の死神。
たなびくフードの裾と、巨大な鎌がその恐怖感を一層際立たせる。
…だが。
トン、トン、トン、トン…
ジャリッ、ジャリッ、ジャリッ…
カッ、カッ、カッ、カッ…
目の前に立つ、複数の
彼らは、彼の死神に恐れることはなく、それどころか確かな速度で距離を詰める。
その光景、彼らの異様なオーラに、死神は少し
死神が感じたものは、恐怖。
感じたことの無い《感情》にプログラムである死神は、しかし思わず叫んでしまう。
キュアアアアァァァ!!!
響く絶叫。
耳につんざくその咆哮の後、死神は鎌を振り上げた。
…カズマは、背中に手を伸ばし、愛剣の柄に手をかける。
確かな手応えを感じると共に、「ハッ」と吐き捨てるように呟いた。
「
「失せろ。」
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ーー数時間後。
建物の中。
道に沿って歩き続けた攻略組プレイヤー達。
彼らの前に姿を現した、巨大な影。
「ば、馬鹿な…コイツは…!!」
その姿に、シュミットが唸る。
それぞれが獲物を構えて、そのモンスターと相対する。
…やがて、先頭にいる女性プレイヤー、アスナが、絞り出すようにその名を呟いた。
「…茅場…昌彦…!」
ーー彼らの目の前には、
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…歩く。
いつまでも同じ景色が続く道を、カズマは歩く。
曲がったり、罠があったりは無い。
まるである場所に導かれるように、真っ直ぐ伸びる道を彼は歩き続ける。
だが、彼には分かっていた。
この道が、《目的》に続く道であると。
何故なら、少し前にも誘導されたから。
手招きとも取れるやり方で。
ーーやがて。
広い場所に彼は出る。
…そして、広場の中央。
そこに、彼の《目的》とも言える者がいた。
カズマはそのまま立ち止まり、それと同時に中央にいた人物…ショウマは、ゆっくりと立ち上がった。
「………」
「………」
少し流れる、静かな時間。
…やがて、彼に話しかけようと、カズマは口を開いた。
…次の瞬間。
彼の目から、ショウマの姿が掻き消える。
カズマが首を捻ると、顔の横を突き抜ける腕と短剣。
そしてその流れのまま、カズマは剣を抜く。
詰められた距離。
それをものともせずカズマは、ショウマとそのまま数合撃ち合う。
そして、彼が体術スキル《弦月》を繰り出したところで、一気に距離が出来た。
相対する、カズマとショウマ。
紅い直剣と、青銀の短剣を手に向かい合う。
「…ったく、《待て》も出来ねえのか。
「悪いねぇ。なんなら俺の首に首輪でもつけたらどうだ?お巡りサン?」
かつて《シンユウ》であった2人はそう言って対峙し、そして…
微かに、笑い合った。
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「…まさか、アンタだとはな。」
階段を降りたあと、現れた扉の向こうにあった広場にいたプレイヤーに、キリトは話しかける。
彼の目に映るのは、広場に座り込み、まるで座禅を組むように足を組んだプレイヤー。
その体はフルプレートアーマーに包まれており、その腰には白銀の剣が光り輝く。
「…ようやく来ましたか。」
かつては聞き慣れた声も、今のキリトにはどこか懐かしく感じる。
それもそうだろう。
何故なら、今目の前にいる彼は…
「さあ、斬り結びましょう。
「……ッ…」
数ヶ月前に、
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少し長い階段を降りた後、現れた扉。
その扉の前に、シュンヤ、コウヤ、シャムの3人は立ち尽くす。
それぞれの思いを胸に、ほんの少しの時間を過ごした後、シュンヤは巨大な扉に手をかけた。
彼が許可を取るように2人を見ると、彼らは頷き、それにシュンヤも頷く。
シュンヤが少しだけ力を入れると、扉は自動的にゆっくりと開いていく。
…そしてその奥。
彼らが探していた、佇んでいる1人の人物。
その姿がハッキリと視界に映りこんだ。
「…来たか。」
小さな、しかし3人に聞こえる音量の声の後、その人物はゆっくりと視線を下げて、そして…
3人を真っ直ぐに見た。
「…いらっしゃい。瑛一、隼人。それに、紗綾。」
「さあ、殺し合おうじゃないか。」
…いま、この瞬間。
アインクラッド最後の戦いが、幕を開けたーー。
こっから4つの戦闘分けながら書く感じかな?多分。
あんまどういう構成で書くかは考えてないんすよね笑
なる早で仕上げマース( ´∀`)ハハハ
それでは、次回お会いしましょう。