ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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俺は…霧谷隼人は、柔道や空手をやってはいたが、幼い頃に《元から》好きだったのかと聞かれると、決してそうでは無い。


それこそテレビなんかで見る関節技や、蹴り技なんかは「痛そうだなぁ」くらいのニュアンスだったし、あまり良い印象は持ってなかったと思う。


…なら、なんでそんな俺が全国優勝するまでにその手の武道にのめり込んだかと言うと…


「こうなりたい」と思える対象が、身近にいたからだろう。




先んじて始めていた、兄の武道の道場に付き添いに行った時、その人の《技》を見た。

流れるように、それでいて力強く敵を沈め、抑え込むその全ての動作に、目を奪われたのを今でも覚えている。



両親や兄。
SAOの世界でなら、キリトさんやカズマ、アスナさん…他にもたくさん、尊敬している人はいる。




…だが、《憧れ》というなら。


…俺は、《あの人》以上に感銘を受けた人を知らない。


彼…本名、武藤和幸。



…幼馴染である沙綾の、実の兄だった。





第32話 憧憬

オズの使う光線は、元々プレイヤーの使うものでは無い。

 

 

いま、彼と協力関係にあるアルベリヒ…須郷はこのゲームで高位のアカウントを所有しており、その恩恵は協力者であるオズにも分けられた。

 

それだけで大きな顔をしてくる金髪の男に何度殴りかかろうとしたかは、正直覚えていないが。

 

…まあ、今はそんなことはどうでもいい。

 

 

その高位の権力を使って、通常のプレイヤーなら不可能なことも可能になったのだから、あの男には感謝はしている。

 

 

 

彼の使う光線はもともと、モンスター…それも、ボスモンスターの使う特殊攻撃であった。

 

 

その光線をオズは、自身だけが使えるプレイヤースキルへと応用変換したのである。

 

 

 

 

持ち前の頭脳と、かつて培ったこの世界での技術を併用してーー。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

 

アインクラッドで最も広大な層である、《第一層》。

 

 

その下に新たにできた、逆ピラミッド型のダンジョン…いわゆる《第0層》の中。

 

《高独の間》と呼ばれる階層で、オズは光線による攻撃を続けていた。

 

彼の数十メートル先には、巨大な盾の影に隠れ、光線を防ぎ続けているプレイヤー。

 

オズにとっては、現実世界の腐れ縁…唯一無二の親友でもある、霧谷瑛一。

 

 

彼のプレイヤーネームが【コウヤ】となっているのは、細かい設定を飛ばして、デフォの名前を使用しているからだということを、オズは知っている。

 

 

別に誰かに教えてもらった訳でも、その現場を見ていた訳でもない。

 

 

それは、ただの予測だ。

 

 

だがそれは、完璧に近い予測となる。

 

…もしかすれば、親兄妹よりも共に時間を過ごしたかもしれない幼馴染だからこそ、出来る芸当だったーー。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

…シュビッ!

 

 

(オズ)の目の前にある、コウヤが構えた盾の影からひとつの影が飛び出した瞬間。

 

オズは光線での攻撃の手を止め、自身の顔の前に左手を掲げた。

そして、次の瞬間。

 

 

ガイイィンッ!!

 

「くッ…!」

 

 

飛び散る仮想の火花。

 

 

彼のウィークポイント()を狙った性格無比な一撃が、光の盾に衝突した。

 

致死とは言わずとも、多大なダメージを含んだ一撃はしかし、あっという間にその威力を減衰させていく。

このままでは間違いなく、シュンヤに大きな隙が生まれてしまうだろう。

 

 

オズは、その隙を狙い撃つために右手に意識を割いた。

 

 

 

 

 

 

「………制限(カートリッジ)解除(アンロック)。」

 

 

 

その瞬間、シュンヤが動く。

 

 

「フッ…!!」

 

腕と腹筋に力を込める。

 

刀と光の盾の接点を軸に、シュンヤの体が回転。

 

現実ではまず無理な動きだろうが、このSAOの世界では多少の無茶はそのステータスによってカバーされる。

 

 

「オォッ!!」

 

「な…ッ!?」

 

 

シュンヤは左腕を引き絞り、凄まじい速度で打ち出した。

 

 

《予想外》のその攻撃に、オズは思わず右手を突き出す。

 

 

ガアァンッ!!

 

 

シュンヤの左手の獲物と、オズの盾が激突。

 

凄まじい轟音がボス部屋に響きわたった。

 

 

「ぐぅ…ッ!?」

 

 

ここで初めて、オズは顔を歪めた。

 

右手にのしかかる、シュンヤの一撃。

 

 

短刀…腰に差した仕込み刀による一撃の威力は、A()G()I()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その証拠に、短刀と接触し続けている盾は軋むような悲鳴をあげ、STRがシュンヤよりも高いはずのオズの腕が押されている。

 

 

「ぐっ…お…ぉ…ッ!」

 

『なんだ、この威力は…!?』

 

 

 

オズの現在のステータスは、遠距離攻撃が主とはいえ、AGI特化型のシュンヤに接近されることを考慮して、彼のSTRには押し負けない程度のステータスを設定してあった。

 

だが、シュンヤの一撃はその想像を遥かに凌駕していた。

まるで押しつぶされかけているかのような感覚に、オズの頬に冷や汗が浮かぶ。

 

恐らく、並のタンクなら吹き飛ばされていただろう。

 

 

 

 

「ハアアアァァァ!!」

 

 

動かないオズの隙を突くように、シュンヤはもう一撃。

空中で体を回転させて、右手の刀を横薙ぎを繰り出した。

 

 

「ぐぉ…ッ!」

 

 

これも、凄まじい一撃。

 

盾で受けたオズの体が、思わず浮く。

 

足の力と体幹で体勢を維持し、何とか転倒は免れた。

 

 

 

「…………」

 

 

 

だが、依然としてオズの顔に浮かんだ厳しい表情は変わらない。

狩人のようなその目が捉えているのは、目の前に立つプレイヤー(シュンヤ)のみ。

 

睨めつけるようなその視線を、シュンヤは真っ向から受け止めた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…流石だね。これが、SAO最強の《攻略組》を束ねるプレイヤーの力ってことか…。」

 

「…俺は、()()()()()()()使()()()()()()()ですから、手札が揃えば誰でも出来ます。…和幸さんが使う、ボスの特殊攻撃を自身で応用したスキルには敵いません。」

 

「君のその謙虚なところは変わらないな、隼人。幼い頃からそのまんまだ。」

 

「…幼い頃、ですか…」

 

「どうかしたかい?隼人。その表情、何か言いたそうだ。」

 

 

「ええ。『それはあなたもでしょう』とだけ言っておきます。」

 

 

「…どういうことだい?」

 

「あなたの装備。ローブの下に着たバトルスーツと腰にぶら下げた武器。」

 

 

 

「…かつての、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

 

「…気付いてたのか。」

 

「最初から違和感があっただけです。昔から《道場》でも真っ向勝負が心情だったあなたが、剣と剣の戦いが華の世界で遠距離攻撃を使うことが。…そうしたら、案の定でした。」

 

「…ローブの下に隠してたから分からないと思ったんだけどね。合理的に考えて、任務遂行には遠距離攻撃が確実と結論づけたから装備を変えたまでさ。」

 

 

「でも、手放せなかったんですね。」

「…」

 

 

「本当に合理的に考えているなら、頭のいいあなたは俺に指摘される可能性すら消したはずだ。…その腰の武器は、この世界で《真っ向勝負をしたい》という、隠れた本心そのものの筈。…違いますか?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………ふぅ…。…そこまで見透かされてちゃ、何も言えないな。……その見透かしは、《幼馴染としての勘》かい?」

 

「…俺も、兄さんよりは少なくても、伊達にあなたとそこそこ長い付き合いがあった訳じゃないですからね。…それに、それだけじゃありません。」

 

「…?」

 

 

 

「…()()()()()()()()()()1()()()()()としての、希望的予測です。」

 

 

 

「……」

 

その、真っ直ぐに放たれたシュンヤの言葉に。

 

オズは。

 

 

 

「…僕は、そこまで大層な人間じゃないよ。」

 

 

 

その声は、シュンヤまで届かない。

 

 

…シュインッ

 

 

代わりに聞こえる、装備音。

 

立ち上がったオズの両手には、装備された指出しグローブ。

右手には更に、両刃の片手剣。

 

 

「…ッ…!」

 

 

対峙してなおわかる、そのプレイヤーが放つ威圧感。

 

過去に体験し感じたことがあるそれは、ありとあらゆるイメージが染み付いていた。

 

…半歩、足が下がる。

 

 

 

 

 

 

…だが。

 

それと同時に。

 

 

「…ッ…」

 

 

胸が高鳴る。

自然と、彼の手に持つ刀の柄を握る力が強くなる。

 

 

負けられない状況での強者との対峙により《敗北》のイメージが過ぎることで、体がすくみ…。

 

そしてそれ以上に。

 

この世界で、対峙した事の無い強者との対峙。

そして、憧れの対象との対峙により。

 

無意識に、不思議と自然な《高揚感》がシュンヤの体を満たす。

 

 

 

 

今、シュンヤ達に時間の余裕はあまりない。

…恐らく、剣を打ち合う回数は数える程しかないだろう。

 

 

 

だからこそ。

 

 

 

その数回の会合に、《全て》を乗せるために。

 

 

シュンヤの集中力は、極限にまで練り上げられていたーー。




《少し補足&謝罪》

まず更新2ヶ月以上も空いてすみませんでしたぁ!!<(_ _)>〈 ゴン!〕

おもくそ夏休み気分でしたごめんなさい。
これからもこんなマイペースなサボり作者に付き合ってくれればありがたい限りです。


…という訳で、シュンヤ隊VSオズも佳境な訳ですけど、1話で書くとちょっと多くなりそうだったので、2話に分けました。
若干ダレちゃったかもしれませんが、そこは寛大に受け入れてくれれば幸いです。

さて、この話でシュンヤがオズをいきなり《強者認定》してますけど、それはオズが《昔からゲームが上手いこと》と《同じ道場でも最強だったから》が理由として挙げられます。
少し分かりにくそうだったので補足とさせていただきます。

それでは次回もお楽しみに!!



…次回はなる早で頑張ります(信用なし)
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