ある日、アスナが問うた内容に、キリトは首を傾げた。
「陣形って…どうした急に?なんか気になることでもあったか?」
「気になるっていうか…」
アスナは少し怪訝そうな顔でキリトを見る。
そして、テーブルの上に体を乗り出し、見上げるような形でキリトに迫る。
「《ビーターズ》って、結成当初から
「ま、まぁ…そう、だな…」
「各ギルドの迷宮区攻略速度は別に争うものじゃないし、ボス攻略にさえ参加してくれれば、私は気にしてないんだけど…」
アスナはソファに座り直すと、ため息をひとつ。
「
「…それは、穏やかじゃないなぁ…。…それに、その言い草なら《俺の行い》にも不満を持ってるのか…」
「…キリト君がLA…ラスト・アタックボーナスを取っちゃうのは仕方ないよ。タンク隊の陣形が崩れたりした時はカバーしてもらったり、一番危険な役回りをしてくれてるんだから。」
「…みんながみんな、アスナほど寛容なわけじゃないんだろうな。」
キリトはそう言って頭を搔きながら苦笑する。
キリトは顔を上げて、気付く。
目の前にいるアスナの顔が、不服そうに眉を曲げているのを。
彼はそれにも苦笑すると、立ち上がって彼女の横に移動して、そのまま彼女の肩を自身に抱き寄せた。
そして、ゆっくりと彼女の頭を撫でる。
アスナは抵抗せず、気持ちよさそうに目を細める。
「…しばらくこうしてて。」
「…アスナはどんどん甘えんぼになってくなぁ…夫冥利に尽きるけど。」
「ふふ…キリト君に撫でられるの気持ちいいんだもん。それに…」
「…あとどれくらい、この世界でこうして暮らせるか、分からないからね…。」
「…そうだな。」
「…俺らに対しての陰口の事だけど…そのまま言わせておいてやれ。」
「いいの?それこそ、リズやシノのん達の耳に入ったら…」
「メンバー達には、俺から言っておくよ。アイツらも、かなりキモの太い連中が揃ってるからな。それに…」
「アイツらの力は、《もっと大きな戦い》で必ず攻略組の力になる。…きっと、アスナの役にも立つはずだ。…保証するよ。」
「…そっか。うん…君がそう言うなら、私は信じるよ。」
「…信じてくれるんだな。」
「私はいつでも、君を信じてるよ。知らなかった?」
「…ありがとうな、アスナ。」
第0層・四階《造物の間》
オオオオォォォォ…ッ!!
響く空鳴りのような叫び声。
その発生源である赤いローブの巨大なモンスター。
足はなく、宙に浮いているそのモンスターは、右手の裾を決して速くはない速度で振り払った。
ーーだが、それだけで…
オォゥッ!!
ズガアァァンッ!!
「ぐ…むぉ…ッ!!?」
凄まじい衝撃波が生まれ、強固な陣を成すプレイヤー達のタンク部隊に襲いかかる。
衝撃波の余波は後ろのディーラー達にも届き、風圧が彼らの布装備の裾を揺らした。
その瞬間、技後硬直が発生し、攻略責任者をシュンヤから引き継いだアスナは叫ぶ。
「チャンスです!A隊は怯んだ隙に攻撃を!B隊はA隊の援護をお願いします!!」
ハリのあるよく通る声。
その声に、攻略組は背中を押される。
…だが。
「お、おう!」
「…前、出ます!」
一部のプレイヤーの動きに《キレ》がないことをアスナは感知していた。
致命的ではないにせよ、アスナの指示と彼らの動きにマイクロ単位の誤差がある。
恐らく、体の調子が悪い訳では無い。
この世界に筋肉痛などの体の不調を訴えるような機能はないし、今のところ赤いローブのボスモンスターはデバフ付きの攻撃は繰り出していない。
そもそもそんなものがあったとして、それに対する対策を怠るような経験の浅い者は今この場にはいないだろう。
つまり、肉体とは別の理由が問題なのだ。
例えば…
オオオオォォォォ…
「ッ…!」
アスナが答えに辿り着くと同時に、赤いローブは動作を開始し始める。
今のところ、タンクでも弾けない攻撃は繰り出されていないが、それ故に何としてもディーラー達をタンク隊の後ろに下げなければならない。
「全隊後退!タンク隊の後ろへ!!」
アスナの声に呼応するように攻略組の面々の大半は、ボスモンスターから距離を取った。
…だが。
「…ぁ……ぁぁ…」
1人。
赤ローブの正面から攻撃を加えていた血盟騎士団のプレイヤーが、震えながら立ち尽くしていた。
全体に意識を向けていたが故に、アスナも気付くのに時間がかかった。
「しまっ…!」
「ヒィ…ッ!」
オオオオォォォォ…!!
赤ローブは無慈悲にも、右腕を振り上げる。
その動作に、立ち尽くすプレイヤーは怯えたような声を上げる。
「だめーー!!」
響くアスナの声。
それと同時に、赤いローブの右腕が振り下ろされた。
スカアアァァァァァンッ!
グオオォォ…!
「!?」
振り下ろされる直前。
乾いた音が響き、その直後に赤ローブの体勢が一気に崩れた。
クリティカルヒットによる、《
アスナは無意識に、《それをした人物》の方に顔を向けた。
隊の後方、長物の武器をもつプレイヤーが待機する場所。
そこにいる、《弓》を構えたプレイヤー。
「シノのん!」
アスナの呼び声に呼応するように、シノンは笑みを浮かべるがすぐに顔を引き締めた。
「アスナ、指示を!!」
その声に、アスナは我に返る。
今この場では、プレイヤー達の長は自分だ。
気を抜いている時間は、ない。
「皆さん!赤ローブの攻撃パターンはコウヤさんの情報通りです!攻撃の対処はタンク隊の皆さんに任せます!シュミットさん、タンク隊の指揮を頼みます!」
「おう!」
「ディーラーの皆さんは、技後硬直の直後に攻撃を開始!コウヤさんの情報通りの前動作が来た瞬間に退避!!リンドさん、少しの間ディーラー隊の指揮をお願いします!」
「分かった!任せてくれ!」
それぞれの部隊の指揮権を一時的に引き継いだ後、アスナは一直線に走り出す。
足を止めた、そこには。
先程足を竦ませていた、血盟騎士団のプレイヤーが膝をついたまま俯いていた。
「…リーファちゃん、うちの団員を助けてくれてありがとうね。」
「いえ、私は連れ出しただけですから。本命のお礼はシノンさんに。」
リーファはそう言って笑うと、すぐにボスのいる中央へと駆けていった。
アスナは片膝をつくと囁くように、しかし聞こえる声で問う。
「…大丈夫?」
アスナの問いに、俯くプレイヤーはゆっくりと頷いた。
その様子を見て、彼の身に起きたのがナーヴギアの接続障害やバグなどの外的要因では無いことが分かった。
そんな事があれば、この短時間で話すことはできないからだ。
…つまり、彼は彼自身の中での問題であの場から動けなかった。
「…あなた、第二部隊所属の《ネス》ね?いったい、何が…」
「…怖かった…」
「え…?」
アスナが問い終わる直前に、ネスはゆっくりと口を開いた。
「怖かったんだ……スタンが解けて、あの赤ローブの顔が見えた瞬間…恐怖で体が固まった…。……まるで…」
「…まるで、《あの日》を思い出したみたいに…。」
「…ッ…」
彼の…ネスの言葉に、アスナは思った。
「やはり…」と。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
プレイヤーの中で、この世界において染み付いてしまった《トラウマ》は多岐にわたる。
「罠にハマったこと」。
「剣で仲間を誤って傷つけてしまったこと」。
「死にかけたこと」。
…そんなあらゆるトラウマの中でも、もっとも最初。
この世界で初めて染み付いたトラウマ。
それは、「デスゲームに囚われたこと」だろう。
これは、この世界にいる誰であってもそうと言える。
人によって程度はあれど、あの日の恐怖を。
《日常》が《非日常》に変わる瞬間を。
…あそこにいた、全ての者が覚えている。
忘れないまま……忘れられないまま、
…いや。
忘れられるはずが、ないのだ。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
それは、あの場にいたGM・茅場晶彦…彼が使用していた、あの赤いローブアバターに対しても同様である。
あの日、あの場所で見たあの姿は容赦なくプレイヤー達のトラウマを呼び起こし、侵食してくる。
あの日感じた《恐怖》という感情が、攻略組全員の体と心を、蝕んでいた。
実際、アスナ自身もあの赤いローブの姿を見るだけで胸の奥にザワザワとした感覚がある。
このままでは、第2、第3のネスが現れてもおかしくない。
『…どうすれば…』
オオオオォォォォッ…!!
ズウゥンッ…!!
ワアアァァァッ!!
「…!?」
そこで、戦闘を行っていたはずの背後において、今まで聞かなかったボスの悲鳴に似た声と地響き、そしてプレイヤー達の歓声がこだまする。
アスナは思考を止め、背後へ振り向いた。
…そこにあったのは、プレイヤー達の前で倒れ込む、赤ローブの姿だった。
ーーーーーーーーーー
ーー溶けていく。ーー
ーー彼らから教わった、技、思考、言葉。ーー
ーーその全てが、この体にーー
ーーーーーーーーーー
「アニキ軍団!テッチ、グロービス!!」
「よし来た!!」
「おう!」
響き渡るランの声。
呼応するエギルとテッチのたくましい声と共に、彼らは一息で前に出た。
振り抜かれる赤ローブの腕と広がる衝撃波。
それが、ビーターズとスリーピング・ナイツの面々が形成したタンク隊目掛けて遅いかかる。
少数によって形成された小さな壁。
赤ローブにとってはただの小さな障害にしか見えないだろう。
ーーだが。
「踏ん張れよ、お前ら!!」
「オォッ!!」
ガイイィィィンッ!!
オォ…!?
「…っかぁ〜!効くねぇ!!」
数歩分押されながらも、笑う余裕すら見せるエギル。
他の面々も、歯を食いしばりしっかりと耐えて魅せた。
技を防がれ、技後硬直に陥る赤ローブの一瞬のスキをつき、ギルド【スリーピング・ナイツ】の精鋭達が襲いかかる。
そして、その中には…。
「リズ、リーファ、シリカ、レイン、フィリア!
「とーぜん!」
「もちろん!!」
「行きます!」
「「行っくよー!!」」
「いい返事!!」
ジュンの呼び掛けに答える5人。
その応答にノリが笑いながら賛辞を送る。
7人の集団から、AGIの高いシリカとリーファ、フィリアの3人が抜け出した。
それぞれの獲物の刀身を鮮やかな光で包み込む。
「「「セアアアァァァ!!!」」」
閃く光と、響く轟音。
確かな手応えを裏付けるように、この戦闘で初めて、プレイヤー側の攻撃による地揺れが発生する。
そして。
彼らの攻撃は、この程度で終わらない。
「スイッチ!!」
リーファが叫ぶと同時に、背後から4人のアタッカーが前に出る。
先程の3人同様、各々のソードスキルで赤ローブにダメージを加えていく。
少量だが、発生する赤いダメージエフェクトと共にHPバーが削れる。
しかし当然、ソードスキルを出した直後の技後硬直は避けられず。
赤ローブのボスモンスターも、この程度では倒れない。
オオオオオォォ!!
怒りの雄叫びと共に、赤ローブの左腕が振りかぶられた。
…その時。
「ピナ!《バブル・ブレス》!!」
「キュルルッ!!」
響き渡るシリカの声。
それに呼応するように、彼女の相棒である小さな翼竜が赤ローブの前に出る。
翼竜…ピナは小さな口から、無数の泡を発射。
一見無害そうなその泡達が破裂し、赤ローブが動かなくなった。
それもそのはず、ピナのバブル・ブレスは対象を《混乱》状態に陥らせることが出来る。
通常、70%の確率発生であるそれも、ピナの首につけたブレスレットの効果により、成功確率は100%にまで上昇していた。
「ピナ、ありがとうな!!」
ウッドが叫ぶ。
次の瞬間、先遣部隊の横を縫って、長物を手にしたプレイヤー達が前に出る。
そしてまた、閃光と轟音が響き渡る。
その直後、赤ローブはこの戦闘で初めて、その背中を地へと叩きつけた。
ーーーーーーーーーー
「アスナさん。」
スリーピング・ナイツとビーターズの猛攻の中、次の動きを考えていたアスナに、ランが駆け寄る。
「あと3分ほど私達で稼ぎます。その間に2大ギルドの陣形立て直しをお願いします。」
「…大丈夫よ。もう各隊長に周知してあるから。ありがとう、ラン。そっちへの援軍は大丈夫?」
「はい。ビーターズとの連携は
「…慣れてる?」
「あれ。キリトさんから聞いてませんか?」
「私達、ビーターズ結成当初から
「合同攻略…?」
「はい。意図なんかの説明は時間がないので省きますが、キリトさん達から要望があって行ってました。」
「…通りでビーターズから攻略情報が来ないと思ってたら、そういう事ね…。スリーピング・ナイツとほとんど共同だから、必要なかったわけか。」
「ずっと私達とやってた訳では無いですが。クラインさんの《風林火山》ともやってたみたいですし。」
「…ちなみに、
「あまり詳しいことは知りませんが…」
「カズマさん曰く、『2大ギルドはメンバーの移り変わりが激しすぎて向かない』んだそうです。」
「?それって…」
ザワッ…
アスナがランの言葉の真意を聞こうとした瞬間、
彼らの視線の先に目を向ける。
そこには…
湾曲した壁を疾走する、ひとつの影があった。
ーーーーーーーーーーーー
ーー俺は、お前を失って。ーー
ーー兄貴や直葉、藍子や敦を失って。ーー
ーー攻略組の連中を死なすことが、怖い。ーー
ほんの数十時間前にカズマが言っていた言葉。
それがユウキの頭をよぎる。
彼はかつて言った。
「自分は、大切な人を守れる力も持たない、無力な人間だ。」と。
ユウキにとってはそうではなくとも、あの時のカズマにはそれが真実だったのだろう。
だが、ユウキは思う。
ただひたすらに、彼のことを想う。
彼女にとっては、彼のそのお人好しな一面が愛おしいのだ。
『…ボクは、自分のことでいっぱいいっぱいだからなぁ』
ユウキの過ごしてきた世界は狭い。
それ故に、そこまで世界を広く見えるカズマに惹かれ、そんな彼を強く想っている。
そして何より、彼女は今、【善意】などでは動いておらず。
彼女の心は今、【夢】と【希望】。
そして【未来】へと、思いを馳せる。
彼女の求める【未来】のために、彼女は前へと進むーー。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
ーー2つのギルドからの畳み掛けによるダウンから起き上がった後も、赤ローブのボスモンスターは変わらず猛威を振るっていた。
怒り状態による凄まじい衝撃波攻撃の前に、さすがの精鋭達も悪戦苦闘を強いられている。
赤ローブは小さな障壁に向けて、もう一度腕を振り上げた。
…だがそこで、赤ローブは気付く。
自身の横。
湾曲したレンガ造りの壁の上を疾走する、ひとつの影に。
超高速で移動する影は、自身の背後に移動した瞬間に跳躍。
一気に壁から離れる。
接近するその影を危険と判断した赤ローブは、確実に無力化するために、手を伸ばした。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
ユウキは知っていた。
赤ローブの危機察知の高さを。
赤ローブが、ある一定の距離まで近付くと、衝撃波攻撃をやめ、掴み攻撃に移行することを。
だからこそ思いついた奇策であり…
かつて、最愛の夫と共に【究極の駆け引き】を繰り返してきた彼女にとっては、造作もないことだった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
宙に投げ出されたユウキの身体に向かって、白い巨大な手が突き出される。
それと接触した時のダメージは想像もつかず、軽装備の彼女は下手をすれば瀕死のダメージを負ってしまうだろう。
…彼女にとってそんなことは、百も承知だった。
「ッ…!!」
白い手とユウキの体が接触する…直前。
彼女の体が
彼女の右手首に装着されている腕輪からのびているのは、1本のワイヤー。
それのもう片方の先は、エリアの天井に張られていた。
ユウキは手が当たる直前に落下の軌道をずらすため、真上に張り付けておいたワイヤーを引っ張った。
それにより、宙で体が跳ねて軌道がズレる。
彼女の落下する軌道が大きくズレたことにより、赤ローブの手は彼女の下を抜けて空を切った。
ユウキはワイヤーを腕輪から切り離すと、そのまま赤ローブの突き出された腕の上に着地。
疾走を開始する。
赤ローブは振り落とすために右腕を振り払おうとするが…彼女はそれも読み切る。
ユウキは腕を振り払われる直前に跳躍。
赤ローブの顔と、一気に肉薄する。
未だその顔は見えないが、独特の緊張感が滲み出ている。
その緊張感と共に彼女は、右手の剣を力いっぱいに引き絞った。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
ーーそれは、《彼女だけ》のソードスキルーー
ーー彼女の
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「ッ…!!」
彼女の剣の刀身から溢れ出る、紫色の光。
その光の強さは並のソードスキルの比ではなく。それは、プログラムであるはずの赤ローブですら感じ取っていた。
剣の光により、エリア全体を照らし出す彼女の姿は、かつての《彼》と姿が重なる。
オオオオオォォ!!
赤ローブは更なる危機を察知したのか、ユウキに向けて左手と右手を動かす。
…その一手先で、彼女は動いた。
「ハアアアアァァァ!!」
気合いと共に、撃ち出される突き。
凄まじい威力を含んだその一撃で、赤ローブはノックバックを余儀なくされる。
だが、彼女の攻撃はそこで終わらない。
二撃。三撃。四撃。
真下へ少しずつズラされながら撃ち出されていく突きは、赤ローブの体だけでなく空間そのものを揺らすほど威力を内包していた。
垂直に五撃撃ち込まれたあと、それに交差するように水平に五撃撃ち込まれていく。
照らし出される姿形はまさしく…
「…ロザリオ…」
ランは無意識に、そう呟いていた。
ーーそして。
「…セェヤアアアアァァァァ!!!」
キュゥンッ!!
交差した二本の線。
その交点である場所に、最後の一撃の突きが撃ち込まれた。
弾丸にに負けず劣らずの速度で撃ち込まれた突きの、赤ローブの体を突き抜けた衝撃は背後の攻略組にも伝わり…
ズウウゥゥゥンッ…
赤ローブの体は、もう一度地面へと倒れ込んだ。
ダウン状態。
攻略組にとって、絶好のチャンスであるはずのその状態。
だが、攻略組の面々は動かない。
それは、全員知っているからだ。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォ!
響き渡る怒号にも似た雄叫び。
それと同時に赤いローブは、溶けるようにその姿を変貌させていく。
どろどろと溶けていくその様は、プレイヤー達に更なるトラウマを呼び寄せた。
だがそんなことは関係なしに、溶けた物体は着実にその形を変えていく。
やがて赤い液体は、確かな物体へと変貌を遂げた。
巨大な体躯、白い肌、埋め込まれた赤い石、背中から生える鋭利物…。
そして最後に、血のように紅い目がその姿を現した。
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォ!!
ビリビリビリビリビリッ!!!!
響く絶叫。
あまりの声量に大地が揺れる。
そしてそれと同時に、HPバーが一新される。
さらにその上。
アルファベットがカシャカシャと並び変わっていく。
やがて、並び終わった、その名は…
ーーThe World。
気圧される者、覚悟を決めて獲物を構える者、対峙するボスモンスターを睨みつける者。
そんな者達の先頭で静かに佇んでいたユウキは、気付けがわりに頬を1回叩いた後、叫んだ。
「さぁ、もういっちょ…」
「
とりあえず…
遅くなってすいませんでしたア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!