ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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僕は、神だ。


《SAO(この世界)》で、全てを操作できる神だ。

今は邪魔が入り、それは不可能となっているが、それでも人の身で他のプレイヤーを圧倒できるほどの力を手に入れた。

憎き、茅場晶彦…ヒースクリフがこの世界からいなくなったことで、この世界で僕に楯突くようなやつはいなくなっていた。


…はず、だった。





第40話 LAST(後編)

 

 

「グァア!!」

 

「ぐむォ…!?」

 

 

肥大化したことによって、もはや自身の手とは思えない拳で繰り出される一撃。

 

凄まじい推進力共に繰り出される拳は、盾を構えていたプレイヤー達を押し込み、10メートル程も後退させる。

 

 

「マダダァ!!」

 

「ぐああぁぁ!!」

 

 

左拳による更なる追撃。

その二撃だけで壁のような列を成していたプレイヤー達は転倒。

吹き飛ばされる。

 

タンクの壁の一翼が弾き飛ばされ、動揺が広がったのが分かった。

 

 

「ァァァアアアァァァアアア!!!」

 

 

好機があれば潰す訳には行かない。

 

更なる追撃を行い、邪魔なタンクのHPを…!!

 

 

「タンク隊のカバーをお願いします!!」

 

「「任せろ!!」」

 

 

栗色の髪の少女の声に続く、男二人の声。

 

次の瞬間、タンク隊とアルベリヒの間に割り込むスキンヘッドと赤い髪のプレイヤー。

 

 

「ジャマァ!!」

 

 

接触する右拳と、大剣と大斧。

 

パワー型らしい二人のプレイヤーのステータスでも、アルベリヒの今のSTRと張っているのか、拳と2つの武器は拮抗する。

 

…だが。

 

 

「なんの…!」

 

「これしきぃ…!!」

 

 

次の瞬間、軌道を真上に変えるアルベリヒの右腕。

 

 

「ギ…ギ…ッ!!」

 

 

青年と巨漢に攻撃を防がれたアルベリヒは、強い怒りを顕(あらわ)にした。

 

 

「「スイッチィッ!!!」」

 

 

2人同時の掛け声、さらに前に出る5人の影。

 

 

「「「セェイッ!!」」」

 

 

ノリ、リズベット、リーファ、レイン、フィリアのそれぞれの一撃が、アルベリヒの左脇腹部分に突き刺さる。

 

重い。

 

だが、胸のプレートがダメージを緩和してくれたおかげで数ドットの減少で終わる。

 

 

「ウガアァァ!!」

 

 

右腕による、裏拳。

 

それが、3人のプレイヤーへと確実に直撃した。

確かな感触。

 

 

「ぐお…ッ!」

 

「サンキュー、テッチ!」

 

「ありがとうございます、テッチさん!」

 

 

だがこれも、すんでのところでタンク隊のガードが入り、致命傷には至らない。

 

ならばと、アルベリヒは光線発射のために口を大きく開け…

 

 

「グォアアアァァ…ゲフッ!?」

 

「閉じてろ。」

 

 

発射寸前。

 

脳天に振り下ろされた凄まじい威力の攻撃で、アルベリヒの口は強制的に閉じられ、攻撃はキャンセル。

 

攻撃がキャンセルされた事により、口内による暴発でアルベリヒのHPが大きく減った。

 

そして、その後すぐに左の肩口に降りてくる頭を攻撃したプレイヤー。

 

 

「なるほど、こりゃいい眺めだな、須郷。」

 

 

二刀を携える黒衣のプレイヤーの姿を見た瞬間、アルベリヒの脳内に湧き上がる殺意。

 

その全てを乗せて、彼の左拳は躊躇なく撃ち抜かれた。

 

 

「ほいっ。」

 

「グアァッ!!?」

 

 

だが、キリトはそれを難なく避けると、彼の居なくなった軌道を通って、アルベリヒの左頬に彼の左拳が衝突する。

 

痛打による精神的苦痛と羞恥がアルベリヒを襲った。

 

だが、キリトはこれで終わらない。

 

 

「これか。」

 

 

彼はそのままアルベリヒの後方。

 

先程八本の光線の照射を行った、背中に埋め込まれた砲台。

 

その真上へと移動し…

 

 

 

手に持つ二刀を、黄金に輝かせたーー。

 

 

 

「…ジ・イクリプス。」

 

 

二刀流最上位奥義ソードスキル。

彼の十八番《スターバースト・ストリーム》を唯一超える、27連撃技。

 

 

アルベリヒの前で陣取るプレイヤー達には、凄まじい光に照らされるアルベリヒの影だけが見えているはずだ。

 

 

「セアアァァァッ!!」

 

 

タメが終わった瞬間、閃く両腕と両刀。

 

神速とも言える一撃一撃が撃ち込まれる度に、アルベリヒの体はノックバックを起こす。

 

毎秒およそ3発。

 

9秒間という短い時間の中で繰り出されたその全てが、8個ある砲台の全てに叩き込まれていく。

 

 

「グッ…ク…ソ…ッ!!」

 

 

8個ある砲台の全てに平均3発以上の斬撃が撃ち込まれ、《部位破壊》による攻撃手段の減少を、アルベリヒは余儀なくされた。

 

…だが、アルベリヒもタダではやらせない。

 

 

「ナ…メルナァ!!!」

 

「…!?」

 

 

腰を捻り、振り向きざまに撃ち抜かれる右の拳。

 

キリトへと撃ち込まれたその一撃で、宙を舞っていたキリトは為す術なく吹き飛ばされる。

 

 

「ぐゥ…ッ!!」

 

「キリトォ!!」

 

 

二刀で十字ブロックを行い、直撃自体は免れたものの、彼のHPバーは半分以上が削られていた。

 

あと一撃を撃ち込まれれば、確実にHPバーは消し飛ぶ。

 

アルベリヒは、もう一度口にエネルギーを溜めた。

 

 

「「ヌオォラァッ!!」」

 

「グッ…!?」

 

 

キリトを狙おうと照準を合わせた所で、アルベリヒの腹部を襲う衝撃。

 

それにより照準がズレ、キリトから横に数メートル離れた所へ光線は着弾。

 

 

目を向けるといたのは、もう1人の黒衣の剣士と、赤いバンダナを巻いた侍姿のプレイヤー。

 

バックステップで離れていく二人を狙い、更に光線を放つが、これも間に割り込んだ和装に身を包んだ集団のタンク隊が相殺してしまった。

 

キリトの方を見れば、既にアスナを指揮官とした数名のタンクの集団が回復までの彼への防御を担っている。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

なんなんだ、コイツらは。

 

 

 

コイツらには、この僕の圧倒的な力を何度も何度も、その体へと叩き込んだはずだ。

 

その小さな体のHPが何度も何度もレッドへと突入しても、未だに僕のHPの半分…三本目にすら到達していない。

 

タンク隊も見る限り消耗が激しく、満身創痍なダメージディーラーも少なくない。

 

 

客観的に見ても、追い込んでいるのはこちらのはずだ。

 

 

…なのに、何故か胸の奥にある《不安》が拭えない。

 

 

どれだけ攻撃を加えようと、どれだけタンク隊を吹き飛ばそうとも胸の奥のつっかえが、いつまでも取れずに残る。

 

 

この、違和感は…?

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「行くよ、ユウキ!!」

 

「うん、姉ちゃん!!」

 

 

接近してくる2人のプレイヤー。

 

2人に向けて放たれる、飛翔する鎧の一部が6つ。

 

2人はその全てを最小限の動きで回避、迎撃するとそのまま更に距離を詰めていく。

 

アルベリヒは容赦なく右拳を振り抜いた。

 

 

「ユウキ!」

 

「姉ちゃん!!」

 

 

互いに呼ぶだけの掛け声。

それだけでランは前に、ユウキは後ろへと下がった。

 

軽装のはずのランは右拳の軌跡上へと出ると、剣を胸の前に立てて構える。

 

そして、その剣と拳が接触した…瞬間。

 

 

「…ッ…」

 

 

ヌルり…と、まるで彼女の剣に拳が引き付けられているかのように、剣の刀身に沿って軌道が変わる。

 

 

「流石。」

 

ズガアアァァァンッ!!

 

 

カズマの口からこぼれる感嘆の言葉。

凄まじい音と共に床へと撃ち抜かれる拳。

 

全く同時に発生したそれらを置き去りにして、双子の姉妹は疾走を続けた。

 

 

「セェアアッ!!」

 

「テェイッ!!」

 

 

またしても腹部へと打ち込まれる一撃に、アルベリヒのHPは僅かながら減少を見せた。

 

光線や拳で二人を捉えようとしても、全てを回避され捉えきれない。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ッ…」

 

 

巨大な腕を振り回している影響か、肺などの内臓がない仮想世界なのに、精神的疲労から思わず息切れを起こしてしまう。

 

汗こそ出ないが、アルベリヒの体は謎の疲労感に包まれていた。

 

…いや、彼もここまで来れば自覚はしている。

 

 

 

自身のプレイヤーへの攻撃がにク(・)リ(・)ー(・)ン(・)ヒ(・)ッ(・)ト(・)し(・)た(・)攻(・)撃(・)が(・)ほ(・)と(・)ん(・)ど(・)な(・)い(・)ことに。

 

 

 

ただその事実を、アルベリヒ自身が受け止めきれていないだけだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

アルベリヒ違和感の正体は、まさにこれだった。

 

 

当初、凄まじい速度で撃ち込まれるパンチと時折放たれる光線。

そして、独立する飛ぶ鎧など選択肢が迫られる攻撃の数々に、攻略組メンバーも苦戦していた。

 

それらをダメージディーラー達が警戒し続けることにより、アルベリヒはタンクを削ることに専念でき、アルベリヒの中ではタンク隊を削りきるのも時間の問題だったのだ。

 

 

…だが。

 

今は攻略組の動きが全くと言っていいほど違う。

 

迂闊に近づき直撃を食らっていた拳や、着弾した後も範囲攻撃判定のある光線など、様々なアルベリヒの攻撃に対して対策を講じているような配置に、常々彼らは立っているのだ。

 

更に、連携を行う時にも彼の攻撃を躱すだけでなく、一部のプレイヤーはいとも容易くいなすことが出来ているなど、戦闘開始直後と今とではその戦況に決定的な違いがある。

 

 

 

まるで、彼(・)の(・)全(・)て(・)の(・)攻(・)撃(・)が(・)見(・)切(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)かのようにーー。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「アリエナイ…ボクハ、カミダゾ…?」

 

 

 

 

「コノ、セカイノォ!!」

 

 

シュンヤに向けて撃ち込まれる、右の拳。

 

もはや幾度となく見たその光景。

 

シュンヤはその一撃を…

 

 

 

首(・)を(・)少(・)し(・)傾(・)け(・)る(・)だ(・)け(・)で(・)、(・)回(・)避(・)し(・)た(・)。(・)

 

 

 

「……ッ…!?」

 

「…神、ですか…」

 

 

アルベリヒの一言に、シュンヤは少しだけ笑みを浮かべた。

 

 

「…ナニガオカシイ…」

 

「いいえ。須郷さんは何度もその単語をよく喋るので、少し気になっただけです。」

 

 

シュンヤはそう言うと、ゆっくりと前(・)進(・)し(・)始(・)め(・)る(・)。

 

 

「…!?」

 

 

これにはアルベリヒも驚きを隠せないが、これを好機と見てシュンヤに拳を撃ち込んでいく。

 

 

「須郷さんはどこか、《人の上に立つ》ことを最優先事項にしているフシがありますよね。前回もわざわざ攻略組に参入しようとしたり、今も《神》として僕達に崇めさせようとしてくる。」

 

 

…だが。

 

シュンヤは止まらない。

 

いや、止まらせられない。

 

右と左、どのような攻撃を繰り出そうと、まるで未(・)来(・)が(・)分(・)か(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)か(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)、その全てを最小限の動きで躱され、アルベリヒは段々と距離を詰められていく。

 

 

「ナゼダ!ナゼアタラン!!」

 

「別に他人の上に立ちたいと思うことは自然なことです。世の中にはそれだけが快感だと思う人もいるでしょう。…ただ、貴方はどうにもそうではない。」

 

「クソォッ!!」

 

 

振り下ろされる左の拳。

 

シュンヤはそれをジャンプだけで避け切ると、ゆっくりとアルベリヒの手の甲へ着地した。

 

…そして。

 

 

「…須郷さん。あなた、先輩である茅場晶彦へ、くだらない《意趣返し》がしたいだけなんじゃないんですか?」

 

「…!?」

 

「だからあなたは管理者権限を掠め取り、この世界へと降り立った後、わざわざ僕達攻略組と接触をはかり、潜り込もうとした。…かつての、茅場晶彦(ヒースクリフ)と同じように。」

 

「…ッ…」

 

「他にもわざわざ新しい層を作り出したり、ボス戦の途中に突然その姿を現したり。あなたには茅場晶彦への当てつけとも言えるような、不可解な行動が多すぎる。」

 

 

「実験のためだけだと言うなら、表に出る必要は無い」と、シュンヤはアルベリヒ…須郷の心をゆっくりと紐解いていく。

 

 

「茅場晶彦の真似事をして、その全てで彼に勝つことで、自分の方が茅場晶彦よりも上だということを、世間に広めたかった。…違いますか?」

 

「チガウ!!!」

 

 

もう聞いていられないと言わんばかりの叫びがアルベリヒの喉から発せられる。

 

巨大な口を動かし、言葉を紡いでいこうとする。

 

 

…だが…。

 

 

 

「ボクハ…ボクハ…!!」

 

「…図星だから、反論もできませんか。ただの私利私欲の八つ当たりに、数千人もの人々を巻き込んで、なんになるんですか!!」

 

「ダマレ!!オ前ミタイなガキに、ナニガワカル!!このボクノ、ナニガ…!!」

 

 

『クソ…クソォッ…イッタイ、ナゼダ…!?』

 

 

「…確かに、僕は須郷さんのことを、何も知りません。分かりません。…だけど、今(・)の(・)あ(・)な(・)た(・)の(・)や(・)り(・)方(・)が(・)、(・)間(・)違(・)っ(・)て(・)る(・)こ(・)と(・)だけは分かります。」

 

 

 

 

『ナゼ…ナゼ、カ(・)ラ(・)ダ(・)ガ(・)、(・)ウ(・)ゴ(・)カ(・)セ(・)ナ(・)イ(・)ン(・)ダ(・)!(・)!(・)』

 

 

 

 

「だから、あなたを止める。…それだけです。」

 

 

 

そこで、アルベリヒは気づいた。

 

 

自身の、影。

 

その、頭部に位置するであろう部分に突き立てられた、一振の鎧(・)通(・)。

 

床ではなく、影(・)に(・)突(・)き(・)立(・)て(・)ら(・)れ(・)た(・)その短刀。

 

 

 

 

ユニークスキル《シノビ》・拘束デバフ付与スキル《影縫(カゲヌイ)》。

 

 

 

 

アルベリヒが体を動かそうとする度に、ギシギシとその鎧通から軋むような音が聞こえた。

 

 

「………フー………」

 

 

そしてそこで、さらなる気付き。

 

いつの間に彼の前へと移動したのか、紅剣を手に、黒衣のフードコートを身にまとった青年が、アルベリヒの胴の前で立ち尽くしていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

カズマは、ゆっくりとその息を吐くと…

 

 

「……」

 

 

 

目を開く。

 

 

 

そして、右手に持つ紅剣を引き絞り顔の横へと移動する。

 

…その初動はどこか、ユウキの《マザーズ・ロザリオ》の初動と、酷似していた。

 

 

…そして。

 

 

 

 

 

…ォウッ!!

 

 

 

 

 

右手が止まると同時に、彼の紅剣の刀身を青白い閃光が染め上げる。

 

 

あの構えも、そしてフロアを染上げる青白い光も、その場にいる誰もが目にしたことないものだった。

 

 

 

「…須郷、良いことを教えといてやる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦いってのは、常(・)に(・)奥(・)の(・)手(・)を(・)隠(・)し(・)持(・)っ(・)て(・)お(・)く(・)もんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシュッ!!

 

 

 

まず、一撃。

極大威力の突きが、アルベリヒの胸を貫いた。

 

 

プレートによって守られてはいるが、あまりの威力にノックバックによるディレイが追加される。

 

そして、二撃、三撃。

 

これも、突き。

 

ますますユウキのOSSに酷似している点が目立つようになってはいるが…

 

 

「…あれは…」

 

 

ユウキは思わず声を漏らす。

 

彼が繰り出すあの技は、彼女の《マザーズ・ロザリオ》とは、作り出されている図形が違う。

 

 

四撃。五撃。

 

 

彼の撃ち込んだ突きの点が、巨大な五角形を作り出す。

 

 

ここまでの連撃を終えたところで、カズマの剣は…

 

 

 

 

さらに、その輝きを増した。

 

 

 

 

「…ッ…!!」

 

キュンッキュンッキュンッキュンッキュゥンッ!!

 

 

 

凄まじい速度で繰り出される突きを、更に五連撃。

 

五角形の内側に、少し小さな逆五角形が作り出された。

 

 

彼の真後ろに位置する場所で見つめていたアスナは、カズマの突いた順番、点一つ一つの位置関係を見て、1つの図形を思い出す。

 

 

 

 

 

 

「五芒星…」

 

 

「…ォォォオオオアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

片手直剣十一連撃OSS《ペンタグラム・ノヴァ》

 

 

 

 

 

 

アスナの呟きと共に、カズマの剣は更なる輝きと共に、最後の一撃を繰り出した。

 

 

 

ズドォンッ!!!

 

 

 

最後の一撃が繰り出された、その瞬間。

 

アルベリヒの体はノックバックと共に大きく仰け反り、そして…。

 

 

 

パリイイィィィンッ!!

 

 

 

彼の胸部を守っていたプレートは、大きな破砕音と共に、その姿を消した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

カズマが破壊した、胸のプレート。

 

その内部。

 

プレートが覆っていた胸に埋め込まれた、額の物よりも更に巨大な宝石。

 

 

その宝石こそ、シノンが弓スキルの最上位パッシブスキル《千里眼》で見た、もう1つのウィーク・ポイント。

 

 

…だが、カズマは既に先程のソードスキルで全てを出し切ったのか、動こうとはしない。

 

HPがまだ残るアルベリヒは、カズマにトドメを刺そうと両腕を振り上げた。

 

 

…だが、攻略組のメンバー達は、1人たりともその場から動こうとはしなかった。

 

 

…何故なら。

 

 

 

 

 

 

 

 

…《最強》が既に、動き出していたからだ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

サンッ…

 

「…ハ?」

 

 

 

囁かな音。

それと同時に無くなる、両腕の感覚。

 

 

アルベリヒが上を見上げると…

 

 

 

肩口から先の両腕が全て、切り飛ばされていた。

 

 

そこに見えるのは、黒い影。

 

 

 

背後から跳躍したのか、黒い影はそのままアルベリヒの上を越して、ブーツでブレーキをかけながらシュンヤとカズマの間に着地。

 

 

 

…そして。

 

 

 

 

 

両腕に持つ二刀の刀身を、青く染めあげたーー。

 

 

 

「…決めろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ兄貴。」

 

 

 

「スターバースト…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストリーム。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

噛み締めるように紡いだその名前。

 

数多のモンスターを屠ってきた、その絶技。

 

 

 

「…ハアアアァァァッ!!」

 

 

先程の《ジ・イクリプス》と同様、凄まじい速度で一撃が撃ち込まれる度に、薄暗いフロアを明るく照らし出す。

 

 

とてつもない威力を内包した二刀が青く光る軌跡を描きながら、アルベリヒの胸に埋め込まれた、赤い宝石を確実に捉えていく。

 

 

その一撃一撃が、アルベリヒのHPが凄まじい速度で減少させていった。

 

 

 

…そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の、一撃。

最大の、咆哮。

 

 

 

キリトの撃ち込んだ最後の突きは、アルベリヒの巨体を貫通。

 

その威力を全て吐き出すように、吹き荒れる突風をフロア全体に巻き起こした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

静まり返るフロア。

訪れる、静寂。

 

 

 

そんな中、アルベリヒのHPバーはみるみると減っていき…

 

 

最後の、1本。

 

 

…パリィンッ

 

 

そのレッドゾーンをも通り越して、破砕音と共にその姿を消す。

 

 

アルベリヒの巨体には、指先からまるで脱皮する直前のように長い亀裂が走る。

 

そして、一際大きく輝くと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……クソ…が……」

 

ガシャアアアアアアァァァァァァァァァンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これも大きな破砕音と共に、その姿を無数のポリゴンとなって散らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…またも、訪れる静寂。

 

 

 

 

 

 

誰も、動くことが出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて、七十五層の時もそうだったのだ。

 

 

 

 

もしかすると、まだこの後に何か…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー最終ボスモンスター、《アルベリヒ》のゲームオーバーを確認。ーー

 

 

 

 

ーー2025年。4月13日。15時34分ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーゲームは、クリアされました。ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーその瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊城アインクラッドが、揺れたーー。

 

 

 

 

 

 





とうとう!ここまで!来ました!!!

いやー、長かったような長かったような長かったような…(主に作者のサボり癖のせいで)

今回の話はもう少し捻り入れようかなーとも思ったのですが、元々訳わっかんねぇ文章が更に訳分からんくなる可能性があったので、やめました笑

登場させておきながら結局大した活躍もさせないままのキャラクターも多々いたのが、少し心残りではありますね。
まぁそのキャラ達もおいおい救済出来たらなと。


さて。
これにてアインクラッド編の主なお話といいますか、ひとまず攻略は終了。
これからはエピローグ的立ち位置の話を、アインクラッド編とリアルワールド編に分けて書いていきたいと思っています。

それも終わったあとにどういう内容を書くのか。
ロスト・ソングとかホロウ・リアリゼーションとかの話も書くのか。
そこら辺はまだまだ未定ということでご理解頂けるとありがたいです笑
18禁も書いてと言われてるからなぁ…笑

元々趣味として始めた創作活動でしたが、最初から読んでくれている方、途中から読み始めてくれた方。
その全ての方々がここまで書かせてくれた原動力となってくれました。

その人々全員に、今は「ありがとう」を伝えたいです。

自分の好み全開、ご都合主義満載の作品ではありましたが、少しでも皆さんに「面白い」と思ってくださったのなら、これ以上の幸せはありません。

ここからまだまだキリト、カズマ、そしてシュンヤの物語は続きます。
よろしければこれからもお付き合い頂けたら幸いです。

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