ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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付けたし要素とか多々ありますが、細かいことは気にしないでください笑




第3話 父と子

 

2025年10月某日。

 

 

 

「ぅあー…」

 

 

和人達がSAOから帰還して、既に半年の月日が経過していた。

 

帰還した直後、骨と皮だけのようになっていた体は、数ヶ月に及ぶリハビリと健康的な食事によって、日常生活に支障がない程度には回復していた。

 

今後問題がなければ、1週間後に懐かしの我が家に帰れる予定だ。

 

 

…さて。

 

 

今の時刻は午後の2時。

 

朝と夜には少しだけ肌寒いが、昼間は丁度いい気温のこの時期。

 

リハビリも終わり、昼食も食べ終えた和人は、病院内の中庭のベンチで気持ち良さそうに目を閉じていた。

 

 

「ふあ…ぁ…」

 

 

ぽかぽかと暖かい陽気に、丁度いい温かさの風。

 

その全てが和人の眠気を刺激する。

 

容赦ない睡魔が、和人の意識を刈り取っていくーー。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

…夢を見た。

 

 

あの世界の、夢。

 

 

確かあれは、去年の4月頃のこと。

 

第59層の主街区《ダナク》でのことだった。

 

 

その日の俺は、朝からどーにも気だるく、迷宮区の攻略へ行くのがめんどくさくて仕方がなかった。

 

それの一番の理由は気候。

 

 

天気は快晴。

気温は暑すぎない暖かさに、爽やかな風。

 

そんなものを昼飯を食った直後に受けてしまえば、抗いようがなかった。

 

日頃頑張ってるしこんな時くらいいいだろうくらいの気持ちで、目に入った少し大きめの木の木陰で昼寝を敢行していた。

 

 

…そんな時、枕元から足音。

 

起動していた索敵スキルも反応し、足音が止まった瞬間に声がかけられた。

 

 

 

 

『「何してるの?」』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「…ッ!?」

 

 

その声に、思わず飛び起きる。

 

目を覚ますと瞬間に、ベンチにもたれかけていた上体が前へと跳ねた。

 

目に入るのは、自分の足と芝生。

 

 

「わッ…!びっくりした…!」

 

 

その声に、背後へと振り向く。

 

そこに居たのは病院を既に退院し、私服に身を包んだ妹の直葉だった。

 

 

「もー、驚かさないでよお兄ちゃん。」

 

「あ、ああ…すまん…。」

 

 

少しだけ早まっている鼓動。

 

体を叩く心音に、荒い息が合わさっているためどんどんと慣らして行く。

 

そんな兄の様子に気付いたのか、直葉は心配そうに和人の顔を覗き込んだ。

 

 

「お兄ちゃん、大丈夫?調子悪い?」

 

「…大丈夫だ…ちょっと、夢を見てた。」

 

「夢?どんな?」

 

「…ちょっとな。」

 

 

そう言って、少しだけ笑う和人の顔を見ながら、直葉は疑問符を頭に浮かべた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「ふー…」

 

「おう、おかえり。」

 

「やっほー、和真。」

 

「なんだ、直葉も来てたのか。」

 

「なんだって何よ。」

 

 

ふくれっ面を作る直葉に、ベッドに座る和真はイタズラっ子のような笑みを浮かべた。

 

和人も苦笑する。

 

 

「冗談だよ。…親父と母さんは?一緒じゃないのか?」

 

「んーん。2人とももうすぐ…」

 

「お。」

 

「?」

 

 

直葉が答え終わる直前に、和真は少し視線を上げて、声を上げる。

 

和人がなんだろうと思い、背後に振り向くと…

 

 

「……」

 

「うお…!?」

 

 

和人と直葉の背後に立つ、眼鏡をかけた中年男性。

体は細身ながらも逞しく、髪は短くまとめられている。

背は、和人より少し高いくらいか。

 

 

「あ、お父さん。」

 

「久しぶり、親父。ただいま。」

 

 

直葉と和真はその男性に、続けて声をかけた。

 

眼鏡の男性は少し頷くと、チラリと和人に対して視線を移した。

 

その視線に和人は少しだけ萎縮したが…。

 

 

「…ただいま、親父。」

 

「…うむ。和人、和真。おかえり。」

 

 

和人と和真の挨拶に答えると、2人の父は少しだけ笑みを浮かべた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

桐ヶ谷 峰高(みねたか)

 

 

桐ヶ谷家の大黒柱であり、直葉の実父。

 

そして、和人と和真の叔父にあたる人物であり、育ての父親でもある。

 

現在は海外へ単身赴任中のため、基本的には和人達家族とは別居中である。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

両親が並ぶ前。

 

3人の兄妹が並んでベッドと椅子に座る。

 

 

「親父、母さん。この度は迷惑をかけて、本当にすみませんでした。」

 

「すみませんでした。」

 

「すみませんでした。」

 

 

和人と和真、直葉は3人同時に頭を下げる。

 

峰高と横にいる、髪を後ろにまとめた女性…母親である(みどり)は、少しの間何も言わなかった。

 

 

「3人とも、顔を上げて。」

 

 

翠の声で、3人は下げていた頭を上げる。

 

翠は、柔らかい笑みを浮かべていた。

 

 

「…今回の件は、和人と和真には何の落ち度もない。直葉はともかくね。」

 

「…ごめんなさい。」

 

「まぁそれでも、今はとにかく、3人揃って無事に戻ってきてくれて良かったわ。ね、あなた。」

 

「…そうだな。」

 

 

峰高は先程の笑顔とは一転。

 

厳しい顔で和人と和真のことを見つめる。

 

 

「私は海外へ単身赴任中だったから、病院で2人に対して何も出来なかった。だから2人とも、まずは母さんに対しての感謝は忘れないようにしなさい。」

 

「分かってる。」

 

「直葉も、帰ってきた時に言ったが、余計な心配を母さんにかけるんじゃない。」

 

「…本当にごめんなさい。」

 

 

頷く和人と和真に、小さくなる直葉。

 

3人をぐるりと見渡してから…少し、ため息をついた。

 

 

「…まあでも、とりあえずは…」

 

 

 

…峰高は、和人と和真。2人を抱き締める。

 

 

 

 

「…おかえり。無事で、本当に良かった。」

 

 

 

 

彼らを包む逞しい体と、そこから伝わる温かさ。

懐かしい父の匂いと共に伝わるそれは、和人と和真の中に込み上げる何かとなって現れる。

 

 

2人は、父の体を抱きしめ返す。

 

 

 

…3人は、しばらくの間離れなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「そういえば、あの人達っていつ来んの?」

 

 

3人が抱擁を終えた後、少しの間談笑をしていたところ、唐突に和真が口を開いた。

 

和真の問いに、翠は右手の時計を見ながら答える。

 

 

「もうすぐ来るはずなんだけど…」

 

 

その時。

 

 

コンコンッ。

 

「はい、どうぞ。」

 

「失礼します。」

 

 

和人の許しの後、男性の声と共にガラリと病室のドアが開く。

 

現れたのは白髪の中年男性と、眼鏡の青年。

 

2人とも、キッチリとスーツを着込んでいた。

 

中年男性が前に、眼鏡の青年が後ろにという陣形で並ぶと、峰高と翠も立ち上がる。

 

 

「初めまして、桐ヶ谷様。株式会社《レクト》の社長をしております、結城彰三と申します。」

 

「同じく、《レクト》社員の、結城浩一郎です。よろしくお願いします。」

 

 

 

 

「この度は、我社の社員がご子息に多大なるご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」

 

「申し訳ございませんでした。」

 

 

 

 

 

2人は揃って、頭を下げた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

結城彰三。

 

 

総合電子機器メーカー《レクト》を経営する社長。

 

1代で会社を立ち上げ、大手企業にまで成長させた敏腕経営者である。

 

そして、息子と娘を1人ずつもつ二子の父親であり、その娘とは和人が愛する女性、アスナ(明日奈)である。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

頭を下げ続ける彰三。

 

 

「顔を上げてください、結城社長。浩一郎くんも。」

 

「ありがとうございます…。我が社の社員、須郷の今回の行為は私の監督不行き届きが全ての要因です。皆様のいかなるご指摘ご要望も受け入れる次第です。」

 

 

そう告げる彰三と浩一郎の顔は、厳しく引き締まっている。

 

少なくとも和人と和真には、その顔と言葉が嘘には思えなかった。

 

 

 

「…私達夫婦で話し合った結果としては、今回のような事件が二度と起きないように、社内の管理を徹底して頂きたいと思っています。…それと、結城社長。娘からお聞きしましたが、今回の事件は社長ご自身の娘さんの婚約者が引き起こしたことだそうですね。」

 

「はい。」

 

「それも、社長ご自身が娘さんになんの断りもなく婚約の許可をしたと。」

 

「はい。」

 

「…社長の家の方針に口を出すつもりはありませんが、いくら優秀な人間であっても、大切な自身の娘を差し出し、業務も好き勝手やらせているというのは、会社として大きな欠点であると言わざるを得ません。…今後は社員との距離感を、もう少しお考えになった方がよろしいかと思います。」

 

「…はい。おっしゃる通りでございます。」

 

 

 

峰高の言葉に、容赦はなかった。

 

その言葉に乗るのは、確かな憤り。

 

これまで大切に育ててきた息子2人と娘。

 

須郷伸之は3人の命の危険を、間接的におよそ半年分ほど伸ばしたのだ。

 

須郷の上司への当然の怒りと言えば、その通りだった。

 

 

「…私と妻からは以上です。他には…和人、和真、直葉。お前達からは何かないのか?」

 

「んー…親父が言いたいこと、ほとんど言ってくれたからなぁ…」

 

「要望でもいいんだぞ?」

 

 

うーん…と、3人が悩んでいると、彰三が一歩前へ出る。

 

 

「…少し、よろしいですか?」

 

「社長、どうされました?」

 

「ご子息に用件がありまして…二人共、《桐ヶ谷和人》君は、どちらかな。」

 

「あ、こっちです。」

 

「はい、僕です。」

 

 

和真が右手側に指を指し、和人は反射的に手を挙げた。

 

彰三は「そうか…君が…」とだけ呟き、和人へと近づく。

 

彰三は和人の前に立つ。

 

 

「…今日、お父さんとお母さんに改めてこの場所での謝罪を許していただいたのには、もうひとつ目的があってね。」

 

「はぁ…」

 

「桐ヶ谷和人君。…君に、会いたかったんだ。」

 

 

彰三はそう言うと、両手で和人の右手を握りしめる。

少し大きく、温かい感覚を和人は右手をに感じ取った。

 

 

「…向こうの世界で、明日奈と一緒にいてくれて、本当にありがとう。」

 

「…ッ…」

 

 

それを聞いて、和人は少しだけ驚く。

 

何より、アスナが俺の話を父親にしていることに。

 

『…いや、恋人の話を親にするのは当たり前…なのか?』

 

 

小っ恥ずかしくて話してない和人の軽い困惑はよそに、彰三は語り始めた。

 

 

「和人君。僕は昔から絵に描いたような仕事人間でね。…家族との時間なんて、ほとんど持てていないんだ。」

 

「…」

 

「子供達の教育も、年下の妻に任せっきりにしてしまっていた、ダメな父親さ。」

 

 

そう言って、彰三は少しだけ自嘲気味に笑う。

一代で大企業を作りあげた代償…のようなものなのだろうか。

 

 

 

「だから、そんな私に言われても説得力を感じないかもしれないが、君の事を話す時に浮かべる、楽しそうな笑顔。…情けないことに、あんなにも楽しそうな明日奈は久しぶりに見たよ。」

 

「あの子を変えることができるなんて、和人君は本当に大したものだと、私は思っているよ。」

 

 

 

彰三はそう言って穏やかな笑みを浮かべた。

 

彼女がどんな話を父親に話しているのかは分からないが、恐らく結婚生活のこと…いや、それよりもっと以前。

 

SAOが開始された直後、攻略最初期からしばらくの間、パーティーを組んでいた頃の話だろうか。

 

…だが、正直そんなことはどうでもよかった。

 

 

 

彼女が、今も笑ってくれているのなら、それだけで和人は満足だった。

 

 

「…僕は、大したことはしてません。むしろ、アスナ…娘さんから色々なものを頂いた記憶しかない。それくらい僕は娘さんに支えられ、励まされてきました。」

 

 

彼女がいたから、今の自分がある。

 

和人はそう、断言する。

 

 

「…ただ、僕と明日奈さんのことを彼女が話して、それでお義父さんが少しでも幸せな気持ちになれるなら、それ以上の幸せはないです。」

 

「…君は立派だね。あの子が選んだだけはある。」

 

「僕なんて、まだまだです。…でも、これからもそう言って貰えるよう…そうあれるように、頑張ります。」

 

「…素晴らしいご子息ですな。」

 

「ええ。…この子も、この三年で成長しているようで嬉しい限りです。」

 

 

笑う彰三と峰高。

 

和人はしっかりと覚悟を決めた。

 

 

 

 

「…それと、私のことは名前で呼んでくれるかい?まだまだお義父さんと呼ばれるのは早いと思うからね。」

 

「あ、そうですよね。すみません…」

 

「どーせ将来的にその呼び方になるからいいと思うんですけどね。」

 

「口挟むな和真。」

 

 

 

 

 

「初めまして、和人君。僕は明日奈の兄の浩一郎だ。以後よろしく頼む。」

 

「あ、初めまして。お噂はかねがね…」

 

「なんだ、明日奈から聞いていたのか。変なことを言われてなければいいが。」

 

「いえ。ご聡明で優しいお兄さんだと聞いてます。」

 

「そうか。…僕のことも下の名前で呼んでくれ。」

 

「あ、はい。それでは浩一郎さん…」

 

 

「くん、だ。」

 

 

「へ?」

 

「浩一郎くん、と呼んでくれ。異性でも、仕事相手でもないのにさん付けというのは、どうにも距離を感じてしまうからね。得意じゃないんだ。」

 

「わ、分かりました。それでは、浩一郎くんと…」

 

「うん、これからもよろしく頼むよ、和人君。和真君と直葉さんも、よろしく。」

 

「あ、はい。よろしくお願いします…」

 

「よろしくお願いします。」

 

 

 

 

「…シュンヤやコウヤさんと同じタイプか…」

 

「どうした?和真君。」

 

「あ、いえ。こっちの話なんで大丈夫です。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「それでは、私達はここで失礼致します。桐ヶ谷様、この度は誠に申し訳ありませんでした。二度とこのような事がないよう、社内の管理を徹底していきます。」

 

「こちらこそ、御足労いただきありがとうございました。…また、良ければお会いしましょう。」

 

「はい。是非。…と、そうだ。和人君。」

 

「?はい。」

 

 

彰三は和人に近づくと、彼に1枚の紙を取りだした。

そこにはとある場所の住所が書き込まれている。

 

 

「それは明日奈の入院している病院と病室の番号だ。君の名前を出せば面会できるよう、病院に取り付けておこう。明日奈はまだ1ヶ月ほど退院しないから、都合のいい時に行ってやってくれ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「うん。…それでは、失礼しました。」

 

「失礼しました。」

 

 

 

最後に深々と頭を下げて、彰三と浩一郎は和人と和真の病室を後にした。

 

 

 

「…和人。」

 

「…はい。」

 

「彼女がいるって、私聞いてないんだけど?」

 

「…母さんに言ったらめんどくさいことになりそうだから、言わなかった。」

 

「まぁいいわ。…さ。」

 

 

ギシッ。

 

 

「…なぜ座る。」

 

「立ち話もなんだし、長くなりそうだからね。根掘り葉掘り、聞かせてもらうわよ♪」

 

「…帰らねえのかよ…」

 

「面白そー。私も聞かせて!」

 

「直葉まで…!?」

 

 

 

「…長くなりそうだから、和真。飲み物でも買いに行こうか。」

 

「おう。付き合うぜ、親父。」

 

 

 

…こうして。

 

消灯時間ギリギリまで、和人は自身の家族に対して、SAOでの恋バナをさせられたのだった。






アスナパパは全体への謝罪は記者会見で行ってはいますが、和人くんに直接会いたいがために二人の病室へ訪れたようですね。


途中書けば書くほど、化物語のガハラさん父と阿良々木さんの会話になってたんで何とかそれっぽいだけの文にしました()
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