ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

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W杯見てたら遅くなりました(´>ω∂`)‪_‬テヘペロ

※安定の気分乗らないと書けない男


第8話 ザ・シード

 

3月。

 

 

色々なイベントが終わり、どこか静けさも感じるこの月。

 

 

俺…桐ヶ谷和人は、東京にて、とある人物と待ち合わせをしていた。

 

 

「…ここでいいんだよな?」

 

 

場所は六本木、高すぎるビルの中にある、いかにも高級そうな店の1つ。

 

入口をくぐるだけで、手押し扉のそばに居たウェイターが「いらっしゃいませ」と出迎えてくれた。

 

店内を見渡すと、いかにもセレブそうなおば様やおじ様達が優雅にティータイムを楽しんでいた。

 

 

「おーい、キリト君!こっちこっち!」

 

 

…そんな高級そうな雰囲気を台無しにする、男の声が響く。

 

俺に向けられたと分かるその声の主は、窓際の4人用のテーブルの椅子に座る、メガネをかけたスーツ姿の男。

 

入口前にいた俺はすぐに客全員の視線の的となり、更にはウェイターにも少し困った顔で見られたことで、気恥しさプラス申し訳なさがのしかかり、ジャンパーの襟で顔を隠した。

 

俺を呼んだ男の前に立つと、彼はニコニコと笑みを浮かべていた。

 

正直、殴りたい。

 

 

「やー、御足労願って悪かったねキリト君。」

 

「…こっちでその呼び方するのやめろって何度も言ってるだろ、菊岡さん。」

 

「あっはっは。ごめんごめん。」

 

 

1つも堪えてない返答に、俺はため息をひとつつく。

 

この男には、真剣に怒るだけ無駄だ。

 

そんな諦めと共に席に着くと、先程のウェイターが水とメニュー表を持ってやって来た。

 

 

「ここは僕が出すから、好きなように頼んでくれよ。」

 

「初めからそのつもりだ。」

 

 

そう言いながらメニュー表を開くが、お高い店だからなのかメニュー名が長すぎるし、どんなものなのか名前だけでは分からないので、少し動揺してしまう。

 

とりあえず1番お高いケーキと、ストロベリーを使ってるらしいケーキ、ついでに1番高いコーヒーを頼んでおく。

 

 

「おや、今日は少し食べる量が控えめだねキリト君。いつもは食欲旺盛なのに。」

 

「人を大食らいみたいに言うな。否定はしないけどさ。…この後少し予定があるんだよ。」

 

「なるほど。それでは、その予定のためにも手短に済ませようかな。」

 

 

言いながら笑って、菊岡はタブレットPCを取りだして操作し始める。

 

 

「今日は、君の入院中に作った貸しの代わりになる頼みについて話をしようと思って、こうして足を運んでもらったわけだ。」

 

「…まぁ、十中八九そうだろうなとは思ったよ。俺も、菊岡さんに色々してもらってるだけじゃ心苦しいからな。」

 

「そう言ってくれると有難いね。…まぁ、頼みと言っても君が今思い描いているような複雑なものでは無いとだけ言っておくよ。」

 

 

色々と考えていた俺への指摘。

 

見透かされていたようで、何処か良い気はしない。

 

 

「そうは言うけど、俺の出来ることなんて限られるぞ?なんせ来年からも一介の高校生だからな。」

 

「なに、現実世界でどうのこうのしてもらう訳じゃないさ。僕が君に求めるのは…」

 

 

カタッ。

 

 

()()()()でのことさ。」

 

 

そう言って、俺の前に置かれるタブレットPC。

 

その画面には契約書のような書類が映し出され、その上には《VR世界特別調査員》の文字。

 

 

「君には、僕達《仮想科》直轄の特別調査員になってもらいたいんだ。」

 

「…なんだよそれ。」

 

「やることは単純さ。君は僕が依頼したことをこなしてくれるだけでいい。主な内容は《仮想世界の不具合の調査》になるね。」

 

「俺にまた仮想世界に行けって?」

 

「僕は知ってるんだぜ、キリト君。君、最近妹の直葉君のススメでALOを始めたらしいじゃないか。丁度いいだろ?」

 

「…俺未成年なんだが。」

 

「世間一般的にはバイトも可能な歳だね。これもバイトと変わらないから、問題ないさ。」

 

「……」

 

 

なおも何処か渋る俺に、菊岡は《トドメ》を突きつけた。

 

 

「それに、君には《これ》を世界へと広めた責任があるんじゃないかい?」

 

「……」

 

 

タブレットPCの画面。

 

そこに映し出されたものを見て、俺はため息をついた。

 

そこにあったのは数多のVR世界の名称と、その上にある一際大きな文字。

 

そこには、こう書かれていた。

 

 

 

 

ーー《ザ・シード》、と。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

もう1年が過ぎようとしている、昨年の4月。

 

 

今は無き鋼鉄の城の消滅を、夕日に照らされながら見届けた後。

 

 

かつて《天才》と呼ばれた魔王は、俺達にあるものを託した。

 

 

「君達に1つ、《選択》を任せたいものがある。」

 

「選択…?」

 

 

カズマが疑問符を浮かべると同時に、天から落ちてくる金色の物体。

 

俺はそれを両手で受け止め、その造形を確認した。

 

それは、卵のような形をした金色の何か。

 

 

「…これは?」

 

「それは《世界の種子》…《ザ・シード》だ。」

 

「…世界の種子…」

 

「芽吹けばどういうものか分かる。それを今後どうするかの判断は君達に任せよう。削除し忘れるも勿論良しだ。…だが。」

 

 

そこで、少し彼は言葉を詰まらせた。

 

…しかしすぐに。

 

 

「だが、君達がこの世界に少しでも憎しみ以外の感情を抱いているのなら…」

 

 

その後を、彼は言わなかった。

 

まるで俺達には言う必要がないかのように。

 

 

言いながら少しだけ笑い、俺達に《世界の種子》を託して、彼…茅場晶彦は、俺達の前から姿を消した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「君がこの《ザ・シード》…VR世界創造のためのプログラム・パッケージを世界に拡散してくれたおかげで、あらゆる人達が自分達のVRMMORPGを作り出せるようになった。おかげで、僕達仮想科も職を失わずに済んだってもんさ。」

 

「あんたはちゃんと次の仕事もあるだろ。官僚サマなんだからさ。」

 

「はっはっは。…まあただ、そういい事ばかりでは無いということも君は知ってるだろ?」

 

「…まぁな。」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

そう。

 

今や世界的に広がってきているVRMMOではあるが、それによるデメリットも存在している。

 

 

その1つが《VR犯罪の増加》。

 

 

元々フルダイブ型VRMMORPGというコンテンツは世界でも限られた、システムの整った会社くらいでしか運営されていなかった。

 

日本に限って言えば、かつてSAOを運営していた《アーガス》や、ALOを運営している《レクト》。

この2つが本格的に稼働していた、フルダイブ型VRMMORPGとその親元の会社だ。

 

外国には他にもフルダイブ型VRMMORPGを運営していた会社はあるにはあるが、それでも計10個と少しくらいの数だった。

 

 

…だが、俺が茅場晶彦から託された《ザ・シード》は、フルダイブ型VRMMO環境を動かす《プログラム・パッケージ》であることが、ユイとメルの調査で分かりその状況は一変した。

 

そこそこ回線の太いサーバーを用意して、《ザ・シード》をダウンロードさえすれば、誰にでもネット上にVR世界を作り出せるようになったのだ。

 

 

俺は2人に依頼して、誰もがザ・シードを使えるように、世界中のサーバーにアップロードしてもらった。

 

 

今では、ダウンロードされている数はおよそ5万、実際に稼働している大型サーバーは200を超えたと言うのは、メルの調査結果で知らされている。

 

 

そこまで増えると、当然問題も増えてくる。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「最近、VR世界で悪事を働く輩が多くなってきててね。詐欺パッケージの摘発なんかは僕達《仮想科》の領分なんだけど、VR世界内部のことはどうしてもまだまだ手探り状態でね。そこで…」

 

「元々VR世界に詳しいやつを雇って、そいつに調査をさせよう、と…」

 

「そ♪キリト君なら信用も出来るし、君が最初の直属調査員さ。」

 

「…信用してくれるのは有難いけど、俺だってこの春から学校もあるんだから、そこまで大層なことは出来んぞ。」

 

「もちろんそのつもりさ。この後に更に調査員を増やして、なるべく君の学業の負担にならないようにするよ。」

 

「増やすのはいいけど、ちゃんと事前に審査して選べよ?質が悪くてミイラ取りがミイラになったりしたら…」

 

「そこら辺も抜かりなくやるさ。…で、どうする?」

 

 

菊岡はそう言うと、俺の目の前にタブレットPCとスマホ用ペンシルを置く。

 

少しずつ話を逸らしていたことが、バレていたらしい。

 

 

「…もーちょい悩ませてくれよ。」

 

「君の中で、もう答えは出てるんじゃないのかな?」

 

「…」

 

 

見透かしたように、菊岡は告げる。

 

 

「…正直、SAOという過酷な世界から生き抜いて帰ってきたばかりの君にこんなことを頼むのは、気が進まなかった。」

 

「…」

 

「それでも、あの世界の最前線で戦い、生き抜いた君だからこそ、この大役を任せられると僕達《仮想科》は判断したんだ。」

 

「…」

 

「それに、須郷のような輩がもう一度問題を起こすと、VR世界は今度こそ窮地に追いやられるだろう。…それは、何としても防がなくてはならない。僕だってVR世界という存在にまだまだ無限の可能性があると、信じているんだ。」

 

 

 

 

「…キリト君、君はどうだい?」

 

 

 

 

「…はぁ…」

 

 

俺はため息を1つ。

 

そして、微笑をうかべた。

 

 

「…そんなこと言われたら、断れねぇだろ。」

 

 

俺の一言に、菊岡はイタズラっ子のような笑みを浮かべた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

いつの間にか届いていたスイーツとコーヒーをたいらげた後、菊岡と別れ、ビルの駐車場に停めていたバイクに跨って、国道を走る。

 

安全運転に気をつけながら、春先らしい少し冷たい風を受ける。

 

やがて国道から脇道に入って、住宅街へ。

 

ここら辺はもう世田谷区のため、お高そうなビルから変わって、お高そうな住宅が立ち並んでいる。

 

…まぁ、先程よりは少ないにしても、時折現れるビルやマンション自体は高いのだが。

 

 

『やっぱ埼玉(実家周辺)とは全然違うな…』

 

 

そんな事を思いながら走らせていると、目的地付近を告げる音声がスマホから鳴る。

 

俺は速度を落とし、目の前に立ち並ぶ高級住宅街から、事前に聞いていた外観の住宅を探した。

 

…そして。

 

 

「…あった。」

 

 

探していた外観の家を見つけた。

 

ついでに表札を確認。

《結城》と書かれた表札を確認して、ゆっくりと胸を撫で下ろす。

 

俺はスマホアプリを開いて、電話をかける。

 

 

「明日奈、俺。着いたよ。」

 

『うん、見えてるよ。』

 

 

言われて、二階のカーテンが少し開いていることに気付く。

 

栗色のロングヘアを揺らす少女が、俺に笑顔を向けて楽しそうに手を振っていた。

 

こちらも少し笑って、手を振り返す。

 

 

少女は満足したのか、カーテンを閉める。

そのタイミングで電話も切れた。

 

やがて、玄関のドアを開けて、彼女はその姿を現す。

 

 

「……」

 

 

その美しさに、思わず息を呑んだ。

 

 

手入れされた栗色のロングヘアはそよぐ春風にふわりとたなびき、柔らかい太陽に照らされてキラキラと光る。

 

服は白と水色のTシャツの上に、淡いピンクの上着を羽織って、ボトムは薄い紺色のジーパンを履くことで、どこか春の爽やかさをイメージした服装。

 

靴はショートブーツのようなものだろうか。

 

数ヶ月前に退院したばかりの彼女はしかし、今はもう適度な運動と食事を何度も繰り返しているためか、かつて見ていたような適度な肉付きを取り戻していた。

 

 

「おまたせ、キリト君。お迎えありがとうね。」

 

「いいよこれくらい。大切な彼女のためだからな。」

 

「そんなこと言って、ホントは別の用があったからでしょ。」

 

「…エスパー?」

 

「キリト君が分かりやすいだけよ。どうせカズマ君にそう言えって言われたんでしょ?」

 

「うッ…」

 

 

直感の鋭い彼女様には、全てお見通しだったらしい。

 

「もう」と言いながら笑う彼女に、俺も苦笑を浮かべざるを得なかった。

 

 

「ま、それでも迎えに来てくれてありがとうね。ついででも嬉しいよ。」

 

「いやいやそんなことは無いぞ?元々最初から迎えに来るつもりだったし…」

 

「冗談だよ。…えっと、バッグはどこに置けばいいかな。」

 

「あ、そっか。そのまま肩に掛けててもいいけど、気になるならこの中入れてくれ。」

 

「うん、分かった。」

 

 

座席の下に肩掛けバッグを入れて、俺は彼女にもう1つのヘルメットを被せ、しっかりと付けてあげる。

 

 

「キツくないか?」

 

「大丈夫。ありがとね。」

 

「お易い御用ですよお嬢様。」

 

「もう。」

 

 

ポスリと俺の背中を少し叩き、彼女はゆっくりと確かめるように後部座席へと腰を下ろす。

 

 

「じゃ、しっかり捕まっとけよ、明日奈。」

 

「うん、キリト君。」

 

「…あと、こっちでは《和人》な。」

 

「あ、ごめん。つい…」

 

「ま、別に今から向かうとこではいいけどさ。これから先は頼むぜ?」

 

「分かったわよ。さ、早く出ましょ?」

 

「へーへー。お嬢様の仰せのままに。」

 

 

明日奈からの小言が飛んでくる前に、俺はエンジンを噴かせる。

 

エンジン音が鳴り響くと共に、俺の腰に回された腕の力が強まった。

 

 

それを感じた瞬間に、アクセルを開放。

 

 

俺達の体が風に叩かれたのと同時に、明日奈が無音の悲鳴をあげたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 






次の話とつなげようとも思ったんですがなんかダレそうなんでここで切ります。

次の話は和人君が言ってた《用事》かな。

お楽しみに( ´∀`)b
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