ソードアートオンライン 〜鋼鉄の記憶〜   作:誠家

99 / 99
お待たせしました!!
お待たせし過ぎたかもしれません!!!

ごめんなさい!!!!


第11話 祝勝会

 

 

約2週間前。

 

 

ピロン♪

 

「兄貴。リズのやつから連絡来た。」

 

「おう。」

 

 

和真のスマホに、1件のメッセージが届く。

 

連絡の主は、かつてのギルドの仲間であり俺達を何度も助けてくれた鍛冶師の少女、リズベット。

 

文面は、こうだ。

 

 

 

『《SAO攻略お疲れ様&おめでとう会》は、エギルの経営するカフェにて、2週間後の水曜日に行う予定です。クソ生意気なサブリーダー様と根暗なギルドリーダー様は、どーぞお可愛い嫁達と仲睦まじくお越しください。』

 

……………

 

ピロン♪

 

『(°⊿°`)ケッ』

 

 

…………………

 

 

「だってさ、根暗なギルドリーダー。」

 

「やかましいわクソ生意気なサブリーダー。…ていうかあいつ、なんか文章に棘ないか?二投目の絵文字とか特に。」

 

「…これもリズの良いとこだろ。」

 

 

なんだか遠い目をしている気がするのは、気のせいではなかろう。

 

俺は「…そうだな」と苦笑で返し、参加の旨を和真のメッセージ経由で送って貰う。

 

 

座り込んだソファーの上で俺は、久しぶりに会うかつてのギルドメンバー達に、少しだけ思いを馳せた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

駐車場の一角にあるバイク専用の置き場に相棒を停めて、明日奈からヘルメットを受け取る。

 

しっかりと鍵をしてから横に立つ明日奈を見ると、彼女はにこやかにその手を差し出した。

 

 

「…グローブ履いてたから、ちょっと汗かいてるぞ?」

 

「いいよー別に。気にしない気にしない。」

 

 

言いながら、躊躇う俺の手を取る明日奈。

 

風を受けていた細く白い手は、汗ばむ俺の手を柔らかく握りしめる。

 

少しだけ顔の温度が上がるのを自覚する俺に、明日菜はしてやったりと言わんばかりの笑みを浮かべた。

 

 

敵わないなと、改めて思った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

OPENと書かれた札の吊るされた、木製のドア。

 

それを引き開けると、店内側に吊るされたベルが鳴り響く。

 

その音に反応するように、店内にいた客全てが俺と明日奈の方へ振り向いた。

 

 

 

…既に、参加者のほとんどが店に集合していた。

 

 

 

集合時間の15分前なのに、だ。

 

 

 

「…おいおい、俺達遅刻はしてないぞ…?」

 

「ふふーん。主役は遅れてやってくるもんだからねー。あんた達には、少し遅めの時間を伝えておいたのよ〜。」

 

 

疑問符を浮かべる俺に近寄る少女が1人。

 

茶色いショートカットに、そばかすがチャームポイントの彼女は、SAOの世界で俺を何度も助けてくれた剣達の生みの親の鍛冶師。

 

マスターメイサーでもある、リズベットこと篠崎里香。

 

 

「…やっぱリズの仕業か。」

 

「やー、あんた達はちゃんと引っかかってくれて良かったわー。」

 

「…ああ、和真とシュンヤは引っかからなかったんだな。」

 

「ええ…。あいつらいつか、絶ッッッッッ対完璧に騙してやるわ…」

 

「おーい、聞こえてるぞぼったくり鍛冶屋。」

 

 

声が聞こえた方向を見ると、カウンターに座る黒髪の青年が控えめに手を振り、茶髪の青年が穏やかに笑っていた。

 

それを見て明日奈も手を振り返す。

 

 

「ま、んなことはどーでもいいのよ!ほらおふたりさん、入った入った!!」

 

「わっ!お、押すなよリズ!」

 

「ほーらっ、アスナさんも早く!」

 

「し、シリカちゃん…!」

 

 

明日奈の背中を、シリカこと綾野珪子が押して移動させる。

 

2人は押されながら、ドアとは反対側のテーブルまで案内される。

 

リズはそのままテーブルに置いていたジュースの入ったグラスを俺と明日奈に手渡すと、マイクを手に取り、前へ出た。

 

 

「これでめでたく全員集まったことだし、始めるわよ!!!」

 

「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

 

 

 

 

「それでは皆さん、ご唱和ください!!せーのっ!!!」

 

 

 

「「「攻略組!!!SAOクリア、おめでとうー!!!!」」」

 

 

 

パーン!パンッ!!パーン!!!

 

 

 

 

 

 

 

「かんぱーい!!!」

 

「「「かんぱーい!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

…こうして。

 

 

SAOクリアの祝賀会は、慌ただしい喧騒の中、全員の唱和と乾杯のグラス、クラッカーの音色と共に始まった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「久しぶり、シュンヤ。」

 

「お久しぶりです、キリトさん。」

 

 

俺と明日奈の居たテーブルに集まってきた人々と軽い挨拶を交わした後、俺はテーブルを離れてカウンターに移動。

 

そこに居た、入店時に既に和真と並んで座っていた茶髪の青年に声をかけた。

 

青年は俺が声をかけると、優しい笑みを浮かべる。

 

 

「SAOクリアぶりだから、ほとんど1年ぶりか。」

 

「そうですね。お元気そうでなによりです。」

 

 

カチンっ

 

 

「俺も安心したよ。シャムは?」

 

「沙綾なら向こうに。ユウキやランと一緒に、アスナさんのとこへ行きましたよ。」

 

 

そう言って彼が指した方向を見ると、確かに明日奈の近くにいる3人の姿が見えた。

 

ボブとミディアムの紫がかった黒髪の二人の少女と、長い茶髪をツインテールにしている少女が一人。

 

ボブの短い髪を横に1つ束ねた少女が明日奈に抱きつき、軽い騒ぎになっていた。

 

彼女達の周りからも笑い声が巻き起こる。

 

 

「…楽しそうだな。」

 

「ええ。…沙綾も、楽しそうにしてて良かったです。」

 

「これまではそうじゃなかったのか?」

 

「そういう訳ではないんですが…ただ、ギルドの仲間と会うってのは格別なんでしょうね。」

 

 

 

「…すごく、良い笑顔してます。」

 

 

 

「…そっか。」

 

 

満足そうに微笑む隼人に、和人は笑った。

 

 

「シュンヤって、なんだかんだシャムのこと大好きだよな。」

 

「な、なんですかいきなり。」

 

「ははは、何となくそう思っただけ。」

 

「…キリトさんって、そういうとこはカズマとそっくりですね。」

 

「兄弟なんだからそりゃそーよ。…と、そうだ。兄弟と言えば、コウヤさんはどうなったんだ?裁判、もう終わったんだろ?」

 

「…はい。SAO製作に加担したのも、その後警察から逃亡したのも、情状酌量が認められて無罪判決になりました。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ここで、コウヤ…シュンヤの兄である《霧谷 瑛一》のその後について、少し詳しく話していこう。

 

 

シュンヤ…霧谷 隼人の実の兄で、かつてはSAOの発売元であるアーガスに、大学生ながら特別製作員として入社。

SAOの製作に携わっていた彼。

 

だが、SAO事件が起きた後に茅場晶彦ともう1人の社員と共に逃亡。

秋田の別荘に隠れ住むようになる。

 

それから2年ほど経ち、攻略組が第76層に到達した時にシュンヤの前に現れ、以降は茅場晶彦から送り込まれた攻略組への諜報員と、攻略組のタンクを並行して担うようになり、SAO完全クリアに貢献した。

 

SAOから脱出した後は秋田で警察に拘束され、SAO製作の加担とその後の逃亡についての聴取と裁判が行われていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「コウヤさんの件か?」

 

「和真。」

 

「新聞の記事で読んだけど、無罪の決め手は《茅場晶彦によって埋め込まれていた首の爆弾》だったっけ?」

 

「ああ。兄さんともう1人の協力者は爆弾を埋め込まれて脅され、泣く泣く茅場晶彦に協力させられた…()()()()()()()()()()()。」

 

 

含みのある声。

 

 

「…お前の兄貴と、もう1人の協力者が、爆弾が偽物だってことに気付いていたってことか?」

 

「それはわからんし、確証もない。…ただ、茅場晶彦がそんなマネをするはずがないと、2人は気付いていたんじゃないかって俺は思う。…それだけだ。」

 

「あくまでも《仮説》ってことか。」

 

「ああ。」

 

「…なら、どうだっていいな。」

 

「…ああ、どうだっていい。」

 

 

確証も何もない《噂》は、ある程度信頼のおける相手にしか話すに留まるべきだ。

 

かつての和真と同じように、隼人もそれは理解していた。

 

 

「で、その渦中のコウヤさんは?」

 

「今は海外に行って、フリーランスのプログラマーしてるらしい。『少しでも早く、世の中のために働きたい』んだと。…心配する家族のことも、ちょっとは考えて欲しいんだけどな。」

 

「当然の考えなんだろうけど、すぐに出て行く辺り、相変わらず真面目だなあの人は。ちょっとは体を休めてもいいだろうに。」

 

「…けど、兄さんがやりたい事は俺も反対するつもりはないよ。あの人の人生なんだからな。」

 

「そりゃそうだな。」

 

 

 

3人はそう言って、同時に口元へグラスを傾ける。

 

偶然のシンクロした動きに、3人の口に揃って笑みが溢れた。

 

 

 

 

かつて彼らがゲームの世界で望んだ、《当たり前》の生活の1つが、叶った瞬間だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「…木綿季、言うことは?」

 

「…いきなり抱きついてごめんなさい。」

 

「ほんとにもう…ごめんね、アスナ。」

 

「あははは…大丈夫よ、ラン。…流石にちょっとびっくりはしたけど…。」

 

「…スミマセン…」

 

 

姉から折檻されたのがよっぽど効いたのか、しょーんと項垂れる木綿季。

 

その様子を見ながら沙綾が困ったような笑みを浮かべる。

 

 

「それにしても、やっぱり木綿季は木綿季ね。向こうの世界とか関係なく、元気でお転婆。」

 

「あはは、ボクの1番の長所だからね。」

 

「それを自分で言わないの。」

 

 

藍子が頭を軽く小突くと、全く痛くなさそうに「あいたっ」と言い、笑う木綿季。

 

その3人を見ながら、沙綾の笑みはゆっくりと深くなっていく。

 

…そして。

 

 

「…シャム?どうしたの?」

 

「え?」

 

 

木綿季が心配そうに顔をのぞかせたことで、彼女はようやく気づく。

 

目元から流れる、一滴の雫に。

 

 

「あ、あれ…」

 

「だ、大丈夫?ボクのタックル、そんなに痛かった?」

 

「あ、い、いえ、それは…少し痛かったんですけど、そうじゃなくて…」

 

「…?」

 

「…ありがたいなぁ…と、思って…」

 

 

沙綾は、素直な気持ちを吐露する。

 

 

「こんな私を、こうして自然と受け入れてくれて、本当に…ありがたいなぁ、と…」

 

「もー、またそんな事言って。」

 

「ふぎゅッ!?」

 

 

言い終わる直前に明日奈が沙綾の頬を両手で挟み込み、思わず沙綾は変な声を出す。

 

 

「シャムちゃんは抱え込み過ぎなの。お兄さんのことも、自分自身のこともね。」

 

「…アスナさん…」

 

「そりゃ、シャムちゃんのお兄さんのやったことは許されないことだと思うし、許しちゃいけないことだとは思うけど…それとシャムちゃんを受け入れることはまた別問題よ。」

 

「そーそー。それにさ、ボクはSAOが76層から100層まで伸びたことは、割と良いことでもあったなとは思ってるんだよね。」

 

「…え…?」

 

 

「だってシャム、スリーピング・ナイツに居た時は、ずっと殻に籠ってたんだもん。」

 

 

「…わ、私…そんなに態度悪かったですか…?」

 

「いや全然。でも、ちょっと皆と距離があるようには感じてたかな。攻略ではそうでもないけど、それ以外の食事とか買い物とかでは、一歩引いてたような感じ。」

 

「…」

 

「でも、76層に上がって…それこそカズマ達の《ビーターズ》に入ってしばらくしてからは、本当に生き生きしてた。それでさ、思ったんだよ。」

 

 

 

「やっぱ、シャムの1番の居場所は、ボク達のギルドじゃなく、隼人(シュンヤ)の横だったんだなあって。」

 

 

 

「…ユウキ、さん…」

 

「まあそれでも?シャムを強くしたのはボク達だし?和真達からはどんなお返しがあるかすっごい期待してるけどね!ねっ、姉ちゃん。」

 

「ええ、そうね。今も、いつかあるお返しの日には、和真さんの財布を空にするつもりよ…」

 

 

「何の話してんだよお前らは。」

 

「あら、和真さん。」

 

「久しぶり、和真君。」

 

「お久しぶりです、明日奈さん。お元気そうで何よりです。」

 

「ふふっ、ありがとう。」

 

「わーい!!和真だー!!!」

 

ドゴフッ!

 

「シンプルに痛い!!」

 

 

もはや慣れたのか、直立で木綿季のタックルを腹で受け止める和真。

 

 

「ねー和真。この前、菊岡さんと行ったっていうケーキ屋さんでちゃんと奢ってね?シャム派遣のお礼を込めて!」

 

「えー、やだよ。あの店お高ぇんだもん。…ていうかシャム派遣のお礼はその日の内にしただろ。」

 

「あれはいつも通り甘やかしてくれただけじゃん!足りない!!」

 

「お前に遠慮はないのか!?」

 

「ない!!!」

 

「言いきりやがった!!!」

 

 

 

「という訳で、撫でて♪」

 

「どういう訳で?」

 

「はーやーくー。」

 

「…へーへー。仰せのままに、お嬢様。」

 

 

考えることをやめたのか、大人しく言われるがままに木綿季の頭を撫で始めた和真。

 

流れるようにイチャつき始めた2人を、明日奈と藍子が呆れた眼差しで微笑みながら見守る。

 

その見慣れた光景を見て。

 

 

沙綾は今度こそ、涙目ながらも、満面の笑みを口元に浮かべた。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「まーた馬鹿やってんのかお前ら。」

 

「あら、敦さん。」

 

「あ、敦だ。」

 

「相変わらず影うっすいなお前。」

 

「ほっとけバカップル。」

 

「お、シノンも久しぶり。なんか疲れてね?」

 

「…あんなゲロ甘空間見せられたら、誰でも疲れるわよバカップル。」

 

「「へ?」」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「む、ジンジャーエールが無くなった。」

 

「俺もです。」

 

「追加で頼も。何でもいいか?」

 

「はい。」

 

 

「マスター、バーボン。ロックで。」

 

「え?」

 

 

「ははは、冗談だよ冗d」

 

シュッ

 

 

和人が頼んだ直後、彼の目の前にグラスが流れてきた。

 

その中にある液体は、薄い茶色。

 

グラスを滑らして来た黒人のナイスガイは、とてもいい笑顔をこちらに向けていた。

 

この店の店主でもある、エギルことアンドリュー・ギルバート・ミルズだ。

 

 

「…これ、大丈夫なんすか?」

 

「…大丈夫だ。飲んでも捕まるのは出した店側だからな。」

 

「いやいや!飲んだのバレたら俺達も補導されますよね!?あ、ちょ…ッ!!」

 

 

グィーッ…!!

 

 

「…なんだ、ただの烏龍茶か。」

 

「当たりめぇだろ。バーボンなんて、お前らみてぇな子供が飲むにはまだ早ぇよ。」

 

「…まぁ、そんなこったろうなとは思ったけどな。」

 

「なんでちょっと残念そうなんですかキリトさん。」

 

「や、SAOで売ってたバーボン風味(らしい)ドリンク好きだったから、久しぶりに飲みたい気持ちもあった。」

 

「…なるほど。」

 

 

「エギル、俺には本物くれ。」

 

「クラインさん。」

 

 

後ろから現れた赤髪のスーツ姿の男性に隼人が笑みを浮かべる。

 

ギルド《風林火山》のギルドリーダーだったクラインこと壷井遼太郎。

 

 

「おう、シュンヤ!それにキリトも、久しぶりだな!!」

 

「お久しぶりです。お元気そうで…」

 

「久しぶり。…お前リアルでもそんな悪趣味な髪型してんのか。」

 

「ほっとけ。」

 

 

グイッ。

ゴッ…ゴッ…ゴッ…

 

 

「っかぁー!」

 

「おい、いいのかよクライン。この後また会社に戻るんだろ?」

 

「けっ、残業なんて呑まなきゃやってらんねぇっての!」

 

「…俺、クラインさんみたいにはなりたくないっすね。」

 

「ならない方がいいぞー。」

 

「なんだよシュンヤぁ!寂しいこと言うなよォ!!エギルも冷てえなぁー!!」

 

「寄るな暑苦しい。」

 

 

大の大人がナイスガイにダル絡みをする様を、和人と隼人は苦笑を浮かべながら眺める。

 

気をつけよう、と心に秘めながら。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「お久しぶりです、キリトさん、シュンヤさん。」

 

「シンカーさん。」

 

「お久しぶりです。その節は、第100層で加勢していただきありがとうございました。」

 

「いえいえ、むしろあのような場で我々を頼って頂いて、こちらから感謝したいくらいですよ。」

 

 

穏やかな顔で笑うSAO最大のギルド《軍》のギルドリーダーであったシンカーは、穏やかに笑うと手に持つグラスを和人と隼人のグラスに軽く合わせる。

 

 

「そういえば、ユリエールさんと入籍なさったそうですね。遅くなりましたが、おめでとう。」

 

「おめでとうございます。」

 

「ありがとうございます、お2人共。…まだまだ仕事の方も途上って感じで、彼女には迷惑をかけそうですが…」

 

 

そう言いながら、シンカーは背後の話している女性へと目を向けた。

 

リズや直葉、シリカと楽しそうに話しているユリエールを見て微笑むと…

 

 

「それでも、支え合って、幸せな家庭を築いていきたいですね。」

 

「素敵だと思います。」

 

「素晴らしい目標ですね…」

 

 

「いやー、実にめでたい!!あ、そういや見てますよ?新生MMOトゥデイ。」

 

「いやぁ、お恥ずかしい…まだまだ情報の種類も数も足りなくて、大手情報サイトには敵わずって感じですが…」

 

「正しくMMORPGの混沌、って感じですもんね…」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

和人がエギルに頼み、《ザ・シード》を世界中へアップロードしたことにより、今やありとあらゆるVRMMORPGが世界に誕生している。

 

それもあってか、今やVRMMORPGを専門にしたり取り扱っている情報サイトやブログは、評価と価値がうなぎ登りになっているのだ。

 

その凄まじさたるや、SAO事件に巻き込まれる前からMMOトゥデイの運営に携わっていたシンカーも、過去と今の評価の違いに驚きを隠せなかったほど。

 

《市場》とは、たった1人の人間が投げた賽でも、大規模な変化を見せるものだ。

 

 

 

 

それがたとえ、一介の学生の仕業であったとしても。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その後。

 

ビンゴ大会やら有志による一発芸大会やら、カラオケ大会なんかで、SAOクリアを祝う会は大いに盛り上がった。

 

 

…が。

 

 

「さて!皆、そろそろお開きの時間よ!!!」

 

「「「えー。」」」

 

 

楽しい時間でも、いずれは終わりの時間を迎える。

 

 

時計の針が夜の8時を回る頃。

 

マイク越しの里香の声が店内に響き渡ると、不満げな声が上がった(特に赤髪の男から)。

 

 

「えー、じゃないわよ!私達は明日から学校の準備もあるし、社会人連中は仕事あるんだからちゃんと体を休めなさい!!」

 

「俺この後残業なんだよ〜」

 

「それは自業自得ですっ!」

 

 

珪子の容赦ない正論に赤髪社会人がノックアウトされる。

 

 

「はいはいっ!だらしない社会人は置いといて、締めの挨拶に移るわよー。」

 

「でもでもリズさん、これまで私達が司会進行を担当してきましたけど、締めの挨拶は誰がするんですかぁ?」

 

「そーですよぉ。私達、なーんにも聞かされてないですぅ。」

 

 

司会進行による、会話の棒読みが半端なかった。

数名、嫌な予感がして背筋に冷たいものが走る。

 

里香はともかく、珪子と直葉が特に酷かった。

 

 

「ふっふっふ。安心なさい2人共。人選はもう済ませてあるわ!」

 

「え、ええ〜!?」

 

「だ、誰なんですかぁ!?!?」

 

「選ばれたのは三人!!ちなみに私の独断よ!!!」

 

「「「おお〜!!」」」

 

 

里香の言葉と共に、周りの者達が歓声と拍手を巻き起こす。

 

 

 

…嫌な予感がしてる、3名を除いて。

 

 

 

「リズ〜。俺ちょっとポ○GOしに行っていいか?」

 

「じゃあ僕はド○クエウォークを…」

 

「ゲームなんて後にしなさいカズマ、シュンヤ!!!」

 

「そうですよカズマさん、シュンヤさん!ゲームなんていつでも出来ます!!」

 

「逃がさないよ2人とも!!!」

 

 

すぐさま直葉と珪子の2人が扉の前に立ち、逃げ道が塞がれる。

 

 

「悪びれもしねぇなてめぇら。」

 

「大した面の皮の厚さしてますね3人共。」

 

「いくらでもいいなさい!!それに、今どきARスマホゲーなんかしてるやつなんて居ないわよ!!」

 

「んな事ねぇわ。お前は今すぐ全ゲーム会社に謝ってこい。」

 

 

 

「あれ?キリトさんは?」

 

「大将なら、裏口から逃げようとしたところを店主に捕まえられてるわよ。」

 

 

リズが指さす方を見ると、確かにカウンターでスキンヘッドの男性にヘッドロックかまされている青年の姿が見えた。

 

あれでは逃げられまい。

 

 

「…謀ったな、リズ?」

 

「ふふーん。ようやくあんた達に一矢報いれたわね。」

 

 

鼻高々な里香。

 

 

「やりましたねリズさん!2週間前からすごい形相で一緒に作戦立てましたもんね!!」

 

「2週間かけて立てたこの計画が完璧に実行できて、私感動してます!!」

 

 

いらないことを周りの2人が捲し立てるので、誇らしげにしてた里香の顔がどんどん真っ赤に染っていく。

 

やめたげて。

 

 

…まあ実際、彼女達に一杯食わされたことは、和人達にとって紛れもない事実であった。

 

 

「…しゃーねえ。その努力に免じて、甘んじて受け入れてやるよ。」

 

「ふふん!最初からそう言えばいいのよん!!」

 

「顔真っ赤だぞリズ。」

 

「うっさい!!!」

 

 

和真に指摘され、更に真っ赤になる里香。

 

その様子を見ながら、周りの者達は思った。

 

「こりゃ、一生敵わねぇな」、と。

 

 

……隼人と和真、そして和人はお互いの目を見て頷きあい、ゆっくりと、用意された舞台(木箱)へと向かって歩を進めた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「誰が最初行く?」

 

 

隼人の言葉に、3人は顔を見合せ…

 

 

「兄貴最後なのは確定だから、俺とお前のどっちかだな。」

 

「ああ。」

 

「ちょっと待て。」

 

 

和人が面倒ごとは先に終わらせようと手を上げようとした瞬間に、その道が容赦なくシャットアウトされた。

 

 

「じゃ、俺先に行くわ。で、隼人から兄貴って流れで行こう。」

 

「異議なし。」

 

「………もういいよそれで。」

 

「うしっ。じゃあ行くかね。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「お、最初は和真ね!皆拍手〜!!」

 

ぱちぱちぱちぱちぱち〜!

 

 

「あー、やめろやめろ!そういうのは兄貴とシュンヤまでとっとけ。」

 

 

和真は拍手に、笑いながら収めるように促す。

 

だが、その場にいる彼らは知っていた。

 

和真のその反応は、彼が照れた時にだけ見せるものであると。

 

 

「あーあー。…うん、マイク良好。」

 

 

「………スゥ-……………………うん、いきなり振られていきなりここに立つと、何話したらいいかわっかんねぇな。」

 

 

和真の言葉に、起こる笑い声。

 

そらそうだと言わんばかりの雰囲気に、和真も笑う。

 

 

 

「まー、まずはあれだ。…ありがとう。」

 

 

 

「俺が今この場で、こうしてスピーチ出来てるのは、皆のおかげだ。心から、そう思う。」

 

 

「この場にいる誰かが抜けても、あのゲームはクリア出来なかった。」

 

 

「それに、俺のクソ生意気な言動に苛立ちを覚えた奴も多かったと思う。それもここにいる全員がある程度受け入れてくれてたから、俺は攻略組の一員としてこの場に立ててる。」

 

 

「…本当に、ありがとう。」

 

 

和真の素直な気持ち。

 

かつての世界では…攻略と周りの事だけを考えすぎて自身の評価を鑑みていなかった彼からは、出ることがなかった言葉。

 

その言葉に、周囲のほとんどが驚いたように身を固め…

 

 

「…あんた、熱でもあるの?」

 

「なんでだよ。」

 

 

里香の心配を含んだツッコミが飛び出した。

 

そのツッコミに、和真はツッコミで返す。

 

 

「…まあでも、そうだな。俺のSAOでの振る舞いなら、そう思われても仕方ないか。…今後はもうちょい、人との接し方も学んどくよ。」

 

 

和真が少し笑いながらそういうと、何名かが頷く様子が見られその様子に和真は更に笑う。

 

 

「ま、前座はこれくらいにしとくか。これまで本当にありがとう。…これからも、よろしくな。」

 

 

和真がそう締めくくった後、目の前の全員から惜しみない拍手と歓声が送られる。

 

少し奥の方では、ショートカットの瓜二つの少女達とメガネをかけた青年が右拳を突き上げるが見える。

 

和真はそれに、右手を挙げて答え、ステージの木の箱から飛び降りた。

 

 

「ほい、シュンヤ。お前の番。」

 

「ああ、ありがとう。…ん?」

 

「?んだよ。」

 

「…なんかお前、スッキリした顔してるな。」

 

「そか?…ま、あれだ。」

 

 

 

「今まで言いたくても言えてなかったこと言えて、肩の荷が降りたのかもな。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「お次は我らが参謀、《攻略の鬼》から役目を引き継いだ後もしっかりとその役目を遂行した功労者!ビーターまとも担当、シュンヤよ!!拍手〜!!!」

 

「「「「「うおぉ〜!!!」」」」」

 

 

ぱちぱちぱちぱちぱち!!

 

 

「なんですかそのナレーション。」

 

「俺の時にはなかったやつだなー、それ。」

 

「ていうか何気に俺ら、ビーターの《まともじゃない担当》として貶されてんな。」

 

「その呼ばれ方、あんまり好きじゃないんだけどな〜」

 

 

里香の演説じみた紹介に、隼人は頬を赤く染め、和真は笑い、和人は苦笑し、明日奈は困ったように笑った。

 

 

「あー、ご紹介に預かりました。シュンヤです。皆さん、お久しぶりです。…えー、本日はお日柄もよく…」

 

「そこから繋げると、どんどん長くなって逆に辛くなるぞ。」

 

「うるさいな。」

 

 

和真の鋭い指摘に、隼人は更に鋭いツッコミで返した。

 

その2人の掛け合いで、手前の方にいたツインテールの少女がクスクスと笑うのを見て、隼人は少し緊張が解ける。

 

ため息を1つ。

 

 

 

 

「まずは皆さん、ありがとうございました。」

 

「…今、この場でこうして僕達が集えるのは、あの世界で戦いに身を投じてくれた、全ての人達のおかげです。…その中には当然、皆さんもいます。」

 

 

真面目な彼らしい入り。

 

 

「…キリトさんとカズマがどうかは知りませんが、正直なことを言うと…僕はあの時、《ビーター》として憎しみを一身に浴びると決めた時、そのプレッシャーに耐えられるのか。…あまり、自信はありませんでした。」

 

「76層に上がった直後もそうです。…皆さんから忌み嫌われている、ビーターである僕に、本当に歴戦の猛者の集まりである攻略組を率いれるのかどうか。…不安がなかったと言えば、嘘になります。」

 

 

これまで語られることのなかった彼の本音に、数名が息を飲む。

 

あの決断は彼の意志であったとしても、それを押し付けてしまった当時を知る者達に、その本音は重い意味があった。

 

 

「僕は、《普通の人間》です。兄のように優秀じゃないし、キリトさんのように圧倒的なゲームセンスもない。カズマのようなクソ度胸と面の皮の厚さも持ち合わせてはいません。」

 

「…そんな僕…()でも、皆さんと共に剣を取り、共に戦い、あのデスゲームを共に生き残れたという事実は、これまでの人生の中でも最上の、俺の《誇り》です。」

 

 

「本当に、ありがとうございました。…そして、お疲れ様でした。」

 

 

隼人は、ゆっくりと頭を下げる。

 

 

先程の和真の時とは違い、ポツポツと小さな音の拍手がまず鳴り響き、その後に増えていく拍手が合わさり、大きな、健闘を称える拍手へと変わっていく。

 

皆の内心が現れるような、その拍手。

 

 

拍手をする者達の胸中は様々。

 

 

賞賛。

 

感動。

 

そして、後悔。

 

 

そんな彼らの胸中を知ることはなく、隼人は頭を上げて拍手する人々を見渡す。

 

 

…ふと、女性陣の中にいたツインテールの少女と目が合った。

 

 

彼女も拍手を続けくれていた事は変わりないが。

 

 

 

その頬に薄らと、1粒の雫が流れ落ちるのが見える。

 

 

 

その光景に少しだけ驚きを覚えながらも、隼人は小さな微笑みを彼女に向けた。

 

 

それを見て彼女も、目元を細め、笑みを返したのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おつかれぇーい」

 

「おつかれさん。」

 

「お疲れ様です。」

 

 

「…なんというか、すまんな。シュンヤ。俺のわがままに巻き込んじまって。」

 

「謝らないでください、キリトさん。」

 

「でも…」

 

「…まあ最初は2人と同じ立場で戦い続けれるのかとか、メンタル的な心配もありましたけど。」

 

 

「それでも、2人とじゃないと見れなかった景色も確かにあるんです。」

 

 

「元々内向的な俺は、あのままベータテスターて事を隠したままなら、特に目立つこともなくどこかのギルドメンバーをしてたでしょうし。」

 

「シュンヤ…」

 

「なんなら、攻略組としていれたのか、生きてここにいることが出来たのかすら怪しいですから。」

 

「お前も大概、自己肯定感低いよな。」

 

「…まぁな。」

 

 

隼人は和真の言葉に笑うと、持っていたマイクを和人へ差し出す。

 

 

「んじゃ、最後、しっかり決めてきてくださいよ、大将。」

 

「俺らのギルマスの口上のお披露目だな。」

 

「…もう俺かぁ…。はぁ…」

 

「そう気を落とさず。キリトさんなら大丈夫ですって。」

 

「頼むぜ〜、リーダー!」

 

 

優しく微笑み和人の背中に手を添える隼人。

 

豪快に笑いながら和人の背中を叩く和真。

 

各々の方法で背中を押されて、和人は1歩前へ出た。

 

 

「…じゃ、行ってきますかね。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「シュンヤ。俺への言葉、少し棘なかったか?」

 

「そうか?少しにした覚えはないんだが?」

 

「いーや、あれじゃ足りねぇな。もっと『カズマは恥と礼儀を自分の母親の腹に置いてきた』くらいには言わねぇと。」

 

「そこまでは思ってねぇよ。…つーかお前は自分にそう思ってんのか。」

 

「他人を見てると思う時はある。」

 

「あるのかよ。」

 

 

「…まぁでも、お前とキリトさんには本当に感謝してるよ。俺みたいな凡人に、《SAOの英雄》の一人になれるきっかけをくれて。」

 

「アホか。あそこで決断したのはお前なんだから、俺らへの感謝なんぞいらんわ。お前は黙って誇りとして、自分の胸の中にしまっときゃいいんだよ。」

 

「…それでも、ありがとな。」

 

「…お前も大概、今日変だぞ。」

 

「そうかもな…」

 

 

 

「ま、祭りの後だからな。…見逃してくれよ。」

 

「…そういう事にしといてやる。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

こうして、大勢の前に立つのは何時ぶりだろうか。

 

 

 

「…あの時以来かな…」

 

 

そうして思いを巡らせるのは、かつての世界での76層でのこと…ではない。

 

確かにあの時も、リズやシリカ達へ俺にとっては大層な演説をした覚えはあるが、これ程までの人数は相対していなかった。

 

これ程までの人数というと…

 

 

 

 

本当に、()()()以来だろうか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お、とうとう来たわね!!!??」

 

 

和人が登壇すると同時に、それまで直葉や珪子と談笑していた里香が振り向きマイクを構え直した。

 

そのプロ意識(?)には、和人も脱帽せざるを得ない。

 

 

「さあさ!!皆さんお待ちかね、最後の一人の登場よ!!!」

 

 

「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

 

里香の掛け声と共に響く、男共の野太い声。

 

それに混じって聞こえる、女性陣の可憐な叫び声。

 

そして、ステージとなる木箱の前で、場を盛り上げるように手を上下に振る、先程まで同じ立場でスピーチをしていた黒髪の見知った青年。

 

とりあえずその青年の頭を1発シバいておく。

 

 

 

「屠ったモンスターは数知れず!ベータテスターとしてでなく、全プレイヤー中最強という称号をその手に握り、その剣に宿し、その背に多くを背負いながら攻略組を背負い続けた男!!私ら《ビーターズ》の団長にして、攻略組最強のレジェンドプレイヤー!!!」

 

 

 

 

「キリトの、お出ましよー!!!!」

 

 

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

…みんなが盛り上がってるところ申し訳ないんだが。

 

 

……めっっっっっっっちゃ恥ずかった。

 

 

先程、俺達を止める際の寸劇を見た後だと、どうしても演技のクサさが目立っていたが(主に他2人(直葉と珪子)のせいで)、あの長ゼリフを噛まずに言えたところを見るとおそらく、里香は相当練習したのだろう。

 

今回の大役を全うするために。

 

だからこそ、より強く。

 

恥ずかしさというか、歯がゆさが強調される。

 

 

里香が先程のセリフを少し噛もうものなら、少しばかりの落胆と共に励ましの言葉が生まれ、「慣れない状況の中、頑張っている司会のために盛り上げよう」という雰囲気も同時に生まれていただろう。

 

 

だが、あそこまで完璧にこなされてしまうと、話は変わる。

 

 

 

そしてもし仮に、まったく的外れなことを里香が言っていたら、どうしても場はシラけてしまっただろう。

 

だが先程の里香は一言一句間違えずにセリフを言い切り、自身の役目を全うした。

 

 

そんな彼女のセリフに同調した者達…この場にいる全員が手を突き上げ、雄叫びを上げたのだ。

 

 

それが表すのは、1つの事実。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

その事実が、和人には、ひたすら小っ恥ずかしかったのだ。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…さぁっ、キリト!!締め、頼むわよ!!!」

 

「お願いします、キリトさん!!」

 

「おにっ…キリト君、がんばっ!!」

 

 

里香が息切れを起こしながら締めくくり、周りにいる2人(珪子と直葉)からエールが送られる。

 

彼女らの様子に少しばかりの元気をもらって、和人はゆっくりと、前を見据えた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「あー。とりあえず皆、今日はこういう楽しい会を開いてくれてありがとう。」

 

「企画とかそういうのはエギルにリズ、リーファやシリカ達が率先してやってくれてたから、その面々にまずお礼を言いたい。ありがとう。」

 

「その上で、やっぱ他の皆が集まってくれないとこういう会も実現はできなかったろうし、そう言う意味で皆にお礼を言いたい。ありがとう。」

 

 

和人の少し形式ばった、しかし本音であろうその言葉に恋人や家族、元ビーターズメンバー含む友人達以外の、親交が深くない者達からも拍手が起きる。

 

皆、気持ちは同じだったわけだ。

 

 

「…でだ、あそこまでリズや皆に盛り上げてもらって申し訳ないんだが…」

 

 

 

「正直、めちゃくちゃ恥ずかしかった。」

 

 

 

苦笑しながら言った和人の言葉に、大衆からどっと笑いが起こる。

 

「そりゃそうだ」と共感する声や、「よっ、レジェンドプレイヤー!!」と先程の呼称を弄るように叫ぶ声など、反応は様々だった。

 

だがそれらの声を上げる者達以外の人々に浮かぶ表情は、全て笑顔であり…

 

それが、和人にはとても嬉しかった。

 

 

「…ま、リズがそう呼んでくれたことや、皆がそれにツッコミもなく盛り上げてくれたこと自体は凄い嬉しかった。それは間違いない。」

 

「でも、俺としては攻略組の中での優劣はあってなかったようなもんだと思ってる。」

 

「そりゃ攻略組に入ってからの時間だったり、そもそもの戦闘経験だったりにおいて差はあったけど、実際の戦闘になったら大して気にならなかったしな。」

 

 

和人の言葉に頷く者が点々と。

 

それはほとんどが攻略組にいた者達である事を、和人は理解していた。

 

 

「…俺の功績はせいぜい、ダメージディーラーとしてタンクが作ってくれた隙をついてダメージを与えてた事くらいだ。」

 

 

その功績が、とてつもなく大きかった事も、その場にいる全員が理解していた。

 

彼がLAを取り続けられた理由。

 

それは彼がずっと、攻略組の中で最も危険な仕事を請け負い続けていたからに他ならない。

 

 

「俺の攻撃は、タンク隊の皆がいないと与えられないものばかりだった。俺の攻撃だけじゃなく、ダメージディーラー全員の攻撃がないとボスは決して倒せなかった。そもそも、武器のメンテやアイテムの売買をしてくれる奴が居なきゃ、戦いに行くことすら出来なかった。憲兵がいなくて圏内が荒れてると、俺達は攻略に気が気じゃなかったかもしれない。」

 

「この中で…この中にいる全員が自分の持ち場を持ち、その仕事をこなしたからこそ、勝ち得た勝利だ。…本当に、そう思う。」

 

 

和人は、言葉を紡ぐ。

 

かつて、《あの時》。

薄暗い巨大な部屋の中、1人の英雄を失った攻略組の前で、悪を演じた時のように。

 

だが、その顔に浮かぶのは無理に作った不敵な笑みではない。

 

何か憑き物が晴れたような、清々しい笑顔。

 

屈託のないその笑みにつられ、和真、隼人、そして明日奈も自然と笑みを浮かべた。

 

 

「悲しい事も、辛い時も沢山…本当に沢山あったけど…こうして、また皆と一緒に、笑い合えて、道を歩める時が来たことを、本当に嬉しく思う。」

 

 

 

 

「ありがとう。…これからも、よろしく。」

 

 

 

(和真)と似たような締めになってしまい、和人は少ししまったという顔を作る。

 

…が。

 

 

…パチパチパチ

 

 

和真と明日奈。

 

2人の拍手を皮切りに。

 

 

パチパチパチパチ!

 

 

満面の笑みの木綿季と里香、直葉に珪子が音量を上げ、

 

 

パチ、パチ、パチ…

 

 

隼人と詩乃が控えめな拍手で同調。

 

その拍手は段々、段々と音量を上げ、最終的にその場にいる全員を巻き込んだ大合奏となる。

 

和人は少しばかり頬を染めて、もう一度頭を下げた。

 

それと同時に、もう一段階音量が上がった。

 

 

「おっしゃお前ら!キリト胴上げすんぞ!!」

 

「お、いいねクライン!兄貴を胴上げだテメーら!!気合い入れろ!!!」

 

「「「おぉぉ!!!!」」」

 

「は、はぁ!?」

 

「エギルさん、大丈夫です?」

 

「店の中壊さねーなら、好きにしてくれて構わねーさ。」

 

 

遼太郎の悪ノリ、和真と野郎共の同調。

 

隼人の確認に、ギルバートが不敵な笑みと共に肩を竦めた。

 

男性陣のノリに、女性陣が苦笑を漏らす。

 

和人の手を和真と遼太郎が引っ張り、壇上から引きずり下ろす。

そのまま和人は全身を様々な人物から掴まれ、横抱きに抱き抱えられた。

 

 

「お前らァ、天井低いから投げすぎんなよ!」

 

「「「「おぉ!!!」」」」

 

「低くて悪かったな。」

 

「え、ちょ、待って!マジでやんの!?あ、ちょ…」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「わーっしょい!わーっしょい!!わーっしょい!!!わーっしょい!!!!」」」」」」」

 

「ああああああああぁぁぁ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「なーにやってんだか…」

 

「ふふふ…男の子っていいわね…」

 

「ずるーい!ボクもやる!!」

 

「あ、こら木綿季!もう…」

 

「あははは…」

 

「……」

 

 

暗い闇を街灯が照らす時間の中、商店街の一角にあるバーで歓声と悲鳴が木霊する。

 

その発生源である男性陣の集団を見ながら、女性陣は穏やかな笑みを浮かべてその様子を見送っていた。

 

 

歓声と悲鳴は、黒髪の青年が20回宙に舞うまで、続いていたというーー。





次回、最終回。

乞うご期待してくれたら嬉しいです笑
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。