時間は同時進行作戦の開始直後にまで遡る。
京都府蛇腔市にある蛇腔総合病院。その創始者にして現理事長である殻木 球大は「個性に根ざした地域医療」を掲げ、慈善事業にも精を出す人格者として人々から慕われていた。
しかし、そんな彼の正体はかの巨悪AFOの協力者にして脳無の開発者、『ドクター』と呼ばれるヴィランであった。彼は個性医療の第一人者という立場を利用して患者たちを物色し、彼らの命も身体も個性すらもAFOに捧げてきたのである。
しかし、そんな悪事も終わりを告げた。公安や警察はホークスからの情報と徹底的な調査の末に殻木がヴィランであることを特定。病院の地下こそが巨悪の重要拠点であり、死柄木も潜伏しているという情報も得た。
そのための同時進行作戦だ。群訝山荘でエッジショット率いるヒーローたちが集結していたように、この蛇腔総合病院でもエンデヴァー率いるヒーローたちが奇襲を開始していた。
「はあァァ!セッせせ狭ァアア!」
「九州にも現れた言葉を喋る脳無か!」
「諸君、この先にコレが多数!ミルコが危ない、急ぐぞ!」
誰よりも先んじてミルコが地下深部へ突撃。他ヒーローも彼女に続こうとするが、敵の脳無も大量に湧いて出て来る。地下通路を走るNo.6ヒーローのクラストの前にも超強力な個体、ハイエンド脳無が現れ、その行く手を阻んでいた。
「ぐ!ぬぅ…!」
クラストの個性は『
クラストは作り出した盾を相手に突き刺すが全く効果がない。むしろ彼はハイエンド脳無の圧倒的なパワーに押し返されてしまっていた。
「何をしているクラスト!」
「エンデヴァー!再生能力が厄介なんだ!」
「大丈夫です、俺が消します。…効果ありです」
苦戦するクラストだったが、そこに雑魚脳無たちを排除したエンデヴァーら主力部隊が追いついた。その中の1人であるイレイザーヘッドが即座に『抹消』を発動。ハイエンド脳無の個性を消してみせたのだった。
「助かる!うむ、ここだッ!」
「よし、行くぞ!」
個性を消された脳無は一瞬混乱する。その隙にクラストは盾を相手の頭部に突き刺した。弱点である脳を破壊されたハイエンド脳無はビクビクと痙攣しながら崩れ落ち、完全に機能を停止。ヒーローたちは地下奥に向けて走り出した。
「アア…キ…イイ…」
「通路の奥から更に一体出現!白い脳無だ!」
「まだ居たか、量産型の雑魚め!速攻で撃破するぞ!」
再び脳無が現れた。女性型の白い脳無が呻き声を上げながらこちらへフラフラと歩いてきている。白脳無は下位個体であり、黒脳無ほどの戦闘力はない。ヒーローたちはつい先ほども病院地上に現れた大量の白色脳無や色付きの中位脳無を撃破してきたところであった。
当然、彼らは新たに現れたこの白脳無も即座に頭部を破壊。脳は潰れた。完全な撃破だ。そのまま深部へ急ごうとするヒーローたちだったが、暗いはずの通路が赤くボンヤリと明るくなったことに気が付いた。
「敵のメインラボはすぐそこだ。早くミルコの元に…なんだ?明かり?」
「ほ、炎だ!潰したはずの頭が燃えている!クソ、現れやがった!」
炎の熱を感じた。同時に恐ろしいほどの悪寒が背筋を走る。ヒーローたちはソレを見ると息を呑み、顔色は蒼白になった。
『不死鳥』個性の脳無。その懸念は元からあった。藤原妹紅の拉致と個性の複製技術、この二点を繋げれば誰であってもその危機感を持つに至るはずである。
だが、覚悟はしていたとはいえ出てきてほしくない恐怖の存在であった。それがついに現れてしまったのだ。
「アア…、キ、気モチ、イイ…」
「なんて熱だ…!近づけん!」
蘇生した白脳無は快感に満ちた声を呟きながら起き上がった。緊急起動の直後で頭と身体はまだ鈍いが、そんな今の段階でも身体から溢れ漏れる炎の熱は凄まじい。しかも、炎の出力は徐々に強くなってきており、脳を破壊し続けることで無力化を試みようとするヒーローたちは近づくことも出来なくなってしまっていた。
「俺が撃ち抜く。む…!?」
「完全炎熱耐性…!『不死鳥』で確定か!全員、色に騙されるなよ!コイツは黒以上に危険な脳無だ!イレイザー!」
「駄目です、効いていない!『干渉個性無効』持ちだ!」
エンデヴァーが指示を出す前から相澤は『抹消』を発動していた。だが、この脳無に効果は表れない。当然と言わんばかりの凶悪個性のコンボ。正しく悪意の塊であった。
「おお、この反応は…動いてくれたか!『
地下の最深部で死柄木の起動装置パネルを操作していたドクター殻木は、そのモニターの反応を見ると藁にも縋る思いで声を上げた。
“フェネクス脳無”。藤原妹紅の個性因子『不死鳥』を所持した脳無は、人々を無慈悲に焼き殺す
そして殻木もこの脳無を特段に溺愛しており、まだ複製が追いついていない貴重な個性『干渉個性無効』を与えている。これを所持している個体は
「シ、死ネ」
「させねーヨ!『音波消火』!」
フェネクス脳無は無造作に炎を放つ。巻き込まれたならば焼死確定。そんな炎を狭い通路の中で放ってきた。
しかし、プレゼント・マイクの『ヴォイス』が悪魔の炎を打ち消した。30~60
加えて、その音に指向性を持たせてフェネクス脳無の頭部破壊を狙ったが…硬い。ハイエンド脳無の肉体強度は並大抵ではなく、剥き出しの脳は揺れもしなかった。
「オ、面白イ。ヒ、ヒ、火ノ鳥。ヒーロー共ヲ、ヤ、焼キ殺セ」
「マジィ!火の鳥は流石に消しきれねェぞ!」
フェネクス脳無が邪悪な笑みを浮かべた。今度は単なる炎の放出ではない。鳥型に固められた炎の塊。妹紅の必殺技の象徴といえる『火の鳥』だった。
これにマイクは表情を歪ませる。火の鳥は炎だけでなく物理的な性質を併せ持つ。すると燃焼に対する音波消火の効果が途端に落ちてしまうのだ。
そうしている間に火の鳥が放たれてしまった。灼熱が込められた複数の火の鳥が通路いっぱいに満ちて向かってくる。それはまるで炎の壁のようだった。
「俺が防ごう!『シールド』!…なにッ!?」
「ク、クラスト!」
「チッ、藤原に近い火力をも持ち合わせているのか!赫灼――む」
横道に身を隠そうが火の鳥たちは分散して追尾して来るだろう。逃げ場はない。ここで防がなければ全員焼け死ぬ。クラストは全力で『シールド』を作成すると、それを相撲の突っ張りのように前へ前へと押し出していき何枚にも重ねていく。
炎の壁 対 シールドの壁。だが、一瞬の均衡もなくクラストの『シールド』は破られてしまった。妹紅並みの火力を有すると判断したエンデヴァーは全力の『プロミネンスバーン』で炎を押し返そうとするが、そこに現れたヒーローがそれを止めた。
「ご安心を。ここは僕が」
「ヒ、火の鳥ガ消えタ…?身体モ前に引ッ張ラレていル…?」
スペースヒーロー13号が皆の前に立つ。そして人差し指を前に突き出しながら個性『ブラックホール』を発動した。指一本。その場にいるプロヒーロー全員が死を覚悟した火の鳥という脅威は、たったそれだけの動作で漆黒の闇の中へと消えていく。
そして謎の吸引力を身体に感じたフェネクス脳無は、足先を床に食い込ませて耐えながらもその状況を分析していた。
「幾重にも重ねた俺の『シールド』がまさかこれほど容易く破られるとは…!すまない、助かったぞ13号!」
「いえいえ、お構いなく。どうやら僕の個性は有効のようです。ここは僕が相手をしますので、皆さんはお急ぎを。今の炎で酸素が焼けているかもしれませんのでお気をつけください」
熱くサムズアップを決めるクラストに、13号は涼し気な声で返す。彼女は今の吸引で個性の効果を確かめていたのだ。
『ブラックホール』の吸引力とは即ち重力だ。物体だけでなく光さえも抜け出せないほどの強い重力で全てを引きずり込む。相手が『干渉個性無効』を持っていようが『ブラックホール』で影響を及ぼしている対象は重力そのものなのだから無効化される訳がない。これを無効化するには物体を重力の鎖から解き放つ麗日の『
そこで念のため13号は先ほどの攻防で『ブラックホール』が本当に効くか確かめ、効果が有ることを確認。そして最も相性の良い相手は自分だと皆にそう伝えた。
「一人でやるつもりか!?俺たちも何人か残って…」
「いいえ、ロックロック。我々が居ても13号の邪魔にしかなりません。ここはそういう戦場になる」
ロックロックの『施錠』は生物以外なら触れた物をその場に固定できる個性だ。生物には効かないが脳無は死体人形である。『施錠』が効くからこそ脳無が大量に現れるであろう病院突入チームに選ばれたといっても過言ではない。
故に、その個性で13号の援護をすると言うロックロックだったが、それを相澤が止めた。フェネクス脳無は妹紅に近い火力と蘇生速度を持っている。個性の熟練度までそのまま複製できるのか、それとも繰り返し破壊・蘇生することで個性の限界突破を図ったのか。それらは不明だが、いずれにしても誰が残ったところで13号の足手まといにしかならないという現実がそこにはあった。
「他の場所で『不死鳥』脳無の出現情報は上がっていませんし、ミルコからの報告も『二倍』脳無は一体だけだったというものでした。やはり個性の複製が可能だといっても、そう簡単なものではないのでしょう」
「ああ、そして虎の子の『不死鳥』脳無を出してきたということは敵もそれだけ追い詰められているということだ。なればこそ、この機は逃せん。行くぞ!」
エンデヴァーはヒーローたちに号令を出した。だが、相手は炎を纏いながら狭い通路内で進行を阻んでいる。このままでは通り抜けることなど到底できない。フェネクス脳無は薄い笑みを浮かべた。
「先に行けルとデモ?」
「ええ、もちろん」
「ッ!ヒ、火ノ鳥!」
13号が返答ついでに
フェネクス脳無は迎撃に火の鳥を放つ。しかし、如何に強力な炎であろうが漆黒の渦は全てを吸い込む。放った火の鳥は全て消え去ってしまった。
(マタ消されタ…。後退して回避…ダメ、スグ後ろにはドクターのラボがあル。そ、ソレなら…横に回避するシカない)
「壁に穴を空けて横に逃げたぞ!今のうちに走り抜けろ!」
フェネクス脳無は後退できない。脳無には殻木や死柄木たちに危害を加えることのできない命令が刷り込まれているため、彼らを巻き込むような近場での戦闘は炎に制限をかけられてしまうのだ。
そこでフェネクス脳無は地下通路の壁を破壊して回避した。ヒーローたちを奥に通してしまうが、この宇宙服のヒーローの存在は他のヒーロー全員を合算してもなお危険だ。ここで己が相手をしなければ全てを壊されてしまう。ラボにはハイエンド脳無がまだ何体か残っている筈だと考えたフェネクス脳無は、他のヒーローを無視してでも13号を始末することを決断した。
「チ、地下通路を動キ回り…ヤツを背後から焼き殺ス…」
「逃しませんよ」
「ほゥ…」
壁を破壊して逃げ回りながらも死角からの奇襲を狙うフェネクス脳無だったが、13号は正確に追いかけてきていた。全てを塵にする彼女にとっても通路の壁など無きに等しく、更にコスチュームに搭載している高精度電磁波レーダーや赤外線センサーなどなど。本来は崩落した建物内に閉じ込められた人を捜索するための人命救助装置なのだが、13号はこれらを戦闘に転用することで地下通路内を動き回る相手を追尾していた。
これはフェネクス脳無にとって不利な状況である。敵の位置を地下通路の壁越しでも把握できる13号とは反対に、フェネクス脳無は彼女の位置が音でしか分からない。奇襲を狙うつもりだったはずが、このままでは逆に奇襲をかけられてしまう可能性が出てきてしまった。
「場所を変えマショ」
そのことに気付いたフェネクス脳無は戦場を広い地下空間へと変えた。病院下にある広大な地下駐車場である。ここならドクター殻木のメインラボから程よく離れているため存分に炎を放つことができる。本来なら病院地上に出て人々を人質にしながら13号の相手をしたかったが、彼女が己を無視してラボの破壊に向かってしまったら意味がない。
そこでフェネクス脳無はラボから適度な距離のある地下駐車場を決戦の場に選んだ。そして耳を澄ます。13号が誘いに乗ってくれたのならソレで良し。万が一、彼女が追跡を中断してメインラボに向かうのなら音を頼りに背後から襲撃して焼き殺す。そういう思惑だった。
そして、その狙い通り13号は追いかけてきた。ヒーローである彼女にとっての最悪は地上でフェネクス脳無の炎が猛威を振るうこと。それだけは避けなければならない。
すなわち『13号のラボ破壊を阻止したいフェネクス脳無』と『フェネクス脳無の大量殺人を阻止したい13号』。思惑が合致した彼女たちの一騎打ちは正に必然であった。
そうして、彼女たちが地下駐車場に戦場を移すと攻防は更に激しいものとなった。
フェネクス脳無の遠距離攻撃は炎や火の鳥だけではない。腕や足を振るうことで床や天井、柱などのコンクリート片を削り飛ばして攻撃できるのだ。その礫の威力は駐車されている車両を何台も貫通させるほど。一つ一つが徹甲弾並みの威力である。それらが腕を一回振るうだけで音速以上の速さで大小無数に飛んでくるという地獄の戦場。しかし、フェネクス脳無にとっても13号にとってもこの程度は小手調べに過ぎなかった。
「風による吸イ込みじゃない…。身体そのものガ引っ張らレルこの負荷の感ジ…。マるで重力…ウン、強い重力で引き摺り込ンで塵に変エている。指…イヤ、掌から発動デキるタイプ。威力モ強弱をつけられる。ト、とても怖い個性…。でも距離による力の減衰ガ著しイみたい」
「…学習が速いですね」
13号は自身に向かってくる瓦礫を全て吸い込んだ。光すらも吸い込む13号の『ブラックホール』。音速を超えるスピードに反応できずとも最初から構えてさえいれば飛んでくる礫ごときは物の数にも入らなかった。
だが、フェネクス脳無は『ブラックホール』を冷静に観察し、その特性を徐々に暴きはじめていた。これは重力による吸引力だ。それも地球の標準重力を遥かに上回る強力な重力で吸い込んでいる。だが、同時に弱点も見つけた。距離である。音速の瓦礫を簡単に吸い込めるほどの力だというのに、自身は少し踏ん張るだけで耐えることが出来ていた。また、13号に近付くほどに吸引力を強く感じ、離れていくほど弱くなる。そういう感覚をフェネクス脳無は鋭敏に感じ取っていた。
事実、本物の重力にもそういう特性がある。たとえば地表から高度400km上空での地球の重力は地表の90%程度となり、高度2000kmでは地表の半分程度の重力となってしまう。そしてフェネクス脳無の予想通り、13号の『ブラックホール』はその距離による力の減衰が非常に大きいという弱点があった。
「だが、それでモ強い。ト、とても強いヒーローだ。気モチよくなってきた…。アナタのランキング順位は…?」
「ランク外ですよ、少なくとも戦闘においては。僕は戦いが苦手でしたから」
「…?」
『ブラックホール』の間合いを見極めたフェネクス脳無が13号に語りかけた。
この脳無、素体となった者は戦闘と殺人に快感を覚える女ヴィランであり、その罪の重さからタルタロスに収監されていた死刑囚であった。死刑執行後に殻木はこの死体を献体として調達、そしてハイエンド脳無に改造したのである。
自我を持つハイエンドは生前の性格を多少残しており、フェネクス脳無となった今でも彼女は殺人を好み、そして強者との戦闘を心から欲していた。そこに現れた13号は最高の相手といえよう。だが、事前にインプットされていたヒーローの情報に彼女の記録は無かった。これほどの強個性だというのに変である。少なくともランキングのトップ10、いやトップ3に入っていてもおかしくないレベルの戦闘力だ。
そう思って尋ねてみると、意外にも彼女は答えてくれた。しかし、その回答にフェネクス脳無は首を傾げる。この個性で戦いが苦手だとは到底理解できなかった。
「僕はUSJ事件の時からずっと後悔していました。救助ヒーローであることにかまけて戦闘で後れを取り、その結果このような事態にまで繋がってしまった。僕の弱さがどれほどの悲劇を生んでしまったのか…。僕は自分が許せない。本当の覚悟を持たないまま生徒たちに教えを説いていた自分自身が…!」
13号の言葉には怒りが滲んでいた。しかし、それは敵への怒りではなく己自身に向けたものだった。
USJ事件。あの時、死柄木や黒霧を捕縛できるチャンスは幾つもあった。だが、自分の実力不足で彼らを逃してしまった。そして、妹紅を殺し続けたあの脳無…。
自分がもっと強ければ黒霧に負けることはなかった。あの脳無も手足を『ブラックホール』で吸い込み、『超再生』しようとも吸い込み続けることで無力化の維持は可能だったはずだ。去り際の死柄木もスナイプに手足を撃ち抜かれてボロボロの状態だったというのに、『ブラックホール』の出力が弱すぎて捕らえることができなかった。
もちろん、あの場で死柄木たちを捕えていたとしてもAFOの『泥ワープ』で脱走されてしまっていただろう。しかし、その段階で『泥ワープ』の存在を把握できていれば、後の大きなアドバンテージになっていたはず。何より妹紅は殺されずに済み、『不死鳥』の蘇生能力が露見せずに合宿で拉致されることもなかったかもしれない。神野区で大勢の人が死なずに済んだかもしれない。このフェネクス脳無も生まれなかったかもしれない。
あの時、あの時、あの時――。後悔ばかりが後に募る。だというのに妹紅は13号を責めなかった。A組の生徒たちも相澤もオールマイトも彼女を責めるどころかむしろ同情的で、敗北を咎める者など居なかった。咎める者が居たとするならば、それはただ一人。スペースヒーロー13号という己自身。
あの無様な敗北を赦してはならない。赦されてはならない。それから13号は鍛えた。血反吐を吐くような特訓を繰り返し、肉体も個性もこの短期間で一から鍛え直した。
後は覚悟のみ。人命救助の為に使ってきたこの個性を、相手を破壊するために使用する。そうして病院突入時、13号は地上に現れた雑魚脳無たちを『ブラックホール』で次々に吸い込んで塵に変えていった。その苛烈で容赦のない戦闘はあのエンデヴァーすらも目を見張るほど。だが、そのように戦う姿は悲愴感に酷く満ちており、雄英の同僚である相澤やマイクらは戦いを共にすることでしか彼女を支えてやれないほどだった。
「あァ、ヒーロー…。そんなノどうでもいい、アナタたちが焼ケ死んでくれたら私はもッと気持ちよくなれるッ」
しかし、13号の覚悟も苦しみもフェネクス脳無には全く理解できない。戦いとは殺し殺されるもの。殺せば勝利、死ねば敗北である。そこに覚悟だの何だのは介在しないのだ。
だから、フェネクス脳無は殺すことが好きだった。これ以上に単純明快なものはない。弱者も良いが、特に強者を殺す瞬間が堪らなく快感だ。脳無に改造される前の、女ヴィランとして生きていた頃からそうだった。捕まり死刑を執行されて負けてしまったことだけが気がかりだったが、幸運にも彼女には『脳無』という次が残されていた。
そうして彼女はハイエンド脳無へと改造され、更には複製された『不死鳥』を得たことで彼女は死体人形でありながら真の不死に至った。正に僥倖である。“不死”故に敗北は存在しない。あとは殺して殺して殺し続けて、勝ち続けるのみである。それが今から楽しみで仕方なかった。
「…その個性は、『不死鳥』はとても優しい個性なんですよ。人々を守り、心と身体を温める為の個性。決して悪意を持つ存在が好き勝手扱って良いものではない。ましてや快楽殺人の為になど…!」
そんなフェネクス脳無に対して、13号は静かな声で語る。彼女は守らなければならないのだ。悪意の炎によって生じる被害から人々を。そして、複製された『不死鳥』を知って責任を感じ、きっと深く哀しみ苦しんでしまうであろう妹紅を。
『不死鳥』が悪用されることは避けなければならない。見舞われる被害は未然に防がなければならない。故に、ここで決着をつける。
「彼女の個性で人を殺めることは僕が絶対に許さない!覚悟しろ、脳無!」
それがヒーローとして、教師として。果たさなければならない13号の使命である。
フェネクス脳無
元はウーマンちゃんと呼ばれていたハイエンド個体だったが、このSSでは妹紅の個性因子から複製された『不死鳥』が入れられており「フェネクスちゃん」と改名された。破壊・蘇生実験を何度も繰り返すことで火力を強化。製造時は他のハイエンド同様に黒脳無だったが初回の蘇生によってアルビノ化した。色以外は原作ウーマンちゃんと同じ姿形。
個性は『不死鳥』と『干渉個性無効』の二つのみ。逆に原作で所持していた『液体化』や『炸裂』は持っていない。というか
相澤が『抹消』持ちであること知っていたら奥に通すなんてせず、真っ先に殺していただろう。しかし、『抹消』が効かなかったせいで脅威ではないと勝手に判断してしまい、13号との戦闘を優先してしまった。まぁ、万が一にでも13号を通してしまっていたら施設も死柄木も全部吸引されて終わってしまうので、その判断も仕方ないと言えば仕方ない。
13号先生
原作では黒霧に負けて「戦闘経験は一般ヒーローに比べ半歩劣る」とまで言われていた人。自身でも「戦闘は苦手」と原作内で明言している。しかし、『ブラックホール』という個性が弱いハズがなく、むしろ作中屈指の超ブッ壊れ個性である。
このSSでは(妹紅のせいで)覚悟完了!しており、USJ事件後は一から戦闘技術を鍛え直している。病院突入時には地上に湧いてきた大量の脳無を個性で
また、必要であれば
天敵は麗日の『