もこたんのヒーローアカデミア   作:ウォールナッツ

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もこたんと雄英体育祭 第一種目 後編

『ついに始まったぜ、雄英体育祭1年部門!実況はボイスヒーロー、プレゼント・マイク!解説は抹消ヒーロー、イレイザーヘッドの2人でお伝えしていくぜ!解説のミイラマン、アーユーレディ!?』

 

『無理矢理呼びやがって…』

 

 陽気な声のプレゼント・マイクに対して、相澤の機嫌は悪い。相澤はメディアへの露出を好まず、更にヴィラン襲撃時の怪我も治りきっていない。そんな状況で解説役を押し付けられたのだから、堪ったモノでは無いだろう。しかし、なんだかんだで結局は引き受けるのだから、存外に面倒見の良い男である。

 

『さぁ!スタートダッシュで先頭に立ったのはA組の轟だ!更に氷結攻撃で後続を妨害!しかし、実力者たちは見事に躱して轟を追いかける!そして更に後方からは!同じくA組の藤原が空を飛んで猛追しているーッ!』

 

 スタートの直後、持ち前の身体能力で先頭に飛び出した轟が後続に氷結攻撃を仕掛ける。多くの生徒が轟の攻撃に拘束されるも、そこにA組やB組など、ヒーロー科生徒の姿はない。彼等は轟の攻撃を見事に回避していた。

 一方、妹紅は氷で拘束された生徒を尻目に、悠々と空を飛んでいた。炎の翼が羽ばたく度に速度はグングンと上がり、次々に生徒たちを抜き去っていく。

 

『スタート前、藤原が最後尾から更に離れて陣取っていたのは、あの炎の翼を作り出すスペースを確保する為だな。アイツはこのまま一気にゴールまで行くつもりだろう』

 

 相澤の解説に合わせ、スタジアムに設置されている巨大ディスプレイに妹紅の姿がアップで映し出されている。各所に設置されたカメラロボはAIで制御されており、どんな素早い目標も正確に捉え、ブレ一つない。このカメラで撮られた映像はテレビ放送局とも共有しているので、妹紅の姿は日本中に映し出されていることだろう。

 

 しばらくして、先頭グループへと場面は変わる。そこには、生徒たちの前に立ち塞がるロボットたちが映し出されていた。ビルかと見紛う程の巨大ロボットが目の前に幾つも立ち並び、その威圧感は凄まじい。この巨大ロボットは雄英のヒーロー科入試で0ポイントヴィランとして猛威を振るった仮想ヴィランロボットである。

 

『さぁ、いきなり障害物だ!まずは手始め、第一関門!ロボ・インフェルノ!仮想ヴィランロボットがお相手だ!ん?何々どうした?え!?飛行個性持ちはメッチャ有利じゃん、不平等じゃねぇか、だって!?そこんとこ、どうなんだイレイザーヘッド!』

 

 巨大といえどもロボットたちは地に足を付けて移動している。そうなると、飛行個性やそれに準じる個性が有利になってしまうのは自明の理だ。個性によって不平等が生じてしまうのは、競技として如何なものか、とプレゼント・マイクはわざとらしい声で疑問を呈す。

 

『競技が個性有りの時点で平等もクソもないだろ。それに、この障害物競走はヒーローに必要不可欠な機動力や突破力を試すモノ。飛行個性を筆頭に、高い機動能力を持った個性が有利になるのは当然の話だ』

 

 雄英体育祭の各競技にはそれぞれコンセプトがある。相澤の言う通り、この第一種目は生徒たちの機動力や突破力、更には柔軟性を測る為の競技であった。ヒーローが現場に遅れて到着して“ヴィランを取り逃がしました”や“救助が間に合いませんでした”じゃ話にならない。ヒーローは常に速さが求められているのである。

 と、そこまで言ったところで、相澤は“しかし”、と言葉を続ける。

 

『しかし、だ。せっかくの障害物競走。飛行個性持ちにも競技を楽しんでもらおうじゃないか』

 

『YEAHHH!仲間外れは可哀想だもんな!それに俺は言ったはずだぜ、第一関門は“ロボ・インフェルノ”!ロボット地獄は地上だけじゃあ無い!空にも広がっている!上を見ろォ!』

 

 実況の声に観客だけでなく、生徒たちも空を見た。上空には直径2メートルほどの大型ドローンが、いくつも浮遊している。更にコース外からは大量のドローンが次々に現れてきている。ドローンは瞬く間に上空に展開され、その数は優に100台を超えていた。

 

『全国初公開!雄英特製ドローンヴィランだ!性能はかなり抑えて作ってあるから落ち着いて対処しろよ!』

 

 ドローンヴィランは近くの生徒を攻撃するようにプログラミングされているようで、ドローン特有の柔軟な動きで体当たりを仕掛ける。空を飛べば、その分だけドローンとの距離は近くなり、複数のドローンから集中攻撃をされやすくなるだろう。だが、プレゼント・マイクが言ったとおり性能は低いらしく、その動きは遅い。1体だけならば、ヒーロー科以外の生徒でも余裕で回避出来るスピードだ。頭上からの奇襲には注意が必要だが、飛行音で容易に接近を察する事が出来るだろう。

 しかしながら、空を飛ぶ妹紅からしてみれば鬱陶しい事この上ない。何せ、ドローンヴィランの大きさは直径2メートルの大型。それが上空をウジャウジャと飛び交っているのだ。空の交通渋滞と言った有様だった。

 そんな渋滞事情を解決すべく、妹紅は右手に炎を灯す。

 

「邪魔」

 

 右手を振るう。紅蓮の炎が扇状に放たれ、ドローンを次々に飲み込んでいく。直後、焼かれたドローンは爆発音と共に墜ちていった。

 妹紅が炎を放ったと同時に、地上では轟が2台の巨大ロボを氷結させて、その動きを止めていた。轟は作り上げた隙間を走り抜け、第一関門を走破する。チャンスとばかりに他の生徒たちが殺到するが、それを阻むように凍った巨大ロボが倒れた。轟の計算通りだった。

 

『轟!攻略と妨害を一度に!巨大ロボを撃破し突破ァー!そして藤原も上空のドローンヴィランを焼き払い突破したぁー!シヴィー!すげぇな!コイツら、アレだな、もうなんか…ズリィな!』

 

 第一関門を突破して、轟の背を追う妹紅。撃破したドローンが、直下の生徒たちに目がけて墜ちていく様子が見えたが、スッと目をそらした。大変申し訳ない気持ちで一杯だが、怪我をしても事故なので恨まないで欲しい、と妹紅は心の中で弁解しながら合掌する。

 

「火のついたドローンが降ってくるぞ!皆、避けろォ!」

 

「お、おい!誰か巨大ロボの下敷きになったぞ!」

 

「死んだんじゃねえか!?死ぬのか、この体育祭!?」

 

 一方、墜ちてくるドローンの残骸と巨大ロボの倒壊によって足止めされた生徒たちは、悲鳴と共に逃げ惑い、死の恐怖におののく。初っぱなからスリル満点の雄英体育祭に、全国のよい子たちも目を見開いてテレビに釘付けだ。雄英進学希望者に至っては白目を剥いている。

 

「死ぬかー!轟のヤロウ、ワザと倒れるタイミングで!俺じゃなかったら死んでたぞ!」

 

「A組のヤロウは本当嫌な奴ばかりだな…!俺じゃなかったら死んでたぞ!」

 

 倒壊した巨大ロボの残骸から切島が、そしてヒーロー科B組の鉄哲が現れる。『硬化』の個性を持つ切島と『スティール』の個性を持つ鉄哲。共に身体を硬くする個性である。ただでさえ個性が地味な事を気にしている切島は、個性の性質が被っている事にショックを受けながらも走り出すのだった。

 

『A組の切島、そしてB組の鉄哲も潰されていたー!ウケル!さぁ地上ではロボットが暴れ、上空からは焼けたドローンが降り注ぐ!正に地獄絵図!』

 

 ゴチャゴチャになった第一関門にまたも爆発音が響き渡る。爆豪が個性『爆破』の反動により宙を飛び、巨大ロボを飛び越えた。瀬呂と常闇も、爆豪のルートに便乗して、巨大ロボの攻略にかかる。

 

『A組、爆豪!ドローンを避けながら巨大ロボの頭上を行ったー!更に瀬呂と常闇も便乗して後を追う!』

 

『藤原が半数以上のドローンを壊していったからな。空が手薄になった隙を狙ったのだろう』

 

 

 ポツポツと第一関門の突破者が出る中、先頭グループでは妹紅が轟を追い抜いてトップに躍り出ていた。

 轟には氷を重ねる移動法があり、50メートルを4秒台で走りきる速度(時速45キロ程度)を出す事が出来るが、これは短距離専用の移動法である。長時間使用すると身体に霜が降りて身体機能が落ちる為、長距離走では普通に走らなければならない。

 一方、妹紅の鳥を模した炎翼は、水平飛翔時で時速60キロ程度のスピードを安定して得られる。カラスなどとほぼ同等のスピードである。しかし、最速の鳥は時速150キロを超えている為、翼の形や動かし方を研究すれば、更なるスピードを得られるのではないか?とは慧音の談である。

 

 

 

『さぁ先頭は先程入れ替わって1位藤原、2位に轟だ!2人とも既に第二関門にさしかかっているぞ!第二関門は落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!ザ・フォーール!!』

 

 ステージは底が見えぬほど深く掘られ、柱状に残った地面には太いロープが張られている。第二関門は、さながら綱渡りといった所であろうか。

 妹紅は、飛べる自分には関係無いとばかりに第二関門の上空に差しかかる。しかし、侵入と同時に、妹紅は突然の強風に煽られてバランスを崩してしまった。

 

(か、風!?スタジアムの外とはいえ、なんでいきなり強風が、それもこんなメチャクチャな方向から吹き荒れるなんて!?)

 

 鳥の翼を模した妹紅の炎翼は、風の影響を受けやすい。前後左右上下から不規則に吹き荒れる突風に、妹紅は前進もままならず、その場で堪え忍ぶ。轟に追いつかれるかもしれないが、下手に強行突破すれば、風に流されてコースアウトしてしまいかねない。そうなれば失格。第一種目で敗退だ。無茶は出来なかった。

 

『飛べればクリア?甘いぜ!第二関門の上空は突風が吹き荒れているぞ!上空に行けば行くほど風は強くなる仕様だ!パワーローダー特製の送風機は強力だぜ!』

 

 空中でたたらを踏んでいた妹紅の耳に、プレゼント・マイクの実況が届く。各障害物は、その難易度に応じて実況席から仕掛けが明かされることになっている。だが、それはギミックの説明であって、攻略法では無いことに注意しなければならない。

 しかし、今の妹紅にとっては、ありがたい情報であることに変わりは無い。

 

(なら簡単!下を飛べば良い!)

 

 妹紅は翼を折りたたみ、急降下する。地上が近づくにつれて、風はおさまっていき、ロープの張られた地上付近は無風に近い。降下した勢いのまま炎翼を広げると、重力落下によって生まれたエネルギーが水平移動のスピードに変わる。まるでツバメのように、妹紅は地上近くを滑るように飛んだ。このまま第二関門をクリアするつもりであった。

 しかし、そんな妹紅を許さぬように目の前に氷の壁が出現する。避けようとする妹紅だが、左右、上下、更に後方にまでも氷は現れ、そして隙間無く囲まれた。無論、轟の妨害である。妹紅が風に煽られている間に轟は距離を詰めていた。

 

(轟の氷結か。風の弱い地上付近に行けば行くほど、ライバルから妨害されやすいって訳ね。風があっても、もうちょっと高い所を飛べば良かったかな?だけど、この程度の氷なら問題ない!)

 

 避けられないというのならば、突破すればいい。妹紅はグッと右の拳を握りしめて炎を込める。その拳を突き出すように振るうと、前方の一点を目がけて炎が火柱となり撃ち出された。氷壁には大きな穴が空き、妹紅はその穴からスルリと抜け出す。

 

(チッ、氷牢を抜けられたか。あんなモンで拘束出来るなんて期待はしてなかったが、足止めにもならねぇか。オールマイトの戦闘訓練ン時の火力がマックスじゃねぇとは思っていたが、ここまでの威力が…いや、今のが全力とも限らねぇ。更に火力があがると思うべきだな)

 

 轟は心中で舌打ちをする。走りながらの個性使用だった為、最大威力の氷結が出せなかったという理由はある。しかし、数秒もかからず突破されるとは思っていなかった。妹紅と脳無の戦いを見ていなかった轟では、妹紅の最大火力の予想をつける事が出来ない。轟は元から高かった妹紅への警戒を更に高めるのだった。

 

『轟の氷を難なく溶かして藤原が第二関門を突破ァ!轟がその後を追うが、このスピード差では厳しいか!?グングン引き離されてんぞ!だが、注意するのは前だけじゃねぇ!爆豪が距離を縮めてきている!』

 

 轟の走るスピードでは妹紅に追いつく事が出来ない。個性無しでの人間の限界スピードは時速37キロほど。長距離マラソンでは時速20キロほどが限界だ。たとえ、轟がトップアスリート並の身体能力を持っていたとしても、妹紅には追いつく事が出来ない。

 1位が難しいのならば2位を狙う。轟はそう判断した。届かぬ1位に固執して更に順位を落とす事の方が愚かである。心の奥にはアツい魂を持つが、思考は常に冷静沈着な少年だ。その判断は速かった。

 轟は渡りきったロープを氷結させて後続の妨害を行う。コレでしばらくはこのロープを渡る事は出来ないだろうが、『爆破』の反動で空中を移動する爆豪は関係無く突き進んでくる。熾烈な2位争いが始まらんとしていた。

 

『先頭は藤原が独走!離された轟、爆豪と続いて、下は団子状態!上位何名が通過するかは公表してねえから、安心せずに突き進めよ!そして早くも藤原が最終関門にさしかかる!かくしてその正体は…ここが戦場!怒りのアフガンだ!地面は地雷原!上空には対空兵器が待ち受けているぞ!』

 

 2位以下を大きく引き離して妹紅が最終関門に突入した。突入して数秒後、ジェット音が聞こえたかと思うと、その音が徐々に近づいてくる。何事かと思って見てみると、なんと小型のミサイルが妹紅目がけて迫ってきていた。

 

「ミッ、ミサイル!?」

 

『HAHAHA!初めて藤原の驚いた表情を見た気がするぜ!』

 

『いや、実況しろよ。ミサイルも地雷も殺傷力は皆無に等しいが、人をブッ飛ばす程度の威力はあるから気を付けろ』

 

 目を剥いて驚いた妹紅を見て、プレゼント・マイクが笑う。続く相澤の言では、ミサイルは直撃を受けたとしても怪我をするほどのものでは無いらしい。とはいえ、当たりたいと思う者は誰もいないだろう。妹紅も迫るミサイルを避けた。ミサイルはジェット推進であるが、メチャクチャ速いという訳では無い。威力だけでなくスピードも競技用に抑えられているのだろう。

 一方、プレゼント・マイクと相澤は、地雷やミサイルについてのギミック説明を行っている。

 

『地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になっているぞ!目と足を酷使しろ!地雷もミサイルも派手な音と見た目だから、失禁必至だぜ!』

 

『それは人によるだろ。それと、あの追尾ミサイルは空中に3秒以上いた人間をターゲットにして発射される。飛行系の個性だけでなく、跳躍系や浮遊系の個性持ちは注意しろ』

 

 相澤の『あの追尾ミサイル』という不穏な単語に、妹紅は先程回避したミサイルの行方を目で追った。言葉通りと言うべきか、ミサイルは大きな弧を描いて再び妹紅に向かってきていた。

 

『空を飛んだせいでミサイルに狙われても、地上に降りたら追尾機能は解除されるぜ!ただし、また飛んだら再度追尾されるから気を付けろよ!飛べる奴は上空か地上か、状況に応じてルートを選べ!』

 

『普通に地上を走る連中はミサイルに狙われないから安心しろ。ただし、追尾機能の切れたミサイルが降ってくる可能性は常に頭に入れておけ。足下の地雷、頭上のミサイル、ライバルの妨害。五感を研ぎ澄ましてクリアを目指せ』

 

 先程避けたミサイルだけでは無い。既にいくつものミサイルが発射されており、妹紅をターゲットに様々な方角から飛んできている。1人で最終関門の上空にいた為、全てのミサイルのターゲットが妹紅の向けられていたのだった。

 

『独走がアダとなったか藤原!?地上に降りなければミサイルの集中砲火が待っているぞ!さぁどう攻略する!?…降りる気配無し!そのまま上空ルートで行くつもりだー!』

 

『四方八方から迫る小型ミサイル。そのスピードは第一関門のドローンと比べれば段違いだ。あれだけの数のミサイルが直撃すれば、コース外に弾き出される可能性も高い。とはいえ…』

 

 相澤やプレゼント・マイク、観客に至るまで、皆の注目が妹紅に集まる。

 そんな妹紅は両手に炎を灯して、自分の身体を抱きしめるように両腕を交差させていた。観客の多くが防御を固めるのだと予想して見守る。しかし、第一関門と第二関門で妹紅の実力を見抜いた一部のプロヒーローは、彼女の行動を正確に予想し、そして期待していた。それは迎撃である。

 彼等の予想通り、妹紅は交差させた腕を一気に振り払って、豪炎を周囲に放出した。全てのミサイルは炎に飲み込まれ、直後に爆発する。観客席からは予想外の行動に歓声が上がり、一部のプロヒーローはその火力に感嘆の声を上げる。

 

『シヴィーッ!爆炎がミサイルを薙ぎ払う!飛んできたミサイルを全て撃破だーッ!まるでシューティングゲームのボムだな!』

 

『藤原にとっちゃミサイルもドローンも変わりはないか。だが、空を飛んでいる限りミサイルは順次発射されるぞ』

 

 既にミサイルの次弾発射の準備は出来ている。ミサイルが爆発した際に出た黒煙が晴れ、空を飛ぶ妹紅の姿が確認され次第、再び発射されるだろう。

 しかし、黒煙の中から現れたのは妹紅では無く、何羽もの炎の鳥だった。炎で作られた鳥たちはミサイル発射装置にそれぞれ突き進む。そして炎の鳥が接触した瞬間、爆炎が発射装置を飲み込んだ。内部で準備されていたミサイルにも引火したらしく、爆発音が連続して鳴り響いている。こうなってしまっては最早使い物にならない。全てのミサイル発射装置がスクラップになってしまった瞬間である。

 

『あッ!おまッ!マジか!?アイツ、ミサイルの発射装置を潰しやがった!イレイザーお前、自分とこの生徒にどういう教育してんだ!?最終関門の障害物、地雷だけになっちまったじゃねーか!』

 

『知らん。コースから外れてない以上、ルール違反ではない。文句は“それ以外は何でもあり”って説明したミッドナイトに言えよ』

 

 派手に破壊されたギミックを見て、プレゼント・マイクは嘆く。相澤は無情にも言い放つが、その言い分は正しい。ならば、とプレゼント・マイクは審判のミッドナイトに文句をつける。

 

『ミッドナイトォ!どうすンだよ、これじゃ――ヒィッ!ナンデモナイデス!』

 

『弱すぎだろ』

 

 プレゼント・マイクが文句を言おうとしたところで、ミッドナイトは憤怒の表情で鞭を大きく鳴らした。未婚の女性がするべきでない鬼の形相に、プレゼント・マイクは怯える。相澤はそんな彼を見て、呆れた声を出していた。

 

『って、ンなこと言ってる間に藤原が最終関門を悠々と突破ァ!やはり飛行能力を持った個性は強かった!最後尾からのスタートにも拘わらず序盤からトップを独走!汗一つかかずに余裕の表情でスタジアムに還って来た少女の名前はーッ!藤原妹紅!』

 

 しょうも無い茶番を繰り広げている内に、妹紅は最終関門を突破。後続の轟と爆豪は最終関門にすら到着していない。完全な独走だった。

 飛行しながらゴールゲートをくぐり抜ける。妹紅は大歓声の中、ゴールした。

 

 

 藤原妹紅 第一種目 障害物競走 1位




こうなってしまった。障害物の上空強化です。考えに考えたけど、私の頭ではこれ以上は浮かびませんでした。それでも独走という有様。話を考えるというのは難しいですね。


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