もこたんのヒーローアカデミア   作:ウォールナッツ

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もこたんと雄英体育祭 最終種目 5

『そこで俺は言ってやったワケ。母ちゃんのミートローフかよってね!HAHAHA!』

 

『うるせぇ』

 

 決勝までの空き時間を楽しく過ごしてもらおう、という粋な計らいで唐突に始まったプレゼント・マイクのトークショーは、スタジアム内だけでなくテレビ放送を通じて全国に届けられていた。すべる事も多い彼のトークなのだが、意外とウケは良い。すべり芸というヤツだろうか。

 とはいえ、隣で馬鹿話を聞かされる相澤にとっては迷惑極まりない話だ。明け方まで体育祭の準備を行っていた身としては、数分の間だけでも寝ておきたかった。

 

『いいじゃねぇか、時間があるんだからよ。ん?なになに、どうした?』

 

 そんな話をしていると、観客席の警備にあたっていた1人の若いヒーローが困り顔で近づいてきた。そして、プレゼント・マイクに何かしらを耳打ちすると、1枚の紙を彼に手渡す。どうやら手紙のようだ。折りたたまれた紙を開いて、中を読むとプレゼント・マイクはニヤリと笑った。

 

『ここでリスナーからお便りが届いたぜ!Yokosooo(ヨーコソー)!』

 

『うるせぇ。っていうか、何で体育祭の実況にお便りが届くんだ…』

 

 その手紙はプレゼント・マイクへのお便りだったようだ。ラジオ番組でもないのに届けられたお便りに、相澤は呆れきった声で応えると、手紙を持って来た若いヒーローはペコペコと頭を下げた。

 彼の話を聞くと、どうやらプレゼント・マイクの熱烈なファンに頼まれたらしい。実況席付近は関係者以外立ち入り禁止であるので、そのファンは近くで警備していた彼を頼ったのだろう。彼も警備中であるので最初は断ったのだが、とんでもなく篤実に頼んでくるモノだから断り切れなかったそうだ。空いた警備場所には知り合いのヒーローが代わりに入ってくれているらしいが、任せ続ける訳にはいかないので彼はすぐに戻っていった。

 

『さぁ、早速読むぜ。「もしも、轟焦凍くんと藤原妹紅ちゃんが全力で戦っていたら、どっちが勝っていたと思いますか?教えて下さい!」だってよ!アイツら騎馬戦の時にド派手なバトルを交わしていたからな!これは興味ある奴も多いんじゃねぇか!?ヘイ、担任のイレイザーヘッド!お前はどう思う?』

 

 お便りの中身は、“この2人が戦ったら、どっちが強い?”という、ありがちな質問だ。最終種目に歩を進めた16人だけで考えても様々な組み合わせがある。だが、多くの観客が最も期待したけども実現しなかった対戦カードは、轟焦凍 対 藤原妹紅。これではないだろうか。

 プレゼント・マイクが彼等の実力を最も知っているであろう担任の相澤に問いかけると、彼は溜息を吐きながらも応えてくれた。

 

『…全力同士の戦いであれば、藤原が勝つ可能性の方が高い。炎の威力もそうだが、何より制空権の有無は余りにも大きい。だが、アイツらがスタジアム(ここ)で戦うと、ほとんど全員が死ぬぞ』

 

『は?』

 

 突然、“死ぬ”と言われて困惑するプレゼント・マイクだが、相澤は構わず続ける。

 

『あの2人が全力(・・)で戦うと、スタジアムごと巻き込まれて観客のほとんどが死ぬ。だからアイツらが戦う場合、お互いに手加減しながらの戦いにならざるをえない。となると、重要になってくるのは個性の制御能力だ。これは轟の方が優れている。それを考えると、勝率は半々。つまり、分からん。以上』

 

 総力戦であれば、妹紅が勝つと言う相澤。しかし、それは試合ではなくガチの戦闘を行えば、という話だ。体育祭の試合形式での戦いであれば、勝負は分からないという結論にプレゼント・マイクは唸る。

 

『Umm…実際に試合してみねぇと分かんねーって事か。白黒つかない答えでスマナイが、そういう事だぜリスナー!っとまぁ、ンな話していたらソロソロ決勝戦の時間だな!ンン゛!あ~、あ~。良し!』

 

 チラリと時間を確認したプレゼント・マイクが明るく声を上げた。軽く喉を整えると声を張り上げる。

 

『さぁ、雄英体育祭もいよいよラスト!雄英1年の頂点がここで決まる!決勝戦!爆豪勝己対藤原妹紅!!』

 

 名前を呼ばれ登場する爆豪と妹紅。爆豪は怒りと興奮で口元を歪ませているが、妹紅はいつもの無表情のままだ。2人の温度差にもかかわらず、スタジアムの観客たちのボルテージはドンドン高まっていく。

 ステージ上で相対する2人。攻撃の余波を警戒してか、セメントスやミッドナイトもステージから距離をおいている。無論、万が一の際にはすぐにでも介入が出来る位置だ。

 

『準備はいいかァ!?レディー…、スタート!!』

 

「死ねェッ!!」

 

 先手を取ったのは爆豪。試合前にしっかりとウォームアップを済ませてきた彼は、開始早々に両手を妹紅に向けて最大威力の爆撃を放った。

 彼の個性『爆破』の威力は凄まじい。最大威力ともなれば、麗日の瓦礫流星群すら片手で処理出来る程だ。それを両手で放つという事は、単純に計算すれば2倍の威力を有しているという事でもあった。

 

『いきなり爆豪がブッ放したーッ!藤原はどうなった!?まさか場外に吹っ飛んじまったのかッ!?爆煙で何も見えねぇ!』

 

「チッ!」

 

 黒煙が上がり、爆発で削られたセメントがパラパラと音を立てて落ちてくる。普通ならば、決着が付いてもおかしくない一撃。しかし、爆豪は手応えの無さに大きな舌打ちを鳴らす。直撃しなかった。ならば追撃を与えたい所ではあるが、最大威力の爆破によって今は両手を痛めている。煙で妹紅の姿が見えない以上、無駄撃ちは出来るだけ避けたかった。

 その直後、黒煙から炎翼を生やした妹紅が飛び出した。翼を大きく羽ばたかせて上空を目指す妹紅。爆発音で鼓膜を損傷したのか、耳からは再生の炎が溢れていた。しかし、それ以外にダメージはほとんど無い。

 

 そもそも“爆発”とは、気体の急速な熱膨張である。炎や熱に完全耐性を持つ妹紅にとって、爆豪の『爆破』の脅威は衝撃波(ショックウェーブ)爆風(ブラストウェーブ)のみ。つまり妹紅が爆豪に負けるパターンは、衝撃波で脳を揺さぶられて気絶するか、爆風で場外に押し出されるか、の2つである。

 故に、妹紅は試合が始まるや否や、一羽の火の鳥を作り出して、その背に隠れた。爆豪がいきなり爆撃してきても、火の鳥が身代わりとなってダメージは軽減出来る。もしも、爆豪が様子見するようであれば火の鳥をけしかけて、その間に炎翼で上空を目指す予定だった。

 

『藤原!生還ーッ!悠々と空を飛んでいる!』

 

『炎の鳥を盾代わりにして、爆発から身を守ったか。そして、上空をとった。これで藤原はかなり有利になったな』

 

 相澤の言う通り、妹紅は圧倒的優位に立った。近中距離を得意とする個性の爆豪に対し、妹紅は全距離に対応出来る個性である。当然、妹紅は遠距離攻撃を仕掛けるつもりだ。

 3階の観客席すらも見下ろす高度まで飛行すると、妹紅はそこで止まった。ここまで距離があれば、爆豪の最大威力の爆発さえも届かないだろう。早速、『火の鳥-鳳翼天翔-』を唱え、4羽の火の鳥を作り出す。全長1メートル程の火の鳥たちが優雅に空を舞う姿に、観客席から感嘆の声が上がった。

 

「クソがッ!空くらい俺だって飛べンだよ!白髪女ァ!」

 

(飛ぶ?違うでしょ。それはただ跳んでいるだけ)

 

 爆豪が叫ぶと、爆発を起こしてその反動で宙に浮いた。手の痛みを我慢しながら、何発もの爆発の反動で妹紅へと一直線に突き進む。『空中決戦だ!』と観客たちが騒ぎ立てるが、妹紅にそんなつもりは一切無かった。冷静な思考の下、4羽全ての火の鳥を爆豪の迎撃に向かわせる。

 爆豪は向かってくる火の鳥たちを爆破で吹き飛ばすが、妹紅の炎を込められた火の鳥たちはそう簡単には破壊されない。常に異なる方向から同時に襲いかかってくる火の鳥に、爆豪は両手を使って迎撃するしか無い。しかし、そうなると肝心の高度が維持出来ず、彼は地面へと落ちていくしか無かった。

 爆豪は何度も跳び上がるが、その度に火の鳥に叩き落とされている。それでも彼は諦めずに空を目指し続けた。

 

『爆豪、再び跳んだ!だが、同じ事の繰り返しだぞ!自棄になったか!?』

 

『確かに爆豪はかなり厳しい戦いを強いられている。しかし、捨鉢になった訳では無いだろう。…見ろ、少しずつだが爆豪の動きが良くなってきている。藤原が操る鳥の動きを読みつつあるな。この辺りの戦闘センスはピカイチだよ、アイツは』

 

 火の鳥の動きを読みながら、少しずつ高度を上げてくる爆豪。しかし、妹紅はそれを冷めた目で見ていた。妹紅が爆豪よりも優れた航空能力を持つ以上、彼が如何に火の鳥を攻略しようとも、その優位性は変わらないという事実がある。そもそも、莫大な火力を得意とする妹紅にとって相手を焼き殺さぬように加減した火の鳥など、肩慣らしにもならない。そんな小細工勝負など、妹紅の性に合わないのだ。

 

「そろそろ本気でいくか…」

 

 溜まったフラストレーションを力に変えて、妹紅は背中から炎を放った。既存の炎翼に大量の炎が注ぎ込まれていき、見る見るうちに炎翼が大きくなっていく。体操服が全て焼け飛び、インナーとスパッツだけになってしまったが、そんな事を気にも止めずに炎を込めていく。

 

『炎の翼が巨大化!なんてデカさだ!?全長40…いや50メートルはあるぞ!』

 

『大きさだけじゃない、とんでもない熱が込められている。アイツ、これで攻撃する訳じゃないだろうな…?人間なら触れただけで黒炭に変わるぞ…』

 

 妹紅本人が小さく見えるほどの炎翼。それに秘められた熱量を見抜いた相澤はいつでも『抹消』を発動出来るように身構えた。不測の事態に備えて、セメントスやミッドナイトが審判として待機しているのだが、彼等の個性ではこの豪炎を静める事は難しい。万が一の際には相澤の個性が頼りだった。

 

 

「クソ白髪女!全力のテメェをブッ殺して!俺が1番だ!」

 

 爆豪は不敵な笑みと共に、再び跳んだ。初撃の爆破で負った手の痛みも治まってきており、ますます機敏になった動きを見せながら妹紅へと迫る。

 炎への恐怖は無い。ただ、勝利への執念だけが彼の心の中で燃え盛っていた。

 

「知っているか、爆豪」

 

「あ゛!?」

 

 そんな折、妹紅が爆豪に話しかけた。試合中とは思えないほど落ち着いた妹紅の声とは裏腹に、爆豪はドスが効いている。

 

「不死鳥はその羽に慈しみを湛えて、(そら)を翔るそうだ」

 

「知るか!死ねッ!」

 

 妹紅の話を一蹴する爆豪。どうでも良い話に耳を傾けるだけ無駄とばかりに切り捨てた。もちろん、妹紅も彼のまともな返答など期待していない。ただ、気が向いたから声をかけたに過ぎなかった。

 

「これが私の慈悲だ。『フェニックスの羽』」

 

 ――妹紅は、全力で爆豪と戦い、圧倒的な強さを見せつけて勝利する腹積りであった。だが、単純に全力の炎を爆豪に向けて放ってしまうと、彼は焼け死んでしまうだろう。それではいけない。相手が爆豪だろうが、凶悪なヴィランであろうが、ヒーローは敵を殺さずに捕えなければいけないのだ。

 故に妹紅は炎ではなく、熱で爆豪を倒す事にした。相手に火傷や怪我を負わせる事無く、優しく、慈悲を持って相手の心をへし折る妹紅の必殺技。それが『フェニックスの羽』である。

 

 炎翼が大きく羽ばたくと、数え切れないほど大量の炎の羽がハラハラと舞い落ちた。羽ばたく度に大量の羽は舞い散り、眼下の爆豪に迫る。

 

(炎の羽だぁ?ンなもん、吹き飛ばせばいいだけだろうが!)

 

 爆豪は上空に片手を向けると『爆破』で炎の羽を吹き飛ばした。しかし、次から次へと降り注ぐ炎の羽に加え、火の鳥たちが襲いかかってくる。火の鳥に気をとられると炎の羽が着々と迫り、炎の羽を爆破するとその隙に火の鳥に襲われるという悪循環。

 爆豪は妹紅に近づくどころか、再び地に落とされてしまった。

 

「ハァハァ、クソ鳥女がァ…!」

 

 爆豪の息が荒い。汗も全身から滝のように流していた。当然、『爆破』の威力も高まっているのだが、妹紅は最大威力の爆破ですら届かない位置にいる。

 跳べず、届かず。最早、詰みと言っても過言では無い状況であった。

 

「なんて熱だ…これで学生だと?信じられん…」

 

「観客席ですら真夏日みたいな暑さなんだから、試合ステージはサウナ状態…いや、それ以上の暑さだぞ」

 

 ステージから離れた観客ですら額に汗を浮かべるほどの熱。爆豪は高温の空間の中に閉じ込められている状況にある。その中で、彼は地上で火の鳥を躱しながら、降り注ぐ炎の羽を爆破で吹き飛ばし続けていた。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」

 

 爆豪の息が酷く荒い。爆豪を囲む環境は高温だけでは無い。妹紅の炎、そして己の『爆破』によって空気中の酸素が大量に消費された状況下で動き続けているのだ。当然、身体は酸欠状態に陥っていた。

 

「……」

 

「ハァッ、ハァッ…見下しやがってッ!ハァッ、ハァッ…ナメてんじゃねーぞ、クソがッ…、クソがッ…!」

 

 そんな爆豪の様子を見つめる妹紅に一切の油断は無い。だが、彼には妹紅の瞳に侮りの色が見えた。“口ほどにも無い、ホラ吹き、口先だけ”。意識が朦朧とし始めて、そんな言葉も幻聴として聞こえてくる。

 

「くっくくく、ハァー、ハァー…、上等ォ…!上等じゃねぇかあああ!死ねぇッ!!徹甲弾(A・P・ショット)!!」

 

「ッ!火の鳥!」

 

 爆豪は顔に狂気染みた笑みを浮かべると、両腕を空に向けた。右掌の上に左手を筒のようにして重ねた不思議な構え。妹紅は彼の怒気に反応すると、咄嗟に火の鳥と炎翼を動かした。

 直後、大きな爆発音と共に巨大な火柱が上がる。そして火柱は一瞬で妹紅を飲み込んだ。

 

『天を貫くような爆撃が炸裂ーッ!なんだ今の威力は!?』

 

『爆発を集中させた一撃…アイツの限界を遙かに超える威力でそれをやりやがった。だが、素手で大砲を撃つようなものだ。加減を間違えたら手がミンチになってもおかしくない技だぞ。なんてヤツだ…』

 

 爆発を一点に集中させる事で、貫通力と射程距離を上げた彼の必殺技、『徹甲弾(A・P・ショット)』。彼は限界を遙かに超える威力でその必殺技を撃った。とんでもない破壊力を秘めた一撃であったが、当然ながらその代償も大きい。そもそも、この必殺技はコスチュームの装備が必須の技であり、素手で放つモノではないのだ。

 

「ぐぅぅ…!ハァッ、ハァッ…!」

 

 我慢強い爆豪が、両手の激痛に悶え苦しんでいた。何とか指は繋がっているが、所々に裂傷や火傷が出来ており、血も滴っている。余りにも痛々しい光景に観客席からは悲鳴が上がる。

 

「だがぁ…ハァッ、ハァッ…どう…だ…クソ白髪女ぁ…!ハァッ、ハァッ…!」

 

 モクモクとあがる黒煙を見上げる爆豪。炎の羽が止んだ事で、爆豪は妹紅の撃破を期待した。

 しかし、彼の淡い期待は打ち砕かれてしまう。炎翼の羽ばたきで黒煙が散りゆくと、妹紅がその姿を現した。妹紅の白い肌には少しの黒煤も着いていない。全くの無傷であった。

 

『ふ、藤原!無傷!全く意に介していないーッ!』

 

『飛ばしていた火の鳥たちを爆破の射線に割り込ませて威力を軽減させた上で、自身を包むように巨大な炎翼を折り畳んだ。距離があったせいもあるだろうな、爆豪の攻撃はあの巨大な炎翼に阻まれて藤原に届かなかった、か』

 

 妹紅の全力が込められた炎翼には相応の防御力も宿っている。爆豪の決死の爆撃は射線に割り込んだ火の鳥たちを全滅させたものの、防御の為に畳まれた炎翼を貫く事は出来なかった。

 

「…ッ!」

 

 爆豪はギリギリと歯を鳴らしながら、射殺さんばかりの視線で妹紅を睨む。しかし、身体へのダメージは大きく、立っているのがやっとの状況だ。頭痛や吐き気も著しい。

 

「…少し驚いた。今のを試合が始まった瞬間にされていたら、負けていたかもな。さて、じゃあまた行くぞ。フェニックスの――ミッドナイト先生?」

 

 爆豪に引導を渡すべく、妹紅は再び必殺技を放つために炎翼を構える。しかし、突如としてミッドナイトがステージに上がった事で、それは中断された。ミッドナイトは妹紅に片手を向けて制しながら、爆豪の様子を窺う。

 

(私が隣に立っているのに気付けない程の意識レベルの低下。それに、この身体の震え方は筋肉痙攣。眼球震盪もある。顔は蒼白なのに唇が青紫色…明らかなチアノーゼ。それにさっきまで流れるように汗をかいていたのに、今はまったく汗が出ていない。熱中症に脱水症、それに酸素欠乏症の合併症状。両手の裂傷、火傷も酷い。とてもじゃないけど試合続行は無理だわ…)

 

「爆豪くん戦闘不能!勝負あり!」

 

 ミッドナイトが右手を挙げて宣言した。ミッドナイトの見立ての通り、爆豪の身体はボロボロだった。むしろ、この状態で未だ立っていられる爆豪の精神力とタフネスさが化物染みているのだ。

 

「ざけ…ん…ハァッ、ハァッ…、まだ……」

 

 観客が大歓声を上げた事で爆豪は初めて己の敗北に気付いた。それでもなお戦わんとする爆豪に対して、ミッドナイトは個性の『眠り香』を発動させる。途端に白目を剥いて膝から崩れ落ちる爆豪。倒れる彼をミッドナイトは優しく受け止めて、担架ロボに乗せた。そのままリカバリーガールの下へと緊急搬送されていく。

 

『決勝戦、ここに決着ーッ!勝者は藤原!そして、以上を持って全ての競技が終了した!今年度の雄英体育祭1年の部、優勝は――A組、藤原妹紅!』

 

 この瞬間、不死鳥が雄英1年生の頂に立った。

 




必殺技『フェニックスの羽』
 元ネタは東方深秘録の炎符「フェニックスの羽」。幾つもの炎の羽を直線的に飛ばす技です。
 このSSでは、翼から抜け落ちた大量の羽がユラユラと舞い落ちる感じをイメージで採用。むしろ、東方永夜抄での妹紅のスペルカード、不滅「フェニックスの尾」の方がイメージとしては似ている気がします。
 炎の羽を撒き散らし、相手を熱中症と脱水症と酸欠にして倒す必殺技です。確かに相手に傷を負わせませんが、最も苦痛を与える技でもあります。これを慈悲と言っちゃうもこたんは正直ヤバい。でも焼き殺すよりは有情だからね、仕方無いね。

次、VS爆豪
 全力は出すが、殺さないように手加減しないといけない、という矛盾したコンセプトで考えた決勝戦。こんなコンセプトの戦いなんてもう二度と書きたくないと思うほど、書きにくい試合でした。
 爆豪の個性では、もこたんを倒す事はほぼ不可能です。試合開始直後に限界突破のAPショットを撃てば、ワンチャンというレベルですね。

次、もしも轟(体温調整可能ver.)と戦っていたら
 相澤先生が言った通りです。周りと対戦相手への被害を考えずに全力で戦えば、余裕でもこたんが勝ちます。しかし、試合形式で戦えば分かりません。強力な炎技は当たると死に至るような攻撃が多いので、相当な縛りが入ってしまうのです。数時間単位の長期戦もあり得る対戦カードとなっております。見たいけど、絶対書きたくは無いです。(笑)
 因みに、もしも緑谷とあたっていたら、もこたんは負けていました。初手、足100%ダッシュ後、100%デコピンで場外に叩き出されます。空に逃げる時間もなく瞬殺です。業火を向けようが火の鳥で防御しようが、100%デコピンか100%パンチで一緒に吹き飛ばされます。極めた増強型というのは本当に強いですね。もこたん勝てない。

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