【とある魔術の禁書目録】朝起きたら人生勝ち組エリートコースだった俺が通りますよ 作:白滝
頭を空っぽにして、ぼけーっとお読み下さい。
感想・評価など頂けたら嬉しいです。
朝起きた。
「人生勝ち組エリートコースのご気分はどうだい、ご主人様?」
部屋のドアを開け、鞠亜ちゃんからのモーニングコールが聞こえてきた。いつものように俺を不快にさせる目覚ましも、乱暴に布団を引っぺがすご近所迷惑な幼馴染もいない。
「む、うぅん……?おはよう、鞠亜ちゃん。あれ、いつの間に寝てたんだ、俺?」
昨日の寝る前の記憶が、よく覚えてねーな。
あれ?何してたんだっけ?
っつか、私服のまま寝てたんかい!?ヤベ、風呂入ってねえ!?
「鞠亜ちゃん、今何時!?」
「六時半だぞ。さぁ、とっとと風呂に入って朝食でも食べようじゃないか」
言いながら、鞠亜ちゃんはバスタオルと手拭と制服を手渡してくれた。どうやら、風呂も沸かしておいてくれたらしい。
「ありがと!色々とごめんね」
何から何まで世話になって申し訳ないな。風呂から出たら、朝食の準備くらい手伝おうか?
なんて事を考えながら、俺は掛布団を捲ってベッドから立ち上がった。
と、そこで。
鞠亜ちゃんの表情がギクリと固まった。
へ?どうしたん?
俺の顔に何かついてるん?
いや、顔ってよりも、その視線は俺の下半身に向けられているような……?
鞠亜ちゃんの視線を追って、俺も視線を自分の下半身に落とす。
すると、
パンツ一丁の俺の股間付近に、円形の染みが広がっていた。
っていうか、パンツの上からちょっと白くなってるのがうっすら見えた。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやそれは誤解だよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!違うからァ!!これは夢精とかじゃなくて全然そんなアレじゃなくてごく一般的ななんかもうアレなんですいやー女の子は知らないかもしれないけど男の子には色々とあるんですよーあはははははははははははははははははははははははははははははは!!」
ちょっと涙が出ながら鞠亜ちゃんを必死に説得!!
対して、返ってきた答えは……
「ま、まさか自分の精液の付着した衣類を私に洗濯させるプレイとは……ッッ!?ここまで私のプライドを容赦なく傷つけられるご主人様は、数世紀ぶりの天才なのでは……ッッ!?」
「やめてえええええええええええええええええええええええええええええ!!変な誤解を重ねないでえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
「はぁ……」
「統括理事会になったという事実に、気疲れする気持ちも分かります。ですが、池村様がそこまで気負う必要はありませんよ。あくまで、これまで通り学生生活を送って頂ければ問題ありません」
高級車の後部座席に座って溜息をつく俺に、混晶さん(香水の甘い香りが漂う)がそんな心配をかけてくれる。
いや、心遣いは嬉しいんだけど、俺の疲れはそんな事じゃなくて、朝の蜜蜂柄エロメイドとの一悶着だった訳だが。
「改めて考えると、クラスのみんなには何て説明すればいいんだろ?」
「一応は昨晩、私の方から校長の方に面会して池村様の処遇について説明しましたので、教員の対応は問題ないと思います」
「問題はクラスの奴だよなー……どのタイミングで切り出そ?」
自分から言うのは気恥ずかしいなぁ。ここは日本人らしく謙虚に、気づいてくれオーラを発散しながら受け身の姿勢を貫くべきだろうか?
あ、今日は俺が奢ってやろうか?とか、最近ちょっとインテリ趣味を始めたいなーとか遠回りなアピールしたりしてさ。
と、
「着きましたね」
学校の正門に車が駐車した。
うおっ、登校途中の生徒たちがみんなビックリしてる……
うわー、ちょっと緊張してきた。変な汗掻いてきた……
そんな車に、校門で待っていた自称俺の幼馴染が近づいてきた。バタン!と勢いよく車のドアを開ける。
「おっはよー、和清君!!ここからは私が護衛の任に就きますよー!!」
「では、よろしくお願いします」
混晶さん(なんか今日はよそよそしい)はそう一礼する。
うぅ、車から降りるのやだなぁ……ちょっと学校休みたくなってきた……
「ここからのボディガードはお前か……不安だ……」
「ごちゃごちゃ言わずにさっさと来―い!!」
うっお!?
腕を思い切り引っ張られた。
道に転がり出る。
そこには、
「おお、和清!お前が統括理事会になったってマジ!?」
「ロンドネットで学校中が大騒ぎだぜ!?」
「和清君、どうやって統括理事会になったの?」
「え!?デマじゃなくて、本当に和清君が統括理事会になってたの!?」
「え?なになに、お前って統括理事会になったアイツと知り合いなの!?」
「ああ!俺のクラスの奴だぜ!おーい、和清ぉー!!」
「和清君、後でご飯食べる時にお話し聞いていい?」
「っつか和清ぉ!今日はお前の奢りで遊び行くぞ!」
「いや、クラスで打ち上げっしょー!俺、焼き肉屋に予約取るわ!!」
音の洪水だった。
クラスの奴もクラスじゃない奴も、同じ学年の奴も下級生たちも、男子も女子も、みんな俺に群がってくる。
待ち構えてたのかよ、お前ら……
みんなの質問攻めを、「ああ」やら「また後でな」やら「俺もよく分からん」とか言って適当にやり過ごす。
「お前らあああああああ!!和清君への求婚はまずアタシを通してかたにしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
本当に俺を護衛してくれるのか甚だ疑問だったが、一応はコイツも俺の前で人垣を掻き分けながら教室まで先導してくれた。相変わらず頭のおかしい事を叫んでるけど、みんなと違ってコイツだけはいつも通りだ。
教室に入る。
ここでも、どわっと声のさざ波がやってきた。
うへー……疲れるわ……
いや、覚悟してた事なんだけど、なんか想像していた勝ち組コースと印象が違うなぁ……
「和清ぉ!一体何がどうなってんだよ!?」
「和清君、給料とかって貰えてるの?」
「ロンドネットじゃお前の噂で溢れ返ってるぜ!」
「『冷徹眼鏡の俺様キャラ』って都市伝説も出てきたぐらだし!ってか、俺が流したし」
「和清ぉ。金あんだろー、昼飯おごってくれよぉ!!」
ガンガン耳鳴りするぐらいの質問の嵐だ。
やめてくれー……
と、そんな俺の頭の中に、
『静かにしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!』
という、どうみても静かにする気のない甲高い声が響いた。
痛ってー……頭がキンキンする……
って事は、だ。
「ちょっとみんな!池村君が困ってるじゃない。そんな囲んだりせずに、席にぐらいに座らせてあげなよ!」
このクラスの委員長にして
クラスのみんなも頭を抱えてフラフラしている。
「ちぇー、和清、後で話聞かせろよー」
「和清君、私にも後で色々と話聞かせてねー」
そう言って、クラスのみんなが各々の席に戻っていく。
俺は自分の席にようやく腰を下ろす。右隣が委員長の席だ。
「ありがとう、委員長」
「いや、池村君も反省しなきゃダメでしょ!」
アイタッ!?
チョップされたァ!?
「クラスのみんなに一言連絡くれれば、こんな事にはならなかったんだよ?ロンドネットの最新ニュースで池村君の事が記事になってて、それでみんなは初めて知ったんだから。驚いて色々と聞きたがるのも無理ないと思わない?」
「あい、すみませぬ……」
うぅ……委員長が相手だと、のらりくらりな俺も形無しだなー……
ちょっとションボリしちゃって、いつもみたいに胸をチラ見する余裕もうなじを食い入るように眺める余裕も椅子の上から絶対領域が見えるギリギリの角度まで背筋を反らす余裕もない事が非常に残念なのだが、委員長の前ではイイ子ぶりたい自分がいるので、ここは大人しく説教受けるかなぁ……
しかし、
「和清君が悪いだとォー!!いくら四葉ちゃんといえど、言っていい事と許される事があるだろー!!」
それ、どっちも許しちゃってるじゃん。
バニースーツも紙袋も被ってない制服姿の普通のJKなのに、変態イメージが先行し過ぎてるせいで、コイツを見ると女子高生のコスプレしてるみたいに見えるから不思議だ。
「またアナタか……女の子らしく、たまには大人しくしていたら?」
「何をー!!いくら四葉ちゃんが私の唯一無二の親友だからって、親しき仲にも礼儀ありってスタイルが私達の心の距離感だろー!!」
「いや、親友になった憶えはないんだけど……」
そんな冷たい事を言ってやるなよ、委員長……
コイツ、お前しか話す相手がいないんだから……うっ、パパ涙出そう……
でもまぁ、委員長がコイツを煙たがるのは当然な流れなんだよな。
コイツは放課後は慈善活動に勤しんでいるため、
っつか、それを言うなら俺もか。
なんだかいつもはクラスのみんなとは挨拶する程度だったのに、俺が会話の中心に立って話題が展開されていくのが、微妙に新鮮だ。みんなの対応も、ちょっと今までと違う気がする……
なんかみんな、俺に優し過ぎるような……?
……いや、むしろ今までと違うのは俺なのか。
バターン!!と教室のドアを開け、
「池村の話に浮足立ってんなよー、お前ら!!さーって、出席取るから席につけー」
という担任の才郷先生の号令と共に、喧騒がかき消されていつものホームルームが始まった。
ただ一人いつもとは違う、俺だけを置き去りに。
キーンコーンカーンコーン、と。
昼休憩のチャイムと同時に学生達は一気に活気つくのだ!!
が、今日に至っては皆、そのテンションが奇妙に一致していたりする。
そう、俺っす。
俺を目当てに、俺の身の上話を聞くために、クラスのみんなのみならず学校中から人がわんさか湧き出てくる訳だ。
それを見越して、
「ちょっと体調不良なんで……」
と授業を抜け出し、校庭裏の茂みに隠れて早めに弁当を広げていたのだ!!
フフフ……
俺にだってたまには頭のキレが回るのさ!!
伊達に不幸イベントをこなしてないぜ!!そりゃあ危機回避能力も身に着くもんよ!!
……まぁ、いずれは通過しなきゃあいけない事なんすけどね。俺がやってる事って、コミュ障っぽく人間関係を先送りして現実逃避してるだけだし。
まさか、毎日ここで弁当食う訳にも行かねーよな。
むああああああああああ!!
自分で言って自分で悲しくなってきた!!
「はぁ……」
何回目か分かんねー溜息が出るぜ……
「あぁ、これからどうっすかなー」
「とりあえず、今日の焼き肉会に参加してみたら?」
「のわァ!?」
ビビった!?
真後ろから、委員長の声が聞こえてきた。
振り返ると、弁当を抱えた委員長が俺の隣に腰を下ろして、その小さな弁当の風呂敷を広げ始めた。
「隣、いいよね?」
そんな風に、特に気にも止めずに俺の横で弁当を食べ始める。女の子座りである。残念ながら、絶対領域は風呂敷で隠れてしまって見えない。ちくせう!!
って、それよりも!!
「ど、どうしてここが分かったんだ?」
「え?だって
ブフッ!!と口に入っていたタコさんウインナーを噴いてしまった!!ああ、混晶さん(裸エプロン)が作ってくれた愛妻弁当がッッ!!もったいない!!
……って場合でもねーよ!!
「池村君がぼっちみたいな事してるから、優しい優しいクラスの委員長四葉さんが面倒を見にきてあげたのだー。どう、優しいでしょ、私」
「その優しさは心を抉るぜェ……」
ハートがフルボッコ!!いや、どっちかって言うと
見られたああああああああああああああ!!
ぼっち飯してる所を見られたあああああああああああああああああああああああああ!!
アカン、めっちゃ恥ずかしい……
ヤバい、どうしよ。
え!?ちょ、マジでどうすんのコレ。恥ずかしさで俺の顔が真っ赤になってるのが自分でも分かるよどうしよう!?
ふと顔を上げて校舎の三階を見たら、確かに
おぅふ……
や、やっちまったあああああああああああああ!!
大!失!態ッッ!!
「で、そんな優しい四葉さんが池村君の人生相談に乗ってあげに来たんだよん!ほら、喜びなさい」
「あばばばばばばばばばばばばばばば……」
「相変わらずふざけたリアクションをするねぇ。……でも、ようやくいつもの池村君に戻った気がするよ」
じっと委員長が俺の顔を見てきた。
うっ……
目が合った。ちょっとドキっとした。
アカン、変態ノリで照れ隠しできん!
慌てて目を逸らして弁当に視線を下ろしたけど、顔が別の意味で赤くなり始めてるッッ!?
「そ、そうか?別に俺はいつもこんなんだけど」
「いや、元気なかったよ。すごい疲れてそう。なんか飲み会から帰宅したものの睡眠時間が四時間しか取れずに再び出勤する時のサラリーマンの背中みたいな哀愁が漂ってるよ」
「さすがにそんな加齢臭が香る疲労感ではないわッッ!!」
思わずツッコミしてしまった。委員長がケラケラと笑う。
うーむ、なんか教室でガミガミ言われるいつもとなんかちょっと違うなぁ……
トゲトゲしてたツンツンな委員長でなくて、なんか、こう、ふわっとしてるっつーか、丸みがあるっつーか……
「いや、別に今の境遇が嫌って訳じゃねーんだ。統括理事会なんて勝ち組だぜ?喜ばない訳ないじゃん。でもさ、みんなの反応が急によそよそしくなった気がするんだよ……俺の顔を見てくれてるんじゃなくて、俺の『統括理事会』って名札を見て話しかけられてる気分になって」
ふーん、と委員長は空を見上げながら答えた。
ぱくぱくとミニトマトを箸で突き刺しながら、委員長は、
「でも、それでもいいんじゃないかな」
と大して考えてない様子で答えた。
「え?いや、委員長はそうかもしれないけど、俺は―――――」
「いや、人間なんて案外みんなそんなもんだよ」
委員長が購買部で入手してきた戦利品であろう『ヤシの実サイダー』を美味しそうに啜った。
汗が頬を伝って、喉仏の膨らみを超えてセーラー服の首襟に潜っていく。ぷはっと空き缶から離した唇が、太陽のおかげかキラキラと光って見えた。
「ほら、私って
「そりゃあまぁ、しょうがないんじゃね?それとこれとは話が――――」
「同じだよ」
委員長が俺の顔をじっと見つめてくる。
「だって、人間関係ってそんなもんじゃん。クラスのみんなだって、『この狭い三〇人って閉鎖環境中で、誰となら関係を築けるか』って打算しながら生きてるよ。でも、それは別に悪いって事じゃないと思うなー、私は。本音で語り合う間柄が必ずしもいいと限らないと思うの。みんな、持ちつ持たれつ。そうでしょ?」
「まぁ、そうなのかもね……」
と、俺は返答を濁してしまった。
いや、だって急にそんなシビアな現実論を持ち出されたら、反応に困るわ……
だって、それってつまり委員長だって俺と打算で関係を築いて――――――
「でも、そんな中でも理解してくれる人は必ずいると思う。だからこそ、そういう人を大切にしていくべきだと思うよ。私だって池村君が困ってたら力になりたいし、それなりに頼りになるとは思うよ?」
お?
お、おー……??
おおおおおおおおおおおお………????
あれ、ちょっと今の発言で空気が変わったような?いや、そうでもないのか……?
気のせいかな?
相変わらず、委員長は真っ直ぐに俺の目を見てくる。
し、視線を逸らせない……ッッ!?
「だから、そんな細かい事なんて気にせず、池村君はそのままの姿勢でクラスのみんなと付き合っていけばいいと思うよ。ほら、『統括理事会』って事だって、性格とか勉強とかと同じ池村君のステータスなんだからさ!むしろ誇るくらいでちょうどいいよ!堂々としてていいと思う。なんか困ったら、委員長の私に気軽に相談してくれればいいんだし」
そう早口に言って委員長は、にぱぁーっと笑った。
「そっか、そうだよな……ちょっと女々しくなってたかな、情けねえ。何がどうなろうと俺は俺だし!このままいけばいいのか」
「そうそう、それでいいんだよ。最初にも言ったけど、そのためにもみんなが開いてくれるって言ってる今日の焼き肉会に、一緒に参加しようよ!みんな教室で会議開いてたよ」
「え?あいつらマジで開いてくれてるの!?」
「うん。原谷なんかは結構気張ってて、今もいい店を探してると思う」
そうか。
なんかちょっと嬉しいな、そういうのは。
誕生日を祝われた事もない俺だけど(自称幼馴染に祝われた事あったけど、あれはもはやノーカン)、こういう風に祝われる立場ってのも幸せなのかな、と思ったりした。
「ありがとね、委員長。結構気が楽になったわ。じゃあ、また後で教室で」
「あ、ま、待って!」
ん?
呼び止められたぞ。
立ち上がろうとした俺の手を、委員長の手で引き止められてしまった。両手がきゅっと俺の右腕を握っている。
なんだなんだ?
さっきまで目を合わせてた態度とは真反対に、今度は下に顔を向けてモジモジし出したぞ?
「さ、さっきも言ったけど、本音で付き合える関係が必ずしもいいとは限らないって言ったじゃない。そうなると、さ……」
「うん?」
「い、池村君的には、恋人ってどういう立場になると思う……かな?」
告白展開キタアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
え、もうコレそうでしょ。
これは告白です。絶対に告白だ。
いや、いけるね!!これは、絶対に俺に気がある!!
間違えないよ!!
だって、このタイミングでこんなに恥ずかしがりながら『恋人』って単語を出してきたんだぜ!?普通に考えたら友達に相談すればいい恋愛相談を、俺にもちかけてきたんだぜ!!
これはきたでしょ!!
いや、もうオッケー。はいはい、お前ら落ち着けって。ちょっと冷静になれよ。
安心して、ここはこの俺に全て任せておけって。
重要なのはココですよ。こっからですよ!!
週刊誌のハーレムなエロ漫画の鈍感主人公ならともかく、男、池村和清はこんなフラグを見逃すようなヘタレな真似は絶対にしないぜー!!
世の中の漫画の鈍感ハーレム主人公共はフラグを逃して大切な青春の一ページを見逃しながら読者に嘲笑われる訳ですよ!!あーあ、もったいない!!
俺は違うね!!逃さないね!!こう見えて俺は目ざといんだぜ!!
はい、ここで決めます。決めちゃいましたー。ルート分岐が決定しましたー。
今この瞬間から、混晶さんは俺の愛人ポジで、ここからは俺が委員長と甘酸っぱい恋の青春を駆け抜ける『四葉』純愛ルートです!!
やっと俺の時代がきたあああああああああああああああああ!!
もう人間関係の悩みとかどうでもいいわ!!
あれだよ!ちょっとリアリスティックな人間関係のシリアス要素なんて、誰も望んでないんだよ!!
ここからは俺の俺による俺のためのラブコメだぜ!!
ふはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!
「ど、どうしたの池村君?」
ハッ……いかんいかん、つい舞い上がって返答より先に妄想が先走ってしまった。
そういや、まだ返事をしてなかったぜ。
よし、言おう。
なーに、心配する事はない。
今の俺を妨害する因子なんてどこにもない。
ここは校庭のグラウンド裏の茂みの影。周りには俺と委員長の他に誰もいない。
いつも通りにそこはかとなく淀みない返事をすればいいだけだ。別に緊張する事なんてないぞ。落ち着け。
いつもみたいなドジは絶対に踏まねーぞ!!
………これはいける!!
「委員長、実は俺―――――――」
「ここかァ!!和清君を拉致ったこの悪党がァぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「「へ?」」
スパッ!!と。
茂みが横真っ二つに斬られた。
水流だ。
水流が刃物のように茂みを切り裂いたのだ。
委員長が僅かに斬り飛ばされた。
見ると、バニーガールのコスプレをして紙袋を頭から被った変態(幼馴染)が、背中に巨大なタンクを背負って、ホースから圧縮した高圧水流を放っていた。
そして、
ってか、
スカートが斬れてパンツが丸見えになっていた。
き、黄色!?
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
絶叫。
委員長がスカートを両手で掴み下半身を隠しながら、校舎の方へものすごいスピードで走り去っていった。
沈黙。
変態バニースーツと目が合う。
「いや、私は和清君がいなくなったから悪党に拉致されたのかと心配になって、和清君の上履きに仕込んだGPSを使って助けにきただけだけど?」
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
フラグに向かって必死に手を伸ばしても、別のフラグがそれを邪魔するという報われる事無き無限ループに咽び泣く青年の姿が、そこにはあった。
ってか、それもまた俺だった。
Q.更新が早いですね。
A.主人公を精神的に痛めつける鬱展開が好きなので、執筆が進みました(ゲス顔)
そんな訳で、油断するとすぐに1万字を超えてしまうので、これでも少々削りました(汗)
こういうギャグ物は4000字くらいがちょうどいいのかなーとも思います。