【とある魔術の禁書目録】朝起きたら人生勝ち組エリートコースだった俺が通りますよ   作:白滝

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大分久し振りになりました。

2章を加筆修正しましたので、そちらを先にお読み下さると嬉しいです。
以前から言っていた通り、シリアス編に突入します。


第八章 親に敷かれていなかったレールに沿って生きる Mr. Inability

 誘波ちゃんとの裸エプロンプレイを堪能したかったという心残りはあるが、まぁ、俺は紳士だし、良識のある青年だし、そんな無茶苦茶な要求などせぬのだー!!

 いや、四葉ちゃんの目があるからとか、そういう理由があったとかじゃないよ!!

 あったとしても、ほんの九割くらいだよ!!

 残りの一割は、自称俺の幼馴染こと、バニーガール姿で頭から紙袋被った変態女の嫉妬が怖いからなんだけど。

 

 パン屋の外で水道管の鉄パイプに手錠をかけられて放置プレイされてた幼馴染を解放し、今晩のクラスで企画されてるすき焼き会へ向かう。

 正義の使者(笑)を自称するこの犯罪者なら、自慢の改造水圧ポンプで鉄パイプごとぶった斬るかと思ったが、本人曰はく「和清君に放置プレイをされてると思ったら、それはそれで興奮してきた」らしい。脳みそお花畑な奴だった。知ってた。

 混晶さん(俺との結婚旅行はグアム)は本当にコイツを俺のSPにしてよかったのか……?

 なんて、そんな気苦労もあった訳だが、襲撃者なんて現れるほど学園都市は治安が悪い訳じゃねーし、三人並んで無事にすき焼き屋に着いたのだった。

 一応、第七学区の地下街、その中でも、近代的なデザインが並ぶ店の中でも一際異彩を放っちゃってる系の老舗っぽい感じ?の店だ。

 店の引き戸をガラガラと開けて一歩踏み出すと、

「うおー、本日のゲストのご来店だぜー!!」

「池村ァー、おっせーよ!!早くこっちこーい!!」

「早く肉食おうぜー、肉―!!」

 と、クラスメイト達がスタンバってた。

「わ、悪ぃ、ちょっと野暮用で遅れてさ」

 と、まさか女子トイレに侵入して女子を気絶させてたなんて言える訳がないから、テキトーにはぐらかしておく。

 と、みんなが席につき、飲み物が用意され、委員長が立った。

「えー、今日は池村君の統括理事会の就任祝いという事で、同じクラスメイトとしてもささやかながら――――」

「委員長―、前置きいらねーよー!さっさと乾杯しよーぜー!」

「腹減ったー」

「うっさい、男子共!!池村君が主役でしょ!静かにして!」

「い、いや、いいよいいよ俺なんか。乾杯しよう」

 と、ついクラスメイトに気を遣ってしまった。

 ぷくーっと頬を膨らませて納得いかない様子の委員長だったが、池村君がそう言うなら……と呟き、渋々とグラスを取った。

「では、かんぱ――――」

 

 

「ご主人様の宴会はここかァーーー!!」

 

「ぶっふぉ!?」

 思わず咳き込んだ。

 え、ちょ……!?

 

 鞠亜ちゃん!!??

 

 なんで来てるの!?

 

 ってか、その蜂蜜柄みたいなメイド服で来ないでよ!!

 クラスメイト達のドン引く視線が俺に集まる。特に女子からの視線が痛い!!

 まるで、「え、池村君ってそんな趣味あったの……金で女を買うとか……」って感じの、超絶クズ扱いを受けてる雰囲気ッッ!!

 や、やめてくれー!!俺はそんな変態じゃねーって!!誤解しないでよー!!

「ちょ、なんでお前がここに来てるんじゃー!!自宅以外だと護衛の任務は私の担当だろ!!」

 と、バニー変態女が食ってかかる。

「そ、そうだよ、鞠亜ちゃん!!学校のイベントには鞠亜ちゃんは関係ないっしょ!!」

 しかし、鞠亜ちゃんは肩を上下に揺らすだけで、呼吸を整えるのに必死な感じだった。

 全速力で走って来たのだろうか?

「ご主人、様……ハァ、ハァ……早く、逃げるんだ……ハァ」

「逃げる?……なんの話?」

「いいから、早く!!」

 そう言って、俺の手を強引に引っ張って、店の入り口に連れていこうとした。

 なんだなんだ!?

 いつもニヤニヤしてる鞠亜ちゃんっぽくないぞ!?

 そう思いながらも、勝手に手を引っ張る鞠亜ちゃんによって、すき焼き会を早退させられる。

 引き戸をガラガラと開けた時だった。

 

 

 目の前に、黒服の男達が十数人構えていた。

 

 その手に、銃がある。

 

 

 

 ―――――――――――――――――は?

 

 

 思考が止まる、そんな俺に抱き付きながら、鞠亜ちゃんが店のトイレ側の細い通路へ向けて、横っ跳びに跳んだ。

 

 直後、店の中が弾幕が駆け抜ける。

 

 

 ―――――――――――――――――え?

 

 

 鞠亜ちゃんに、伏せろ、と頭を抱えられながらも、鞠亜ちゃんの脇の隙間から、クラスメイトのいる店の奥を盗み見る。

 

 クラスメイト達が、血飛沫を上げて、銃弾に貫かれていた。

 頭が弾け、胴体から鮮血が舞い、倒れた身体が障子を破りながら崩れ落ちる。

 

 

 ――――――――――――――――――なんだこれ?

 

 

 ……なんだこれ?

 

 なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?なんだこれ?

 

 

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない

 意味が分からない……

 

「へ?……え?……なにこれ……意味分かんない……」

 そう、無意識に呟いていた。

 カタカタと身体が震えていた。涙がボロボロと流れていたし、気付けば小便を漏らしていた。

 そんな俺に、

「落ち着け、まずは逃げる事が先決だ」

 そう、鞠亜ちゃんが言った。

 彼女は、傍にあった消火器を引っ掴み、玄関に投げる。

 それを、いつの間にかバニースーツに着替え直していた幼馴染が、改造水圧ポンプに接続されたホースから発射した水圧カッターで切り飛ばす。

 爆発し、粉塵が撒き散らされた。

 黒服達が動揺する声を上げた。

 この一瞬を、鞠亜ちゃんは逃さなかった。

 真っ白な粉塵の中を駆け抜け、男達に接近する。

 バキ!!、グシャ!!という骨がへし折れる歪な音が店の外から聞こえてくる。

 粉塵のせいで見えないが、鞠亜ちゃんが外で黒服の男達と戦っているのだろう。

 と、銃撃の音が響いた。

 慌てて鞠亜ちゃんが店の中へ逆戻りして逃げ込んできた。

「バトンタッチだ。私は三人殺った」

「ご苦労様です、後は私が」

 鞠亜ちゃんと入れ替わるように、バニー女が玄関へ飛び出る。

「和清君に喧嘩売るとは、いい度胸してんじゃねぇか!!言い訳はあの世で聞いてやる!!」

 改造水圧ポンプから、水圧カッターが放たれた。

 まるで『かまいたち』。

 一○メートルは超えようかという巨大なカッターが、黒服の男達の胴体を丸ごと切断した。皆殺しにする。

 

「な、なななん、これ、意味が……は?」

 

 言葉が、出てこなかった。

 自分の目の前で、何が起こってるのか分からない。

 腰が抜けて立てない俺の前で、鞠亜ちゃんが俺の手を引いて、無理矢理立たせる。

「いいから逃げるぞ、ご主人様!!」

「ちょ、ちょっと!!クラスの連中は!?」

 振り返る。

 まだ数人、生き残ってる奴らがいる。病院に連れて行かないと!!

「な、なんなのこれ……」

 そう言いながら死体の中からゆっくりと頭を上げたのは、委員長だった。

 日頃から風紀委員の訓練を受けてるから、咄嗟に遮蔽物を盾に隠れる判断ができたのだろう。

 だが、訓練と実際の事件は違う。

 クラスメイトの血飛沫で全身を真っ赤に染めながら、委員長はカタカタと震えていた。

 鞠亜ちゃんは、委員長にも声をかける。

「おい、お前も私達と来い!!」

「え!?……なっ、委員長は関係ないだろ!!」

 そう反射的に言ったが、鞠亜ちゃんは意見を譲らなかった。

 バニー女に助けを求めたが、コイツまで俺の意見を無視し、むしろ委員長を強引に引っ張ってきた。

「な、なにするの!?」

「万が一の保険だ。もし私達が全滅しても、現役の『風紀委員』のメンバーが死んだとなっちゃあ、事件は隠せなくなる。そうすれば、『表』の治安維持機関も動かざる得ない」

 鞠亜ちゃんが何を言ってるのか分からなかった。

 委員長は茫然自失として、力なくバニー女に引っ張られていく。

 俺も、鞠亜ちゃんに手を引かれて路地裏へ連れていかれる。

 店の外は、銃撃騒ぎでパニックになっていた。

「あ、警備員がここに来るまで待ってた方がいいんじゃない?」

「それまでに殺される。地下街は出入口で待ち伏せもされやすい。早めに地上へ出て、狙撃されにくい路地裏へ逃げ込むぞ」

 意味が分からない。

 本当に、意味が分からない……

 俺が襲われる理由も、鞠亜ちゃんやコイツが必死になってる理由も。

 俺だけがまるで蚊帳の外であるかのように、事態が呑み込めない……

「くっ……どこに逃げる!?私の思いつくような場所は、奴らにも押さえられているぞ!!」

「じゃあ、近くにパン屋に行きましょう!!今日、私と和清君と四葉ちゃんが偶然に立ち寄った場所です!!まさか奴らはそこまで把握できてないはずです!!」

 

 

 

 そんな訳で、誘波ちゃんのパン屋へ逃げ込んできた。

 全速力疾走。

 足の遅い俺を引っ張るように、鞠亜ちゃんに誘導されていく。

 血だらけの委員長の姿を見て、レジを打っていた誘波ちゃんの母親が卒倒した。

「な、なななななななな!?ど、どどどうしたんですか!?」

「ここに匿わせて!!お願い!!できれば店のシャッターも下ろしてもらえる?」

 鞠亜ちゃんが畳みかけるように叫んだ。

 訳も分からず混乱する誘波ちゃんだったが、血だらけな様子を察し、緊急事態だと思ってシャッターを下ろしてくれた。

 その作業を眺めながら、ようやく鞠亜ちゃんとバニー女が腰を下ろし、一息ついた。

「か、間一髪だ……」

「な、なぁ、何が起こってるんだ!?なんで銃撃事件なんて起きてんだ!?」

 と、鞠亜ちゃんが思い切り溜め息をついた。

「自分が統括理事会だって自覚はあるのかねぇ、我がご主人様は。アンタだよ、池村和清。あの黒服達は、アンタへ差し向けられた刺客だ」

「な、なんで!?どうしたら許してもらえるの!?」

「そうだなぁ……アンタが潔く殺されれば、奴らも許してくれるんじゃない?」

「な、なんで……なんでなんだ!!意味が分からない!!俺は何も悪いことしてないだろ!!」

「和清君を襲った犯人は誰なんです?」

 そう、バニー女が呟いた直後だった。

 ガチャリ、と。

 誘波ちゃんがシャッターを下ろし終え、鍵をかけた。

「あ、おい、そこのパン屋の少女!鍵は外しといてくれ。いざって時に脱出できなくなる」

「あ、いや、それでいいんです」

「はぁ?何言ってんだ?困るのは私達なんだ、いいから開けてくれ」

「いや、これでいいって言われてるので……」

「言われてる、って……誰に?」

 

 

 

 

 

 

「そこの人に」

 

 

 指を差した方向へ振り返った直後、鞠亜ちゃんが銃で吹っ飛ばされた。

 太腿を撃ち抜かれ、動けなくなる。

 悲鳴が炸裂した。

 バニー女が慌ててホースを引っ掴んだが、それよりも早く、銃撃で同じように太腿をぶち抜かれた。腕も銃撃されている。あれではホースが握れない。

 絶叫した委員長が、ふらっと気絶した。

 

 気付けば、店の中から黒服達が大勢出てきた。

 

「くっそ……ここまでバレてたって事か……」

 バニー女が悪態をつく。

「ハメられた……このパン屋の女も奴らのグルだったって事か……」

 鞠亜ちゃんは必死に身体を動かそうとしているが、痛みを堪えるので精一杯そうだった。

 と、そんな黒服達の中で、見知った顔を発見する。

 誘波ちゃんが指を差した人物だ。

 それは、

 

 それは……ッッ

 

 

「混晶さん……ッッ!?」

 

「やぁ、池村様……って、もう呼ぶ必要はねーか。あー、疲れた。ようやくガキのお守りも終わりか」

「な、何言ってんの……混晶さん、助けて!!コイツらが、俺を!!俺を!!」

「そうだよ、私が命令したんだから。だからとっとと死ねよ」

 

「……は?え、ちょっと……よく、分かんないです……どう、いう……」

「く、くくくくくくくくく……あハハハハハハハハハハハハハハハハ!!まさか、ここまで無能なのかよ、池村和清ォ!!あハハハハハハ!!私が見込んだ通り、想像通りの無能な奴だった!!いや、想像以上かな?」

 意味が分からない。

 俺の知ってる混晶さんは、こんな事を言う人じゃなかったはずだ。

 混晶さんは、俺の業務を手伝ってくれて、俺のわがまま聞いてくれて、俺の将来を約束してくれる存在で、それで、それで……

「まーだ分からないのかよ?くっくっく……まぁ、無能だからなぁ、お前。おう、雲川。冥土の土産にテメェから説明してやれば?」

「チッ……よく聞け、我がご主人様。ご主人様が統括理事会に任命されたのは偶然なんかじゃない!!この女が仕組んでたんだ!!統括理事会の山戸部侍を暗殺、そして血縁上で統括理事会になりえる候補者を次々と暗殺したんだ!!不慮の事故に見せかけて!!全ては、『ご主人様を統括理事会に任命させる』ために!!」

「な、なん……なんで、混晶さんは、わざわざ俺を統括理事会なんかにさせたんだよ……?」

「あァ?自覚ねーのかよ。お前が『無能』だからに決まってんだろーが!!頭の回る連中が統括理事会の臨時役員になったら、裏から操るのに苦労するだろ?だから、お前みたいなガキで、『無能』な奴を選んだんだよ。くくく……いやぁ、滑稽だったよ!!お前、統括理事会の権力を振りかざして遊ぶだけで、全然役目を全うしてなくてよォ!!私が『業務を肩代わりする』って言った途端、無防備に喜んで全権を私に放り投げやがって!!ニートかよ、死んどけ、って話だわ」

 なにか、

 自分の中のなにかが決壊していくのを感じていた。

 もう、目の前の現実を受け止められない。

 思考が停止している。

 絶望、だった。

 頭が、全く回らない。

「私を和清君のSPに選んだのも、大して力のない『ガキ』を護衛に着かせる事で、和清君のガードを手薄にするためですか……まんまとハメられた」

「まぁ、予想外なのは、この雲川ってメイドだったんだけど」

「私は姉から頼まれて、アンタの動きを監視するためにメイドとして潜入任務をやっていてね……まぁ、ちょっとばかし私情も交じったが、それが私の魂胆を隠すいいブラフになったかな」

「それは迂闊だったな。テメェは『木原加群』を探している……それが真の目的だと思って、深くは詮索してなかったよ。まぁ、どのみち私がガキの後を継いで統括理事会になれば、同じ役員の貝積継敏なんぞ真っ向から潰してやればいいだけど」

「俺の後を継ぐって、どういう意味ですか……?」

「さすが『無能』な池村様ぁ~~!!優しい優しいアナタの混晶ちゃんが丁寧に教えてあげまちゅよ~~。代理役員は、交通事故などの不慮の事故で死亡した際、その秘書が正式な役員として採用される事もできるのよ。もちろん、臨時役員が契約書にサインする必要があるけど」

「お、俺はそんなの書いた覚えは――――」

「無能すぎて笑えないわぁ。昨日私と学校休んで書いたでしょ」

「あっ……」

 そうだ。

 混晶さんに手伝ってもらって、そういえば契約書を書いていたんだった……

「あとは私が『不慮の事故』でテメェら全員を別々の場所で殺せばいいだけ。そうすりゃ私が統括理事会に乗っ取れる!!今ここですぐ殺さないのも、偽装工作のためなのよん。もうすぐ手配したゴミ収集車が来るし、お喋りはこのくらいにしようかしらん」

 そう言って混晶さんが、ずっと黙っていた誘波ちゃんに近寄った。

「あ、あれ……私は言う通りにしましたよね……?は、早く店から出てってください。お願いします……」

 すると、混晶さんはニコリと笑い、

「あぁ、約束通り『殺しはしない』よ」

 そう言って、スタンガンを首筋に突き付けた。

 誘波ちゃんが床に崩れ落ちる。

「おーし、この女もついでに殺しとくぞー」

 そんな風に気軽に混晶さんは言って、今度は俺に近寄ってきた。

 スタンガンで昏倒させられたら最後、『不慮の事故』を装って暗殺されて終わりだ。

 でも、逃げ場はない。

 黒服達が大勢いて、全員が銃を構えている。

 店の出口はシャッターで塞がれ鍵をかけられている。

 

 絶体絶命だった。

 

 

 しかし、

 

 

「走れぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 バニー女がいきなり、水圧カッターで、店のシャッターを真っ二つに切り裂いた。

 なんと、口でホース咥え、強引に首を捻ってホースを振り回していたのだ。

 

 

 ―――――――出口が、開かれるッッ!?

 

 

「う、ァぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 全速力でシャッターの切れ目に走る。

「撃つな!!撃つんじゃない!!銃創が残ったら、『不慮の事故』に見せかけられないッッ!!」

 そう黒服達を制止させる混晶さんの叫び声が聞こえた。

 でも、そんなことを気にしてる場合じゃない。

 シャッターの切れ目に体当たりして、外に駆け込む。

 路地裏に飛び込んで逃げたが、後ろから黒服の追手が追いかけてきた。

 

 ―――――俺は走るの遅いから逃げきれない!!

 

 と、道の隣を河川が流れている事に気付いた。

 工学関連の研究室に併設されている川で、工業排水が流れている汚い川だった。

 

 でも、いい!!

 映画で、確かこんな場面があったはずだ!!川に飛び込めば逃げれたはずだ!!

 

 藁にも縋る。

 そんな思いで、俺は柵を飛び越えた。

 

 

 川に、飛び込んだ

 

 

 




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