Not A Hero 作:聖奈
「Mii Tuberだ?」
「うん、最近お兄がミガキンの影響受けてMii Tuberになるって言って聞かなくて…。再生回数も二桁だし…」
ある日、蘭は千雪に弾が売れっ子Mii Tuber・ミガキンに憧れて動画投稿を始めたらしくそれが滑りまくってることを相談していたのだ。
「最近、付き合い悪いと思ったらんな事してたのか。あいつ…。にしても、隣から一人でブツブツ言ってんのが聞こえるぜ」
「今動画撮影してるから…後で説得しにいこ?」
「だな」
\ウィイイイイイイイイッス!どうも~、五反TVで~す!/
\今日は、こちらの商品のレビューをしていきまーす!○ラえもん ぶ○う…etc/
「これで人気者になるとかマジ…?」
「マジ。あ、撮影終わって投稿したみたい…」
「よし、行くぞ」
こうして、千雪と蘭は弾の部屋に向かった。
「よっ。さっきの動画どうだー?」
「お兄ぃ、もう止めなって…」
「いいや、俺はミガキンさんみたいな大物Mii Tuberになって金持ちになるんだ!あ、ちょっ…コメ覧を勝手に…」
弾がサングラスを掛けたまま、宣言していると椅子に乗って一生懸命背伸びをしながら千雪がPCのマウスをいじりコメランを開いていた。弾の制止も虚しく開かれてしまった。
『モッピー:つまらん』
『シノノン♪:圧倒的にセンスがない。やめたら?Mii Tuber』
『1000Winter:黒 歴 史 確 定 』
『kazuma:俺の動画の方が面白い』
『世界一の料理人淑女ティア:やめてはいかがでしょう?低俗きまわりませんわ』
『Adam:そんな事より、ファウナス万歳。人間はカス』
等、かなりボロクソである。
「………」
弾はそのコメントを見た瞬間に固まってうずくまった。何故、ここまで言われなければならないのか…しかし、いつまで経っても答えは出ないので弾は考えるのを止めた。
五 反 田 弾 再起不能
\皆ー!居るー?/
「はーい」
下から鈴の声が聞こえた事で蘭が下の階に降りてしまい、鈴の元へ行った。
(やべー、目が死んでる)
しかし、千雪は慰めることはしなかった…否、慰めることが出来ない、つまり、フォローのしようがなかった。先程動画をコメントと一緒に見たがクソすぎた為慰める事すら出来なかった。
「ねえ、最近…よく当たる占い師が話題になってるんだけど、行かない?一人百円ね」
鈴が二階に上がってくるとそう声をかけて部屋にやってきた。
「行くー…」
「女子って占い好きなのな」
「あんたも女子でしょ。まぁ、いいわ!話もまとまったし行きましょ!何か弾が死んでるけど!」
こうして、皆で店を出て噂の占い師の元へ向かった。どうやら、未来を占ってくれるようだ。
「おや、いらっしゃい。私は未来を占う仕事をしていてね。まずは誰から…「なぁっ!」どうしたんだい?」
「ばあさん!!なら、俺から先に占ってくれ!!この先、Mii Tuberで稼げてるか心配なんだ!!8年後で!」
弾が占い師のおばあさんに必死に我先にと頼んで100円を渡した。
「ああ、分かった。君の将来は…」
おばあさんがそう言うと水晶玉が光って映像が流れた。
『ウィイイイイイイッス!五反田TVです!今日はあらバザをプレイしていきたいと「おい、引きこもり!」』
『今日は、オフ会当日ですが…参加者は、友人…2人だけでした』
映像にはサングラスを掛けた未来の弾と思われる人物がパソコンでゲームをしようとしているところを蘭に罵られ、オフ会には千雪と鈴しか来ないという悲惨な状況だった。
「これって…マジ?」
弾の顔が青ざめていく。
「未来の君は…残念ながら、失敗して…職にも就かずに引きこもりMii Tuberを続けて家族からバッシングを受ける」
「じゃ、じゃあ、別にMii Tuber断念してたら…?」
「普通に恋人も出来て幸せになっとるよ」
占い師からそれを聞いて弾は、
「俺、Mii Tuberやめるわ。それとありがとな、ばあさん。あと、お前等は見られたり聞かれんの嫌だろうし先帰るぜ」
そう言って弾は五反田食堂に帰って行った。
その後、蘭も占ってもらったが普通に高校卒業してOLになる未来だった。そして、弾と同じ理由で帰った。
鈴は色んな困難を千雪と沢山の友と乗り越えた末に中華料理屋を経営するという内容だった。そして、同じく終わったら帰った。
「で、あたしのはどうなんだ?まずは、4年後だ」
「君の未来は…他の子達と比べるとかなり奇妙な運命を辿っているね。映像は知らない方がいいから見せられないけど…口頭で伝えるよ。4年後、君は隻眼の軍人と殴り合ったり、年上の同級生に囲まれて勉強をする」
「はぁ!?なんじゃそりゃ!?つ、次は…そのさらに4年後だ」
(何がどうなりゃ、軍人と殴り合ったり年上のクラスメイトに囲まれて勉強するんだよ?デタラメなんじゃあねぇのか?)
何がどうなってるんだと千雪は思いながら尋ねる。しかし、また…
「そのまた、四年後。君は学校を卒業して、13歳のロシア人の女の子とその子を養子として引き取った年の離れた君の姉と3人で暮らしている」
「ますます、わけ分かんねぇぞっ!?ってか、いつそのロシア人と会ったんだよ!?」
「君が13歳の時に会う。年上に囲まれた学校でね」
(マジで意味分からん。じゃあ、9歳じゃねぇか。ロシア人)
「さ、最後だ…。数分後は…?」
「私と別れた後、最初にぶつかった相手と4~6年後の間、深く関わる事になる」
「そうかい。信じないけどな。時間の無駄だったよ」
「毎度ありー」
(あー、バカバカしい。しんじねーよーだ)
と思いながら歩いて五反田家に戻ろうと歩いていると、
「痛っ!?」
「イテッ!?」
千雪はよそ見をしていたせいか、誰かにぶつかってしまいお互い顔をしかめた。
「あぶねぇだろ、気ィ付けな」
「悪りぃ」
ぶつかった相手は金色の髪と白い肌で青い瞳を持つ千雪より何歳か年上の外国人の背が高い少女だった。少女が千雪に文句を言うと千雪は適当に謝り彼女を通り過ぎて食堂に向かった。
(今、ぶつかったこいつと…まさかな…)
「ここが、スコール叔母さんが言ってた日本か。世間が馬鹿にするほどそんなに悪い所じゃあないな」
猟犬と狂犬、二匹の犬が数年後…巡り会い、宿敵として相対することになる。その事を二人はまだ知る由もなかった。
さて、今回はおふざけ回でしたけど…次回から本編入ります。誘拐~その後の話です。