ラファール・リヴァイヴに憑依したんだけど、神に苦情言っていい? 作:ラファール
「お、おりっ、おり、織斑先輩!」
「どうした山田くん、騒がしい。」
職員室で書類の処理をしていた私の元に、ひどく狼狽して息を切らせた山田くんが駆け込んできた。
辺りの先生方も山田くんに注目する。
「あ、ああ、あ、IS、ISが!」
「どうした! まさか紛失でも…」
ISの格納庫に置かれていたISが盗難を受けたのかもしれない。 前例はないが、あり得ないことでは…
「ISが! 1人でに喋って動いたんです!」
「…はぁ?」
「だ、だから! ISが1人でに…」
あり得ない、人が乗っていないのにISが動くなど。 それも喋る?
「山田くん、夢でも見たのでは…」
「ち、違います! 本当に、本当に喋ったんです!」
先ほどまで走っていた上に叫んでいるせいか、酸欠で顔を赤くして言い張る山田くん。
「ならば見にいこう。 もしかしたら本当に、かもしれ…な…」
何故私の言葉が途中で切れたのか? その理由は、不意にこちらの視界に飛び込んできた… 山田くんが開けたままにしていた扉からこちらを覗き込む? ラファール・リヴァイヴだった。
「は!?」
『あ、ども… あの… ラファールです!』
あろうことか、そのラファール・リヴァイヴは機械音声で喋りながらサムズアップをしてきた。 あり得ない、まさか私が夢を見ているのでは…
「な、何者!?」
狼狽える私よりも先に、他の先生がラファール・リヴァイヴに問う。
『い、いや! 怪しいものじゃなくて…』
「嘘をつきなさい! 怪しさ99割じゃない!」
『まさかの990%!?』
おかしなことを口走った榊原先生に突っ込みを返すラファール・リヴァイヴ。
私の前で何が起こっているんだ…?
「ほ、ほら! 先輩、本当でしょう!?」
「ど、どうやらそのようだな… あー、君。 我々への敵対心はないんだな?」
『あ、はい。 そりゃもちろんありませんて。』
こちらを指差して否定するラファール・リヴァイヴ。
なんというか… 本来なら人体に直接ついているパーツが宙に浮いているので不思議だ。 いや、この事態自体が不思議の塊なんだが。
『あのー… 俺は一体どうすれば…』
「取り敢えず頭の整理がつくまでジッとしててくれ!」
私の言葉を受けて、ラファール・リヴァイヴはその場に正座をした。
本当に何者なんだ…
♢♦︎♢
どうも今日は。 IS学園の職員室らしき場所を混沌の嵐に陥れたラファール・リヴァイヴです。 あ、混沌の嵐って言っても別に溶岩は沸きませんよ?
「あー、それで、君はここIS学園の訓練機のラファール・リヴァイヴということでいいんだな?」
『あ、はい。 恐らくそれです。』
正座をする俺の前で腕を組んで唸る超絶美人は、恐らく織斑千冬。 山田先生と同じくISのキャラだ。
「ほ、本当にISなの?」
『あ、はい。 そうです。』
興味津々、といった様子で近づいてくるのは… 原作で見たことはないな… あ、もしかして部活棟管理の榊原先生かな? 極度に男運が悪いっていう。
『あ、あのー…』
「悪い、ちょっと待ってくれ。 イレギュラーすぎて何をすればいいのか… 山田くん、取り敢えず轡木さんを呼んできてくれ。」
「は、はいっ!」
お、轡木さんって言ったらIS学園の良心にして影の支配者のあの人かな?
それにしてもパタパタ走る山田先生かわいいなぁ…
「少し待っててくれ。」
『あ、はい。』
頭を押さえる織斑先生から制止を受けて、正座のまま待つ。
…職員室に物凄い静寂があふれた。
「お、織斑先生。」
「どうしました? 榊原先生。」
織斑先生に声をかけたのは、さっき俺に質問をした彼女、やはり榊原先生であっていたようだ。
「私、彼に乗ってみていいですか? もしかしたら何かわかることがあるかも…」
「正気ですか? 危険かもしれないですよ。」
「そ、それでも。 彼に敵対心はないようですし…」
「あー、あなたの男の趣味が特殊なのは知っていますがISは流石に…」
「そ、そういうのじゃないです!」
こちらに歩いてくる榊原先生。
うん、原作でも言ってた通り美人やな。 ロングの黒髪と優しげな顔立ちが良い、ISのハイパーセンサーのおかげで分かるが、乳のサイズは平均的。
「の、乗ってみて、いい?」
『あ、はい、どうぞ。』
彼女を迎え入れるように手を広げる。
なんか、こう… エロい。
「ど、どんな感覚ですか?」
『あー、えっと、あのー… 女性を乗せるのってなんかエロいなーって… あとパイロットの情報が全部わかるので体重とか胸の大きさとか… やめて! 自分で自分を攻撃させるのはやめて!』
「へ、変態! 変態!」
俺を操作してガンガンと腕をISの機械部分に叩きつける榊原先生。
あ、自分で止めようと思ったら止まった。
そして気を悪くした榊原先生が俺から降りてしまう。 残念。
「え、えーと、これはどういう状況で?」
「よ、呼んできました!」
登場したのは総白髪の初老の男性、恐らく彼が轡木さんだ。
『あ、どうも、ラファール・リヴァイヴです。』
「あ、これはどうも、轡木十蔵です。」
頭の後ろに手をやって、ペコッと頭をさげる轡木さん。
お、この人ならなんとかなりそう。
『あのー、一体俺はどうすれば…』
「取り敢えず格納庫に戻りましょう。 生徒の目に触れたら大騒ぎになってしまいますからね。」
まあ確かにそうだろう。 操縦者のいない機械が歩いてたらものっそい驚くわ。 なので彼の提案に乗るとしよう。
『あー、そうですね。 じゃあ戻… 道がわからないです。』
「では案内しますので。」
『あ、はい。 お願いします。』
立ち上がって轡木さんについていく。 さすが機械だ、正座してたのに足の痺れがねーぜ。
「何故あなたはいきなり動き出したのですか?」
コツコツと靴音を響かせて廊下を歩く轡木さんが質問をしてくる。
…転生したらISでしたー、なんて言わないほうがいいな。
『わかりません、気づいたらあそこにいました。 えー、轡木さんでいいんですよね?』
「あ、これは失礼。 私、轡木十蔵と申します。」
『これはどうも、ラファール・リヴァイヴです。』
知っとるわ! と突っ込みを頂きそうな自己紹介。 しょうがない、今のところ名前はないんだから。
「あなたの処置が決まるまでは無許可での出歩きは無しでお願いします。 無用な混乱を招きますから。」
『あ、はい。 あのー、分解、とかないですよね?』
せっかく第二の人(?)生が始まったというのに、すぐさま分解などたまったもんじゃない。
「恐らくそれはないと思われますよ。 分解した結果あなたが動いて喋れなくなったら、貴重な機体を潰したことになりますからね。 私からもそうはならない様に掛け合います。」
『あ、なるほど、助かります。』
歩きながら会話をしていたら、例の格納庫についていた様だ。
轡木さんが扉の横の画面を操作すると、音を立てて重厚な扉が開く。
「ひとまずこの中で待っていてください。 すぐに職員を招集して会議を開きますので。」
『はい。 わかりました。』
扉をくぐって格納庫の中に入ると、轡木さんが電気をつけた後に扉を閉めた。 電気をつけたままにしてくれるのは嬉しいな、ハイパーセンサーがあるから見えるには見えるがやはり明るい方がいい。
『…俺、暇じゃね?』
♤♠︎♤
例のラファール・リヴァイヴが格納庫に帰った後、職員が招集されて会議室で緊急会議が開かれていた。
全く、卒業のシーズンでただでさえ仕事が多いというのに…
「やはり政府への報告は必要不可欠ですね。 恐らく彼はIS学園で過ごすことになるでしょうし。」
確かにそうだ。 ISがあって不自然でなく、かつそのISが不自由なく動けるところと言ったらここIS学園くらいしかない。 政府に預けて下手な実験をした結果、暴れ出して大規模な被害… など冗談にもならない。
「問題は生徒達に隠すか否か、公表する場合はどの様な扱いにするか… ですね。」
「そうですね、織斑先生。 …彼はどうやら、常識だのに疎いのかもしれません。 対処の一つに来年から入学、というのも…」
「はは、確かに自分自身の運用法を知らない、となると面倒ですね。 しかし来年から入学はさすがに冗談ですよね?」
「…いえ、本当にそうなるパターンがあるかもしれません。」
質問をした榊原先生への轡木さんの返しで、会議室が「何言ってんだこいつ…」的な雰囲気で固まる。
「取り敢えず、彼のために部屋を用意しなければならないでしょうね。 いつまでもあの部屋、というのもストレスがたまるでしょうから。」
「ああ、でしたら整備棟の地下に5部屋ほどからの整備室があった筈です。 そこを与えましょう。」
そう提案したのは整備棟管理の稲田先生だ。
確かに、あのラファール・リヴァイヴはかなり人間味に溢れていたな。 ずっと狭い格納庫に閉じ込められたらストレスもたまるだろう。
「そうですね、取り敢えずの処置はそうしましょうか。 おあつらえ向きに今は夜で、一般生徒の目に触れることもないでしょうしすぐに移動させましょう。 …他に質問はありますか? 政府への報告はもう済んでいるので、この会議の結果を報告した後また明日、政府の方も含めて会議を開くことにしますが。」
「特に質問はないですね。 しかし… 訓練機が一つ減ってしまったのは痛いですね…」
「訓練機の補充については問題がひと段落ついてから検討することにしましょう。 ISコアは貴重ですから。 では、これにて解散とします。 あ、稲田先生はあのラファール・リヴァイヴを地下に案内して貰ってもいいですか?」
「はい、任せてください。」
「ではお願いします。 彼は今のところ第二格納庫にいますので。」
「わかりました。」
会議が終わり、他の先生方は通常の業務に戻る様だ。
さて、明日は弟の受験の日だが… 無事に合格できると信じよう。
♢♦︎♢
『かめはめ波!! …違うな… か↑め↓は↑め↓は→… でねえなぁ… 下斜め右+パンチ! いやこれ波動拳だから…』
「あ、あの…」
ISになった今ならイケるかもしれない、とかめはめ波を試していたが一向に成功しない。 クソッ!一体何が…
「あのー。」
声に反応して振り返る(ハイパーセンサーにより全方位見えているが)と、黒髪を後ろで結んだ女性がいた。
『…見ました?』
「み、見てないです。」
絶対嘘だこれ! なんだよかめはめ波の練習するISって! かめはめ波と波動拳間違えるISって!?
その女性は戸惑った様に数度唸った後、口を開く。
「大丈夫です。 みんな一度は試すものですよ…」
『見てないんじゃなかったの!?』
格納庫の中に一機のISの叫びがこだました…