fate/grand order 花の魔術師の義弟   作:all

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9話

私に聖杯に願うような大層な願いなどない。

ただ、幸せに生きて、幸せに死にたい。それだけだ。英霊として、このようなありふれた願いしかないなど、恥ずかしい限りではあるのだが、これは紛れもない偽りのない本音だ。

だって、そうだろう?元の私はただの一般人。特殊な能力を持っただけのだ。当然、人なんか殺したこともないし、痛いのも嫌いだ。本当に、脳筋の気持ちにはなれない。

もう死んでしまった私には関係のない話だ、と思っていたが、カルデアではどうだろう?かなりの期間の現界となる。幸せな死はなかろうが、幸せな生活ぐらいは、この人理修復を終えたあとに待っているのでは?

ならば、こんなところで消えてはいけないな。

相手が、どんなやつでも。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「英霊召喚?この場で?」

『そう、この場所でだ。これからの戦いではさらに戦況が変わってくるだろう。増やせるところで戦力は増やしておかないとね』

 

一理ある。私はそう考えた。

これからの戦いはかなりの規模になる。現存の戦力に加え、レイシフト先のサーヴァントを合わせたとしても、負ける可能性がある。それならば今時間がある時に召喚を行うのは正しい選択だろう。

 

「じゃあマシュ、お願い」

「了解しました」

 

マシュが自分の盾を立てて召喚サークルを形成する。

この光景を始めてみたであろうセイバーとキャスター、ジャンヌ、そしてもちろん私も感嘆の息が漏れた。

 

「へぇ、そういう使い方も出来るんだ…」

「まあ、納得、って感じかな。私とアルトリア、ハルにとっては」

「そうですね」

「これで、サーヴァントを召喚するのですね…」

「スゲー!なんだよあれ!」

「ゴメン、マスター。一人バカがいるのを忘れていたよ」

 

言わずもがな、ハルである。

 

「それで、どっちがやるんだい?私のマスターか、それとも立花?」

『そうだね…今回は両方とも行こうか』

 

まあ、妥当なところである。片方だけが召喚などとしたらもしかしたらマスター間のいざこざが起きる可能性がある。そうならないためのロマニなりの配慮なのだろう。

まあ、私はそんなことがあっても別に立花を妬んだりしないんだけど。

 

「じゃあ、私は見てるよ。英霊が召喚される瞬間を見るのはなかなか無いからね」

「うん、わかった」

「マスター、頑張りなよ」

 

**

 

…どうしてこうなった。

 

「キャスター、君は少しマスターと近すぎじゃないかね?」

「黒い私!ジャスパーに近すぎです!」

「なにか問題でもあるのか?」

 

結論を言うと、私が召喚したのは赤い外套を身に纏ったアーチャー、エミヤで、立花が召喚したのは別側面のセイバーだった。

カオスに次ぐカオス…。私の心のHPがマッハで削られていく…。

というか!これはキャスターとアーチャーで私の逆ハーレム状態なのでは!?

とも一瞬思ったが、物事の中心はキャスターで、そのキャスターはアーチャーとアルトリアズに絡まれても微動だにせず、どこか遠くを見つめている。

ジャンヌはオロオロしていて、ハルに関しては、頭で処理できる要領を越えたのかショートしている。

 

「せ、先輩…」

 

立花は下を向いて身体を震わせていて、マシュがそれを心配している。

 

「ああ!もう!全員注もォォくっ!!」  

 

時が止まった。痺れを切らした立花が耐えきれなくなり叫んで全員の動きを止めたのだ。

ナイスだ立花。グッジョブ、GJ。

 

「はいそこのアルトリアズ!ジャスパー君から離れる!エミヤも突っかからない!」

「「「はい……」」」 

「ジャンヌはハルを叩き起こして!」

「は、はい!」

 

その後も立花はリーダーシップを発揮する。近くの町での情報収集、今後の方針、戦闘時の大まかな立ち回り。つい最近まで一般人だったとは思えない。もともとそういう才能があったのだろうか。

…まずい。このままでは私だけが取り柄の無い可哀想な娘になってしまう。それだけは回避せねば。

まあ、だからといってこの場で発言をしても空気を乱すことは目に見えているので黙って立花に従うしかないのだが。

 

「ほら、早く行くよ!時間は有限なんだから!」

「凄いな…彼女は」

「ああ、私も今、反省しているところだよ。少しみくびっていたようだね」

「まあ、私を倒したのだ。これくらいしてくれないと困る」

「流石、私のマスターですね」

 

本当に、流石の一言に尽きる。さっきまで大騒ぎして"仲良く"どころではなかったあのサーヴァント達が、今は肩を並べて歩きながら立花を称えてあるではないか。

流石ですね、立花さん。けど…

 

「みんな…町は反対方向なんだけど」

 

 


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