FAIRY TAIL 妖精の戦姫   作:春葵

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一週間ぶりの投稿です。
出来ればこれくらいのペースで投稿出来たらと思っています。

それでは最後までお付き合いお願いします!!


28.対峙

約束の場所で馬車を降り、残りは自分達の足で歩くこと約二日、ようやく目的地のアスティアが見えてきた。ベスネルクからはだいたい五日程の長旅だったが、街に着いたら休んでいる暇はないだろう。隣を歩くエリナもどこかソワソワしている感じだ。

 

アスティアの門を潜ると、エリナは待ち構えていたように走り出す。目的地は言うまでもないだろう。システィもエリナの後を追う。ショートカットするためか大通りを素通りし、裏路地に入り込む。裏路地はあまりにも入り組んでいるためシスティは仕方なく上から追跡する。そして、町の中心から少し離れたところにある建物の前でエリナは足を止めた。

 

「……ここがそうなの?」

「はい…。ここがお父さんの工房です」

 

何というか意外だった。街を代表する魔法具職人のはずなのにその工房はボロボロで小さい。街の真ん中にある大きな工場がそうだと言われた方がまだ信じられた。

 

「…へぇ~てっきりあそこのでっかい工場なのかと思ってた」

「あそこはラーガスさんの工場です。あそこは大量に生産して安さを売りにしてましたから」

 

「それが、安定した売り上げをもたらすのだよ」

 

「「っ!?」」

 

振り返ると、そこにはいかにも悪巧みをしてそうな男が立っていた。背後には帯刀している護衛が二人控えてさせており、変に手出しはできないようにしている。

 

「よく帰ってこれたな、エリナ・ルーエル。父親に似て運だけは強いようだ」

「お父さんに何もしてないでしょうね!?」

「ああ……今のところは、な」

「くっ……」

「取り引きだ。俺はお前らに手出ししない。その代わり、お前の持っている竜の顎を渡せ」

 

こちらが断れないことをいいことにそんな条件を提示してくる。竜の顎を渡すわけにはいかないが、この状況では他に方法はない。エリナは仕方なくラーガスに向けて竜の顎を投げ渡した。ラーガスは念入りに本物かチェックし、それが本物だと分かると、顔を気味の悪い笑みで歪めた。

 

「クックック…。確かに受け取った。これでお前らに用はねぇ。親子仲良く死んでもらおうか」

「なっ…⁉︎どうして⁉︎約束と違う!!」

「約束?……あぁ、確かに言ったな。俺は(、、)手出ししない、ってなぁ」

 

そう言うと、ラーガスは踵を返し建物の影に姿を消した。それを黙って見送った護衛二人はシスティ達に向き直ると、刀を勢いよく抜き放く。その刀身は紫色で禍々しい雰囲気を放っている。恐らく、何かしらの効果を持った魔法具なのだろう。

剣先を向けられてはシスティも黙っておらず、エリナを守るように前に立つ。三人の視線が交錯し、そしてほぼ同時に地面を蹴った。

 

「天竜の鉄拳‼︎」

 

先手はシスティ。先行する一人に向けて拳を放つ。対する相手は刀の腹で防御しにかかるが、滅竜魔道士(ドラゴンスレイヤー)の攻撃に対してその対応は愚策だ。滅竜魔法をあの細い刀身で受けたら破壊は免れないだろう。

しかし、蓋を開けてみれば刀を破壊どころか罅一つ付けられず、逆にシスティの左手が刻まれていた。

 

「くっ……その刀……」

「ああ。銘は叢雲(むらくも)。魔を絶ち祓う剣だ」

「なるほどねぇ……。つまりそっちの剣もそういうやつか」

「…銘を十握剣(とつかのつるぎ)という」

 

この状況に流石のシスティも面倒な相手だと思わずにはいられなかった。

あの魔法が効かないという能力は、さっきのような防御だけでなく攻撃にも利用できる。鎧のように纏った風を簡単に引き裂いてくる。―引き裂くというより霧散させられていると言うべきか―魔法での攻防が意味をなさない今、システィはただ避けるしかできない。

 

避けるのは訳ないけど魔法が効かないのは厄介だなぁ…。

 

システィは避けながら反撃の糸口を探すが中々有効的な手段が見つからず、結局今も攻めあぐねている。

 

「システィさん!!!!」

 

そんな時に工房の方から大きな声で呼ばれ、システィは戦闘の最中ながらも視線をそちらに向ける。すると、工房の方からエリナがこちらに向けて何かを投げるところだった。

 

「これ、使ってください!!」

 

二人から大きく距離をとって投げ渡された物を手に取る。そして、それを反射的に抜き放った。

 

「へぇ…いい刀だね」

 

投げ渡された物は刀身が白く透き通った刀だった。これも魔法具なのか、二人の持つ剣とどこか似た雰囲気を感じる。

 

「銘は天羽々斬。魔力を散らすことは出来ませんが、切れ味と魔力伝導性は抜群です!!」

 

エリナの言った通り、魔力を流し込むとまるで自分の体のようにすんなりと風を纏わせることが出来た。これに刀本来の切れ味が加われば、ほとんどの物は簡単に斬れそうだ。

システィは左腕の傷を治し、柄を両手でしっかりと握る。

 

「じゃあ、そろそろ反撃開始といきましょうか!!」

 

システィは地面を蹴り、思い切り刀を振るう。相手も刀で迎え撃ってくるが、気にせず振り切る。すると、全く抵抗を感じずに刀は切断された。まるで空振りをしたかのように斬った手応えが全くない。異常なほどの切れ味だ。それに、刀身に負荷がかかっている様子もない。

 

「これならいけるかも……」

 

システィには長らく封印していた技がある。その技は風の付加以上に刀に負荷をかけてしまうため、どんな刀でも壊れてしまうのだ。だけど、この刀なら少なくとも一回は耐えられるかもしれない。システィは刀を鞘に収め、これまで以上に魔力を流し込む。

 

「“研ぎ澄ませ(アームド)”」

 

鞘の中の刀に風が集まって行くのが鞘を持つ左手を通して分かる。しかも負荷が全くかかっていない。自分の魔力を全て流し込んでも耐えられそうだ。だが、今度は逆にシスティ側の技量が試される時だ。限界まで切れ味を強化されたこの刀でなら何でも両断してしまう。だから殺さぬように調整する必要がある。

 

「まさか、刀に試されるとはなぁ…」

 

システィは静かに腰を降ろし、相手を見据える。無駄な力を抜き、抜刀する瞬間に備える。相手を見て、その動きに合わせるように刀を引きぬく。

 

ギュィィィン!!!!

 

システィが刀を振り切った後から途轍もない轟音と衝撃波が発生する。流石にこの刀にも負荷はかかったようで、少し刃が欠けていたがその程度だった。あと三回は難なくやれそうだ。そして相手の方も、刀を綺麗に三等分(、、、)し、本人の方も致命傷を避けている。久しぶりなのに鈍ってなくてよかった。

 

「貴方達はその刀の性能に頼って剣技の方が疎かになってる。そんなんじゃ貴方達は刀に使われてるだけだよ」

「……最後の一閃、全く見えなかった。あれも剣技なのか…?」

「そう。私が編み出した抜刀術の奥義、『幻月(げんげつ)』。二撃目は音速を超え、三撃目以降は光速に迫る速度になる。刀の限界を無視すれば六連撃くらいは何とかいけるでしょうね」

「そうか…。俺も、まだまだということか…」

 

そう言って男は静かに地に伏した。システィはそれを見届け、そっと刀を鞘に収めた。集中が切れたためさっきまでの疲労感が一気に襲ってくる。だけどまだ全部が終わったわけじゃないのでそんなに休んではいられない。

 

「エリナちゃん、これありがとね。助かったよ」

「いえ、私に出来ることなら何でもしたいんです!!「」

「じゃあこの刀の手入れお願いできる?さっきのでだいぶ消耗してるから」

「はい!…でも時間が…」

「大丈夫。ゆっくりでいいから完璧にして手入れして」

「はい、わかりました!」

 

大事そうに刀を持って駆けていくエリナを見送り、彼女が工房に入ったところでシスティは立ち上がった。

 

「やっぱり置いていくんだ」

「うん。シェリルはあの子の傍にいてあげて」

「…分かった。でもよかったの?刀預けちゃって。相手は竜の(あぎと)を持ってるのよ?」

 

シェリルの言う通りで、この戦いは刀を使った方が断然楽だ。さっきの二本の刀は魔法を霧散させるだけだったが、竜の顎は魔法を喰らい、自身の魔力としても使うことができる。魔導士には相性の悪い敵だ。

 

「いいんだよ。正直一発ぶん殴らないと気が済まない。なるべく刀の整備が終わるまでには戻るよ」

 

シェリルの頭を優しく撫で、システィはラーガスの工場に向けて歩き始めた。一人歩くシスティの瞳には一切の慈悲もなく、純粋な怒りだけが宿っていた。




最後までお付き合いありがとうございます!!
予定では次回が最終回となります。ちょっと早いですかね…。
次は原作に戻って楽園の塔編を予定しています。

それでは次回もどうかよろしくお願いします!!
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