FAIRY TAIL 妖精の戦姫   作:春葵

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竜の顎編最終話です。


29.決戦

特に妨害もなく正面から堂々と工場に入り込んだシスティはほとんど素通りで最深部まで辿り着いた。そこはどうやら魔法具の倉庫のようで、いろいろな魔法具が積み上げられていた。魔法具の山を通り抜けてさらに奥へと進むと、暗い部屋でラーガスが待ちかまえるかのように立ち塞がっていた。

 

「ようこそ、愚かな魔導士殿」

「敵を招き入れるなんて随分余裕そうね。護衛二人を倒された今、貴方の盾はもうないのよ?」

「ハハハ、あいつらは形だけの護衛だ。第一、人間など信用できない。すぐに嘘をつき、裏切る。その点、発明品は裏切ることは無い」

「信じられるのは自分の魔法具のみってわけね。ホント、悲しい人」

「口うるさい奴だ。…丁度いい。お前には新兵器の実験台になってもらおう」

 

ラーガスがボタンを押すと同時に床から何かがせり上がってくる。暗くてよく見えないが、シルエットから人型のように見える。ガタンと音を立ててリフトが止まると、今度はガシャンガシャンとまるで鎧が歩くような音を立てながらそれが動き始めた。

 

「これが新兵器、“パラディン”だ。」

 

姿を現したのは盾と剣を持つ騎士の鎧。しかも、鎧の魔法具ではなくあれ自体が自律した魔法具なのだろう。人の気配が一切感じられない。鎧と盾と剣の全てが何らかの効果を持った魔法具だと考えて戦った方がよさそうだ。

 

「さて、性能チェックだ。行けパラディン!!」

 

命令を受けてまっすぐ突っ込んでくるパラディンに対してシスティはすぐさま構えを取って動きを観察する。とりあえず最初はこちらからの攻撃は控えて、相手の行動と攻撃のパターンを分析する。中に人が入っている訳ではない為、パラディンの行動には何らかの規則性があるはずだ。それが大体把握できれば次は防御。パラディンが取れる行動は防御、回避、カウンターの大きく分けて三つだ。把握するのはそう難しくない。そして最後に魔法に対する行動だ。奴が相当な馬鹿でない限りあれを仕込んでいるはずだ。

 

「天竜の翼撃!!」

 

予想通り盾によって防がれた魔法は全て吸収された。どうやら竜の顎は盾に埋め込まれているようだ。これだとダメージを与えるには盾を掻い潜って直接攻撃するか、盾を奪うしかないだろう。だが、盾はパレディンの腕と完全にくっついているため、ここは前者の作戦で行くしかない。幸い、奴の行動パターンは解析済みだ。うまく相手の盾で出来た死角に入り込んで一撃を狙う。

 

「天竜の鉄拳!!」

 

技はしっかり胸元にクリーンヒット。しかし、鎧は少し凹んだ程度でダメージがあまり通っていない。そこまで堅そうにみえないのになんで…。

 

「盾を避ければダメージを与えられるとでも思っていたのか?パラディンを甘く見てもらっては困る。そいつの鎧には高い魔力伝導性があってな、鎧を通じて魔力を吸収できるのだ」

「解説どうも。でも、確かに厄介ね…」

 

ラーガスの言う通り鎧への攻撃もあまり効果的ではない。さっきの鉄拳も魔力を吸収されて精々凹ませることぐらいしかできていない。こちらの攻撃が全くいかない為完全に打つ手がなくなった。

 

「どうだね、私の最高傑作は?」

「確かに倒すのは難しいけど、正直負ける気はしないわね」

「ほう?ならば…パラディン、バーストモード」

 

『コマンド確認、バーストモード』

 

盾からまるで血管のように赤い線が延びて鎧が赤く染まる。直感的にあれはヤバいと感じ、構えた時には奴は魔横にいた。

 

「えっ、うぐっ!?」

 

思い切り蹴飛ばされ、壁に激突する。間髪入れずに剣が突き刺されるのを紙一重で躱し、何とか距離を取る。パラディンの方は勢い余って壁を破壊し、瓦礫の下に埋まっている。だが、時間稼ぎにもならないだろう。

 

「何?あの速度とパワー…。吸収した魔力を身体強化に使ってる?」

「ご名答。だが、それだけじゃあない」

 

すると、瓦礫の隙間から光が漏れ出し、それは次第に強くなってくる。この光り方、まさか魔法⁉︎

 

『フレイムバースト』

 

爆音と共に炎の渦が一気に瓦礫を吹き飛ばす。しかも、放たれた炎は再び盾に吸収されていく。

 

「永久機関とまではいかないが、こういう風に自身が使った魔法を吸収して魔力消費を最小限に抑えることもできる。どうだ?これでも負ける気はしないか?」

「くっ……」

 

パラディンのことは、所詮魔法が効かない魔導兵器だと甘く見ていた。それに、ここまで手こずるなんて一切考えてなかった。

 

ちょっと調子に乗ってたな…

 

戦姫なんて呼ばれて、さらには聖十大魔道に誘われたことで完全に調子に乗っていた。油断は隙を作り、隙は死を招く。システィ自身がナツやグレイに何度も言ってきたことだ。自分が油断してどうする⁉︎

 

「……ナツなら、どうやって切り抜けるかな…」

 

『魔法が効かなかったら?んなもん素手で殴りゃいいんだよ』

 

「ふふっ。ナツならきっとそう言うだろうね」

 

シルフィはポツリとつぶやくと、パラディンに向けて拳を構えた。無駄な思考は要らない。ただ、自分の全力をぶつけるだけ。

 

「止めだ。いけ、パラディン!!」

「これで決める…」

 

システィは風を推進力に利用し、一気に距離を詰める。距離を詰めた後は、普通なら拳に魔力を纏わせて威力を上げるところだが、今回はそのまま勢いをつけて拳を放つ。

 

「…天竜の|剛拳≪ごうけん≫!!」

 

システィとパラディン自身の突進力が相乗効果を生み、魔力を纏っていない拳は簡単に盾を貫き鎧を粉砕した。魔力が吸収されないため威力が落ちず、貫通力と威力がすさまじい一撃をもろに喰らったのだ。パラディンはボロボロ。魔力の吸収もできていないようだ。だが、システィも素手で盾と鎧を殴っているので、右手は完全に折れて血だらけになっている。

 

「ば、ばかな……。私の…私の最高傑作が…」

「さてと、次はお前の番だクソヤロウ!!」

 

システィは左拳をラーガスに向ける。ようやく殴れると思うと自然と力が入ってしまう。

 

「ひっ…く、くるな!!」

 

腰が抜けたのか這ってでも逃げようとするラーガスの首を掴み、上に放り投げる。

 

「みんなの痛み……受け取れクソヤロウ!!!!天竜の鉄拳!!」

 

システィの怒りが込められた拳はラーガスの腹部に命中し吹き飛ばした。そのまま壁に叩きつけられたラーガスは気絶。無事報復が済んだシスティはエリナの待つ工房へと戻るのだった。

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