裏切られたサタン
「おっとサタン。あんたの役目はもう終わりだ。ボイリングシックルーッ!」
「リオンフィンガーッ!」
我はこの者たちの儀式に答え、キン肉マンに黒後家蜘蛛《ブラックウィドーズ》を憑依させ、死の刻印となる魔の砂時計を埋め込んだ。しかし、我は今その者たちの斬撃によって切り裂かれてしまった。
「な、何故?」
我は思わず下手人たちに尋ねた。
「あんたが必要だったのは、難攻不落のキン肉マンに秘術ブラックウィドーズをかける為」
「魔の砂時計を埋め込みさえすればあんたは用済みなんだよ〜っ!」
我は力を貸してやったというのになんということか!我は思わず、
「あ…悪魔の上前をはねようとは恐れを知らぬ奴等め〜っ!」
下手人達に対して怒りを露わにする。
「悪行超人界のことは俺達に任せてさっさと消えな〜っ!」
「マホリットサンダー!」
先ほどの斬撃で息も絶え絶えの我に対し電撃を最後のトドメと言わんばかりに放つ。それに我は思わず…
「ギレラレ〜ッ!」
などと自分でも何を言ってるんだと思う断末魔を上げた。
(わ、我は…まだ…死ぬわけには…)
そして、目の前が真っ暗となった。
そして、我は走馬灯のように今までの出来事を振り返った。
我のいる世界は人間の他に超人と呼ばれる人を超えた能力を持つ者がいた。その中でも特に人間達を守るためにその能力を使う者達を人々は正義超人と呼んでいた。
我はそんな世界を天上界から見下ろしていた。いわゆる神という存在である。そんな我はある日気まぐれに人間界の日本という国にある国立競技場を見ていた。そこでは正義超人ナンバー1を決める大会である超人オリンピック、その第20回の決勝戦が行われていた。
『うわ〜〜っと新チャンピオンの誕生〜〜!!第20回超人オリンピックはキン肉マンの優勝であります!!』
(すごい!)
我がその決勝戦を見た感想はこの一言に尽きた。決勝戦は無名ながら勝ち上がってきた日本代表超人キン肉マンvs第19回超人オリンピック優勝者のイギリス代表超人ロビン・マスク。人々は試合前、後者が圧勝すると誰もが思っていたし我もそう思っていた。
しかし、現実は違った。キン肉マンはなんとロビン・マスクに対して一進一退の攻防を見せ、最後にはメキシカン・ローリング・クラッチホールドを決めて見事勝利を収めた。
(ふふふ、なかなかいいものを見させてもらったぞ。キン肉マンよ!)
そんなことを思っているうちに会場はすっかり表彰式を行っていた。
我は名勝負を繰り広げた二人の表彰される様をじっくりと見ようとする。まずは優勝であるキン肉マンに総理大臣から金メダルが送られる。周りもこれを歓迎ムードで受け入れた。
そして、次はロビン・マスクに対して銀メダルが送られた。その時に事件が起こった!
「shamless poor boy(恥知らずの弱虫め!)」
「Don’t come back to England!(イギリスに帰ってくるな)」
「A shame to England!(英国の面汚し)」
「A crybaby!(泣き虫野郎)」
なんとイギリスのサポーター達は激闘を繰り広げたロビン・マスクに対して溢れんばかりの罵声を浴びせ、さらには物をロビン・マスクに対して投げつける始末!
(な、何なのだ、何なのだ、これは!!!!激闘を繰り広げたロビン・マスクに対してねぎらいの言葉を浴びせるのならわかる。しかし、それを罵声を浴びせるとは何事か!ましてや普段人間達の生活を守っているのは正義超人なのだぞ!)
我は思わず拳を血が出るほど強く握りしめる。
(ゆ、許さん!許さんぞ!人間共!いつかお前らには制裁を下してやる!そして、作るのだ!超人達のための世界を!)
それ以来我は人間共への制裁を考えながら日々を過ごしていた。しかし、何処からかそんな我の考えが漏れてしまったのか我は天上界から追放されてしまった。
(あんな人間共を庇うとは他の神はどうかしている!神としての制裁を下せないのなら我は我なりのやり方で人間共に制裁を下す!)
そこから我は行動を開始した。ある時は極悪すぎるあまり超人ホイホイに封印された7人の悪魔超人の封印を解き、人間界の制服を企んだ。またある時は7人の悪魔超人を超える存在である悪魔6騎士を生み出して超人界を引いては人間界を支配し、超人達のための世の中を作ろうとした。
しかし、それらの企みは全て正義超人達の手によって阻まれてしまった!
(何故だ!何故だ!何故だ!何故なんだ!何故そんな人間共に味方をするのだ!そんなに人間達に尽くしても自分達の思った通りの結果にならなければ迷わず罵声を浴びせる。そんな奴等なのだぞ!)
我は再度人間共への攻勢を掛けようと思ったが、7悪魔と6騎士の件で我は力の多くを使ってしまい、回復のため眠らざるを得なかった。
そして、我は目覚めた。34年後に。そして、我は起きた直後、すぐさま世界中を見て回った。するとそこには…
「何度も言ってるだろ!超人に売る品物はねえって!」
「ここは人間専用の市場なんだ!薄気味悪いパワーを持つ超人に売るものなんてねえんだよーっ」
何も悪いことをしていないのに超人だからと差別される者。
「出て行けーっ」
「この醜い奴めーっ!」
超人の生まれ持っての顔を貶し、地べたに這い蹲る超人に蹴りを入れる者がいた。
(34年前よりも酷くなっているではないか!もう許せん!こうなったら我の秘策…ジェネラルストーンを使い、この者達を救済する!そして、今度はこの者達の手を借りて我自らが現世に肉体を持って現れ、直々に人間共に裁きを下してくれるわ!)
ジェネラルストーン…我の力の一部を込めたダイヤモンドのような見た目をした石である。これを6人の超人に埋め込み、悪魔の種子《デーモン・シード》とした。さあ、34年の眠りから覚めたこの力とくとみるがいい!
しかし、この計画もまた阻止されてしまった。新世代の正義超人達…ニュージェネレーションズによって。
(またか?!まだこの様な人間共の惨状を見てもまだ人間を見捨てぬのか!)
今思うと何度も何度も正義超人達に邪魔され、我は意地になっており、手段を選ばなくなっていたのかもしれない。
この事件…俗に言う悪魔の種子事件の後、ニュージェネレーションズを倒し、超人の超人による超人のための世の中を作る為に我は試行錯誤を繰り返していた。そんな折、我は何かに引き寄せられる様な感覚を感じた。見るとそこには黒い穴のようなものがあり、その先には我を呼び出す呪文を唱えるライオンの様な顔をした超人と人相の悪い赤い目をした超人がいた。その側にはキン肉マンとその息子であるキン肉万太郎がいた。
「マサランガスクリットブラックウィドーズ」
「マサランガスクリットブラックウィドーズ」
「悪魔の領袖よ。今こそ我に力を与え給え、マサランガスクリットブラックウィドーズ」
(こやつらを利用できるかもしれん。えーと呪文の発信先は…34年前の不忍池?!何故こんな場所から…)
不思議に思い、我は我を呼び出す呪文を唱えている二人組のうち、ライオンの様な顔をした方の頭に触手のようなものをそっと当てて、記憶を辿る。
(時間超人…究極の超人タッグ…なるほどな、そういうことか。)
どうやらこの時代にいた時間超人と呼ばれる時間遡行能力を持つ超人達が正義超人全滅を企み、34年前に飛んだ。それを阻止する為にニュージェネレーションズもまた過去に飛んだというわけか。
(こやつらの正義超人全滅に乗っかり、我の野望を実現させよう!幸いこやつらにはそれができるだけの実力もあるようだからのう。)
そう思い、我は埋め込んだ相手を少しずつ死に至らしめる魔の砂時計をつけることのできる黒後家蜘蛛《ブラックウィドーズ》を貸し与えた。
それがまさか裏切られて死ぬことになろうとは…
(結局我は何を成し遂げられたのだろう。目的すら果たせず…ここで朽ちるのか…)
やがて我の意識もまた闇に包まれていった。
これ、本当に需要あるんだろうかと不安になっている稲葉 優です。感想を書くのは非ログインユーザーでもできるようにしているので是非感想を聞かせてください。