暗い闇の中に居た。
一筋の光もない、何も見えない、何も聞こえない、何も話せない。
手を伸ばしても何も触れず、上もなく下もなく、ただただ漂っているような感覚。
このまま意識ごと闇に溶けていきそうだ。
(潤…にー…大毅…)
声は声にならない。
しかし不思議なほど不安や恐怖が感じられない。
この暗闇の中、孤独に漂っているはずなのに。
何かに暖かく包まれているような、そんな感覚すらある。
闇の中、開いていても閉じていても変わらない瞳を閉じると徐々に意識が遠くなっていった…
………
……
…
「…っ」
「…いっ」
「千愛美っ!」
「…だいき…?」
ハッと目を開き起き上がった。
辺りはまるで見たことの無い風景。
そして気色悪い触手を持った生き物のようなものに囲まれていた。
「やだ…なにこれ…」
「わからないけど俺が起きた時にはこいつらに囲まれてて…ただ、今は潤さんが…なんか鳥みたいなのと一緒に戦ってくれてる」
「潤にーが…?」
辺りを見回すとその生き物を相手にしている潤にーと、確かに鳥のような生き物が居た。
「ホークモン!今だ!」
「…フェザースラッシュ!」
鳥が鋭い羽を飛ばすと、触手を持った生き物は耳に残る嫌な叫び声をあげた後光り輝き霧散した。
潤にーがホークモンと呼びかける鳥は素早い身のこなしで敵の触手を躱しながら着実に的の数を減らしている。
「潤にーと鳥さん大丈夫かな…?」
不安な表情だったんだと思う。大毅は私の視線に対して軽く微笑み返してくれた。
「潤さんは多分大丈夫。あの鳥と一緒に上手く俺たちを守ってくれてる」
「良かった…」
一安心した。しかし大毅は表情を曇らせている。
「大毅…?」
「俺たち以外にも何人もいたんだ…」
「え?」
「あの時神社に居た人達が何人も何人も…あの触手ヤロウに刺されてそのまま消えちまった…」
「…え?」
言葉に詰まってしまった。大毅の言ってる事が理解できない。
「元々ここには他に10人くらい人が居たんだ。そこにヤツらが現れ。そして、そのときヤツは一番近くに居た人を刺した。そして、その人は消えた。」
大毅は俯きながら続ける
「千愛美が起きる迄、潤さんが牽制しながら俺がお前を抱えて逃げ回ってた。ほかの人達は次々やられてった。あとは俺たちだけになって潤さんがやられそうになった時、あの鳥が潤さんを刺そうとした触手ヤロウを倒して助けてくれたんだ。」
そう語る大毅の瞳は触手の生き物に明らかな敵意を向けている。
その拳は震え、強く握られていた。
そしてその間も潤にーと鳥は少しずつ触手の生き物の数を減らしている。
「…ウザイ」
触手の生き物の一体が嫌な声でそう言った。
「ウザイ…コロス…」
別の個体も喋った。
「ウザイ」
「コロス」
「シネ」
次々と汚い言葉を喋り始めた。
「うるせぇ!お前らが死ねよ!」
大毅が怒りのあまり叫んだ。
するとピタッと嫌な声が止まった。
「オマエラガシネヨ」
今まで以上に低い体を這うような嫌な声でそう言うと、周りの仲間に触手を突き刺した。
すると刺された触手の生き物は体が透明になっていき、消えた。
鳥にやられた時とは違う感じだ。
「あれは…ここにいた人たちと同じだ…」
大毅が声を震わせる。
「ケラモン…シンカ…」
嫌な声で周りの仲間を消したそいつが言うと体がどす黒いモヤで包まれた。
「クソッ…!ホークモン!」
潤にーが叫ぶと鳥が鋭い羽を投げつけた。
しかしそれはモヤに当たった瞬間青黒い炎をあげて消えてしまった。
そして徐々にモヤが晴れるとそこには先程よりひと回りもふた周りも大きくなり形が変化した触手を持った生き物がいた。
「クリサリモン…」
先程以上に嫌な声でそいつは一言そう言った。
キャラクター
ホークモン(白)
真っ白な羽毛におおわれた鳥型のデジモン。
潤と共にケラモンを次々と打ち倒した。
ケラモン
触手を突き刺し、人間、デジモンを吸収することが出来る。
一個体の力は大きくないが集団で現れることで非常に危険な存在となっている。
クリサリモン
ケラモンが多くのデータを吸収、進化した姿。