プロローグ その1
「あっ昨日投稿した動画結構再生されてるな...」
朝早く起きた僕は、まだ薄暗い部屋でパソコンと向き合っていた。
一昨日某動画サイトに投稿した茶番動画の再生数を確認するためだ。
別にネットで有名なわけでもなく、チャンネル登録者数が多いわけでもないのに、動画の再生回数を気にしてしまうのは動画投稿者としての性なのだろうか...
そんな事を考えながらパソコンの画面を眺めていると、コメントが書き込まれた事をお知らせする通知が来た。
僕は何の気無しに、そのコメントを確認する。
はーちゃん 30秒前
いつも動画投稿お疲れ様です。
私は貴方の明るく楽しい動画が大好きです。
返信・
はーちゃん...実際に会った事があるわけではいないが、僕が動画を投稿すると絶対にコメントをくれる常連さんの一人だ。
僕は来たコメントに対し絶対に返信する様にしている。が、常連さんからのコメントへの返信はいつも頭を抱える事になる。ただでさえ人気の無いこのチャンネルから常連さんがいなくなってしまったらおしまいだからだ。
だから機嫌を損ねない様に慎重にコメントを返信する。
はーちゃん 2分前
いつも動画投稿お疲れ様です。
私は貴方の明るく楽しい動画が大好きです。
返信・
葵の動画投稿チャンネル 5秒前
いつも高評価とご視聴ありがとうございます。
これからの動画投稿頑張っていきます。
返信・
コメントを書き込んでから自分のチャンネルのホームに移動する。
〈葵の動画投稿チャンネル〉それが、僕のチャンネルの名前だ。本名は久留咲葵。
だから〈葵の動画投稿チャンネル〉というのは余りにも単純すぎるとは自分でも思う。
でも、他に良いのが思いつかなかったのと誰も僕の事を調べないだろうからチャンネル名はこのままで良いと思う。
チャンネル登録者は237人。多くも少なくもない微妙な人数。
あまり周囲の人間に知られたくないから、自分のチャンネルを宣伝する事はない。
それで200人ちょっとチャンネル登録者がいるなら良い方だと思う。
それからしばらくネットサーフィンをしてから、パソコンを閉じると学校に行くために制服に着替え始める。
コンコン
学校に行く支度をしている自室に突如、ノック音が響く。
次にドアノブが回りドアがゆっくり開閉を始める...
「あー!!お兄ちゃん何で起きてるのっ!!」
誰かと思えばドアを開けたのは、妹のくるみだった。
「何って学校に行く支度だけど?」
妹の問いに当たり前の返答をすると、妹のくるみは呆れたと言わんばかり肩を落とした。
僕は何か失言をしただろうか?急いで自分の発言を思い出してみる。
〈何って学校に行く支度だけど?〉
・・・うん。少なくとも失言ではない。今日は月曜日だから学校が無いなんていうオチは無いはずだ。
「えーっと...くるみ?僕なにか変な事言ったかな?」
自分が失言したわけではない。というか妹に呆れられる理由がわからない。ここは本人に聞くのが早いだろう。
「だって...」
「だって?」
妹は下を向きながら一言発したが、それから無言になってしまった。
僕はせかさず妹が言葉を発するのを静かに待つ。
「だって...だってだって...お兄ちゃんが起きてるんだもん!!」
無言になったと思いきやいきなり大声をあげる妹。しかも内容も意味不明...
うん。わからん。
何故、大声で叫ぶ必要があったのだろうか?
「く、くるみさん?なんで泣いてるの?」
現状が飲み込めない僕は出来るだけ優しく落ち着いた声で語りかける。
「だって、お兄ちゃんが起きてたら私が起こせないじゃない!!ばかっ!!」
バタンッ
僕に罵声を浴びせ勢い良くドアを閉めて行ってしまった妹。
〈だって、お兄ちゃんが起きてたら私が起こせないじゃない!!ばかっ!!〉
この言葉から察するに、僕を起こしたかったのだろうか?
でも、それくらいのことで泣くのもおかしいような...
結局僕は状況を理解できないまま一人で登校することになった...
妹が起こしに来るのってアニメだけだと思うのは私だけでしょうか?
現実だと親が起こしに来ますよねw(。-∀-)
個人的にはぬいぐるみに起こされてみたいものです...
えっ?それはホラー?何のことでしょう?