元同性の親友とその想い人がアプローチを仕掛けてくる件   作:作者B

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新ヒロインを出すといったな、あれは嘘だ。
今回の話が思いの外長くなってしまったので、新ヒロインは次回出します。


※2話を投稿した結果、お気に入り登録者数が1話のときから20倍以上増えて動揺を禁じ得ない。皆様ありがとうございます。


王の会遇

 クラウス――もといアインハルトと出会った日の翌々日、俺とアインハルトはノーヴェさんに呼び出されていた。どうやら、俺らと同年代で格闘技をやっている知り合いを紹介してくれるとのことらしい。

 なんで突然、と思わないでもないが、まあノーヴェさんにも考えがあるんだろう。案外、紹介されるのがヴィヴィオとかだったりしてな。もしそうなら、アインハルトはどういう反応すっかな。いきなり300年前の決着とか言って、バトル仕掛けたりしてー。あっはっはっはっは――

 

「……笑えねぇ」

「どうかしましたか? レン」

 

 思わずため息をついてしまった俺を覗き込むように、隣を歩くアインハルトが視線を向けてきた。

 

「いや、なんでも……なくはないわ。お前が今してることをよく考えてみろ」

「え? ただ腕を組んでいるだけですが」

 

 今、アインハルトは俺の右側を歩いている。アインハルトの左手は俺の右手首を掴み、右手は俺の肘を外側から抑えつけている。これが意味するのはつまり……

 

「何をどうやったら『腕を組む=腕の関節を極める』になるんだよ!」

「?」

 

 アインハルトは本当に分からなそうに首をこてんと傾ける。

 あーくそ! 一々可愛い動作しやがって、この天然野郎が! 腕を組むの『組む』は取っ組み合うって意味じゃねーぞ! 何処まで戦闘脳なんだよ、お前は!

 

「あー来た来た。おーい、こっちだ!」

 

 すると、いつの間にか集合場所の喫茶店についたらしく、席に座っていたノーヴェさんが手を振って此方に呼びかけてきた。同じ席にはティアナさんとスバルさんも座っており、その周囲にはノーヴェさんの知り合いらしき人がなんか沢山いた。

 

「この二人がノーヴェの言ってた覇王っ娘とそのお友達ッスか? いやー、ラブラブッスねー」

「……ぽっ」

「何処をどう見たらそう見えるんですか。それとアインハルト、効果音を口に出して言うな」

 

 ノーヴェさんと同じ赤い髪を後ろに纏めた女性が、軽いノリで話しかけてきた。その口振りから言って、ノーヴェさんの家族とかかな?髪の色一緒だし。

 

「こら、ウェンディ。初対面の人間に失礼だろう。すまなかったな、少年」

「い、いえ、気にしないでください」

「そうか、それなら有り難いのだが……何故腕を拘束されているんだ?」

「……俺の方が知りたいです」

 

 今度は銀髪ロリの人がさっきのッス口調の人を窘めつつ、この俺の状態にツッコミを入れてくれた。

 この人はいい人だ。主に常識人的な意味で。

 

「やはりおかしいのでしょうか? 私の見た本には『仲の良い男女は腕を組むものだ』と書いてあったのですが」

「えっと、うん。君のはちょっとおかしいかな?」

「なるほど。やはりあの手の本はアテになりませんね」

「いや、そういうんじゃなくて……」

 

 そして、茶髪の髪を首元で纏めている女性がアインハルトの関節極めを指摘してくれた。

 この人も良識枠か、覚えておこう。おかげでアインハルトも腕を離してくれたし。

 

「えっと、ノーヴェさんこの人たちは?」

「え? あ、ああ、悪い悪い。紹介がまだだったな。こっちからチンク姉にディエチ、ウェンディ。それでそこの寡黙なのがオットーとディードだ」

 

 銀髪ロリの人がチンクさん、さっきの茶髪の人がディエチさんに、ッス口調のウェンディさん。そして、ノーヴェさんの紹介に合わせてお辞儀してくれた、茶系短髪で執事服のオットーさんに、茶系長髪でシスター服のディードさんか。

 ノーヴェさんがチンクさんに姉ってつけてたってことは、年上なのか。道理で落ち着いてるわけだ。

 

「どうも初めまして。レン・ラドフォードです。こっちはアインハルト・ストラトス。もうご存知かと思いますが、宜しくお願いします」

「あっ、は、初めましてっ」

 

 俺が頭をぺこりと下げると、アインハルトも慌てて俺に遅れる様に頭を下げた。

 

「ほう、中々礼儀正しい子じゃないか。姉は感心したぞ。ウェンディもこれくらい礼節を弁えてくれればいいのだが」

「ちょっ! そりゃないッスよ、チンク姉!」

「……レン、そんな丁寧な言葉使えたんですね」

「おいお前、俺の前職言ってみろや」

 

 チンクさんに愚痴をこぼされているウェンディさんを余所に、アインハルトが失礼なこと言ってきた。

 お前、忘れてるかもしれないけど、俺は王専属の使用人だぞ。敬語くらい使えるわ!

 

「それで、ノーヴェさん。紹介してくれる同年代の人というのは?」

「ああ、それならもうすぐ来るみたいだから、待ってればその内――」

「ノーヴェ! 皆ー!」

「おっと、噂をすれば」

 

 俺の後ろから少女の声らしきものが聞こえてきた。どこかで聞いたことある様な気がしないでもないが取り敢えず振り返る。その先に居たのは、三人の少女だった。

 中でも一際目を引く一人。風になびく金色の髪、宝石のように美しく澄んだルビーとエメラルドの瞳をしており、彼女の、少女として完成された美しさは誰もが1度は目を奪われるだろう。

 ……って、この描写、前にもやったやつーッ!

 

 俺が突然のことに目が回りそうになったとき、ふとヴィ――少女の姿がぶれる。

 そして次の瞬間、アインハルトに向かって空中回し蹴りを放つヴィヴィ――少女の姿が……

 

「って、えぇぇぇッ!?」

「なッ!?」

「え? あ、ちょッ! 何!?」

 

 え、何? なんなの!? 確かにヴィヴィオは再会してからやたらテンション高いことが多かったけど、見ず知らずの相手にいきなり襲い掛かっちゃうようなやんちゃさんだったの!? てか、ヴィヴィオって言っちゃったよ! 現実逃避してたのに! い、いや、そんなことより、さっき俺と一緒にノーヴェさんとティアナさんも声を上げてたってことは、普段はこんなことしないのか? だ、駄目だ! 理解が追い付かん! (この間0.5秒)

 

 しかしアインハルトは、突然やってきた頭部への攻撃に動じることもなく、片腕を上げただけでヴィヴィオの蹴りを防いだ。

 

「……」

「……」

 

 二人の腕と脚が交差しながら、ヴィヴィオは地面に着地する。

 

「……口よりも手よりも先に足が出るのは相変わらずですね、オリヴィエ(・・・・・)

「それをあっさり防ぐ貴方も人のこと言えないんじゃない? クラウス(・・・・)

 

 二人が、まるで世間話でもするような穏やかな口調で、それでいて隙を見せることなく、互いに言葉を交わす。

 と、とにかく何かツッコミを入れなきゃ……!

 

「そ、そんな短いスカートで蹴りを放つな!」

「突っ込むところそこかよ!」

 

 ノーヴェさんのツッコミが、辺り一帯に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先に手を出したのはヴィヴィオの方でした。

 あまりにも突然の事態に俺やノーヴェさんたち、それにヴィヴィオと一緒に来たリオとコロナさえも何も言えずにいた。

 本来ならティアナさんやノーヴェさんあたりが注意してるんだろうけど、肝心の加害者と被害者が「おひさー、元気してた?」「ええ、ぼちぼちです」みたいな感じで、さっきの一件はなんだったんだと言わんばかりに和気藹々と会話しているせいで、どうしたらいいのか分からないのだろう。

 ……なんか、もうどっと疲れた。

 

「……そういえば、紹介したい相手ってヴィヴィオのことだったんですね」

「え? あ、ああ。そう言うレンも、ヴィヴィオを知ってたんだな」

「はい。まあ、アインハルトは初対面だったと思いますけど」

 

 さっきのやり取り、一応互いに初対面だったんだよなー。(前世)では少なくとも戦う前に、「()ろうぜ」「了解(りょ)」ぐらいのやり取りはあったのに。

 

「もしかして、前世関係ですか?」

「なんだ、そこまで聞いてたのか。だったら話が早いな。ヴィヴィオもこの前まで色々と悩んでたみたいでな、お前たちなら話も合うんじゃないかと思ったんだが……」

 

 その結果がさっきの有様か。まあ、あんなの誰にも予想できないけどな。

 流石にこのままだと埒が明かないので、俺は件の二人に接近する。

 

「おや、レン。何をしていたのですか? せっかくのオリヴィエとの再会だと言うのに」

「そうそう。レディを放っておくなんて失礼しちゃう!」

 

 俺に気がついたアインハルトとヴィヴィオが、文句を言いながらも心なしか嬉しそうに話しかけてきた。

 

「お前ら、さっきのやり取りやっておいてよくそんなこと言えるな」

「え? やだなー、あれはただの挨拶だって。あるいは、愛情表現的な?」

 

 そんな殴り愛あってたまるか!

 

「……百歩譲ってさっきのが挨拶だとして、初対面の相手にやるなよな」

「あっ、そういえば私達初対面だっけ」

「すっかり忘れてました」

 

 お前ら……アインハルトは薄々感じてたけど、ヴィヴィオも天然入ってない? これ。

 

「だったら尚の事止めとけよ。まさかお前、初めて会った相手には皆やってるとか言うんじゃないだろうな?」

「まさか! もちろん、相手がクラウスだって分かった上でやったよ?」

 

 確信犯かよ。いや、それよりも――

 

「分かった上で? こいつがクラウスって何でわかったんだ? オッドアイぐらいしか共通点ないだろ?」

「もう、レンってば、そんなの愚問だよ。姿が変わった程度(・・・・・・・・)で、私がクラウスを見間違うなんてありえないもん」

「今の言葉、胸にキュンキュンきました。オリヴィエに10A(アインハルト)P(ポイント)を差し上げます」

「わーい!」

「……」

 

 姿が変わった程度、か。そうだよな。俺たちの絆は、こんなことで振り解けたりなんかしない。それを理解してたのは、俺よりもこの二人の方だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 まあ、だからといって、いきなりバトるのはおかしいけどな。

 

「では、改めて。私は高町ヴィヴィオ、ミッド式のストライクアーツをやってます」

「ベルカ古流武術『覇王流(カイザーアーツ)』継承者、アインハルト・ストラトスです」

 

 二人が握手を交わす。その様子を見たノーヴェさんたちも、ほっと胸を撫で下ろした。

 俺も、最初は前世での確執とかで険悪な雰囲気になったらどうしようかと思ってたけど、何事もなく終わってよかっ――

 

「そういえば、アインハルトさん。さっき、レンと仲良さそうに寄り添ってたのはなんだったのかな?」

 

 ――空気が凍った。

 

「ノーヴェに呼ばれて来てみれば、レンの近くに貴女が居るでしょ? 思わず身体が反応しちゃった(はーと)」

「なるほど。先程の蹴りに殺気が籠ってたのは、そういうことだったんですね」

 

 ヴィヴィオの笑顔の問い掛けに、アインハルトはいつものポーカーフェイスで返す。

 おい、何が愛情表現だよ。全然違うじゃねーか。

 

「まあ、私と彼の仲は今更語るまでも無いですが……そうですね、先日私の全てをさらけ出したりしました」

「へぇ……」

 

 心なしかドヤ顔になっているアインハルトを、ヴィヴィオは依然として笑顔で見つめる。

 

「でもアインハルトさん。恥ずかしい姿を見せたのが貴女だけだと思った?」

「なん、ですって……?」

「私は貴女よりもずっと前にレンは再会してたんだよ。分かる? 私が1番、貴女は2番目。レンってば、甘い言葉を囁きながら私に無理やり押しつけてきて」

「…………」

 

 今度はアインハルトの顔から感情が消え失せ、心なしか周囲の温度が下がってきた。

 違うからね? ただ単に慰めただけで甘い言葉なんて言ってないし、押し付けたのは涙を拭くためのハンカチだから!

 何なの? 君らは意味深に言葉を濁すのが好きなの? ほら! コロナなんか顔を両手で隠して指の隙間からこっち見てるし、事情を理解してそうなティアナさんも顔を引き攣らせてるし!

 

「……しかし、結局はそこ止まりという訳ですね」

「うん? 負け惜しみかな?」

「同衾しました」

「……は?」

「同衾しました」

「いや、布団は別々だったから同衾ではないだろ」

 

 しかし、俺の言葉は届くことなく、アインハルトとは対照的にヴィヴィオの周囲の温度が上がってゆく。

 ……それでも尚、笑顔を崩さないヴィヴィオが逆に怖いんだが。

 

「ノーヴェ」

「え?」

「ノーヴェのことだから、場所は確保してあるんでしょ?」

「あ、ああ。一応、区民センターのスポーツコートは取っておいてあるが……」

「それはいいですね。久しぶりにお話(・・)でもしましょうか、ヴィヴィオさん」

「そうだね。いやー楽しみだなぁ」

 

 表面上はとても仲好さそうにしているのに、傍から見ても仲のいい友人の会話なのに、二人から放たれる威圧感がすべてを台無しにしている。

 一方、二人並んで区民センターの方へ歩き出す姿を後ろから見ていたノーヴェさんは、どうしてこうなった、と頭を抱えているのだった。

 ……まあ、ドンマイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁッ!」

「でりゃぁぁぁぁぁッ!」

 

 俺たちギャラリーが見守る中、二人の拳の打撃音が室内に響き渡る。

 因みに、二人とも騎士甲冑を纏う際に18歳ぐらいの見た目に変身している。アインハルトは先日の一件で知ってたけど、ヴィヴィオも似たようなことができたのか。

 というか俺、ヴィヴィオ(・・・・・)が戦ってる姿をまだ見たことなかったんだよな。格闘技をやってる、とは本人から聞いてたんだが。

 

「リオ、コロナ。二人ともヴィヴィオとよくトレーニングしてるんだろ? ヴィヴィオの強さってどんなもんなんだ?」

「あれ? そういえばレンって見たことなかったっけ?」

「えっと、本気のノーヴェさんとまともに打ち合えるのはヴィヴィオだけなので、私達3人の中だと頭一つ飛び出てるくらいだ、と思ってたんですけど」

「今の試合を見てると、まだまだ遠いって感じちゃうなぁ」

 

 リオは溜め息混じりに試合へと視線を戻す。

 確かに目の前で繰り広げられている戦いは、とてもじゃないが12歳と10歳とは思えない。まあそれも、前世の記憶を持ってると考えればそこまでおかしいことでもないんだがな。

 だけど――

 

「覇王……断空拳!」

「ッ!?」

 

 そんなことを考えていると、アインハルトの断空拳がヴィヴィオに炸裂し、ゲームセットになった。

 

「ぷはぁっ……いやぁ、相変わらずの強さだね、アインハルトさん」

 

 床に倒れながら満足そうな笑みを浮かべるヴィヴィオ。そんな彼女に、アインハルトは手を伸ばす。

 

「……そういう貴女は弱くなってしまいましたね」

「ひっどーい! これでも気にしてるのに!」

 

 ぷんぷんっ、と頬を膨らませながらアインハルトの手を取って起き上がる。その二人の間には最早さっきまでの険悪な雰囲気は何処にもなく、仲良さそうに試合の反省会をしていた。

 だけど、それを見ていた観客の一部、特にノーヴェさんやスバルさんは、アインハルトの言葉を聞いてざわざわとしていた。

 

 アインハルトが誹謗にも取れる発言をしたからではない。当の言われた本人が気にしてる様子もないし、第一、アインハルトは敗者に悪態をつくような性格ではない。

 さっき、コロナは『ヴィヴィオは本気のノーヴェさんとまともに打ち合える』と言った。つまるところ、ノーヴェさんと打ち合える今のヴィヴィオでも全盛期(オリヴィエ)に遠く及ばないということになるわけで。

 

「そのあたり、実際のところどうなの?」

 

 先程のアインハルトの発言が気になったのか、ティアナさんがチョンッと俺の肩をつつきながら小声で訊ねてきた。

 

「そうですね。俺の知る限り、二人とも全盛期と比べてしまえば、どうしても実力は落ちます。ただ、アインハルトの場合は単に年齢的な問題なので、成長して身体が出来上がってくれば自然と解決すると思うんですが――」

「ですが?」

「ヴィヴィオには、そもそも別の問題があるかと」

 

 そう、アインハルトと違って、多分ヴィヴィオには根本的な問題がある。本人から直接確認したわけじゃないけど、さっきの試合を見た限り恐らく……

 真意を確かめる意味も込めて、俺は武装解除した二人に近付く。

 

「あっ、レン。あはは……カッコ悪いところ見せちゃったかな?」

「そんなの今更だから気にするな」

「えー!? そんなことないもん!」

「うるせぇ! それよりもお前――魔力資質、違うんだな?」

「ッ!? あ、えーっと……」

 

 その反応、やっぱり図星だったか。カウンターパンチャーなんて行儀のいい(・・・・・)戦い方してるから、どうしたのかと思ってたが。

 

「戦ってる最中、攻撃の節々に妙な間があった。恐らく普段は魔法も併用してるんだろ。てことは、並列制御(マルチタスク)タイプってところか?」

「……うん。高速並列運用型、中後衛向きだって」

 

 ヴィヴィオがいじけたように両手の人差し指をツンツンと突きあわせる。

 今のヴィヴィオがこのスタイル(カウンターパンチャー)で戦うようになったのも、恐らく嘗ての経験によって磨かれた勘と見切りを最大限に生かすことができるからだろう。

 今ある武器で戦おうとするその姿勢は称賛すべきだが、オリヴィエの強さに執着していたクラウス(アインハルト)の心情は如何なものか……

 まあ、今は置いておこう。それよりも――

 

「そういうことでしたか。戦闘スタイルがまるで違うので驚きました」

「お前は変わらなすぎだ、アホ!」

「あいたっ」

 

 他人事のように呟くアインハルトの頭にチョップを食らわせる。

 

「な、何するんですか!?」

「何してる、は此方のセリフだ! お前、クラウスの時と同じように動いてたら身体に負荷が掛かり過ぎるだろ!」

 

 成人男性とローティーンの少女では骨格も筋肉量もまるで違う。いくら強化魔法があるとはいえ、クラウスの頃と同じような感覚で、まだ出来上がっていない成長期の身体を無理に動かし続ければ、最悪の場合故障しかねん。

 

「取り敢えず、アインハルトは動きにリミッター掛けるから後でデバイス貸せ。一定以上の動作をすると制限を掛けるようにするから、後は身体で力の使い方を覚えろ」

「ぶーぶー」

 

 アインハルトがあからさまに不満そうな顔をするのを、俺は一蹴する。

 こいつの文句に一々付き合ってたらキリがないからな。今も昔も。

 

「むぅ……っ、アインハルトさんばっかりずるーい!私もレンと『喧嘩してるのに端から見ればイチャイチャしてるようにしか見えない』ヤツやりたいのにー!」

 

 すると、ヴィヴィオが妙ちくりんなことを言いながら俺の右腕に抱きついてきた。

 お前は何を言ってるんだ。

 

「……今回勝ったのは私です。勝者は暫くレンを独占できるというのは以前からの約束のはずです」

 

 そう言うと、今度はアインハルトが俺の左腕を掴んだ。

 え? 以前からって何? もしかして、それって前世でも同じようなことやってたの!? ちょ、ちょっと待って! お前、前世だとおとk――

 やめろ! 俺を挟んで睨み合うな! 心なしか段々手に力が痛たたたたたッ!

 

 

 

 暫く睨み合いが続いた後、結局二人は再び戦い(強化魔法なし素手のみ)にて決着をつけることになったのだそうな。

 俺? 両側から威圧感が押し寄せてきたせいでぶっ倒れましたが何か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

「ヴィヴィオ、アインハルトと随分と仲良さそうに話してたよね? さっきまで険悪な雰囲気だったのに」

 

 試合終了後、スバルが丁度一人になったヴィヴィオに話しかける。手合わせが始まる前は無事に終わるかと心配していたスバルだったが、蓋を開けてみれば何事もなく終わり、ちょっと拍子抜けだったのが彼女の本音だ。

 

「もースバルさんってば。あれはただのじゃれ合いだよ」

「じゃ、じゃれ合い? あれが?」

「うん! だって、別に命のやり取りしてないし、トレーニングの一環でもなかったし。だから、じゃれ合い」

 

 思わず顔を引き攣らせる。先程の2試合での、拳に込められていた殺気は確かに本物だった。それでも、試合形式(殺し合いじゃない)という理由だけで、彼女にとってアレはじゃれ合いになるのか。

 こんな姿(なり)をしているが、その中身は戦乱の時代を生きた一国の王女なのだ。スバルは改めて、ジェネレーションギャップとでもいうべき感覚に陥った。

 

「それに、私は本気でクラウス――アインハルトさんをどうこうしようだなんて考えてないもの」

「え? そうなの?」

 

 その言葉もまた意外だった。

 スバルが以前読んだ漫画には、病的なまでに恋に生きる少女が登場していた。そんな彼女は、恋の障害となる相手をあの手この手で次々と陥れていた。ヴィヴィオとアインハルトの初対面の一件を見て、一瞬そのキャラクターが重なって見えてしまったのは不可抗力と言えるだろう。

 それだけに、スバルは疑問を投げかけずにはいられなかった。

 

「もちろん! だって、アインハルトさんもレンも、とても大切な人だもん」

 

 今の言葉に嘘偽りはない、それを信じさせるには十分なほどまっすぐに語る彼女の表情は、とても穏やかなものだった。

 

「それにね、スバルさん。私、こう見えてすっごく欲張りなの」

 

 しかし、そんなヴィヴィオの顔に影が差す。

 

「だから、欲しいものはすべて手に入れるし、誰にも渡さない。クラウスもローレンツも■■■も。……もう二度と 離  サ   ナ    イ」

「ッ!?」

 

 スバルの背筋が凍りつく。目の前の、年端もいかぬ少女の瞳に突如宿った、光も通さぬ底なしの闇。一体、どんな人生を歩めばそんな眼ができるようになるのか。

 少女の見たことのない表情を前に、スバルは只々、立ち尽くすことしかできなかった。

 

「でもね、アインハルトさんってば、中々レンを手放してくれないの」

 

 すると、さっきまでの出来事が嘘であるかのように、目の前には普段通りのヴィヴィオが居た。

 

「だから、しょっちゅうお話(・・)してるんだけど――ってスバルさん? 聞いてるの?」

「え? う、うん。勿論聞いてるよ!」

「ならよかった。それでね――」

 

 背中を伝う嫌な汗が、さっきのことは現実だと突きつける。ヴィヴィオの話を聞きながら、やっぱりあの漫画のキャラに重ねて見てしまった自分は正しかったと、そう思わずにはいられないスバルだった。

 

 

 

 

 




というわけで、ヒロインズ出会うの巻でした。
いやー、今回はコメディ回でしたね。

ヴィヴィオもアインハルトも別にお互いのことが嫌いではない、むしろ大好きなので、じゃれ合うことがあっても殺し合うことはないのです。
なので、昼ドラのような展開を期待した方は、申し訳ございませんでした。

本作でのヴィヴィオとアインハルトですが、原作よりだいぶ強化されてます。ただ、ヴィヴィオは魔力資質がオリヴィエの頃と違うので、強化幅は少ないです。


あと、スバルや元機動六課の人たちはヴィヴィオがオリヴィエの記憶を持ってることを知ってます。一応1話でそれっぽい描写は入れたのですが、分かりにくかったかもしれないので補足しておきます。





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