元同性の親友とその想い人がアプローチを仕掛けてくる件   作:作者B

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唐突に投稿。



王の聚合 中編

 というわけで、やって来ました今回の合宿先、無人世界カルナージ。1年を通して温暖な気候で、自然豊かなところだそうだ。

 

 次元港でスバルさん・ティアナさんと合流し、ミッドチルダの首都から約4時間の移動。その間は、意外と言うべきか、むしろこれが普通と言うべきか、ヴィヴィオとアインハルトは特に問題を起こすこともなく至って平和に過ごしていた。

 

 そうだよ、こういうのでいいんだよ! 毎度毎度、何処か出かける度に遭難しかけたり機械フェチの変態とエンカウントしたりドラゴンと遭遇したり! いつの間にかそれが当たり前になってたけど、これが本来あるべき『旅行』の姿なんだッ!

 

「ね、ねえ、ヴィヴィオ。なんだかレンさんが遠い目をしながら黄昏てるんだけど……」

「別に気にしないでいいよ。レンってば、たまにああなるから。なんでかは知らないけど」

「なんでかって、それは多分ヴィヴィオが――あはは……」

「?」

 

 コロナの苦笑いにキョトンとしているヴィヴィオ。

 お前って奴は……まあ、いい。

 そんなこんなで、宿泊場所のロッジに着いたわけだが、誰も居ないな。勝手に入っていいのか?

 

「よく来たわね! 歓迎するわ!」

 

 すると突然、どこからか少女のものと思しき声が聞こえてきた。

 

「今の声、一体どこから……?」

「レン、あれを」

 

 アインハルトが指をさした方に目を向けると、そこにはロッジの屋根の上で腕を組んだ、うまい具合に逆光になっている人影が居た。

 

「とうっ!」

 

 少女は無駄に気合の入った掛け声を上げると、そのまま屋根を蹴り上げ、前宙返り1回半1回捻りを綺麗に決めながら着地する。

 

「いらっしゃい! 六課の皆さんにヴィヴィオ達!」

 

 バーンッ! と少年誌張りの効果音を想起させる迫力で出迎えの挨拶をしてきた。

 ……何なんだ、この人は。

 

「あっ! ルール―、久しぶり~! レン、アインハルトさん。この人が私の友達の――」

「ルーテシア・アルピーノです。よろしくね」

「お、おう」

「よろしくお願いします」

 

 先程の飛び込みがなかったかのように平然と紹介されたぞ。周囲を見ても、苦笑する人は居るものの驚いている様子はない。

 え? もしかして普段からこういう娘なの?

 ルーテシアがリオやコロナと挨拶しているのを眺めながら、類は友を呼ぶんだな~と思わずにはいられなかった。

 

「そうだそうだ、そこの二人さん。ノーヴェから聞いてると思うけど、わたし、古代ベルカのことに興味があってね。訓練の合間でいいから色々と昔の(・・)話を聞かせてほしいなって思うんだけど、どう?」

 

 昔の、ってノーヴェさんが言ってた前世関係の話か? といっても、俺は大したこと話せないだろうから、力になれるか怪しいが。

 

「ええ。私は構いません」

「まあ、俺も別に断る理由もないし」

「ありがとう! それじゃあ遠慮なく、隅から隅まで聞かせてもらおうかなーぐっへっへ……」

 

 了承を得た途端、ルーテシアさんは目を怪しく光らせ、涎を腕で拭いながら不敵な笑みを浮かべる。その光景を見て、俺だけじゃなくアインハルトさえも思わず冷や汗を流した。

 や、やっぱりこの人もまとも枠じゃなかったぁーッ!

 

「こらこら、あんまり怖がらせちゃ駄目だよ、ルーちゃん」

 

 すると、ルーテシアさんの後ろから桃髪の少女と赤髪の少年が止めに入ってくれた。

 た、助かったぁ。

 

「えっと、あの……」

「ああ、ごめんね。ルーテシアは歴史のこととなると、ちょっと暴走しちゃうところがあって。僕はエリオ・モンディアル。それで、こっちが――」

「キャロ・ル・ルシエです。ルーちゃんとは同い年なんだ」

 

 なるほど。仲が良さそうなのはそういうことか。

 そんなことを考えながら、なんとなくエリオさん、キャロさん、ルーテシアさんの順で視線が移る。なんというか、3人の身長が見事なまでに凹――いや、やめよう。このネタに触れるのは危険だと俺の勘が告げている。

 

「ふぅ……つい我を失ってしまったわ。あっ、そういえば。エリオ、先に到着してたお客さんは?」

「ルーテシアがいつまでも入って来ないから、こっちから呼んでおいたよ」

 

 『先に到着してたお客さん』という知らされていなかった情報を聞いてヴィヴィオ達4人が頭上にハテナを浮かべていると、タイミングを計ったかのようにロッジの扉が開かれる。

 

 現れたのは、青と白を基調とした、いかにもお嬢様然としたロングスカートを身に纏った少女。風に揺れる長い金髪に気品ある緑眼、歩く姿からも育ちの良さが伺える。

 ……いや、いい加減、現実逃避はよそう。

 

「ヴィクトーリア・ダールグリュンと申します。以後、お見知りおきを」

 

 少女は両手でスカートの裾をつまんで軽くスカートを持ち上げ、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げる、洗練されたカーテシーで挨拶をした。

 こういう姿を見ると、やっぱりいいとこのお嬢様なんだなぁと実感する。色々な意味でジークとは大違いだ。

 

「ダールグリュンって……も、もしかして去年のインターミドルで都市本戦3位だった、あの『雷帝』ヴィクトーリア・ダールグリュン選手ですか!?」

「あら、ご存知いただいていたなんて、嬉しいですわ」

「さ、サインください!」

 

 突然の登場にびっくりしながらも、リオとコロナは年相応にはしゃぎながらヴィクターに駆け寄っていった。うむうむ、とりあえずサプライズは成功ってところかな。よく見ると、ノーヴェさんもしたり顔してるし。

 俺は微笑ましい光景を目にしながら、さりげなくヴィヴィオの前を遮るように立つ。

 

「えっと、レンはなんで私の前を塞ぐように移動したのかな?」

「そんなもん、お前の今までの行動を顧みれば、わかりきったことだろ」

「もう! だから初対面の相手に愛殺(あいさつ)はしないって言ってるでしょ?」

 

 そんなの信用できるか!

 ……まあ、ヴィヴィオの言い分を信じるなら、襲い掛からなかったということは、ヴィクターが記憶を持っていないことを直感的に察知したってところか。随分と正確なセンサーだな。

 

 すると、リオとコロナにサインを書き終えたヴィクターがこっちへ近づいてきた。

 

「初めまして、ヴィヴィオさん。お会いできて光栄ですわ」

「こちらこそ。でも、そんなに畏まらなくていいですよ。私の方が年下なんですし」

「それではヴィヴィ、と呼ばせていただくわね。(わたくし)のこともヴィクターで構いませんわ」

「はい! よろしくお願いします、ヴィクターさん!」

 

 そう言って、二人は握手を交わす。確かに本人の言う通り、ヴィヴィオが何かを仕掛ける様子はない。

 よかった~。ヴィクターも今のところ発作の兆候はなさそうだし、何よりジークのときの様にならなくて……ん? ジーク?

 

「あっ、そういえば! ヴィクター、ジークはどうしたんだよ。一緒じゃなかったのか?」

「あら? 先程までは(わたくし)の後ろに居たのに。ジーク! 恥ずかしがってないで挨拶なさい!」

 

 ヴィクターは再びロッジの方へと歩み寄り、扉から中を覗く。あいつの人見知りも困ったもんだな。

 そして、ヴィクターに手を引かれて、黒のジャージにフードを羽織った少女がロッジから出てきた。

 

「ヴィ、ヴィクター! そないに引っ張らんといて――――あうっ」

「ほら、挨拶するのにフードをかぶってたら失礼でしょう?」

 

 ヴィクターによって強制的にフードを脱がされ、その素顔が露になる。

 相変わらず、恥ずかしそうに頬を染めながらこっちを見る様は、何度見ても小動物にしか見えない。

 これが嘗て世界の頂点に立ったっていうんだから、人間分からないもんだよな。

 

「こ、今度は元世界チャンプのジークリンデ・エレミアさん!?」

「是非サイン――いえ、握手を!」

「あわ、あわわわわわ……」

 

 ちびっ子二人に揉みくちゃにされながら、あわあわしているジークリンデと、それを微笑ましそうに見ているヴィクター。

 あぁ、平和だなぁ。ここのところ、ヴィヴィオとアインハルトによって俺の平穏はかき乱されているから、なおさらそう感じるわ。

 

「エレミア……」

 

 そして案の定と言うべきか、アインハルトの顔が少し強張る。

 当たり前だよな。リッドと同じファミリーネームで、しかもチャンピオンなんていう如何にも強そうなやつが目の前に現れれば、気にならない方がおかしい。ヴィヴィオや自身という前例が居る以上、リッドも同じように記憶を、と考えても不思議はない。

 まあ実際は、もっとややこしいことになっているんだが。

 

 そして俺は、ヴィヴィオの時と同じように、今度はアインハルトの前を塞ぐように移動する。

 

「……レン。そんなことをしなくとも、私はヴィヴィオさんのように、いきなり蹴りかかったりしませんよ」

 

 アインハルトがジト目でこっちを見てくる。

 えー? 本当にござるかー?

 

「何やら妙な視線を感じますが……第一、アイツはあんな純朴そうな彼女と似ても似つかない。いえ、比べるのも失礼でしょう」

 

 うわぁ、結構な毒舌。

 

「お前ら、そんなに仲悪かったっけ? 俺にはそうは見えなかったんだけど」

「そんなことはないですよ。大切な友人です。ただ、彼は度々、私のモノを横から掻っ攫おうとする卑しい人間でしたから」

 

 私とオリヴィエがO☆HA☆NA☆SHIしている間によくもローレンツを……と、何やら小声でぶつぶつと呟いているが――明らかに藪蛇なので聞かなかったことにしよう。

 

 それにしても『彼』ときましたか。

 いやさ、確かにリッドは髪も短くて中性的な顔つきだったけど、お前まさかその、本気で性別を勘違いしていたんじゃ……。

 ま、まあ、今更訂正するのもあれだし? この事実は、墓まで持っていくことにしよう! うん!

 

 とりあえず俺は、目がグルグルになっているジークに助け舟を出すべく、未だにテンションの高いコロナ・リオの元へ走っていった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

 

 

 

 ところ変わって、ロッジから少し離れた川辺。

 大人組は山の方でサバイバル形式のトレーニングに行き、子供組+α(ルーテシアさん)と俺達保護者(トレーナー)組は、川遊びに来ていた。

 

 私は出来れば手合わせを、なんて言うアインハルトの手を引っ張りながら、ヴィヴィオはリオやコロナ、ルーテシアと一緒に川へ入っていく。

 因みに、俺含め皆水着だ。ノーヴェさんは上着を羽織っているけど。

 

「皆さん、楽しそうですわね。本当、ただの子供のように笑って」

 

 川辺で座ってヴィヴィオ達を眺めていたら、後ろから歩み寄ってきたヴィクターがそんなことを呟いた。

 そうだよな。あんなふうに遊んではいるが、ヴィヴィオもアインハルトも、その幼い体に前世の宿業を背負っている。だからせめて、こういう時ぐらいは、歳相応に楽しんでくれればいいんだが……

 

 それにしても、最近の小学生、運動神経高過ぎじゃね? いくら、あの3人は日頃から鍛えているとはいえ、コロナとリオでさえ下手しなくても俺以上だ。

 ……自分で言ってて悲しくなるな。男ながら情けない。

 

「あら、そんな悲しそうな顔をして、どうかされたのかしら?」

 

 ヴィクターの声がやたらと近くに感じる。だが俺は、頑なに視線を前へ固定したまま動かさない。

 

「ふふっ、どうしたんですの? 先程から(わたくし)の方を見ようとせず」

 

 ヴィクターは後ろから顔を俺の耳元まで近づけ、俺の両肩に自身の手を添え、それと同時に背中へ2つの柔らかいものを押し付ける。

 

「でも、貴方がこうして(わたくし)を意識してくれるのは嬉しいですわ、ローレンツ」

 

 俺のすぐ背後で屈み、耳元で囁くように言葉を綴るヴィクター。

 吐息の音まで聞こえるほど近づいているせいか、彼女のいい匂いが俺の鼻腔をくすぐり、女性特有の柔らかい肌、特に背中に広がるたわわな感触が、俺から平静さを奪っていく。

 

 くそっ! 美少女の水着とはいえ、小学生組なら平気だろうと安心していたらこれだよ!

 おのれ、ヴィクター! まさか水着まで用意していたとは準備のいいやつめ!

 だが、悲しいかな。思春期に逆戻りしている今の俺は、ヴィクターの誘惑を跳ねのけられないのであった。

 

 ていうかヴィクター、発作出てね? 以前のような強烈なものではないが、むしろ、こういう平常時に近いときの方が厄介なんだよな。やたらと扇情的になることが多いし。

 

「もうっ、(わたくし)と話しているのに、何をぼーっとしていますの?」

「い、いや、別に。ヴィクターのことを考えていただけだよ」

「まぁ……ですが、(わたくし)はここにおりますわ、ローレンツ。どうか、目の前の(わたくし)に集中してくださいまし」

 

 そう言って、ヴィクターは俺の胸元に両手をまわし、後ろから抱きしめる様に身体を密着させてきた。

 こ、これ以上は理性ががががががが――――

 

「きゃっ!」

 

 すると、このピンク色の空間をぶち壊すかのように、ヴィクターの顔を水の塊が打ち抜いた。

 

「ごっめーん。発情した雌犬がレンに盛りついているのかと勘違いしちゃって。思わず水を掛けちゃった。てへっ」

 

 水鉄砲が発射された場所へ目を向けると、あざといポーズを取りながら謝罪にもなっていない謝罪をしているヴィヴィオが居た。

 どうやらさっきの水は、ヴィヴィオが器用に拳圧で飛ばしたもののようだ。

 

「あら。あらあらあら。いやですわ、ヴィヴィったら。嫉妬なんて見苦しい真似はおよしなさいな」

 

 ヴィクターは俺から離れると、立ち上がって胸の前で腕を組む。

 ……心なしか、胸を下から押し上げて強調しているように見えるのは、きっと気のせいではないのだろう。

 

「……」

「……」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴッという効果音とともに、二人が笑顔のまま視線を交えている。

 あの……できれば騒ぎは起こさないでほしいなーなんて……。

 

 いや、願うだけじゃ何も変わらないことは過去の戦争で学んだはずだ。今を諦めなかった者にだけ、明日は訪れるんだ!

 

「というわけで、いざという時は頼んだぞ、ジーク」

「な、何なん? 突然……」

 

 俺の他力本願なお願いに困惑するジーク。

 まあ、いきなり話を振られればこうなるわな。

 

「ていうかお前、ここに来ていつまでジャージ羽織ってるんだよ。水着を持ってきてたってことは、泳ぐ気でいたんだろ?」

「こ、これは『キャンプ地に行くなら持っていくといい』ってリッドが……」

 

 そう言うリッドがジャージの中に着ているのは、意外にもビキニタイプ。しかし、青地のバイアスチェックにリボンの結び目の可愛らしい飾りが施されており、少女と大人の間である微妙なお年頃を上手く表現している。

 『これがエレミア500年の叡智だ』とドヤ顔しているリッドの幻覚が見えたが、気にしないでおこう。

 

「そないに見られると、恥ずかしい」

「あ、ああ、すまん。つい見とれてた」

「見とれっ!? そ、そうなんか……えへへ」

 

 ジークは斜め下に視線を逸らし、人差し指で赤く染めた頬をかく。俺も、ジークの空気に充てられたのか、少し照れくさくなってきた。

 ……なんだ、この青春一色な空気は。

 すると、そんな空気に水を差すように、二つの人影が俺たちの前に現れた。

 

「あらあら、人がよそ見をしている間に、随分と楽しそうな雰囲気じゃありませんか」

「ホントホント。見せつけるようにイチャイチャしちゃって」

 

 視線をあげると、目の前に大小金髪コンビが佇んでいた。

 怒気を放ちながらも満面の笑みを浮かべるその姿は、まさに『笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点である』を体現しているかのようだった。

 

「はわ、はわわわわ……」

「さぁ、ジーク。せっかく川辺に来たのですから、あちらでひと泳ぎしませんこと?」

「そうそう。一緒にお話(・・)しようねー」

 

 ヴィクターとヴィヴィオに両腕をがしっとつかまれたジークは、そのまま引きずら(ドナドナさ)れてアインハルトたちがいる方へと連行されていった。

 ま、まあ、ジークは引っ込み思案なところがあるし? あれぐらい強引にしないとみんなの輪に入れそうにないしな! うん!

 

 俺は、おおよそ水遊びの場面では聞くことのないような効果音の応酬に見て見ぬふりをしながら、雲一つない青空を眺めて現実逃避していた。

 

 

 

 

 

 




 お待たせしてしまって申し訳ない。
 少しずつ執筆していたら、いつの間にかかなり間が空いてしまいました。

 そのうえ、『ルーテシアのなぜなに古代ベルカ(仮題)』を入れそこね、前後編予定のはずが三部作に……

 合宿編は次話で完結させるので、できればお待ちいただけると幸いです。
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